2016ジュネーブショー
SUVコンセプトモデル「T-Cross Breeze」が示す、新しいフォルクスワーゲンの方向性
手ごろな価格で買えるプレミアムなクルマを目指す
(2016/3/2 14:59)
- 2016年3月1日~13日(現地時間)
- スイス ジュネーブ
- GENEVA PALEXPO
「第86回ジュネーブモーターショー2016」(プレスデー:3月1日~2日、一般公開日:3月3日~13日)でフォルクスワーゲンが発表したのは、欧州で今夏発売予定の新型「up!」と、コンバーチブルSUVコンセプトカー「T-Cross Breeze(T-クロスブリーズ)」の2台。3月1日に行なわれたプレスカンファレンスで最初に紹介されたのは、量販モデルとなる新型up!だった。
販売とマーケティング担当の責任者であるユルゲン・スタックマン取締役が新型up!を紹介。とくにデザインに注力したとし、個性的な外観、新しいインテリアなどについて語るとともに、新しいインテリアはスマートフォンユーザーが使いやすいものになっているという。
また、インテリアに関連するサウンド面では、ヘッドホンなどで知られるBeats Electronicsとコラボレーション。BeatsAudioサウンドシステムと名付けられた、出力300W、8チャンネルのオーディオシステムを用意する。
新型up!では、2ドア、4ドアの両バージョンを設定する「take up!」「move up!」「high up!」「eco up!」と、4ドアバージョンのみの設定となる「load up!」「cross up!」「e-up!」の合計7モデルを展開。ボディカラーは車種によって異なるものの、13色のカラーバリエーションが用意され、そのうち7色が新色だという。
パワートレーンなどについては別記事「コンバーチブルSUVのコンセプトモデル「T-Cross Breeze」世界初公開」を参照していただきたいが、こちらも刷新。欧州ではすでに受注が始まっており、セールスも好調。1万台を受注したとのことだ。
フォルクスワーゲンの方向性を示すSUVコンセプトモデル「T-クロスブリーズ」
新型up!に続いて紹介されたのは、世界初公開となるコンバーチブルSUVコンセプトモデルの「T-クロスブリーズ」。プレゼンテーションを担当したのは、フォルクスワーゲン部門の開発・デザイン担当責任者であるDr.フランク・ウェルシュ取締役。T-クロスブリーズのボディサイズは4133×1798×1563mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2565mm。アイドリングストップシステムとエネルギー回生機構を備えた1.0リッターガソリン直噴ターボエンジン(TSI)で、7速DSGを介して前輪を駆動。最高出力は81kW(110PS)を発生し、1500rpmから175Nmの最大トルクを発生する。
ウェルシュ取締役はSUV戦略について語り、T-クロスブリーズが示す「ポロ」クラスのSUVのほか、「T-ROC」「ティグアン」「ティグアン XL」というミッドサイズSUV、そして「トゥアレグ」によってSUVのラインアップを形成。すべてのセグメントに向けてT-クロスブリーズのようなスタイリッシュなSUVを投入していくという。
インテリアも新しい提案が盛り込まれており、タッチセンサーを活かしたフラットなデザインに、ジェスチャーコントロールを融合。ギヤチェンジも電動コントロールのバイワイヤーになり、センターコンソール下部に用意されたセンサー付きのガラス製スクロールホイールを回すことで変速する。また、電動パーキングブレーキ、アダプティブ シャシーコントロール(DCC/Sport、Normal、Comfortの3つのモード設定)用の操作系も同軸に置かれたスクロールホイールで一体化されている。
実車を見た印象は、SUVタイプのためかポロクラスより大きく存在感がある。世界的にSUV人気が高まる中、フォルクスワーゲンの提案する遊び心を持ったクルマになる。もちろん、写真を見てもらえば分かるとおり、質実剛健なSUVというデザインで、理詰めでまじめにSUVを設計しましたという感じ。おしゃれでエレガントとは違った、信用できるフォルクスワーゲンらしい雰囲気が漂っている。
最後に登壇したのは、フォルクスワーゲン乗用ブランド取締役会会長の Dr.ヘルベルト ディース氏。ディース氏は、2015年秋開催の東京モーターショー、2016年1月開催のCES、デトロイトモーターショーと、その理詰めでまじめで信用できるフォルクスワーゲンというブランドが大きく傷ついた一連のディーゼル問題についてお詫びと現状報告を行なってきた。ここヨーロッパで開催されたジュネーブショーにおいてもお詫びと現状報告を行ない、すでに対象となる1万台を修理したこと、その作業を続けていくことを約束。償うべきところは償い、信頼を取り戻していくと語った。
そのために、「Think New」という言葉を掲げ、「Trust(信頼)」「Quality(品質)」「Reliability(信頼度)」の3つの柱を示した。この3つを実現していくために、新しい開発体制、新しいマネジメント体制を社内に構築し、電動化を含む未来のモビリティに挑んでいく。「フォルクスワーゲンは変化している。2016年は始まりの年」と語り、失った信頼を新しいクルマ作りによって取り戻していく。
その象徴がポロクラスの高品質なSUVであるT-クロスブリーズであり、ディース氏が語るフォルクスワーゲンブランドの方向性「手の届くプレミアムクオリティ」になるのだろう。