日下部保雄の悠悠閑閑

GR86/BRZ

スパークレッドのGR86とサファイアブルーパールのBRZ。シルエットは同じでもフロントバンパーなどで顔が変わっています。どちらが好きですか?

 袖ヶ浦フォレストレースウェイでGR86/BRZの試乗会が行なわれたのは7月。まだ正式な発表の前で、もちろんプロトタイプだった。サーキットなのでエンジン回転も高回転をキープしながらスピードも自由に上げられ、2.4リッターフラット4NAエンジンの気持ちよさも体感できた。

 ぜひ普通の道も走ってみたいと待っていた公道試乗は、数多くのコーナーと路面が待っているいつもの箱根。

 今回は旧知の竹岡圭ちゃんの圭Tubeに友情出演。おかげで彼女の枠も使ってGR86とBRZのATとMTの各2台ずつ計4台のスポーツカーに乗ることができた。

 圭Tubeはバラエティの達人、圭ちゃんだけあって緩~くやっているのが持ち味。これまで何回か出ているけど、いつも圭ちゃんのペースに乗せられながら雑談の中でカメラが回っていく。油断していると余計なことまでしゃべりそうで危ない、危ない……。

圭Tubeに友情出演。バラエティタレント(?)の圭ちゃんとの付き合いは長いんです

 2台のクルマを走らせてみるとキャラクターの違いは明快。結論から言うと繊細かつ穏やかなBRZとライトスポーツのダイレクト感を提供したいGR86。その方向がキャラクターの違いだ。

 乗り心地では路面からのあたりはBRZが柔らかく、波状路でのサスペンションの追従性もBRZはしなやかだ。一方のGR86はリアからの突き上げが強めでライトスポーツ、GR86らしさへのセッティングがこのような路面では強めの衝撃となっているようだ。

 ハンドリングもガラリと差がある。4輪を接地させてロールへの移行をしなやかにバランスさせようとしているのがBRZだとすると、GR86はクイックなステアリングレスポンスとリアのロール剛性を高めたサスペンションでガツンと曲がっていく。

 ハンドル応答性ではGR86はレスポンスが高く感じられる。少し大きめに切り、反応したところからさらに切り増すというイメージだ。BRZではわずかなハンドル操作でジワリと舵が効き出す。操舵力もそれほど大きくないという違いがある。

 コーナリング中ではGR86はフロントのバネが頑張りぐんぐんと旋回する。BRZはしなやかな動きで少しアンダー気味の姿勢を維持する。いずれもコーナーでのグリップは高く、安定性はこれまでの86/BRZに比較すると格段に高い。

 エンジンは同じだが、わずかにセッティングが違う。アクセルのゲインが高い。GR86に対してBRZは幾分穏かに感じる。この2台は乗れば乗るほどいろいろ奥が深くて面白い。

 BRZはグランドツーリングの延長線上にスポーツカーを想定しているようで、穏やかなクルマの動きにそれが現れている。路面からのあたりが柔らかい乗り心地、4輪をグリップさせて素直にコーナーを走り抜ける姿勢、ジワリとしたアクセルワークの反応にもそれが感じられる。

 GR86はガラリと変わって反応がシャープだ。ドライバーが姿勢を積極的に作りながら走らせる味付けは先代の86からのDNAを受け継いでいる。

 どちらがよいということではなく、ドライバーがスポーツカーに何を求めるかによって好みが分かれるのだと思う。

 例えばサーキットをイメージして流れるように走らせるとすればBRZはとても安定して走れるに違いない。一方GR86はガツンとハンドルを切れば、グイとノーズを入れて曲がっていく。後輪はタイヤのキャパ次第だがグリップを維持してドライバーの次の反応を待っており、それ次第でどのようにも反応する。

MT車のトラックモード。トラクションコントロールとESCがカットされ、エンジンレスポンスも速くなります。AT車だとこれにスポーツとスノーモードが加わり、パドルを使わないでも十分にスポーツしてます。ブリッピングなんて味な真似をするじゃないか

 車内では真剣にGR86とBRZのハンドリングについて意見交換をした、わけはない。会話はしょうもないことばかりで、とても世間様には聞かせられませんでした……。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。