日下部保雄の悠悠閑閑

超小型EV「C+pod」に乗った

「C+pod」。軽自動車よりふたまわりほど小さいボディ。ホイールベースは1780mm。全長は2490mm。全幅は狭いけど初代スマートを思い出すスタイルです

 トヨタの今年デビューした新型車試乗会に参加した。カローラクロス E-Fourや、ソフトウェアをアップデートしたMIRAI、アクア E-Four、ランクル 300にも再試乗できた。よく見ると、それら試乗車の一角に超小型モビリティの「C+pod」があるではないか。前から乗りたかった1台だ。

 気温も下がり雨の中の試乗となったが、屋根付き、ドア付はありがたい。サイズは2490×1290×1550mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは1780mm。四隅に155/70R13の低燃費タイヤを置く。60km/hまでの速度制限があり高速道路や自動車専用道路は走れないクラスで型式認定車だ。

このクラスのスモールモビリティに義務付けられる最高速度60km/hのステッカー

 装備は最低限に絞られている。軽自動車の小型版と考えると何かと不便を感じるが、ゴルフカートの先にある乗り物だとすれば贅沢な装備。デザインはトヨタだけあってシンプルで機能的だ。大きなドアでサイドシルの張り出しもなく、スッと足が入りヒップポイントも高いので乗降はしやすい。

 当日、キャビンは寒かった。ヒーターはないのでシートヒーターを使って体を暖める。濡れた衣服で乗ったので、フロントガラスがみるみる曇る。寒いけどクーラーをかけると2人乗りの小さいキャビンの曇りはすぐに取れた。後でダッシュボードをよく見るとガラスに熱線のスイッチがあった。デアイサーだ。早く気付けばよかった。

ダッシュボード。シンプルで分かりやすい。エアコンはないけどクーラーはあります。デアイサーのスイッチもあります

 サイドウィンドウは上下手動スライド式のフックで止めるタイプ。全開か全閉で潔い。

サイドウィンドウは上下スライド式。手動でフックを外して下げます

 Dボタンを押してアクセルを踏むとヒューンという音と共に動き出す。回生機能はないのでアクセルオフしても減速しないが、シェアリングで使われることが多いと考えると他のクルマから乗り換えても違和感はないだろう。

 ブレーキにサーボ機構はないので減速コントロールはちょっとだけ慣れが必要。ペダルに足を乗せる程度のブレーキングのような場合だ。それでもしばらく乗っているうちにあまり気にならなくなった。気にならないと言えばステアリングにパワーアシストはないが、キャスターが起きているのかそれほど重くない。最小回転半径3.9mはその場でクルリと向きを変えられそうな勢いだ。

 リチウムイオンバッテリは9.06kWhで航続距離は意外と長く、WLTCモードのクラス1(高速道路を含まない)測定で150kmとなっている。C+podが想定している市街地走行では十分すぎるほどだ。充電は普通充電に対応してゼロから満タンまで約5時間とされている。

 加速は市街地なら必要十分だ。法的に60km/h以上出せないが、交通の流れに乗るのは簡単だった。実質、交通の流れが早い所では少しもの足りないが、このカテゴリーならではの割り切りだ。

 乗り心地はドライバーがリアアクスルの近くに座り、またホイールベースが短いこともあり、路面によってはピッチングの収束がわるく、同時に直進性も影響を受けてしまっている。ハンドリングも同様だ。この点ではアウトバーン走行も視野に入れた初代スマートとは方向が違う。

 安全対応は素晴らしい。40km/hのオフセット衝突に対応し、プリクラッシュセーフティも装備されている。さらにABSやトラコン、VSC、インテリジェントクリアランスソナーで被害軽減機能も備えているのはさすがだと感心した。

 スモールモビリティに軽自動車ほどの快適さはない。しかし2名乗車可能で風雨を凌げ、荷物も載せられ、自宅で充電できるC+podは手軽な移動手段としてどのように成長していくのか興味深い。

トランク。充電ケーブルが乗ってるけど、使用条件を考えると十分なスペースがあって、実用性ありです

 自治体だけでなく来年から個人向けにも販売される予定だ。現状では165万円~171.6万円で補助金を使うと約150万円になるが、バイクの延長で購入するにはまだ高く、必要な人に届けるための工夫が必要ではなかろうか。

出待ちのC+pod達。ジャーナリストたちは面白がって乗ってました。僕もそうだけど
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。