【第7回】保険の金額を設定してみる~前編~
過去には3億円を超す事例も! 対人・対物賠償保険


日本損害保険協会が発行しているファクトブック

 前回まで、保険の種類や用語について解説したが、今回は実際に契約する際の保険金額(補償額)の設定について。素人にとってはどのような事故でどれくらいのお金が掛かるのか見当もつかないもの。もちろんすべての保険で保険金額を最大にしておけば安心だが、当然保険料は高くなるわけで、よい落としどころを見つけたい。

 この点、代理店型だと代理店のスタッフに相談しながら金額を決められるという安心感がある。では通販型(ダイレクト系)はというと、見積もりをしてみるとそれぞれオススメのプランを提案してくれる。ということで各社で見積もりをして、オススメの設定額を調べてみた。

対人賠償保険
 まずは対人賠償保険、つまり相手の怪我や死亡に対する補償に関して。下の表は日本損害保険協会が発行しているファクトブックに掲載されている人身事故の高額判決例だが、3億円を超える例が19件もある。このように人身事故では高額になるケースが多く、死亡や後遺障害となれば1億や2億を超えるのは当たり前と思ってよい。

 そのため、対人賠償保険は必ず無制限にしておくべき。三井ダイレクトなど無制限以外選べない保険会社もあるほどだ。ちなみにアメリカンホーム・ダイレクトで無制限の場合と1億円の場合で保険料を比較してみたところ、筆者の場合は年間で100円しか変わらなかった。あくまで一例だが、それだけの保険料で無制限になるのだから、無制限がオススメだ。

人身事故高額判決例

認定総損害額裁判所判決年月日事故年月日被害者性年齢被害者職業被害態様
3億8281万円名古屋地裁2005年5月17日1998年5月18日男29歳会社員後遺障害
3億7886万円大阪地裁2007年4月10日2002年12月11日男23歳会社員
3億6750万円大阪地裁2006年6月21日2002年11月9日男38歳開業医死亡
3億5978万円東京地裁2004年6月29日1997年4月24日男25歳大学研究科在籍後遺障害
3億5332万円千葉地裁佐倉支部2006年9月27日2001年10月4日男37歳アルバイト
3億4791万円大阪地裁2007年1月31日1996年10月21日女18歳高校生
3億4614万円仙台地裁2007年6月8日2003年5月22日女25歳会社員
3億3678万円千葉地裁2005年7月20日2000年8月18日男17歳高校生
3億3547万円大阪地裁2006年4月5日2000年7月31日男17歳高校生
3億3531万円東京地裁2004年12月21日1998年4月29日男32歳銀行員
3億2776万円大阪地裁2005年9月27日1999年2月17日男42歳会社員
3億2403万円大阪地裁2005年3月25日1999年11月7日男42歳財団職員
3億2246万円名古屋地裁一宮支部2004年3月30日1998年10月7日男25歳アルバイト
3億1636万円東京地裁2005年10月27日1999年9月15日男25歳記者
3億1201万円東京地裁2003年8月28日1997年8月12日女21歳会社員
3億594万円旭川地裁稚内支部2007年12月21日2003年6月20日男7歳小学生
3億484万円大阪地裁2007年7月26日2003年8月21日男7歳小学生
3億377万円広島地裁2005年9月20日2001年9月28日男43歳競艇選手
3億277万円広島地裁福山支部2004年5月26日1999年7月23日症状固定時男38歳会社員
2億9966万円名古屋地裁2007年10月16日2001年2月19日男21歳会社員

(日本損害協会 ファクトブックより)

対物賠償保険
 壊してしまった相手方の物を補償する対物賠償保険。たとえばフェラーリを全損させても数千万円で済むと思うかもしれないが、高額例を見てみると「積荷」という文字が多い。つまりクルマそのものよりも、その積荷の被害額が甚大になることがあるわけだ。さらに、電車を巻き込むような事故や、店舗に被害を与えた事故も高額になることが多い。店舗に突っ込んでしまった場合は、店舗そのものの修繕に加え、店が営業できない期間中の休業補償も対物賠償から支払われるためだ。

 こちらも高額事例では2億6000万円を超える事例がある。といっても2億円を超える事例はその1件のみで、他に1億円を超える事例が3例のみ。3000万円を超える事例でも9例のみと、人身事故と比べれば被害額は小さい。ただし、これはあくまで裁判になったケースのみで、ここに上がっていないケースもありうるので、やはり安心はできない。

 実際に各保険会社のオススメプランを見てみると、やはり多くは無制限を勧めている。ただし、対人賠償より低く、なかには保険料を安く済ませるプランとして1000万円という設定もあった。しかし過去の事例から見ても2000万~3000万円以上には設定しておいた方がよさそうだ。

 こちらも実際に見積もり比較してみたところ、筆者の場合、保険金額を2000万円にした場合と3000万円にした場合の保険料の差はわずか120円、それを無制限にしてもプラス440円。逆に見ればそれだけ高額事例が少ないという意味でもあるのだろうが、まずはそれぞれで見積もりを出してみて、年間数百円の差額で安心が手に入るのなら無制限がオススメだろう。

物損事故高額判決例

認定総損害額裁判所判決年月日事故年月日被害物件
2億6135万円神戸地裁1994年7月19日1985年5月29日積荷(呉服・洋服・毛皮)
1億3580万円東京地裁1996年7月17日1991年2月23日店舗(パチンコ店)
1億2037万円福岡地裁1980年7月18日1975年3月1日電車・線路・家屋
1億1347万円千葉地裁1998年10月26日1992年9月14日電車
6124万円岡山地裁2000年6月27日1996年9月26日積荷
4141万円大阪地裁2008年5月14日1999年9月25日積荷
3391万円名古屋地裁2004年1月16日2001年3月9日大型貨物車・積荷
3156万円東京地裁2001年12月25日1999年11月5日4階建ビル
3052万円東京地裁2001年8月28日1999年5月16日店舗(サーフショップ)
2858万円東京地裁2002年12月25日2001年3月28日積荷
2796万円高松地裁1997年8月14日1994年10月5日大型貨物車3台・積荷
2629万円名古屋地裁1994年9月16日1991年3月20日観光バス
2389万円名古屋地裁1992年10月28日1991年4月23日トレーラー・積荷
2082万円東京地裁1995年11月14日1994年2月22日観光バス
2057万円東京高裁1993年6月24日1979年7月11日トラック2台・積荷
1966万円福岡地裁2000年6月28日1997年10月8日フルトレーラー・積荷
1928万円宇都宮地裁足利支部1999年1月29日1996年9月3日大型貨物車・積荷
1739万円大阪地裁1999年2月4日1994年10月4日大型トレーラートラクター・積荷
1698万円大阪地裁1997年4月25日1993年4月1日大型貨物車・積荷
1673万円広島地裁1997年9月17日1996年2月23日大型貨物車・積荷

(日本損害協会 ファクトブックより)

(瀬戸 学)
2011年 6月 22日