コラム

西村直人の消費税増税について考えてみる

増税額を検討して、納得のいくクルマ選びを

まずは消費税増税について考えてみる

 2014年4月1日から消費税率が引き上げられることを受け、駆け込み需要が伸びているのは御存知のとおり。高額商品であればその分、実質的な値上げ幅が大きくなるだけに年度末に向けた商戦は早くもピークを迎えている。増税にまつわる動きはクルマの購入に際しても同じで、購入に際してかかる消費税率が8%へと3%増税される。

新車販売は増税前の駆け込み需要で販売台数が増加傾向にある。ホンダ「フィット」は新車効果もあり2014年1月の販売台数が2万台を超え、軽自動車のダイハツ「タント」も1万9211台と2万台に迫る勢い。3月末までの納車は、そろそろ厳しい時期にさしかかっている

 クルマが単なる消費財の購入と異なるのは登録(届出)が必要で、ナンバープレートの交付を受けなければ公道を走らせることができないことにある。衣類や食品であれば3月31日までに購入した場合5%が適応されるが、3月中に新車を購入する契約書にサインをしたからといって必ずしも5%が適応されるわけではない。登録(届出)日、もしくは納車日が4月1日以降となった場合には消費税率8%として改めて計算する必要がある。これは自動車購入時にかかる消費税は、新車や中古車の登録日、または納車日の税率が適用されるためだ。ちなみに、今回の増税による購入者が支払うべき総額の差は車両本体価格により当然違うが、150万円前後のコンパクトカークラスで4万2000円程度。これは、ちょっとしたメーカーオプション装備1つ分と肩を並べる額だ。

 一方、クルマの購入時にかかる税金として複数の車体課税がなされているが、こちらも4月1日以降は税率やその解釈が変わる。まず、自動車取得税では税率が引き下げられる(登録車5%→3%、軽自動車3%→2%)とともにエコカー減税の拡充がなされ、自動車重量税においてもエコカー減税拡充が決定。さらに自動車グリーン税制にも特例の拡充が織り込まれた。このようにさまざまな税負担軽減策の上になりたつ新たな車体課税だが楽観視はできない。自動車グリーン税制については少し事情が違っているからだ。

 例えば、低排出車レベル(平成17年排出ガス基準75%低減レベル)で平成27年度燃費基準を達成した車両は、2014年3月31日までの新車登録車であれば登録した翌年度分の自動車税が概ね25%減税されるが、これが4月1日以降では優遇措置がゼロ、つまり消滅してしまう。また、自動車取得税のエコカー減税にしても減免措置の減税率が増えるのは、低排出車レベルで平成27年度燃費基準達成車(50%→60%)と、+10%達成車(75%→80%)のみで、ハイブリッドカーなど+20%達成車の場合はすでに100%減免であるため、減税効果は4月1日以降も同じだ。さらに、自動車取得税のエコカー減税にしても初回車検時の重量税が現行の50%→100%となるものの、車両重量1500kg以下の場合で7500円の減税効果にとどまる。

 結局のところ、4月1日以降のエコカー減税対象車に対する車体課税は“うまみ”としては薄い(それでもありがたいが……)ため、消費税率が8%になることは支払総額の増加を意味することから、各報道機関はこぞって「エコカー減税対象車は3月中に!」と紹介してきたわけだ。

 とはいえ、2月も中盤を迎え、エコカー減税対象車を今から商談して購入するには車種によっては無理がある。駆け込みキャンペーンならぬ販売促進活動を昨年末から行ってきたメーカー/ディーラーでは、人気のハイブリッドモデルを中心に車両の生産が間に合わず、早くも3月末の登録ができないといった車種が増えている。しかし、よくよく考えてみれば、よほどのクルマ好きでない限り、一生のうちに購入できるクルマの数は新車/中古車を問わずに上限があるわけで、登録(届出)が間に合わないからという理由で在庫車を選び、本当に欲しいクルマやグレード、さらにはボディーカラーを逃してしまうのは、購入後の後悔も少なくなく、精神的なマイナス面も大きいのではないか、と心配になってしまう。

 そこで、今からでも減税効果を実感できるカーライフについて少し考えてみたい。ここでは大前提として、欲しいクルマの狙ったグレードを手に入れることを第一条件とし、ボディーカラーやメーカーオプションにしても、ともかく「納車待ち上等!」の信念を曲げず、次なる愛車が4月1日以降に納車されると仮定して話を進めていく。

一生に数度の買い物だからこそ、納得のいくクルマ選びを

 まず肝心のクルマ選びだが、本命の1台が決まっている場合はクールダウンが先決だ。やみくもに契約へと向かわず情報収集を忘れずに行うこと。これにより、マイナーチェンジや特別仕様車の追加など“得する情報”が耳に入ることも……。車両本体価格の値引きについては、駆け込み需要の反動を抑えるため4月1日以降での契約であっても何らかの手を打つメーカーが多いと予測するが、それでも新年度ということもあり値引き額は引き締められる傾向にある。こうした状況は3月末までに契約する場合であっても、グレードやボディーカラー、メーカーオプションの関係からメーカーに在庫がない場合は新規発注となるため、在庫車セール価格にみられる大幅な値引きは期待薄だ。

 こうした時に活用したいのがディーラーオプション。たとえばカーナビゲーションだが、メーカーオプション装備のカーナビに特別なこだわりがないのであれば、市販カーナビやディーラーが用意するモデルから選択してみてはどうか。市販カーナビや、それらをベースにしたディーラーオプションカーナビでは、車種ごとにフィッティングキットが用意されている場合が多く、後付け感もない。カーナビ本来の機能も非常に優秀であるばかりか、モニター増設時の利便性や音楽プレイヤーとの適合性などエンターテイメント機能ではメーカーオプション装備を上回ることもある。加えて、ディーラーによっては利益率が高いことから、ディーラーオプション品の販売に積極的な店舗もあるくらいだ。また、カーナビは毎年5月以降に新型モデルが出る場合が多く、この時期はそうした意味でも値引き幅が大きくなる可能性がある。いずれにしろ高額なカーナビ本体を3月末までに購入すれば、その分、高い減税効果が得られるわけだ。

 カー用品店でも同様の減税効果が得られる。今年は都市部でも積雪が多くスタッドレスタイヤの必要性が高まっているが、今後のためにも3月末までに手に入れておきたい。今シーズンはスタッドレスタイヤの新商品が複数のブランドで導入されたこともあり、市場では相対的に旧製品の販売価格が下がっている。旧製品とはいえ昨シーズンまでは現役であったわけで、スタッドレスタイヤ本来の機能としては未だ一級品。しかも旧製品は在庫が少なく主要サイズから売り切れてしまうため、早めの入手(筆者も1月中旬に旧製品を購入)が肝心だ。このほか、サマータイヤにしてもインチアップなどのカスタマイズやドライブレコーダーの導入を考えているならば、これを機に早期購入を検討してはどうだろうか。

西村直人:NAC

1972年東京生まれ。交通コメンテーター。得意分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためWRカーやF1、さらには2輪界のF1であるMotoGPマシンの試乗をこなしつつ、4&2輪の草レースにも参戦。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)理事、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員