【前回のあらすじ】
長野で取材を終えた筆者の前に現れたのは、Car Watch編集部スタッフが運転する黒塗りのクルマ。東京まで送り届けるという甘い誘いに乗ってみたら、ネット使い放題のオンライン機能を備えたパイオニアの新型サイバーナビ「AVIC-CQ911-DC」で仕事をすることに。クルマで移動しながら快適なネット回線を活用しつつ仕事を進めるも、サイバーナビにYouTubeや録画番組が見放題のエンタメ機能もあることに気づき、締め切りのことはいったん忘れ、動画を満喫しながら帰宅したのだった。
都内で取材を終えた筆者に、電話がかかってきた。「これから迎えにゆきます」というCar Watch編集部スタッフの電話だ。なんだか映画のタイトルみたいな言い方でマイルドな雰囲気を出しているつもりかもしれないが、長野での1件もあり、嫌な予感しかしなかった筆者は断固拒否するつもりだった。どうせまたクルマに閉じ込められ、新たな仕事と原稿の締め切りが押しつけられるに違いない。
念のため、他に誰がいるのかを聞けば「パイオニアの方がいらっしゃってます」と言う。長野のときと同じである。
だとすれば、きっとカメラマンもいるのだろう。「カメラマンもいます」。間違いない。閉じ込められる。だが、「今回はGAME Watch担当の若手女性スタッフと一緒にゲームをしてもらおうかと」と一風変わった内容だ。筆者のようなフリーランスにとって、仕事をいただけるのは大変ありがたいことだ。精一杯クルマに閉じ込められて仕事をさせていただこうではないか!
高速データ通信量の上限なしで年間1万2000円
迎えに現れたのは黒塗りのホンダ「N-BOX」。その車内に用意されていたのは「クルマの中でネット使い放題」になるとして、大きな話題となっているパイオニア カロッツェリアの車載用Wi-Fiルーター「DCT-WR100D」だ。
今回の目的は、簡単に言えばその車載用Wi-Fiルーターが「実際にどれだけ使えるのかを試してみる」というもの。正直なところ、安いなりの低品質な回線だったりすると、いくら使い放題だとしても魅力は薄くなってしまうだろう。価格だけでなく「実用的な品質なのか」がとても重要だ。
そんなわけで、改めて「DCT-WR100D」についてざっくりと紹介すると、これは車内でインターネットを利用できるようにするWi-Fiアクセスポイントだ。パソコンやスマートフォン、ゲーム機など、Wi-Fiに対応している機器を「DCT-WR100D」に接続するだけで、インターネット上のコンテンツを利用できるようになる。メールしたり、動画を見たり、LINEでメッセージ交換したり、オンラインゲームをしたりと、なんでもOKだ。
「DCT-WR100D」は、車内向けに最適化されたインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」に対応していて、NTTドコモの高速なLTE回線を利用して通信する。高速データ通信の利用上限は設定されておらず、定額の使い放題で通信速度制限などもかからない。
契約の方法は、「DCT-WR100D」本体を購入した後、スマホなどで本体背面にある2次元バーコードを読み取り申し込み専用サイトに接続し、そこで利用プランを選択して使用開始の手続きをするだけ。一連の手続きはすべてオンラインで完結するので、回線契約のために店舗に行く必要はなく、すぐに使い始められるのもありがたい。
プランは下記の通り3種類。1年間1万2000円(税別)で使い放題の「365日プラン」と、1カ月1500円(税別)で使い放題の「30日プラン」、そして24時間500円(税別)で使い放題の「1日プラン」だ。このうち「365日プラン」を2021年1月31日までに申し込んだ場合は、dポイント2000ポイントがもらえるキャンペーンも実施しているので、実質年間1万円で使えることになる。税込にしても、月あたり1000円を切る格安っぷり。
ただし注意しておきたいのは、「DCT-WR100D」本体の価格が2万5000円(税別)であること。これも含めると、365日プランで契約した場合は月割りで4000円程度、2年間だと月2000円程度かかる計算になる。それでもデータ通信量の制限がない「使い放題」であることを考えれば格安と言えるのではないだろうか。あとはどれだけ「実用的か」が鍵になってきそうだ。
動画再生やオンライン対戦ゲームは快適か?
さっそく若手女性スタッフのKさんと一緒にクルマに乗り込む。携帯型ゲーム機で対戦するぞ! と、はやる気持ちを抑え、まずは本体のセッティングとWi-Fi設定から。専用の電源ケーブルで「DCT-WR100D」をクルマのシガーソケットに接続し、エンジンをかけて電源を入れる。あとは自宅のネットワークに接続するときと同じように、「DCT-WR100D」のアクセスポイント名を選び、パスワードを入力すれば即座につながった。
試しにスマートフォンでWebサイトやYouTubeにアクセスしてみると、ページや画像がサクサク読み込まれ、動画の再生もフルHDの高画質で安定している。停車中も、走行中でも、スムーズさは特に変わらない。スマートフォン2台で同時に動画を再生してみたが、どれも画質劣化のない滑らかな映像が見られた。
この状態でさらに別の端末を使ってWebブラウジングしてみると、画像の読み込みもほとんど問題なく、いつもと同じようにインターネットが楽しめる。
では、ゲームのオンラインプレイはどうだろう。Kさんのゲーム機と筆者のゲーム機を使って、リアルタイム性があまり求められないオンライン対戦と、リアルタイム性が求められるオンラインプレイの両方を試してみた。
結果としては、どちらもまったく問題なし。互いのモンスターを出し合って戦わせるゲームも、オンラインの35人が同時に対戦するアクションゲームも、自宅の光回線を介してプレイするのと違いは感じられなかった。楽しい。すごく楽しい。
しかし、クルマは電波の届きにくそうな長いトンネルに入った。意地の悪い筆者は、この状態でスマートフォン2台とタブレットで動画を同時再生しつつ、Kさんと対戦プレイを続行。巨大化したモンスターが必殺技を繰り出し、抜群の効果を発揮する!
そんな中「DCT-WR100D」も抜群の通信環境を維持してくれた。最初のデータ読み込みに若干時間がかかった端末もあったが、動画の再生がいったん始まれば途切れることはなく、対戦プレイが中断されることもなかった。
もちろん、だからといってどんなトンネルでも問題なく通信できるというわけではないだろう。人の住んでいない山間部のトンネルなどでは通信できない可能性もあるけれど、日本の人口カバー率約100%を誇るNTTドコモのLTE回線が利用できるのは大きい、と改めて感じた次第だ。
ビジネスシーンの大容量ファイル共有はいかに
車内でずっとゲームや動画を楽しんでいたいところだけれど、「DCT-WR100D」は「クルマのなかでもたくさん仕事したい」という人にとっても気になるアイテムだろう。移動中に情報収集したいときや、他の人と大容量データをやりとりしたいとき「DCT-WR100D」はどれだけ活躍するだろうか。
試してみたところ、パソコンでWebブラウジングするのは、当然ながら問題なし。さらにデータの受け渡しを想定して、クラウドストレージに500MB以上の写真データをアップロードしてみたところ、5分ほどで完了してしまった。だいたい1分間に100MBのペースで送信できたことになるから、なかなか高速だ。実用性は十分に高いというか、これならフツーに仕事がはかどりそう。
ちなみに「DCT-WR100D」を使ってインターネットに同時にアクセスできるのは、最大5台まで。乗車定員4名のN-BOXのようなクルマであれば、ドライバー以外の乗車している人全員(3人)それぞれが自分のスマートフォンなどで通信しても余裕がある。追加でカーナビなどに接続することになったとしても4台、さらに1人がPCも取り出して5台となっても間に合うわけだ。
単純に帯域を分け合うことになるので、同時に通信する台数が多いほど速度は低下すると考えられる。けれど、今回試したように同時に3台で動画再生しても安定して視聴でき、さらにゲーム機でオンライン対戦をしても問題はなかった。そもそも、そんな風に全員が常に高い負荷で通信し続けるようなタイミングはまれだろうし、実使用シーンでストレスに感じるような低速通信になることはまずなさそうだ。
走行中は使用問題なし。停車中の際の一部制限条件について注意しよう
すっかり仕事であることを忘れ、駐車場の車内でKさんとのゲーム対戦に熱中していた筆者。ところが、ある程度時間が経過した後、あれ……ネットがつながらなくなった……? どうした? と焦ったのは勘違いで、これは「DCT-WR100D」の仕様だ。「DCT-WR100D」でインターネットに接続できるのは、基本的には走行中と一部の停車中のみ。
もっと細かく説明すると、通信できるのは完全に「走行中のみ」というわけではない。クルマのエンジンをオンにして「DCT-WR100D」に通電してからの30分間は停車中も利用できる。
もし30分が過ぎて通信できなくなったとしても、再び走行を開始すれば本体にあるランプが通信可能なことを示す青色に変わり、そこから停車した後も60分間は通信が可能になる。ちなみに取材当日に何度か試してみたところ、走り始めると青ランプが直ぐに点灯し、またWi-Fi接続をすることができた。
つまり、走行中と、その前後の走行していない計90分間は通信可能という事で、実際に使用する際には十分問題なく使えそうだ。「DCT-WR100D」にはクルマが実際に走行していることを高精度に検知するセンサーが内蔵されており、クルマに最適化されたWi-Fi通信サービスを提供するアイテムというのがこの商品の最大のセールスポイント。
本体の青ランプが点灯すると通信が可能になったことを意味する。走行状態を認識するために本体が進行方向に対してできるだけ水平または垂直(20°以内の角度)に設置。電源はシガーソケットに挿し込むだけでOK
いやーそれにしても、「DCT-WR100D」の本体代金2万5000円という事を考えても、使用料が月額約1,000円というのは、やっぱり格安というほかない。メーカーの方にはちょっと申し訳なく思ってしまうが、車内でのエンタメに、仕事に、バリバリ活用していきたいところである。