日下部保雄の悠悠閑閑
2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤー10ベスト試乗会で
2021年11月29日 00:00
今年もイヤーカーを決める季節がやってきた。年に1回のイベントだがやはり悩ましい。対象車は2020年11月~2021年10月に発表された購入可能な国内外のクルマで、すでに選考委員の投票によって10台のクルマが選ばれている。10ベストはGR86/BRZ、シボレー・コルベット、MIRAI、ランドクルーザー、アウトランダー、ヴェゼル、ノート/ノート オーラ、BMW・4シリーズ、フォルクスワーゲン・ゴルフ、メルセデス・Cクラスの10モデル。この他にKカー・オブ・ザ・イヤー対象のホンダ・N-ONEとスズキ・ワゴンRスマイルが選定されている。これらのクルマが袖ケ浦フォレストレースウェイに集合して最終確認を行なうのが10ベスト試乗会だ。
試乗コースは袖ケ浦フォレストウェイ周辺の一般道か長短のレーストラックになる。ピットでは各メーカー、インポートカーが最後の追いこみと熱が入り、忙しいマネージメントも取材に応じる。また10ベストに入ったクルマでもやっと試乗が間に合ったグレードもあり、ここで初乗りとなるケースもある。
大賞の配点は25点の持ち点から10点を今年のベストカーに入れ、残りの15点を4車に振り分ける方式だ。ベスト10のうち5台に点数が配分されることになる。
選考委員は60名に及ぶため、それぞれの視点で思い思いのクルマを選ぶのでバラエティに富んだ配点になるのが特徴だ。10ベストに残っただけにいずれも魅力的でこのクルマ達に25点を配転するのはなかなか悩ましい。その時代背景を考え、どのような視点で選ぶかは直前まで迷うのです。
10車の特徴を振り返ってみる。
内燃機に旗色が悪い中、6.2リッターV8の大排気量NAエンジンをミッドシップに搭載して高い運動性能を求めたコルベットは潔く圧倒的だ。一方、2.4リッターのフラット4を乗せたGR86/BRZの手の内に入るハンドリングは日本から発信するスポーツカーとしての意義が高い。
また、ガソリンとディーゼル、2機種の内燃機を開発してフルモデルチェンジしたランクル300にも敬意を払う。頑なにラダーフレームを守り、高い悪路走破性とサービス性はランクルの命。ぶれないオフローダーとしてのクルマ作りは頑固だ。
メルセデス・Cクラスの新着220dはしなやかな足で、やはりCクラスはいいと感じた。バイワイヤのステアリングフィールはなかなかなじめなかったけどやっぱりいい。
そのメルセデスと双璧をなすBMWは4シリーズが選出された。例の縦型キドニーグリルのデザインだが、従来の慣れ親しんだ伝統のキドニーグリルを活かす試みだ。好みが分かれるところだ。でもやっぱりBMWのエンジンは素晴らしい。内燃機ここにありで、アクセルを踏むたびにワクワクする。
手の届きやすい価格帯にある日産・ノート/ノート オーラとホンダ・ヴェゼル、前車はシリーズハイブリッド、後者は2モーターのハイブリッド。いずれも日本市場の基幹車種だけに気合が入る。日産はCOOのアシュワニさんが登場。お話しするのは初めて。以前はレースやラリーに参加していたので袖ケ浦に来るのが楽しいと言っていた。日産はe-POWERで当面の国内戦略を立てており、マーケットを守っていくという。中国で乱立するEVメーカーの強さを話していたのが印象的だった。
ヴェゼルは旧型ヴェゼルからホイールベースを変えないでキャビンを大幅に拡大するなどパッケージングのうまさが際立っている。凝った2モーターハイブリッドの実力とAWD性能も確認済みでホンダらしいSUVだ。
手の届きやすい価格帯と言えばCセグの定番、フォルクスワーゲン・ゴルフ。48Vマイルドハイブリッドとの組み合わせも絶妙で発進直後のサポートは内燃機の苦手なところをうまくカバーしている。さりげないところにフォルクスワーゲンの実力を見る。
三菱・アウトランダーPHEVも力作だ。走りの性能ももちろん、使いやすいインターフェース、力強いデザインは三菱らしい。PHEVは税制面でも追い風になっている。
MIRAIは時代の転換点に立つ自動車を表しているようだ。水素から電気を発生させるのはロマンティックですらある。さらにOTAでADAS系のソフトウエアをアップデートするなど新しいサービスへの挑戦を感じる。
とまあこれだけ特徴のあるクルマばかりの中でイヤーカーを選び、さらに4車に配分するなんて気が重くなるばかりだ。さて私の配点は……。