紅葉が見頃を迎えていた長野のとある高原リゾート。久しぶりの大型案件の受注(単なる取材)を決め、達成感を覚えながらホテルを出た筆者の前に、黒塗りの三菱自動車「デリカ D:5」が静かにとまった。スライドドアが開き、中から現れたCar Watch編集部のスタッフがうやうやしく車内に招き入れる。
あれは1週間前のことだった……。忙しいからと1度仕事の依頼を断った筆者に対して「その日はちょうど近くでロケがありますので」と白々しい電話をよこしてきたのだ。なぜかクルマで迎えに行くと言ってきかない彼の必死の主張に折れた筆者は「帰りの足代が浮くからいいか」と考えることにして、渋々その提案を受け入れることにしたのだった。
にこやかな表情を保ちつつ乗車を促す彼を若干いぶかしく思いながらも、ステップに足をかけ、この半年で10kg減量し引き締めた身体の軽快感あふれる動きを見せつけるようにしてライドオン。広々とした余裕のある車室。肌触りがよく、ほどよく反発力のあるファブリックシート。さすがミニバンのデリカ D:5。これこそビッグな商談(単なる取材)を終えた筆者にふさわしい。
そして、2列目のシートに腰を落ち着けた筆者のすぐ目の前には、薄型10.1インチのモニターが2つ並んでいた。天井にはさらに大きい13.3インチのフリップダウンモニター。センターコンソールにはフルフラットの9インチ最新カーナビが見える。まるで旅客機のようなラグジュアリー空間だ。これなら東京の自宅まで片道200km、3時間の移動も一瞬のうちに楽しく過ぎ去ってしまうに違いない。
満足気にシートに身を預ける筆者。その瞬間、ミラー越しに映った運転席の彼の瞳の奥が怪しく光った気がした。「日沼さん、締め切りができました」。おごそかに切り出す彼。「締め切りができた」とはどういうことだろう。締め切りは守るか、破るものであって、できるものではないはずだ。そして、どちらかというと筆者は破りたい方だ。
「パイオニアの方もみえてます」。突然隣から名刺が差し出された。思わず反射的に名刺交換してしまう。そういえば、目の前のモニターにはカロッツェリアのロゴが入っている。パイオニアといえばカロッツェリア、カロッツェリアといえばパイオニアだ。カーナビメーカーの人がなぜ長野まで……。頭の処理が追いついていないところへ「カメラマンも来てます」とたたみ掛けてくる。
気付けば助手席にも、後席にも人がいた。8人乗りのクルマに6人も乗っている。ここは日が落ちるのが早い山あいだ。車内は薄暗くて分からなかったが、いつの間にか囲まれていたようだ。「日沼さん。できました。締め切りが」。なぜか倒置法だ。周囲の視線は筆者に集中している。ゆっくりと走り出したクルマの中、筆者にはノートPCをバッグから取り出す以外の選択肢はなかった。
信頼あるナビ性能に、ネット使い放題の機能がプラス
センターコンソールに見えていた9インチの画面は、パイオニア・カロッツェリアのサイバーナビ「AVIC-CQ911-DC」。2020年10月に発売したばかりの最新型ハイエンドカーナビだ。
まず目を引くのはフラットなデザイン。ハードキーはすべてタッチ式で凹凸がなく、周囲の内装に溶け込むような一体感を演出している。もちろん画面自体もタッチディスプレイで、地図をスクロールさせるときのスワイプ操作にもきびきびと反応してくれる。専用リモコンの「スマートコマンダー」が付属しているので、画面に手を伸ばさずに確実に操作することもできるし、後席からも利用可能だ。
HD解像度(1,280×720ピクセル)の高精細ディスプレイは、地名やスポット名のほか、駐車場や店舗、ガソリンスタンドの施設ロゴマークなど、情報量がどんどん増えている多機能カーナビのポテンシャルを最大限に引き出してくれる。サイバーナビの長い歴史の中で培われてきた、分かりやすい地図表示、交差点や分岐がひと目で判断しやすいイラスト表示など、基本的なナビ性能の高さについてはもはや言うまでもないだろう。
複雑なJCTの分岐の表示も、リアルな拡大表示でとても分かりやすく安心してドライブができる
そんな新しいサイバーナビのもっとも大きな進化点であり、注目ポイントと言えるのがオンライン機能。付属の「ネットワークスティック」を介してインターネットに接続することで、サイバーナビがWi-Fiスポットになる「アクセスポイントモード」を搭載したことだ。この機能によって、パソコンやスマートフォンなどを無線接続してインターネットにアクセスできる。
しかもこの機能、サイバーナビが起動している限りは、容量制限なしに好きなだけ使うことができる。車内向けに最適化されたインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」に対応することにより、NTTドコモのデータ通信をWi-Fiを用いて利用できる。ひとたびクルマのキーをひねれば(最近はボタンが多いけれども)、車内でネットし放題になるというわけだ。
さらに付け加えるとこの「AVIC-CQ911-DC」モデルを購入すると、1年間は通信料金が発生しない無償使用権が付いてくる。2年目以降は下表にある通り、365日間1万2000円で使い放題の「1年プラン」、30日間1500円で使い放題の「1か月プラン」、1日24時間500円ぽっきりで使い放題の「1日プラン」から選べるようになっている。まさに使い放題の極致!
これまでだと車内にネット環境がそもそもなかったり、スマートフォンのテザリング機能を使う場合でも容量制限が気になったりして、控え目に通信せざるをえなかったが、この新しいサイバーナビがあれば、車内では不可能だったあんなことやこんなことも、移動しながら遠慮なくできちゃうではないか! 動画も見たいしオンライン対戦ゲームもしたい。あ、もちろん仕事でも活用できるはずだ。運転手の目が怖い。
想像以上にフツーに仕事に使えるWi-Fi機能
そういうわけで、さっそくノートPCでサイバーナビのアクセスポイントにWi-Fi接続。メールチェックとWebブラウジングをしてみると、当たり前だけれど、フツーに使える。画像の読み込みにもたつきを感じることもないので、十分な通信速度が出ているのだろう。最近はよく仕事で使うSlackなどのチャットサービスも問題なし。
でも、通信量の多い動画によるオンライン会議はどうだろうか。在宅勤務中のCar Watch編集長とミーティングする必要があったので、Google Meetでつないでみる。と、思った以上に映像のクオリティは高い。動きは滑らかだし、画質も音質も十分だ。車内で通信している限りWi-Fi電波が不安定になることもない。
別件で書きかけだったテキスト原稿を仕上げ、関連する写真素材(数MB)をメール添付して編集部に入稿する。こういった普段と同じような業務パターンなら、車内でもオフィスや自宅とまったく変わらない感覚でこなせる。「車内が社内になる!」なんていうダジャレが思い浮かんだが、黙っていた。ミラー越しの目つきが鋭さを増している。
クラウドストレージへのファイルのアップロード、同期も快適そのものだ。ドコモのネットワークを利用しているということで、LTEのカバーエリアが広いおかげもあり、走行中であってもほとんど途切れることなく使い続けられるのもありがたい。
移動中に通過した中央自動車道の双葉JCTから伸びる中部横断自動車道。この先の下部温泉早川IC~南部IC間は2021年夏頃開通が予定されており、中央自動車道~新東名自動車道がつながる形になる。なぜこんな新規道路開通情報のお知らせを挟んだかというと、サイバーナビがネットにつながっているという事はつまり地図情報の更新もオンライン上で実施できるという事。
別途PCを準備してソフトをダウンロードしたり、SDカードに地図データを落としてナビに読み込ませて……という手間もなし。「地図データを更新しますか?」「はい」で自動でダウンロード、地図のアップデートが完了だ。オンライン化されたことで、お手軽かつタイムリーに最新の地図情報が反映されて、より最適なルート案内でタイムロスなく目的地へのドライブが楽しめる点が素晴らしい。
YouTubeと“自宅のテレビ”が見られる2つのエンタメ機能
実のところ、現時点で運転席の彼から要求されたこの原稿は、ご覧の通り、まだ半分ほどしか書き上がっていない。締め切りがいつなのか怖くて聞けないが、ここまで急かされているのだ、おそらく自宅に到着するまでに、ということなのだろう。
しかしながら今回のサイバーナビ、アクセスポイントモードの他にもかなり強力なエンタメ機能も搭載しているとのことなので、それも試さないわけにはいかない。なにしろ片道3時間しかないのだ。移動時間のすべてを原稿執筆に費やしてしまうのはもったいないではないか。
で、その強力なエンタメ機能が何なのかというと、1つ目が「ストリーミングビデオ」。サイバーナビのホームメニューから選ぶと、画面に表示されるのはなんとYouTubeだ。要するに、YouTubeの動画を心ゆくまでサイバーナビの大画面で楽しめるということ。
画面上のUIはパソコンやタブレットで見たときのYouTubeとほぼ同じで、全画面表示もできれば関連動画も一覧されるし、好みの動画を次々に見ていくこともできる。画質はサイバーナビの画面解像度に合わせて最大720pにすると、きめ細かな画質でまったく不満はない。おまけにバックグラウンド再生にも対応しているので、ナビ画面に戻しても音声が聴こえるのもポイントだ。ラジオ的にYouTubeを使い、ノリノリでドライブすることも可能なのである。
でもって、もう1つのエンタメ機能「レコーダーアクセス」はさらにインパクトが大きい。どういうものかをざっくり説明すると「家のレコーダーに録画したテレビ番組を車内で見られるもの」である。こんな簡単にひと言で説明できてしまうのが残念に感じるくらいすごい機能なのだが、とにかく、録画しても忙しくて見られずに自宅のレコーダーに溜まり続けているドラマとか深夜番組とかを、車内でイッキ見できてしまうのだ。
また、録画番組に止まらず、「自宅がある地域」で現在放送中のテレビ番組を見ることも可能になっている。ここでキモになるのは「現在走行している地域」ではないことだ。そもそもサイバーナビはフルセグチューナーを搭載しているので、今いる地域で放送中のテレビ番組は当然見ることができる。なので、今回で言えば長野の放送がフルセグで受信できて、自宅がある東京エリアのチャンネルもレコーダーアクセス経由で見ることができる、というわけ。よりどりみどりの極致!
自宅エリアで放送中のテレビ番組も、遠く離れた地から視聴できる
メリットはもう1つある。たとえばフルセグでテレビ番組を見ようと思っても、フルセグの電波は周囲の環境に左右されやすいこともあって、映像が途切れがちだったり、まったく映らなかったり、というのはよくある話。でも、レコーダーアクセスを利用する場合は、フルセグの電波が受信できる場所にいるかどうかは関係ない。そこがLTEデータ通信の届くエリアである限り、インターネットを介して視聴できるのだ。
対応しているBlu-rayレコーダーを所有し、それらが自宅でインターネットに接続していることが前提となるものの、主要メーカーには軒並み対応。さらにはアイ・オー・データ機器やバッファローのNAS(ネットワークストレージ)、NTTのひかりTVなどにも対応と、なかなか幅広い。
YouTubeが見られるストリーミングビデオも、テレビの放送や録画番組がリモート視聴できるレコーダーアクセスも、従来であれば、もし機能として存在していたとしても通信料金がネックになって実用にならなかったはず。でも「docomo in Car Connect」が対応したことで、通信量を気にせず動画コンテンツをガンガン再生できるようになった。いくらでも、好きなだけ、通信しまくってよし、という安心感というか開放感。これは今までに味わったことのない感覚かも……。
リアモニターとの連携で使い方がもっと広がる
とはいえ、サイバーナビがアクセスポイント機能を搭載しているので、特にストリーミングビデオの機能については、手元にあるパソコンやスマートフォンなどからYouTubeにアクセスして視聴すればいいのでは?と思う人もいるだろう。確かに、そういう考え方もある。
が、今回のようなビジネスマン風の謎の社会人集団6人ならともかく、小さい子供を含む家族でドライブに出かけるようなシチュエーションだとそういうわけにもいかない。子供に自分のスマートフォンを渡して見てもらう、というのは筆者としてはできれば避けたいし、なにより小さい画面では楽しくない。みんな一緒に見られないのもさみしい。
そこで活躍するのが、さきほど筆者が乗車したときに目の前に並んでいた画面、リアエンタテインメントだ。サイバーナビ「AVIC-CQ911-DC」は、運転席や助手席のヘッドレスト部に装着可能な後席向けのモニター「TVM-PW1000T」や、天井に設置できるフリップダウンモニターの「TVM-FW1300-B」とHDMI接続できる仕組みになっている(複数台のリアモニターと接続するときは別売のHDMI分配ユニット「CD-HMD1」が必要)。
そのうえで、カーナビ本体の画⾯で表⽰しているものと同じ内容をリアモニターに映し出すこともできるし、例えば家族でお出かけする際は、パパは運転席で地図を⾒て、後部席では⼦供たちがフルセグTVやDVD、また市販されているストリーミングメディアプレーヤーなどでアニメや映画のオンデマンド配信を見ながら、目的地まで飽きる事なく移動OK!なんて使い方もできるので有難い限り。また、リアモニター自体にHDMI⼊⼒端⼦があるので、スマートフォンと直接ケーブルでつないで動画コンテンツやアプリを⼤画⾯で楽しむ方法も可能だ。
加えて、再生する動画・音楽コンテンツに一段と磨きをかけるハイクオリティなオーディオ性能をもっているのもサイバーナビの特徴。SDカード、USBストレージに保存しているハイレゾ音源をネイティブ再生できるほか、CDやMP3などの圧縮音源はもちろん、ストリーミング動画・音楽などもハイレゾ相当の音質で再生する「マスターサウンドリバイブ」という機能も備えている。
デリカ D:5をはじめ、防音・静粛性能の高い最近の車両だと、高速走行しても騒音が少なく、その分音質の優劣にも気付きやすくなってくる。音域ごとに細かく強弱を調整できる「イコライザー」や、リスニングポジションに合わせて最適な聴こえ方になるようカスタマイズできる「タイムアライメント」といった、車内に合わせて最適な音響環境を作れる調整機能も備わっている。
カーナビの枠を超えた、感動するエンタメ性能のサイバーナビ
自分1人でドライブしているときは、きっとカーナビの地図を見るか、せいぜい音楽を流すくらいで、もしかすると積極的に通信したくなるような場面はあまりないかもしれない。でも、他の人に運転してもらって移動するようなときは、できるだけ動画を見ないように気を付けていても、わりとあっという間に“ギガが減る”ことになってしまいがちだ。
もしサイバーナビ「AVIC-CQ911-DC」があれば、そんなシチュエーションでもWebブラウジングやクラウドストレージの同期、ネット動画の再生などなど、どれも遠慮することなく使いまくれる。
特にインターネットを介して、カーナビ本体の画面でYouTubeを見る事ができるストリーミングビデオ機能は、もはやカーナビの域を超えているのでは?と感動するレベル。家族でお出かけをする時に大活躍することは間違いない。
また、筆者個人的には、自宅テレビのチャンネル権を子供に支配されている者として、例えばこっそりと1人でドライブへ出かけて、どこかの駐車場でコーヒーでも飲みながら、レコーダーアクセス機能を使ってまったりと録画番組を消化をしながらくつろぐのもいいよなぁ……と思ってしまったりも。
この日、新しいサイバーナビの圧巻レベルのさまざまな新機能を体感し、色々とあんなことこんなことを妄想をしていたら、あっという間に自宅に到着。結局、車内で作業予定だった原稿は後回しである。Wi-Fi機能も、エンタメ機能も便利すぎるサイバーナビ「AVIC-CQ911-DC」を、仕事だけで使うのはやっぱりもったいないわけで。