コラム

江戸散歩

人形町。水天宮、元吉原、お富さん……

 GWらしいことをやってみようと思い立って江戸散歩をしてみた。江戸と東京の相関図を元に、水天宮から日本橋まで寄り道をしながら歩く散歩だ。ネタ元は人文社から発行されていた古地図ライブラリー別冊の江戸東京散歩で、江戸の町を散策するように東京を歩けるのが面白い。

 この本は地域ごとにまとまっているので、例えば浅草寺周辺とか王子とか、目黒不動なんていうところもあるが、今回はチャンスが巡ってきた水天宮コースを選んだ。ガイドブックでは日本橋から水天宮だが、行きがかり上その逆走である。

 水天宮は安産の神様としてよく知られており、戌の日に腹帯を求めに多くの妊婦さんが参拝する。犬は多産で安産、それにあやかっての行事だそうだ。

 近くに元吉原の遊郭があったことから、水商売にご利益があるとされているのも頷ける。つまり商売の神様でもあるわけだ。

 さて甘酒横丁で冷たい甘酒を飲み栄養補給。椙森(すぎのもり)神社に向かう。トコトコ休日のビル街を歩くが、江戸の昔を想像することは難しい。元吉原跡近くの人形町交差点そばには「粋な黒塀、見越しの松に~婀娜(アダ)な姿のお富さん~」で有名なお妾さんが囲われていたそうな。江戸時代の話である。

椙森神社。藤原秀郷が平将門への戦勝祈願をした由緒ある神社です。太田道灌が雨乞祈願に京都伏見稲荷の神様を勧請したともあります

 Googleマップを頼りに細い路地を入っていく。突然椙森神社の裏門に出た。「え、こんなとこに!?」。江戸の三森(烏森、柳森、椙森)神社として信仰を集めていたと聞いていたので荘厳な神社を想像していたが、コジンマリとしてさっぱりしていた。椙森神社は藤原秀郷が平将門を平定するために祈願したという由緒があり、また元祖、富籤発祥の神社としても参拝者が多いそうだ。少しの時間参拝しただけなのに訪れる人は後を絶たない。

 再び閑散としたビル街を通って、小伝馬町牢獄跡に歩みを運んだ。江戸時代200年に及ぶ歴史ある拘置所で、安政の大獄で処刑された吉田松陰の終焉の地でもある。今は十思公園となっており子供達の歓声が響く。小伝馬町の面影は吉田松陰の碑や区の公共施設の中にある資料館から推察することができる。

十思公園内の吉田松陰の碑。安政の大獄で獄死した終焉の地になります。十思公園は普通の公園でした

 続いては宝田恵比寿神社へ向かう。人家の間に突然現れた小さな社にこれもびっくり。小さな鳥居と提灯がなかったら見過ごすところだった。恵比寿様を祀ることから、江戸時代から商人の信仰が厚く商売の神様として親しまれているという。べったら市が有名だが、GWで閑散とした街からは想像することは難しい。祭礼では露店が並び一気ににぎやかになると言われる。

宝田恵比寿神社。何気なく通り過ぎてしまいそうな小社でした。べったら市ではまわりにたくさんの露店が出るそうです

 考えたら3つの神社は全て商売に関係のある神様だった。江戸が商人の町であることを改めて知った次第。

 最後は日本橋の麓にある滝の広場から発着する日本橋クルーズで運河都市江戸を眺めた。日本橋運河から墨田川に入り、勝鬨橋近くまでを往復する1時間のコースは暖かく風もない川辺の空気を堪能させてくれた。

日本橋クルーズ。頭上すれすれを茅場橋がかかっています。思わず首をすくめたくなるような橋をたくさん通過します

 操船の巧みさ、コース選定など丁寧に運行されており、ガイドさんもベテラン。両岸の建物の来歴やグルメ情報など乗船客を飽きさせない。桜の季節もきっと素晴らしいに違いない。

隅田川に出て行き交うクルーズ船も増え、穏やかに船は運航していきます
勝鬨橋。子供の頃は開閉してました。下から見るのは初めてです

 すっかり暗くなった帰りは赤提灯のもつ焼きでベロベロセット(想像とおりです)を所望。今の東京に帰ってきた。よいゴールデンウィークの1日でした。

夕暮れに染まっていく東京スカイツリー。よい1日が暮れていきます
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。