「2018年の夏は50年に一度の」という特別警戒を何度も耳にしたが、異常気象は冬も続いているようで、北海道で11月上旬に初雪の観測がないことは132年ぶりだという。

今回、2017年に登場したブリヂストンのスタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX2(ブリザック ヴイアールエックスツー)」をフリードModulo Xに履かせてレビューすべく、北海道でロケを敢行したのだが、この132年ぶりの暖冬のおかげで当初予定していた時期から1ヶ月ほど待つ必要があった。ようやく初雪や積雪の情報が入ってきたのは11月下旬になってから。改めて撮影スケジュールを組んで12月初旬にロケを決行する運びとなった。

VRX2を装着したフリードModulo XにVRX2を装着してレビューすべく北海道へ

ウェット、そしてドライでも実感できたVRX2の進化

そんなこんなでようやく降り立った新千歳空港。しかし12月だというのに付近の道路に雪がない。それどころか気温はなんと10℃もあって、新千歳空港周辺の天候は雨。これではレビューにならないと、雪を求めて旭川方面へとクルマを進めることとなった。VRX2を履いたフリードModulo Xを走らせ、ウェット路面の道央自動車道を通って旭川を目指す。

VRX2は、先代のVRXと見比べるとトレッドパターンが大きく異なっている。スタッドレスタイヤはトレッドパターンの中に占める溝の面積が大きいため、夏タイヤに比べるとパターンノイズが発生しやすくなる。しかし、VRX2は溝面積やパターンの最適化によって高音域のノイズを軽減。加えて、コンパウンドに使われる発泡ゴム自体は、ノイズを吸収する効果を持ち合わせている。これらの影響によって、ウェットとドライコンディションともに快適性が引き上げられている。実際に道央自動車道を走っていると、舗装がよくないなかでもロードノイズは小さく、長い距離を乗っていても疲れにくい。ロードノイズなどの音は慣れによって気にならなくなりがちだが、根本的に騒音が小さいとドライバーもパッセンジャーも疲労感は少なくなる。なにより大きな声をだすことなく、運転席と後部座席の会話ができるのが嬉しい。

フリードModulo Xに装着したVRX2のサイズは、185/65R15。ホイールはツインスポークをベースに、複雑な造形で足元を美しく着飾る「ECO FORME CRS161」

また、イン側とアウト側のサイドウォールの形状を変えているため、ミニバンなどの重心が高く車体の動きが大きいクルマではとくにふらつきが抑制される。スタッドレスタイヤは、溝が深いことやブロック自体が柔らかいこともあり、乗り心地に対してはメリットもあるが、ステアリングの応答性や車体のふらつきには弱いところもあった。だが、VRX2はコーナリングでも車体が不要にふらつくことはなく、高速道路などの車線変更でも運転していて違和感を覚えることはなかった。

アスファルト路面走行中のノイズは先代のVRXと比べ31%低減

イン側とアウト側でサイドウォールの形状を変えることで乗り心地の向上とふらつきの抑制を両立する

新千歳空港からの道央自動車道は、残念ながら雪がなくウェットとドライコンディションの路面だったが、VRX2が目指した静粛性や走行安定性の高さを感じるには最適なドライブとなった。

千歳から旭川への道中はウェット、そしてドライの路面が続いたが、そんなシチュエーションでもVRX2のポテンシャルを感じることができた

路面は刻一刻と変化。雪、そしてアイスバーンへ

積雪を求めて旭川に向かったのだが、市街地の路面は残雪もなく雪解けの水が路面を覆っていた。一夜明けても状況は変わらず天候は雨だったため、標高が高くライブカメラで積雪が確認できた層雲峡温泉を目的地とした。旭川紋別自動車道を降りると天候はようやく雨から雪に変わり、念願の積雪となった。標高が上がるにつれて、降雪量も増え、みるみるうちに路面には雪が積もり出す。気温も氷点下となり、路面状態がアイスバーンのところも見受けられるようになった。

旭川市街は雨だったが層雲峡を目指して走ると雪に変わり、路面もどんどん白くなってきた

層雲峡付近は一面雪景色。当然運転に注意が必要な路面状況であるが、VRX2のグリップのおかげで余裕を持って走ることができた

氷上性能の高さと併せて、タイヤ自体の剪断性能(タイヤの接地面が雪を踏み固め、それを蹴り出すことで雪上や氷上でグリップを得る能力)が求められるが、マルチアングルグルーブなどにより剛性が高められたトレッドは、柔らかい新雪や硬い圧雪でも確実なグリップ性能を発揮する

VRX2での最大の進化は、アイスバーンでのグリップ性能向上になる。新たに開発された「アクティブ発泡ゴム2」は氷上で滑る要因となる水膜をしっかりと吸収し、トレッドパターンは接地性がアップしていて、新形状のブロックもアイスバーンを確実に捉えるという。氷上性能の向上は、スタッドレスタイヤを購入する人の多くが望む項目で、昨今のモデルではどのメーカーも重視している。その中でもVRX2の安心感は高く、かなり滑りやすい路面でも、難なく発進し、ブレーキを掛けてもしっかり制動する。

多くのクルマが走ることで磨かれたアイスバーン。もっとも神経を使う路面状況だが、VRX2の氷上性能が安心感のある走りを実現してくれる

どのくらいの路面状況なのか確かめるためにクルマを降りて歩いてみたが、スケートリンクの上を歩いているほどのコンディションだった。運転していると確実にグリップ感があるので、多少の滑りやすい路面かと思っていたら、想像以上の低μで驚いた。それほど、アイスバーンでもグリップ力が確保されているのだ。

非対称パターンを採用しているVRX2。横方向のラグ溝を従来モデルよりも増やすことで「雪を掴む」「氷を引っ掻く」性能を高めている。また、ブロック自体の剛性を高めたことで、ブレーキング時の接地面積を稼ぐことに成功した

圧雪はもちろん、より深い雪道でも安定の走り

層雲峡温泉からさらに新雪を求めてサロマ湖方向へと足を向けると、圧雪路や除雪されていない積雪の国道を走ることになった。圧雪のコンディションでは、加速も制動も通常のアスファルト路面と同様の感覚で運転することができる。それだけ、ドライバーにはしっかりとグリップ感が伝わってくる状況で、コーナリング中に操舵を加えるなどのグリップを失いやすくする操作を行なっても、クルマの挙動が乱れることはなかった。

圧雪路面では、タイヤがしっかりと雪をつかんで、そのグリップ感はアスファルトの上の様。しっかりとした手応えがハンドル越しにも伝わってくる

新雪の路面ではタイヤ自体の剪断性能が求められるが、こちらも難なく走行していく。前述したようにフリードModulo XはFFなので、4WDモデルに比べると積雪路での走破性は高くない。それでも、ある程度の積雪ならば降り積もった雪を踏みつぶす感覚で走ることができた。

12月の上旬ならばどこを走っても圧雪や新雪、アイスバーンを走ることができると想定した今回の北海道ロケだったが、結果として様々な路面コンディションを探すために500kmほど走行することになった。多くの部分がドライとウェットコンディションだったが、それはそれでVRX2の優れた静粛性や操縦安定性が感じ取れ、性能向上の第一に挙げているアイスバーンでは驚くほどに安定したグリップ感が得られた。また、今回の試乗では感じ取ることができないが、VRX2は経年劣化も少なく耐久性も上がっているという。4本のスタッドレスタイヤを購入するとなると安い買い物でないので、ライフが長いというのも消費者にとっては嬉しいトピックといえるだろう。

トレッド面のすべり量分布図イメージ。赤い部分がすべり量が多く、青い部分が少ない。VRX2ではすべり量が少なく、結果摩耗も抑えられる

摩耗ライフでは、VRXと比べて22%もライフを向上している

新千歳空港から旭川を経由して目指した層雲峡温泉。温泉街を越えると、多くの観光客が訪れる「銀河の滝」が現れる。冬場でも完全に凍結することは少ないそうだが、厳冬のときには全面的に氷に覆われることもあるそうだ