長期レビュー

西川善司の「S660で楽しむ、ドラレコマニア」

第1回:西川善司、セカンドカーとして中古の軽自動車を購入する

 お久しぶり。約1年ぶりの登場の西川善司である。Car Watchでは、2015年にソニーのアクションカムをドライブレコーダーとして運用できるかという記事「【特別企画】西川善司の『NISSAN GT-R』ライフ(特別編)」をお届けして以来のご無沙汰となるが、今回、新連載を始めることになって登場した次第である。

 連載のメインテーマは、昨年お届けした特別編に関係の深い「ドライブレコーダー」(以下、ドラレコ)である。

“ドライブレコーダー戦国時代”の到来

 最近の自動車用品量販店で、今やカーナビコーナーに優るとも劣らぬ広さで商品が並べられ激戦区となっているのがドラレコ展示コーナーである。

 パイオニア、パナソニック、ケンウッドといった各カーナビメーカーはもちろん、ユピテル、コムテックといったレーダー探知機メーカーもシェアを拡大しており、最近ではASUSやグリーンハウスといったPC周辺機器でお馴染みのメーカーも参入してきている。もともとドラレコ需要の高かった台湾や韓国のメーカーの並行輸入品もマニアの間では静かな人気を博していることもあり、まさに今やドラレコ市場は「戦国の世」と言ってもいいくらいに激しい戦いが繰り広げられているのである。

 おいおいこの連載で「細かい点」の解説を加えていくつもりだが、ドラレコは主に「ボディ形状のバリエーション」と「機能要件」の2つの視点から評価されることが多い。

「ボディ形状」の基本バリエーションは、まず第1に「カメラと液晶モニターが一体型か否か」というもの。一体化型は録画内容を本体組み込みの液晶モニタですぐに確認ができるというメリットがある。また、各種設定やメニュー操作もこの画面で行なえる利便性もある。

さまざまな種類のあるドライブレコーダーの例
ユピテル、先行車の発進を知らせるセーフティ機能搭載のドライブレコーダー「DRY-AS375WGc」
ケンウッドのドライブレコーダー「DRV-410」
ドスパラの4.3インチモニター搭載 ルームミラー型ドライブレコーダー

 しかし、液晶モニタの画面サイズに比例して本体サイズが大きくなるため、あえてこの機能を省いてボディをコンパクト化し、映像出力端子のみを装備する製品もある。こうした製品では接続先のカーナビ等のモニタ画面にて映像を確認したりメニュー操作を行なう事になる。

 この他、リアビューミラー(バックミラー)型、カーナビ一体型、レーダー探知機一体型などの新しいボディスタイルのドラレコも登場してきている。

「機能要件」は今、ドラレコに求められる基準機能のことだ。細かく見ていけばいろいろあるが、ドラレコはいわばビデオカメラに相当するので、画質に対する要件が主だったものになる。具体的には撮影解像度(記録解像度)、撮影画角、フレームレートなどだ。最近では撮影解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)、撮影画角は対角100°前後、フレームレートは30fps(毎秒30コマ)程度が基準スペックとなっているようだ。

 この他、明暗差に強いハイダイナミックレンジ(HDR、一部の機種ではワイドダイナミックレンジの意でWDRとも)撮影機能、走行経路記録や自動日時合わせに対応するGPS受信機能、衝突時などのショックを感知して撮影映像を保護退避するGセンサー対応記録保護機能、駐停車時の悪戯や当て逃げなどに対処するための「駐車モード」(セキュリティモードとも)機能なども、最新モデルでは「必須機能」として訴求されつつある。

大画面☆マニアはドラレコマニア!?

GT-Rに搭載設置したLS460W
台湾DODの「LS460W」
「LS460W」パッケージ内容物

 かくいう筆者はと言えば、メインの愛車である日産自動車の「GT-R」には、当初、韓国メーカーのCOWON製の「AC-1」を搭載していた。その顛末は、西川善司の「NISSAN GT-R」ライフの第19回第20回でレポートしたとおりなのだが、昨年、幾つかの理由で別モデルに置き換えを行なっている。

 AC-1にまつわる記事自体の掲載は2013年だが、購入と取り付けは2012年に行なっている。2012年当時のドラレコは、このAC-1がそうだったように720p(1280×720ピクセル)画質が主流で、HDR撮影にも未対応。GPSも非搭載だったことから、日時情報は1度合わせても内蔵電池が持つ5日~7日以降は狂ってしまう問題もあった。

 そうした問題に対処すべく、2015年スペックに刷新を行なったのだ。選択したモデルは台湾DODの「LS460W」。ボディとしては2.7インチの液晶モニタ一体型である。画面サイズは小さいので簡易確認用で、あくまでメニュー操作用という位置づけだ。

 基本スペックとしては撮像素子にソニーのExmor CMOS採用、フルHD撮影対応、HDR対応、撮影画角150°といったところ。撮影フレームレートは30fpsが基本だが、720p時には60fpsにも対応する点を高く評価した。スポーツ走行などの際には60fps撮影があった方が便利だからである。

AC1の夜間走行時の映像
AC1の夜間走行時の映像(参考動画)
LS460Wの夜間走行時の映像
LS460Wの夜間走行時の映像(参考動画)

 後に発売された「LS470W」には「駐車モード」が搭載されるが、LS460Wには「駐車モード」がない。そこで駐停クルマ中にも録画が続けられるよう、ドラレコ用の無停電電源装置(バッテリー)も搭載した。

 ANYPOWERの「T-POWER PLUS」は、走行中に本体内蔵バッテリーに充電し、エンジンが停止して充電が停止すると充電した分の電力を使ってドラレコを稼動し続けられる便利なアイテムだ。基本的にはクルマ側のバッテリーは使わないので、車載バッテリーが上がる事はない(車載バッテリーから充電させる運用も設定可能ではある)。

 バッテリー出力側はシガープラグ(12V)のメスになるので、どんなドラレコでも接続でき、なおかつクルマ側のシガープラグを使わずに済むというメリットも享受できる。こうしたドラレコ用の無停電電源装置は、ドラレコをセキュリティカメラ的にも活用したい人にはお薦めのアイテムである。

「T-POWER PLUS」パッケージ内容物
ANYPOWERの「T-POWER PLUS」
「T-POWER PLUS」の接続端子部

 というわけで、この数年、ドラレコの活用や運用について独学で研究をしていた結果、筆者はなんだかよく分からないうちにドラレコのマニアになってしまったのである。

 というわけで、今後、ドラレコをいろいろ紹介していくことになるのだが、その取り付け車両にはGT-Rではなく、別の車両を使うことを決めている。今回は、おまけのようで本題でもある「そのクルマの話」をして終わることにしよう。

西川善司、セカンドカーとして中古の軽自動車を購入する(笑)

めでたく即納された筆者の中古「S660」。グレードは「α」。センターディスプレイなし。初年度登録は2015年7月

 筆者は、今年から再び都内の某大学の講師を本業と兼任することになったのだが、その大学周辺は駐車場事情があまりよろしくなく、GT-Rのような大きなクルマを停めるのはかなり困難なのであった。

 取材から日常用途までをGT-Rの1台で賄ってきた筆者であったが、GT-Rのような大きなクルマが冷遇される駐車場は都内には多く、そうしたケースでは泣く泣く実家の「フィット(初代、2001年式)」を借りたりしていたのだが、今年初め、実家がこれを処分してしまうことを決定。とうとう借りることがままならなくなったために、自分で何か「便のいいクルマ」を調達する必要が出て来たのである。

 そこで考え抜いた結果、コンパクトで維持費の安い軽自動車を購入することを決意。問題はどの車種にするかなのだが、一番の希望要件は「マニュアルミッション車」であった。方々から突っ込みが入りそうだが、筆者のクルマ選びなので筆者の勝手なのである(笑)。

 筆者は、自動車運転免許を取得して以来、GT-Rに乗るまで3ペダルのマニュアル車しか所有したことがない。GT-Rはパドルシフト対応のデュアルクラッチトランスミッションで、変速も速くて運転もしやすくていいクルマなのだが、事実上オートマ車のようなものだ。

 最近、左足でクラッチを操作する感触が懐かしくて仕方なくなり、どうせ増車するならばマニュアル車にしようと決意したのである。筆者は独り身ゆえ、「マニュアル車いやーん」というパートナーも居ないし、そうした「マニュアル車嫌がられあるある問題」とは幸か不幸か疎遠なのである。で、浮上した車種はスズキの「アルトワークス」、ダイハツの「コペン」、ホンダの「S660」など。スズキの「ハスラー」や「ジムニー」にもマニュアル車の設定はあるのだが、「車高が高いクルマ」「ドアの枚数の多いクルマ」にそもそも興味がないので選択対象から外した。ここでも方々から突っ込みが入りそうだ。

 さて、アルトワークスは試乗もしたところ、とても速いことを実感できたのだが、クラッチペダルの左側のスペース(いわゆるフットレスト)が狭くてクラッチペダルに当たってしまい筆者の足が置けなかったので却下。

まずディーラーで試乗したのは「出たばかり」感の強いアルト ワークス! 試乗車はたまたまお気に入りの色である赤にテンションが上がる
ユーティリティ性も高いスズキ アルト ワークス
スポーティなシートが装着されている
クラッチ横のフットレストスペースが狭いのか難点だった

 そうした問題がなかったコペンとS660との一騎打ちになり、試乗して面白かったS660を選択した。「軽自動車なのにミッドシップ」というよい意味で突出したコンセプトに感銘を受けたのだ。そもそも「便のいいクルマ」として選び出してS660に帰着する筆者のクルマ選びがどうかしているのは、筆者も薄々感づいてはいるのでそっとしておいてほしい(笑)。

 さて、2016年3月~4月の間に地元埼玉のディーラーを4~5件ほどまわったところ、新車注文分は5月にオーダー受付があるとのことだが、すでにそのオーダー分は一杯という。その後の9月のオーダー受付分に申し込めますと言われたのだが、9月オーダーで納車は2017年の7月という。つまり、商談日3月起点で数えると納車16カ月待ちと言いうことになり、購入計画は頓挫するのであった。

 しかし、方針を変えて中古を当たってみると、これが不思議なことにあるわあるわ。マニュアル車に絞っても日本全国で100台以上も流通している。しかも、走行距離は3000km未満のものがほとんど。

中古S660は日本全国に多数流通しているのだが、「赤×マニュアル」となると関東圏では数台しかなく、埼玉からはだいぶ遠かったがHonda Cars 神奈川中 オートテラス平戸店で購入した

 購入金額は、新車購入額の10%オチどまりくらい。「中古車としてのお買い得感」はあまり享受できなかったが、走行2800km程度の車両が即納で入手できたことで、自分なりには満足している。

 めでたく某大学の講師の仕事にはこのクルマで出かけられるようになり、狭い駐車スペースにもラクラクとめることができている。S660の最低地上高は125mmで、この点も問題はない。時間貸し駐車場の昇降バーにも変に干渉することもなかった。

S660のドライブフィールは?

既に購入してから3000kmほど走行。前オーナーよりも多い走行距離となった。

 納車から約3カ月が経過した現在だが、今のところS660とは上手につきあえている。一番懸念していた荷物の積載スペースの問題は、助手席を使わないという割り切りができれば問題なし(笑)。助手席は結構広く、機材を詰め込んだ大型キャリーバッグも余裕で載せられる。そもそも筆者の場合、S660で助手席に人を乗せるつもりがないので問題がないのだ。もちろん、何らかの理由でGT-Rが使えず、S660で友達とドライブに行かなくてはならないとなると、途端に問題が出るのは間違いないが、まぁ、その時はその時だ。

 続いてドライブフィールについて述べよう。S660は軽自動車初の6速マニュアルを採用しているわけだが、普段使いはほとんど5速の範囲内の運転となる。6速目は燃費走行用のオーバードライブ設定で、高速道路での高速巡航用という位置づけなのである。

 それにしても、コクピットタイト感、ステアリング左端とシフトノブの近さ、シフトノブとハンドブレーキの距離感はかつての筆者の愛車のマツダ「RX-7」(GF-FD3S)とよく似ていて、低速ギヤからかなり俊敏に高回転までまわる感じもよく似ていて運転はすこぶる楽しい。レブリミットもターボ車でありながら7700rpmというなかなかの高回転仕様なのもいい感じだ。

 時代が進んでいることもあって、マニュアル車とはいえ、軽自動車なのに標準で坂道発進支援機能が搭載されていることにも驚かされた。坂道発進の際、ハンドブレーキを使わずともコンピュータがフットブレーキアシストをしてくれるのだ。ただ、絶対的な速さやトルク感に関してはアルトワークスの方が速い気がするのも確か。特に、5000rpm以上のパワーの落ち込み感は顕著で、高速道路での追い越し加速が心許ない。

 そこで、筆者は、HKSのコンピュータチューンユニット「フラッシュエディター」に救いを求め、HKSが提供するPHASE2ブーストアップ仕様に変更している。このPHASE2仕様では、HKS指定のマフラー「HKSリーガマックスプレミアム マフラー」と、HKS指定のエアフィルター「スーパーハイブリッドフィルター」の使用が奨励されているので合わせて装着した。HKSの公称値では10%程度のパワーアップ(70PS、11kgm)が達成できているとのことだが、それよりなにより5000rpm以上のパワーとトルクの出方が自然になって、俄然乗りやすくなったことに満足している。追い越し加速時に純正状態ではアクセル開度に正比例しなかった加速感やトルク増が、スポーツカーらしいレスポンスになったのだ。これはほんとにS660オーナーにはお勧めである。

HKSのコンピュータチューンユニット「フラッシュエディター」。OBDIIポートを使ってECUを書き換える方式のチューニングパーツ。純正状態にも簡単に戻せる。USBメモリは初期化用。使用にあたってはWindowsパソコンが必要。

 さて、S660はスポーツカーとは言っても「最近の軽自動車」に分類されることもあって、燃費がとてもいい。結構、高回転まで回し気味な筆者の運転でも15km/Lあたり、ちょっと燃費に気を使うだけで17km/Lは出てしまう。カタログ記載のJC08モード燃費は21.2km/Lなので、カタログ燃費達成率は70%~80%といったところ。

 これはかなり優秀だと思う。ちなみに、前述のHKSフラッシュエディターによるコンピュータチューンの結果、純正状態のレギュラーガソリン仕様からハイオクガソリン仕様となっている。ただ、燃費がいいこともあり、GT-Rに乗るよりも経済的ではある。ちなみにS660の燃料タンクは25Lしかなく、GT‒Rの74Lと比べれば約3分の1程度。満タンにしてもお財布にやさしい(笑)。

燃費が恐ろしく良好なS660。筆者の乗り方でも17.5km/Lがでるのだから本物。ちなみに、この燃費はフラッシュエディター使用後の状態である。

進むS660カスタマイズ

ダッシュボードに設置したパイオニアのカーナビ「AVIC-MRP660」。型番が「660」である。

 筆者が購入したS660は、あえてセンターディスプレイなし仕様としたので、ダッシュボードにはパイオニアのカーナビ「AVIC-MRP660」を搭載した。スチロール材から削り出して台座を自作してセンターダッシュにマウント。さらに運転席背後に出ている車速信号を引き出して本体と接続し、自車位置精度を上げた。

 S660のセンターディスプレイ装着車は簡易ナビ(スマホアプリベース)の「Internavi Pocket」しか利用できないため、トンネルや高層ビルの多い地域での案内精度に関しては不満を持つユーザーが多いと聞くが、筆者の場合は「車速信号も入れたパイオニア製ナビ」ということもあって常に自車位置は正確だ。

 バックカメラはオートバックス製オリジナルブランドの「AQ-BC1」を選択。レーダー探知機にはコムテック製のミラータイプの「ZERO 802M」を装着していて、ここの液晶画面にリバースギヤ連動でバックカメラ映像が出るように装着した。ちなみに、ZERO 802MはS660に対応しているため、OBDIIポート経由で車両のリアルタイムステータスを表示させることが可能。水温、油温、吸気温などなど、純正センターディスプレイで表示出来る以上のリアルタイム車両情報を平常時はここに表示させている。

コムテック製のミラータイプのレーダー探知機「ZERO 802M」。ここにリバースギヤ連動でバックカメラの映像が出るようにした

 S660は、軽自動車ということもあって内外装のカスタマイズパーツが安価なのも魅力だ。筆者は最近、本来の「仕事用サブカー」という目的を忘れ、S660のカスタマイズに熱を上げ気味である。

 まずエアロは、S660.COM製のものと無限(M-TEC)製のものを組み合わせて新型NSXライクな出で立ちをコーディネイトした。内装は、モデューロの赤のドアライニングパネルとオートウェアの赤のシートカバーでコーディネートした。

 実際にはそれほどお金が掛かってはいないのだが「お金が掛かっている風の雰囲気」が出せて満足している。

“ミニサイズ新型NSX”のコンセプトでコーディネートしたエアロ。無限製をメインに選択
運転席が純正状態。助手席側が赤のシートカバーを装着した状態
赤のシートカバーは、モデューロの赤のドアライニングパネルとのバランスも良好

おわりに

 S660はオープンカーで、しかも車高が低く小さいため、屋根を明けた状態であればドラレコの取り付けや取りまわしが楽ちんだ。今後は、このS660にいろいろドラレコを搭載して評価をお届けできればと思っている。

 もちろん、何かのきっかけがあれば、S660自体のオモシロ情報も提供できればと考えている。乞うご期待!

トライゼット西川善司

テクニカルジャーナリスト。元電機メーカー系ソフトウェアエンジニア。最近ではグラフィックスプロセッサやゲームグラフィックス、映像機器などに関連した記事を執筆。スポーツクーペ好きで運転免許取得後、ドアが3枚以上の車を所有したことがない。以前の愛車は10年間乗った最終6型RX-7(GF-FD3S)。AV Watchでは「西川善司の大画面☆マニア」を連載中、CarWatchの連載では西川善司の「NISSAN GT-R」ライフがある。ブログはこちら(http://www.z-z-z.jp/BLOG/)。