【第9回】もし事故を起こしてしまったら
携帯電話に事故受付の電話番号を登録しておこう


 今回は、実際に保険に加入して、事故やトラブルを起こしてしまった場合について。多くの人にとって事故はいつも不慣れなもののハズ。今回の内容を頭の片すみに記憶して頂き、万が一事故の際に役立てて頂ければ幸いだ。

GPS付きの携帯電話を使った位置情報検索サービス。ブックマークしておくといざというときに便利だ

保険に入ったら最初にやっておこう
 保険に加入すると、郵送で保険証券が届く。証券省略割引を使った場合ははがきなどで引き受けの案内が届くはず。届いた証券やはがきは車検証とともに保管しておくとよいが、なにより大切なことは、事故受付センターの連絡先を携帯電話に登録しておくこと。また、メモなどを財布の中に入れておくのもよいだろう。いくら車内に証券を常備していても、鍵を閉じ込めてしまえば、打つ手がなくなってしまうからだ。証券番号は分からなくても車両ナンバーや契約者の名前などが分かっていれば、保険会社側で調べてくれる。また、携帯電話サイトなどが用意されている場合には、そこもブックマークしておくと、保険会社によっては携帯電話のGPSを使った位置情報検索サービスもあるので役に立つ。

実際に事故を起こしてしまったら……
 もし実際に事故を起こしてしまった場合、まず最優先してやることは、けが人の救護だ。必要に応じて救急車の手配をしよう。救急車を呼んだ場合、こちらの連絡先を救急隊員に伝えておくことで、搬入される病院が確定した時点でその病院の情報を連絡してもらえる。病院の情報は保険の支払いなどで必要になるので必ずメモしておくこと。

 次にすべきは安全の確保。後続車による多重事故を防ぎ、あるいは渋滞を起こさないためにも、クルマを安全な場所に移動させる。相手や同乗者がいる場合は、誘導を手伝ってもらうなどして、安全に行いたい。クルマが動かない状態の時は、発煙筒や三角表示板を使って、後続車へ注意を促す。

 けが人の救護、安全確保ができたら、必ず警察へ連絡する。警察による事故証明書がなければ自動車保険は使えないので、これは必須だ。けが人がいる場合はその旨も伝えること。すぐに病院に行くほどではない首の痛みなどでも、体に異常を感じたらその旨を伝えること。けが人のいない物損事故とけが人のいる人身事故では警察の扱いが異なるからだ。後から体調の不良を訴えるとなると、最悪の場合、人身事故としてもう一度現場検証に立ち会う必要が出てきてしまう。ただしそれでも翌日に体の痛みが出ることはあるので、その場合は保険会社に相談しよう。

 もし仮に自分に非があると思っても、過失割合や賠償額について具体的な約束をしたり、まして念書を書くような示談行為は絶対にしてはいけない。もし仮に自分自身に過失割合が10割あると主張しても、過去の判例から自分の過失割合が9割と判断されれば、保険会社は9割分の補償しか行わない。残りの1割は自己負担することになる。

 相手の情報もメモしておくことは必須だ。聞いておくべき内容は以下のとおり。
・名前
・連絡先
・車種
・ナンバー
・相手の保険会社
・事故現場の住所(警察が教えてくれる)
・事故の時間

 さらに車線の数や制限速度、信号の有無など道路の状況もチェックしておこう。もし目撃者がいる場合は警察の実況見分に立ち会ってもらうか、時間がない場合は連絡先だけでも聞いておきたい。

 ひととおりの対応が終わったら、保険会社の事故受付センターに連絡する。意外かもしれないが、保険会社への連絡は最後でも大丈夫。というのも事故現場の検証は警察の仕事で、保険会社は基本的には警察からの情報を元に動くからだ。

 ただし、実際に事故を起こすと、なにをしてよいか分からなくなることもあるだろう。そうした場合は真っ先に保険会社に電話して聞いてしまうのがよい。上記の内容を丁寧に説明してくれるハズだ。また保険会社によってはスタッフが現場に急行してくれる場合もあるので、不安になったらすぐに電話してみるとよいだろう。

自走できない事故の場合
 もしも自分の車両が自走できない状況だった場合は、保険契約に付帯のロードサービスを利用できる。今は、ほとんどの保険会社が一定距離まで無料で牽引してくれるので活用したい。なお、このような事故の場合は、多重事故を防ぐためにも、けが人の救護が終わった時点で保険会社に連絡し、いち早く車両を撤去したい。

 車両をレッカーしてもらうような場合は、持ち込む先の工場を決める必要がある。これも多くの保険会社は契約工場を全国に持っているので、特に決めた工場がなければ、保険会社におまかせするのがよいだろう。保険会社の指定工場であれば、そこまでのレッカー代が距離に関係なく無料になったり、代車の無料サービスや別途保険金がもらえたりする。

 また、遠方で事故に遭い、帰宅できずに宿泊する場合や、代わりの電車賃などが発生する場合、事故付随費用補償特約などに入っていれば、それらも補償される。詳しくは保険会社に連絡した際に確認してみよう。

追突などこちらに過失がない場合
 停車中に追突されたなど、こちらの過失割合がゼロの場合、法律上自分の保険会社が示談に介入することができない。当然自分の保険を使うこともないので、自分の保険会社に連絡する必要はないように思えるが、その場合でも一報を入れておくとよい。搭乗者傷害保険は自分の過失割合に関わらず支払われるし、弁護士費用補償特約を付けていれば、相手との賠償額でもめた場合、保険会社の代わりに弁護士を雇ってもその費用が賄われる(自分に過失がない場合、自分の保険会社は示談に介入することができないため、争う場合は弁護士を雇う必要がある)。

 どんな事故であってもとりあえずは保険会社に電話して、分からないことは聞いてしまうのよいだろう。コールセンターのスタッフは事故のプロフェッショナルだ。遠慮せずに頼ってしまおう。

事故後の対応と保険金の支払い
 多くの通販型保険の場合、1事故ごとに専任スタッフが担当につく。また、相手の保険会社の担当者からも連絡が来る。人身と物損で担当者が違うこともあるが、それぞれ連絡先と名前はメモしておくこと。分からないことはその担当者に連絡すればよい。

 自分と相手の病院、修理工場などがはっきりしていれば、過失割合の交渉や治療費、修理費用の支払いなどは保険会社に一任してよい。ただし相手に怪我を負わせてしまった場合は、自らお見舞いに行き誠意を見せることが、円満解決の近道に成るはずだ。

 また、自分が病院に行く場合は、病院に事故の保険を使うことを、さらに自分と相手の保険担当者には病院の連絡先を伝えると、保険の契約内容にもよるが、自分の財布からお金を払わなくてもよくなる。その時点で過失割合がハッキリしていない場合でも、人身傷害保険に入っていればとりあえず自分の人身傷害保険から支払われるのだ。相手の過失分は後ほど相手の対人傷害保険から補填される。

 入院や通院で仕事を休んだ分の手当てや病院への交通費も、保険支払いの対象となる。なので通院した日にちやそれによって仕事を休んだ場合にはその日数もメモしておくこと。また会社の証明が必要になる場合もあるので、会社にもその旨は伝えておこう。

 解決までの進捗状況は通販型保険の場合、事故対応専用のページで確認することができることが多い。不明な点もインターネットを利用して問い合わせできるので、日中は忙しくて連絡できないという人にとっても実に便利だ。

 なお、実際に事故に遭った場合、具体的に自分のどの保険がどれだけ使われるのか、なかなか分かりにくいもの。そこで自分の過失割合に応じて、自分の保険がどういった形で使われるのかを一覧にしてみた。保険会社によって特約の内容などが異なる場合もあるのでご了承いただきたい。

事故の際に使われる自分の保険

自分の過失割合6割10割0割自損事故
相手方の死傷に対し自賠責と対人賠償から6割自賠責と対人賠償から10割支払いなしなし
相手方の物損に対し対物賠償から6割対物賠償から10割支払いなし対物賠償から10割
自分方の死傷に対し搭乗者傷害10割、人身傷害10割(内4割は相手の自賠責+対人で補填)、無保険車傷害特約搭乗者傷害10割、人身傷害10割搭乗者傷害10割、人身傷害10割(相手の自賠責+対人ですべて補填)、無保険車傷害特約搭乗者傷害10割、人身傷害or自損事故特約10割
自分方の物損に対し車両保険6割(免責額除く、残り4割は相手の対物賠償から支払い)、身の回り品補償特約、レンタカー費用補償特約車両保険10割(免責額除く)、身の回り品補償特約、レンタカー費用補償特約支払いなし(相手の対物賠償から10割)車両保険10割(免責額除く)、身の回り品補償特約、レンタカー費用補償特約
その他事故付随費用補償特約事故付随費用補償特約弁護士費用補償特約事故付随費用補償特約

(瀬戸 学)
2011年 6月 24日