このところ、各社のスタッドレスタイヤがモデルチェンジするたびに「まだそんなに伸びしろがあったのか!!」と驚かされることが多い。横浜ゴムのスタッドレスタイヤにしても、前作の「iceGUARD 5 PLUS(アイスガード ファイブ プラス)」だってかなりのものだったと思う。ところがそれから約2年、後継モデルとなる「iceGUARD 6(アイスガード シックス)」が打ち出したキャッチフレーズは、なんと「冬の怪物」ときたもんだ。

ヨコハマ・スタッドレスタイヤ最高傑作の「iceGUARD 6」

新しければ性能もそれだけ高くなっていることは容易に想像できるが、「怪物」というほどだから相当な自信なのだろう。「怪物」とはヨコハマスタッドレスタイヤ史上で最高性能であることを意味するようだが、それがハンパなレベルではないことがうかがえる。

はたしてその実力はどんなものか? 今回は異色の組み合わせ。都会育ちのITジャーナリストの笠原一輝氏と、雪国育ちのモータージャーナリストの岡本幸一郎で、ひとあしはやく北海道で試してきた。

実は笠原氏、ITジャーナリストでありながら、根っからのモータースポーツ観戦好きで、Car Watchでも記事を執筆するほど。しかしながら、氷上雪上でスタッドレスタイヤを試すというのは、今回が生まれて初めてなんだとか。

同世代の笠原氏、あの映画が流行った頃に、スキーとか行かなかったの? とか思うのだが、そんな笠原氏が、最新のスタッドレスタイヤを体験してどう感じるのか、それはそれで興味深いところだ。今回はアイスガード 5 プラスとアイスガード 6をさまざまなステージで乗り比べてもらい、その率直な印象を語ってもらった。

怪物と呼ぶほど進化したアイスガード 6の実力を、モータージャーナリストの私、岡本幸一郎(右)となんと雪道初体験のITジャーナリスト 笠原一輝氏(左)で体験します

初体験でも驚く「怪物」の実力!!

アイスガード 6はどのあたりが「怪物」なのだろうか? まず情報を整理すると、詳細は関連記事でもお伝えしているが、ポイントがいくつかある。まず、前作のアイスガード 5 プラスが掲げていた、「氷に効く」、「永く効く」、「燃費に効く」のコンセプトを受け継ぎつつ進化させた上で、アイスガード 6では「ウェットに効く」が加わり、さらに静粛性も引き上げられているという。中でも、「氷に効く」では、氷上ブレーキ性能が実に15%も向上しているというからたいしたものだ。

従来モデルのアイスガード 5 プラスと比べて、アイスガード 6は氷上性能で15%もアップした

まずは、もっとも進化したアイスブレーキ性能を試したところ、「すごくちゃんと止まるのでびっくりした!」と笠原氏。最初にアイスガード 5 プラスに乗ったところ、「ABSが作動しながらズズズズズズとなって、なかなか止まらなかった」とのこと。ところが同じようにアイスガード 6で走ると、「ズズズ、くらいで止まってしまったのでビックリした!」とうれしそう。そして、「その場でクルマから降りてみたら、路面はツルツル。人間でも滑って転んでしまいそうな状況なのに、クルマはあんなに止まれてしまうなんてスゴイ!」と、いたく感銘を受けた様子だった。

筆者も乗ってみたのだが、たしかに減速Gの感覚が、アイスガード 5 プラスよりもアイスガード 6のほうが、15%どころかもっと高い感じがした。ABSが作動する間隔も短く、緻密に制御される感じで、滑る中でもより路面を掴んでいる感覚がある。これなら短く止まれるわけだ。

分厚く凍った氷盤路でアイスブレーキ性能をテスト、従来モデルのアイスガード 5 プラスと新型アイスガード 6で比較した

アイスガード 5 プラスでもテスト。従来モデルでも十分に制動はしてくれるのだが……

アイスガード 6でテストするとはっきりとその違いを体感できる

続いて、アイスガード 5 プラスとアイスガード 6を履かせた同じ仕様のプリウスで、ハンドリングコースを周回して乗り比べてみたところ、やはり違いは顕著だった。路面は基本的に圧雪で、一部凍結していたのだが、笠原氏は興奮気味に「走りやすい!」を連発。「こんなに滑りやすい路面とは思えないほど、よく曲がるし、よく止まる」と驚きを隠せない様子だった。

笠原氏を横に乗せて、岡本がその「走りやすい」と感じた部分を具体的に解説しながら走行した。アイスガード 5 プラスもよくできたタイヤで、筆者としてはまだまだ十分な実力はあると思うのだが、アイスガード 6に乗り替えると、やはりその進化のほどは小さくない。

アイスガード 5 プラスに比べると、アイスガード 6のほうが走り始めから全体的にグリップ感が高くて、停車状態から短時間でスピードを乗せることができるし、ステアリングを切ったときの応答遅れも圧倒的に小さい。そして、コーナーを曲がるときに舵角が小さく、コントロール性が高いので旋回中の修正舵もずっと少なくてすんでいる。また、トラクションが高いので、曲がりながらも前へ前へと進んでいく。コーナリングスピードも1割以上ペースが速い印象だ。

さらに、わざと派手にVSCが作動するような走り方を試すと、プリウスの場合はリアを流してステアリングを切っている方向に曲げようと制御するのだが、そのときにもアイスガード 6のほうがフロントの舵がよく利く。そんなわけで、どこを走ってもアイスガード 6のほうが走りやすく感じるわけだ。

そんな感じで岡本の印象を伝えたところ、実は笠原氏、直前の空き時間で、同じ場所を日下部保雄氏のドライブで同乗し、アイスガード 6の印象を聞いたらしいのだが、「すごい! おふたりとも、まったく同じことを言っていました。やっぱりそういうタイヤなんですね!」とテンション高めだった。

岡本が何周か走ったあとで、再び笠原氏にドライバーチェンジして、岡本は助手席へ。

すっかり雪上に慣れてきた笠原氏は、けっこうなペースでコーナーへ。僕らのように滑る怖さを知っている人間のほうが、落とすべきところは落とすんだけど、スタッドレス初心者の笠原氏のほうが、怖いもの知らずでイケイケだ。

おっと笠原さん! そこは凍っているからもっと落とさないと!……とビビった状況もあったけど、滑りながらもなんとか曲がり切ってしまった。アイスガード 6、おそるべし! とはいえこれはクローズドされ、安全が確保されたテストコースでの話、読者のみなさんは、くれぐれも安全第一でお願いします。

テストコース内の手入れされた雪上周回路で比較試乗。前日気温が高かったため、雪の下には氷が隠れていて、実は悪条件であったのだが……

アイスガード 5 プラスでもしっかりと走ることはできる

アイスガード 6に乗り換えると、雪道初心者の笠原氏であってもしっかりとその性能を感じとれるようで、より自信を持って走っていた

FRやミニバンで試してみたらどうなのか?

さらに、アイスガード 6を装着したメルセデス・ベンツCクラスとヴェルファイアを駆り、圧雪路でパイロンスラロームを試す。これまで感じたよさが、後輪駆動車や重量級ミニバンではどんなものかを体感する。

Cクラスは、FRゆえかターンインの軽やかさも印象的な走り味。トラクションコントロールを解除しても流れ方が緩やかで、安定感も高く、いたって走りやすい。一般的には苦手とされる後輪駆動でも滑りやすい路面を不安なく走れてしまう。

雪道は苦手とされるFR車にアイスガード 6を履かせて試乗

広いテストコースということでしっかりとロールするぐらいペースを上げて走ってみるものの、雪道初心者の笠原氏でも破綻することなく走りきれてしまう

圧雪路はFRであってもけっこういいペースで走れてしまう

続いてヴェルファイア。背高ミニバンは重心が高く、コーナリング時のロールモーメントが大きいので、剛性がたりないと旋回外輪に荷重が集中しがち。すると荷重が過大になりすぎてアンダーステアが出てしまう。ところがアイスガード 6はあまりそうなることもなく、腰砕け感がない。驚いたことに、重心の低い乗用車とあまり変わらない感覚で舵が利いて、素早くステアリングを切り返してもしっかりついてくる。アイスガード 6はちゃんと剛性が確保されていることの表れだ。

Lサイズのミニバン、ヴェルファイアでもテスト

ミニバン専用タイヤではないものの、背の高いミニバンのロールにもしっかりと踏ん張る

ちょっと攻めてみても腰砕け感がなく、乗用車感覚で走ることができた

同じく笠原氏と交互に乗って、そのよさを体感してもらった。いきなり超ハイレベルなスタッドレスタイヤを知ってしまった笠原氏。後編では、その怪物ぶりの裏側にある開発ストーリーを紹介していくので、ぜひそちらもご覧いただきたい。

ライフも静粛性もウェットもさらに強くなったアイスガード 6

このように素晴らしいパフォーマンスを披露したアイスガード 6だが、都会育ちのITジャーナリストにとっても、雪国育ちのモータージャーナリストにとっても、その怪物ぶりは相当なものだった。

すべてにおいて進化をとげた中でも、とりわけ凍った路面でしっかり止まることができるというのは、絶大な安心感につながる。一般的には従来商品に対して10%もよくなっていれば十分に褒められるところ、アイスガード 6はアイスガード 5 プラスに対して15%も向上しているというのは相当にすごいことを、あらためて強調しておきたい。15%というのはなかなかインパクトのある数字だ。

そして、しなやかさを保つ特別な素材の採用により、その性能の恩恵をより長い期間にわたって享受できるのもアイスガード 6の特徴だ。

摩耗係数の経時劣化イメージ。オレンジオイルSの採用によってしなやかさを持続し、約4年後も高い性能を維持するという

また、一般的には不得意というのが常識だったスタッドレスタイヤのウェット性能の向上に取り組み、アイスガード 5 プラスに比べて5%の制動距離の短縮を実現したというのもたいしたものだ。

スタッドレスタイヤが苦手とするウェットでの制動距離を5%短縮

さらには、これまたスタッドレスタイヤは苦手というのが固定概念である静粛性についても、アイスガード 5 プラス比でパターンノイズの騒音エネルギーを33%低減することに成功したというから驚きだ。

パターンノイズの騒音エネルギーを従来モデルから33%低減した

スタッドレスタイヤというのは、極端にいうと命を預けるものでもあり、冬場のカーライフをともにするパートナーでもあるのだから、どんな商品を選ぶかがいかに重要であるかはいうまでもない。

一方で、近年は都心でも大雪に見舞われることがあり、こうした非降雪地域でもスタッドレスタイヤを使うユーザーが増えてきているという。そういった、たまにしか雪の上を走らないユーザーにとっては、ドライ路面やウェット路面での性能や静粛性、そしてライフ性能についても気になるところだろう。氷上や雪上の基本性能が高いうえに、それが長持ちして、雨の日も安心して乗れて、静粛性も高いアイスガード 6は、そんなユーザーにとっても言うことなしではないだろうか。

後編はこちら

iceGUARD 6 サイズ一覧

■印は、パターンNo.IG60Aで、パターンが若干異なります。 タイヤサイズにある○印内の数字は、2017年発売予定月です。 ☆印はエクストラロードタイヤとなります。 タイヤ重量については目安となります。予めご了承ください。 溝深さは、スリップサインがある主溝の新品時の深さで、測り方によって異なる場合もございます。 上記以外のサイズについては、販売店にお問合せください