【第8回】保険の金額を設定してみる~後編~
保険料を左右する車両保険、そして割引と特約


 前回に引き続き、自動車保険の保険金額の設定について。前回は自動車保険のキモとなる対人・対物補償について調べたが、今回は傷害保険と車両保険について。こちらは自分や身内側への補償のため、使用条件や何を重視するかによって選択の余地はいろいろある。さらに組み合わせるとお得になる割引や特約についても解説する。

人身傷害保険
 人身傷害保険は、自分自身やその家族、運転者の怪我を補償する保険。つまり身内側の補償なので、いくらまで保険金額を上げるかは本人次第と言える。もちろん掛けないというのも手ではあるが、自分の過失分もカバーしてくれる上に、相手の過失分もとりあえずはこの保険から支払うことができるので、実際に事故を起こした時に多額の治療費などが発生した場合にも非常に頼りになる。さらに自損事故や歩行中の事故なども補償の範囲に含まれるカバー範囲の広い保険なので、絶対に入っておくことをオススメする。

 実際各社でも加入を勧めており、保険金額は3000万~7000万円。多くの会社が5000万円を設定していた。人身傷害保険では休業による損害や入院費、死亡の場合は生きていれば将来に渡り得られたはずの利益(逸失利益)が保険金額を上限に支払われるので、収入の高い人は保険金額を高く設定しておけば、それだけ十分な額を滞りなくもらうことができる。自分の収入や家族構成も合わせて保険料を設定するのがよいだろう。ちなみに筆者の場合、5000万円を基準として、3000万円に設定した場合で年間保険料が810円安く、無制限に設定した場合で760円高くなった。

対人・対物保険、車両保険は年々加入率が上がるが、搭乗者傷害保険の加入率は少しずつ減っている(日本損害保険協会 ファクトブックより)

搭乗者傷害保険
 搭乗者傷害保険は、やはり各社オススメプランでは加入を勧めているが、価格を抑えたプランでは外している会社も少なくない。実質的に人身傷害保険とカバーする範囲がほぼ同じで、かつ補償される額は人身傷害保険のほうが多いため、人身傷害保険に入っていればなくてもよい保険と言える。実際、加入者も最近減っているのも事実だ。ただし、通常の保険は、他の保険と重複する部分は支払われないことが多いのに対し、搭乗傷害保険は、人身傷害保険や、相手の対人賠償保険の補償と重複しても、全く別に支払われるため、加入していて無駄になることはない。

 各社オススメの保険金額は1000万円。人身傷害保険の補償額と合算して選ぶのがよいだろう。また、治療費の場合は保険金額に関わらず一律で支払われるので、人身傷害保険を充実させて、搭乗者傷害保険は保険金額を抑えて加入するというのもよいだろう。

車両保険
 車両保険はもちろん入っていたほうがよいが、全体の保険料のなかでも比較的大きな額を占める部分なので、悩ましいところだろう。車両保険を安くする方法としては、運転者の年齢条件や、家族限定といった特約で運転者を制限する。年間走行距離やゴールド免許、ABSといった安全装置の有無でも車両保険は変わる。

 また、車両保険の補償範囲を限定することで保険料を下げることもできる。車両保険の種類は、保険各社によって異なるが、主に「一般」「車対車(エコノミー)+A」「車対車(エコノミー)」の3種類がある。一般はクルマ同士の事故の他に、自損事故や当て逃げ、さらにアクシデント、つまり火災・爆発などによる被害や、落書きといったいたずら、飛び石でのガラス破損、物の飛来・落下による損害も補償範囲に含まれる。また台風・洪水・高潮によって浸水した場合も補償される。車対車+AのAはアクシデントの意味で、クルマ同士の事故のほか、上記アクシデントが補償される。最後に車対車はそういったアクシデントを補償範囲から除いたものとなる。免許取り立ての運転者がいる場合は一般がオススメだが、慣れた運転者のみなら車対車+Aなどにするのもよいだろう。

 さらに免責金額も車両保険を安くするポイントだ。通常おすすめは免責5万円だが、これを15万円まで上げることができ、そうすると保険料は安くなる。ちょっとした小傷は気にせず、全損のときに新しいクルマを買うための補償と割り切ればこれで十分だろう。

通販型(ダイレクト系)ならではの割引
 インターネットでの申し込みが可能な通販型ならではの割引が、インターネット申込割引だ。通販型の各社が前面に出しているが、その金額は4000円~7000円程度。ただし継続の場合は1500円~3000円程度と安くなる。もちろん全体の保険料で比較すべきだが、継続するより保険を見直した方が安くなるかもしれない。保険会社を変えてもノンフリート等級は引き継がれるので心配ない。ただし、ロードサービスの内容などが継続で充実することもあるので、よく調べておこう。

 また、保険証券を発行しないことによる割引もある。おおむね500円程度の値引きだ。保険証券の内容はインターネット上で確認できるので活用するとよいだろう。

使用目的や走行距離、免許の色、クルマの装備による割引
 リスク細分型保険では、クルマの使用目的や年間の走行距離、記名被保険者の免許の色、クルマの装備などによっても保険料が安くなる。つまり走行距離が少なかったり、免許の色がゴールドだったり、クルマにABSといった安全装備が付いたりしていると、事故を起こす確率が減るという判断によるもの。事故を起こす確率が少なければ、保険の料率も下がるのだ。

運転者を限定することによる割引
 運転者を限定すると保険料は安くなる。たとえば年齢条件を26歳以上、35歳以上と上げることで保険料は安くなる。さらに保険会社によっては、特約で家族限定、本人・配偶者限定などを用意している場合もあるので、当てはまる場合は活用するとよいだろう。

 また、年齢条件について、家族以外の運転者に対する適用が保険会社によって異なるので注意しよう。通常、家族以外のすべてに適用される場合が多いが、一部で年齢制限は家族限定で適用される。つまり30歳未満不担保にした場合でも、家族以外であれば年齢を問わず補償の範囲となる。これまでソニー損保とSBI損保で採用されていたが、7月より三井ダイレクトでもこのようになる。

 三井ダイレクトとSBI損保ではほかに「子供運転者年齢限定特約」も用意している。子供が免許を取ってクルマを運転するようになった場合、この特約では子供だけ別枠で年齢条件を設定できるのだ。もちろん全体の年齢条件を下げるより保険料を安く抑えることができる。 ただし別居の子供は補償範囲外だったりするので、よく確認しよう。

複数台所有している場合は保険の重複に注意
 保険料を下げる割引や特約については上記のとおりだが、保険の組み合わせによっては保険が重複して無駄になる場合もあるので注意したい。特に問題になるのが複数台クルマやほかにバイクを所有し、複数の保険を契約している場合だ。

 人身傷害保険は、契約者とその家族を対象に、クルマに乗っていないときの事故も補償する。これを複数の保険で契約していた場合、歩行中や他人のクルマに乗っていて事故に遭った場合に、両方の保険が重複してしまう。人身傷害保険は重複して支払われることはないので、1つを残してあとは「搭乗中のみ補償特約」を付けると、保険料を安く抑えられる。ノンフリート等級などでもっとも割引率の高い保険を残すのが賢明だろう。また、ほかに傷害保険に入っている場合や、独身で自動車保険に搭乗中以外の補償は求めないという場合にも、この特約を付けることで保険料を下げることは可能だ。

 原付特約(ファミリーバイク特約)や弁護士費用補償特約も同様で、1つの保険に付けておけば家族全体が対象となるので、1つの保険に組み合わせておけばよい。ただしクルマを1台廃棄するなど、その保険を解約した場合には、残りの保険で組み直すのを忘れないように気をつけよう。

(瀬戸 学)
2011年 6月 23日