レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】ウェット性能も強化した“最高傑作”、横浜ゴム「アイスガード 6」(スノー編)

横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ「アイスガード 6」

 横浜ゴムが今シーズンに新たに投入するスタッドレスタイヤ「iceGUARD 6(アイスガード シックス)」(製品名:アイスガード iG60[アイジー ロクジュウ]、以下アイスガード 6)は、乗用車用に設計されたものだ。

 135/80 R13 70Q~265/35 R19 94Qの全95サイズ(順次サイズ追加予定)をラインアップすることからも分かるように、横浜ゴムにとっては主力商品となるスタッドレスタイヤである。2017年は横浜ゴムにとって100周年を迎える記念の年ということもあり、その意気込みはかなり大きい。

ウェット性能も強化した“最高傑作”の新スタッドレスタイヤ

 横浜ゴム自身が“最高傑作”だとうたうアイスガード 6は、スタッドレスタイヤの柱となる氷上性能はもちろん、効きが長持ちする耐久性能や燃費性能、さらにはウエット性能に対しても気を遣った設計が行なわれたという。近年は降雪地であっても雪が少なくなる傾向があり、さらに除雪が行き届いた環境があるための処置だというが、これは非降雪地でたまにしか雪道を走らないというユーザーにとっても嬉しい性能となるだろう。

タイヤサイズによって中央部のトレッドパターンが異なる。左はワイドタイプのパターンでパターンNo.IG60A。右は標準タイプのパターンでパターンNo.IG60

 アイスガード 6が採用するトレッドパターンは、非対称となっている。イン側には太めのパワーコンタクトリブと呼ばれるものを採用。ハの字型のサイプを採用したそれは、多方向に対してエッジ効果を発揮することで、凍結路面やウエット路面における接地性を確保している。一方でアウト側は雪上性能を重視した設計。ライトニンググルーブと呼ばれるジグザグに刻まれた溝が、これまたエッジ効果を発揮。ジグザグの付け根とブロックが交差するトライアングルスポットでは、雪上路面で雪柱せん断力を発揮し、雪上でのトラクションを生み出すそうだ。また、サイプの中身の倒れ込みを防止。雪上路面では氷上よりも速度域が高くなるが、その際に入力が高まったとしても倒れ込まず剛性を引き出すように造られている。

標準タイプとなるIG60パターンのアイスガード 6。右がアウト側
各部の拡大写真。左がイン側、右がアウト側
サイプには倒れ込みを防ぐ工夫がされている

 コンパウンドはプレミアム吸水ゴムと名付けられた新開発のものを採用。新マイクロ吸水バルーンやエボ吸水ホワイトゲルによって氷表面に浮いている水を除水する。また、シリカをできるだけダマにならないように、分散させて配合するかにも気を遣い、シリカ高反応ポリマーを採用することでそれを達成。シリカの含有量も従来に比べて効率的に増やすことに成功したという。また、横浜ゴム独自のオレンジオイルSを混ぜることで、ゴムの経年劣化を抑え、氷上性能をできるだけ持続することも可能とした。これらは横浜ゴムのプレミアムサマータイヤであるアドバン・スポーツの技術が投入されたそうだ。

 結果として効きは4年後でも新品時とそれほど変わらない性能を確保。また、転がり抵抗に対しても従来品に比べて2%低減したほか、ウエット性能についても5%短く止まる性能を確保。これはスタンダードエコタイヤであるECOSと同様の転がり抵抗だというから驚きだ。スタッドレスタイヤであっても雪や氷以外の性能を引き上げたことは、多くの人々に恩恵を与えるだろう。

横浜ゴムの最新タイヤテストセンターTTCHで試乗

横浜ゴムが旭川市に開設した最新のタイヤテストセンターTTCHでアイスガード 6に試乗

 そのアイスガード 6の性能を試すために、北海道旭川市にある新たなテストコース「北海道タイヤテストセンター(Tire Test Center of Hokkaido=TTCH)」に訪れた。ここは元競馬場という立地を活かし、約1kmのストレートを備えていることが特徴的。以前のテストコースに比べて高速のテストが行なえるという環境がある。

 そこで旧製品であるアイスガード 5プラスと比較しながら走ってみる。まずは5プラスでコースを周回してみると、縦方向のトラクションがそれほど感じられず、トラクションコントロールがせわしなく介入してくることが確認できる。また、ステアリングの切りはじめでの応答が薄く、トレッドが倒れ込んでグリップがすぐに抜けることも感じられた。縦横のバランスはそれほど悪くないように思えるが、グリップ感が薄いところにもの足りなさがある。

 アイスガード 6に乗り換えてみると、先ほど感じられたネガが払拭されている印象がある。トラクション方向のグリップは明らかに向上し、トラクションコントロールの介入具合がかなり減っていることが分かる。コーナーに差し掛かっても操舵感がきちんと出ており、ヨー方向の動きが瞬時に立ち上がるところも見所だった。たしかなグリップ向上があることは明らかだった。

 一方で、アイス制動に対しても試してみた。試乗した当時の外気温が+2℃ということもあり、氷がところどころ割れている状況でハッキリとは確認しづらい状況だったが、ABSの介入の少なさや制動力の立ち上がりは旧製品に対して勝っているように感じた。これは後日、スケートリンクでの試乗を改めて行ない別途お届けする予定だが、同様の環境でも確かな差があったことから、進化していることは間違いないだろう。

雪道発進時の連続写真。巻き上げている雪が四角くなっており、雪をしっかり捉えているのが分かる

 このようにアイスやスノー性能をきちんと進化させた上で、それ以外のウエットや転がり抵抗までを向上させたアイスガード6なら、どんな地域で使ったとしても満足できるタイヤと言えるのではないだろうか。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は日産エルグランドとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学