長期レビュー

西川善司の「S660で楽しむ、ドラレコマニア」

第2回:安全運転支援機能付きドラレコ「ドラドラ6(DD-06)」を試す

S660に安全運転支援機能付きドライブレコーダー「ドラドラ6(DD-06)」を取付けた。車検証シールが撮影レンズに被らないように配慮したい

 ドライブレコーダーのレビュー連載となるこの「ドラレコマニア」。8月の第1回の公開から大部間が空いてしまったが、とにかく今回、第2回目がお届けできることになった。

 第2回目の今回は、JAF(日本自動車連盟)の系列会社JAFメディアワークスが販売しているドライブレコーダーの定番というかスタンダード的な存在とも言える安全運転支援機能付きドライブレコーダー「ドラドラ6(DD-06)」を取り上げることにしたい。価格は本体が3万9960円(直販価格)、オプションのリアカメラが9720円(直販価格)となっている。

設置性チェック~ブラケット一体型だが簡単脱着可能。撮影角度調整もホイール操作でラクラク

 DD-06は、カメラ部分と液晶パネルが一体型となったデザインで、重さは155g、大きさは100×82×42mm(幅×奥行き×高さ)だ。丁度、重さと大きさのイメージはパソコン用のマウスと同じくらいだ。液晶画面のサイズは対角2.4インチ。解像度はQVGA(320×240ピクセル)となっている。画面の大きさと映像の解像度は、イメージ的にはガラケーの表示画面に近い。

 本体は板状のブラケットと合体できるようになっていて、このブラケット部に付属の両面テープを貼り付けて、フロントウィンドウに接着させて設置することになる。

 ブラケットが本体に完全に合体する構造なので、角度調整ができる首振り機構のようなものはない。しかし、撮影角度を調整するための調整ホイールが搭載されており、これを回すことで、撮影角度の上下方向を調整できるようになっている。なかなかよくできた構造だ。

 首振り機構の付いたスタンドのようなブラケットに組み合わせるタイプだと、窓ガラスから下方向にカメラ部がつり下がるような格好となり、やや不格好になるし、「いかにもドライブレコーダーを後付けしました」という風情になる。対してDD-06は1つの塊を窓ガラスに貼り付ける感じなので、取り付けたあとの存在感は最小限にできる。ここは好感触である。

今回の評価ではルームミラー付近、やや運転席側に設置した

 設置時の注意点は3つある。

 1つ目は、撮影角度の角度調整は前述したようにホイールを回すことで調整が可能だが、左右の傾きは調整できないという点。なので、ブラケット部を地面に対して確実に水平に付けなければならない。車庫などでは地面に対して水平かどうかは判別しにくいので、広いスーパーマーケットの大駐車場などで設置するといいかもしれない。こうしたスーパーマーケットの駐車場は、駐車スペースの枠線などもあったりして水平取付の目安がそこかしこにあるので便利だ。

 2つ目は、DD-06の安全運転支援機能を活用する場合には、車両の中央から±20cm以内に取り付ける必要があるという点。ほとんどの車両はルームミラーが取り付けられている首の根本が中央なはずだが、ルームミラーが中央からオフセットされてドライバーよりに付けられている車両などは、念のためにメジャーなどを使って中央を出した方がいいかもしれない。なお、この安全運転支援機能を使わない場合は、別にDD-06を助手席側に取付けても問題はない。

 3つ目は、普段の運転中などにおいて、2.4インチの液晶画面をチェックしたりする必要があるかどうかの判断で、取付位置を決めたほうがよいという点。

メニュー画面。DD-06はタッチ操作に対応する。設定変更の頻度が高いユーザーはアクセス性にも配慮して設置したい。ただし、画面は2.4インチサイズでかなり小さいので、運転しながらの操作はほぼ不可能と考えた方がよい。なので、割り切ってアクセス性は度外視して設置するのもあり

 どういうことかというと、窓ガラスの中央付近の設置にこだわると、運転者から見て、ルームミラーの裏側に隠れるような設置スタイルとなって、液晶画面はほぼ見えなくなってしまうのだ。かといって、運転席側にずらすと「車両中央位置から20cm以内の設置」という条件から逸脱してしまう。ルームミラーの下側に設置するという案もなくはないが「窓ガラスの縦寸法に対して上から5分の1以内に設置しなければならない」という法規(道路運送車両法)上の規制があるので注意が必要なのだ。

 また、本体の細かい設定は液晶画面をタッチ操作して行なう方式なので「設定をいろいろ変えて活用したい」という向きのユーザーは「液晶画面が見える/見えない」だけではなく、「液晶画面へのアクセス性」も意識して設置位置を決めたい。

後述の専用ビュアーアプリでDD-06の動作設定を行なうことも可能。本体画面が小さすぎる……という人はアプリ上で設定を詰めるのもあり

 そうそう、ドライブレコーダーを取り付ける際、フロントウィンドウの中央に車検証シールが貼ってあって丁度撮影レンズの前に来てしまうことがあるかも知れない。法規上、車検証シールは、フロントウィンドウ中央からずらして貼っても問題ないので(そもそも中央でなくてもよい)、ドライブレコーダーを取り付ける際にジャマなときはずらすのもありだ。

 商品セットには5mのケーブル付きのシガーソケット電源ケーブルが付属しており、これを用いて、シガーソケットとDD-06本体を接続すればほぼ準備完了だ。運転中にこの電源ケーブルが運転者に落ちてきては困るので、付属のケーブルマウントシールを使って適宜固定する。

 オプション(別売)でリアカメラも接続できる。今回の評価セットにも含まれていたので利用してみた。接続は簡単。DD-06本体の専用接続端子に専用ケーブルを接続するだけ。電源の確保も不要。専用ケーブルは何の変哲もない4極のミニジャックケーブルだが、ここからリアカメラに電源が供給され、なおかつカメラからの映像がDD-06に入力される仕組みとなっている。

今回の評価ではリアカメラも設置してみた

 商品セットには16GBのMicroSDカードが付属してあり、工場出荷状態で本体に挿入されている。なお、MicroSDカードは「SDHC/Class10/最大32GBまで」の対応となっている。

 MicroSDカードスロットは設置状態で本体右側中央付近に来るので、カードの脱着を頻繁に行なう場合には、このあたりのクリアランスも気にして設置したい。

 もっとも、フロントウィンドウに接着した状態のまま、本体のみをブラケットから外すことはできるので、本体を手にとっての作業もできなくはない。このあたりもよく考えられて設計されていると感じた。

使い勝手チェック~完成度の高い専用アプリ「ドラドラ6・ビュアー」

 DD-06の撮像素子は0.34型CMOSセンサーで、撮影画角は対角130度とかなり広めだ。スペック上の最低検知照度は1ルクス。

 撮影解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)。映像コーデックはH.264でフレームレートは27fpsだ。27fpsという中途半端なフレームレートになっているのは、撮影映像からLED式信号の完全消失を避けるため。30fpsや60fpsではそうした危険性があるため、最近の機種ではそうした「キリのわるい」フレームレートをあえて採用する機種が増えているのだ。

 オプションのリアカメラはスペック不明だが、撮影解像度は640×480ピクセルで、どうやら撮影映像はアナログのコンポジットビデオ信号でDD-06に入力される仕組みとなっている。リアカメラ映像のフレームレートは30fpsだ。

液晶画面にはリアカメラの映像を親子画面で表示させることもできる

 さて、本機はドライブレコーダーなので、特に電源操作をせずとも、エンジン始動と共に撮影が自動的に開始される。録画は基本的に常時行なわれ、古い録画ファイルは自動的に削除されていく方式だ。

 録画ファイルは「30秒区切りの1ファイル」で保存されていく。録画ファイルを確認した限りでは、ファイルとファイルの間に欠落フレームはない。安価なドライブレコーダーだと小分けにしてファイル保存する時間、無録画状態になる機種があるが、DD-06ではそうしたことはないので安心である。

 本機には加速度センサーが搭載されており、設定した衝撃レベル(高/中/低)を上回る衝撃を検知すると、そのタイミングの録画ファイルは削除対象からはずれた「EVENT」フォルダに退避される。また、本体に大きく鎮座する「REC」ボタンを手動で押すと、同様にそのタイミングの録画ファイルは「EVENT」フォルダに退避される。

 例えば、美しい景色や滅多にお目にかかれない珍しいクルマに遭遇した時、あるいは自分は巻き込まれなかったものの危険な状況に遭遇した時などは、この「REC」ボタンを押せば、そのタイミングの録画をあとで振り返って閲覧できる。

 EVENTフォルダの内容が増えてくると、常時録画分の容量を圧迫していくので、定期的にEVENTフォルダの内容は整理整頓をしたほうがいいだろう。ちなみに、容量が大きいMicroSDカードの方が長時間の録画を溜めておけることになる。

 できれば常時録画分の時間が不足していないかを簡単にチェックするためのステータス表示機能が欲しいと感じる。EVENTフォルダの総録画時間、常時録画用の録画時間のような情報を見られると、現在のMicroSDカードの利用状況が分かって便利なのではないか。

 DD-06はGPSを標準搭載している。なので、映像と共に走行位置を記録しており、専用ビュアアプリ「ドラドラ6・ビュアー」を用いて再生することで走行映像と共に走行経路を地図上で確認ができる。

専用ビュアアプリ「ドラドラ6・ビュアー」の画面。インストール用のCDROMが付属してくるが、公式サイトの最新版をダウンロードしてインストールすることをお勧めする
専用ビュアアプリ「ドラドラ6・ビュアー」を動作させているところ。フロントカメラとリアカメラの映像を切換操作している点に注目

 録画ファイル自体は普通のAVIファイルなので、一般的なメディアプレイヤーの類であればファイル単体での再生も可能だ。ただし、リアカメラ映像も1つのビデオファイルに統合記録されているフォーマットのため、専用ビュアソフト以外の一般的なメディアプレイヤーでファイルで再生するとフロントカメラの映像しか再生されない点には留意されたし。

 しかし、オンラインフリーソフトの「VLC Media Player」を試してみたところ、ちゃんとリアカメラ映像も同期再生してくれた。専用ビュアソフトではなく、ファイル単体で再生する際などには、このプレイヤーが便利だ。

「VLC Media Player」ではフロントカメラ映像とリアカメラ映像とを同期再生してくれる

 さて、GPS搭載はもう1つの隠れた恩恵もある。それは常に記録映像のファイルスタンプが正確な日時で記録される点。安価なドライブレコーダーにありがちなGPS非搭載型は、内蔵時計の電池が切れると時計機能が停止してしまい、ファイルスタンプがおかしくなる場合もある。DD-06はそうしたことがないのがありがたい。

ドライブレコーダーとしての実力は

 実際に様々なシーンで活用してみたが、画質は概ね良好であった。

 DD-06はHDR(ハイダイナミックレンジ)撮影に対応していないが、明暗差の激しい状況下でも適切な露出補正を行なって撮影してくれていた。安価なドライブレコーダーでは、夜間走行時、ナンバープレート灯に照らされたナンバープレートが白飛びしてしまうことも多いのだが、DD-06はそれがない。

街灯のある道路での夜間走行の映像は問題なし。よく撮れている。ナンバープレート灯に照らされたナンバープレートもよく見える。

 曇天時、快晴時でも安定した画質になっていて、解像感もまずまずだ。

曇天時
晴天時

 LED信号の明滅問題は特になし。消失することはほとんどなく、たいていは常時点灯しているような見映えで撮影されていた。27fps撮影が功を奏しているようで、ワーストケースでも点滅状態で映るようだ。

多くの場合はこのように常時点灯で映る
こうしたワーストケースでも点滅状態で映るLED信号機

 街灯のない完全な暗がりは、実際の人間の見た目よりも暗部が暗く映る傾向があることには少し気になった。恐らく暗い情景では、ヘッドライトに照らされた最明部領域の白飛びを避けるため、最明部基準で階調を割り当てているため、暗部の方が階調不足になっているのだろう。最暗部にもう少しだけ階調が多めに割り振られているとよいのではないか、と感じた。ドライブレコーダーは記録映像なので「美しい映像を撮影する」ということよりは「情報量の多さ」の方が重視されるべきだと感じるからだ。

 明暗差が激しい状況下では問題ないのだが、暗いところから明るいところへ出たときは明るい領域が完全に白飛びしてしまう点も気にかかる。このあたりはHDR撮影に対応していないDD-06では仕方のない点かも知れない。

ヘッドライトが直接照射されている範囲はよく撮影されているが、それ以外の写り方がやや暗すぎる。実際には、ヘッドライトの反射光が周囲を照らすため、人間の視覚上の見た目としてはもう少し明るい
家電量販店の駐車場敷地内でのひとこま。駐車場出口付近が完全に白飛びしてしまっている。なお、人間の目では普通に見えている程度の明暗差なのだが、DD-06はHDR撮影に対応していないためこうなってしまう

 また、細かくチェックすると、DD-06は撮影画角が広いこともあり、視界中央部はそれなりに解像感があるものの、視界外周になると解像感がやや劣化する傾向はある。これ以上の解像度を求めるとすれば、撮影解像度をフルHDを超えたものにする必要があるだろう。他社製にはなるが、一部の先進モデルで2560×1440ピクセル解像度の撮影に対応したモデルが続々登場してきているので、今後はそういった流れになっていくのかも知れない。

 また、現在の27fps撮影は一般道では必要十分だが、最高で100km/hになる高速道路走行ではやや心許ない。27fpsでは100km/h走行時には1フレームあたり約1mも進んでしまうからだ。

 2016年3月、警察庁が新東名高速道路の一部で「120km/hまでの引き上げ方針」を決めたことを発表したこともあり、今後、ハイフレームレート撮影への要求は高まりそうである。本機はGPSデータから車速を検出できているので、「60km/h未満は30fps撮影」「60km/h以上で60fps撮影になる」という適応型処理機能を搭載しても面白い。

安全運転支援機能の実力は

 DD-06には「安全運転支援」機能が搭載されていて、「前車両発進警告」「車線逸脱警戒」「前走車接近警告(前方衝突警戒)」の3つの機能が搭載されている。この機能の利用には、冒頭で述べたような車両中央付近に本体を設置する以外に「地平線位置の設定」と「車両情報の設定」をする必要がある。

 地平線位置の設定は、カメラが捉えている情景の中の地平線を、DD-06システム側が示している緑の地平線ガイドラインに合うようにカメラの撮影角度を調整することで行なえる。冒頭で述べたような広いスーパーマーケットの大駐車場のようなところで設定すると楽だ。車両情報の設定は、専用設定メニューから車両タイプ、取付位置情報、車両寸法情報などを入力することで行なう。

画面中央の緑色の水平線が地平線位置のガイドライン。合わせるときは開けたスペースに移動して行なう
「安全運転支援」機能の関連設定画面。1度設定してしまえばクルマを乗り替えたり、設置位置を変える時以外には2度といじる必要はない

 実際に運転時に利用してみたが意外に便利であった。特に、前車両発進警告は信号待ち時や渋滞時に、前車両が発進しているのに気が付かないで停車し続けてしまうことを予防できる。

「前車両発進警告」は前車両が発進したときに「前を見て下さい」と警告してくれる

 車線逸脱警戒は、現在走行中の車線からはみ出してしまいそうなときに「左車線に注意して下さい」「右車線に注意して下さい」と警告を行なってくれるもの。前走車接近警告(前方衝突警戒)は前走車両が一定距離内に近づくと「前方に注意して下さい」と警告を行なってくれるものだ。

 車線逸脱警戒はアルゴリズム的にはシンプルで、車線マーカーが視界の撮影画角の中央付近に来たときに警告を促す動作となっている。なので、車線の色が薄いときや夜間、雨天時にはあまりうまく動作しない。

 一方で、前車両発進警告や前走車接近警告(前方衝突警戒)は比較的悪条件でもそれなりに動作してくれていた。

車線変更時の「左車線に注意して下さい」という警告が「車線逸脱警戒」によるもの。前走車接近時の「前方に注意してください」という警告が「前走車接近警告(前方衝突警戒)」によるもの

 車線逸脱警戒は普通の車線変更でも発動するし、前走車接近警告(前方衝突警戒)は信号停車時にも発動して、やや鬱陶しいこともあるかも知れない。これについては、これらの機能が発動する作動条件速度をカスタマイズすることで、自分の運転スタイルにある程度は合わせられるはずだ。

 ただ、全ての音声警告を有効化すると、カーナビ、レーダー探知機などの「しゃべる車載機器」達が音声ガイドの大合唱を始めるようになって相当車内は賑やかになる(笑)。まぁ、筆者的には「前車両発進警告」くらいを有効化するのが現実的ではないかと感じた。

おわりに

 安全運転支援機能は思ったよりも完成度が高く、ユーザーが必要な機能を選択してカスタマイズすることで、安全運転に役立てられることだろう。年配ユーザーなどには嬉しい機能となるかも知れない。逆に、こうした機能がすでに車両側に搭載されている場合など、「ドライブレコーダー側にこうした機能は特に必要ない」というユーザーもいるはずで、そういう場合には、あえて本機を選ぶ必要はないかも知れない。

 一方、メインとなるドライブレコーダーとしての基本機能については概ね良好。専用ビュアーソフトは過度に高機能でもなく、それでいて必要な機能がすべて揃っているし、使い勝手も良好。大きな不満はない。明暗差の激しい状況での白飛び、夜間などにおける階調不足など、いつくかの特殊条件下での課題は残すが、これについては今後のモデルで改善されることだろう。

 次期モデルに対しての具体的な要望を出すとすれば、「HDR撮影対応」「撮影解像度の高解像度化」(2560×1440ピクセルなど)、「撮影フレームレートの強化」(高速時に45fpsなど)といったところだろうか。

トライゼット西川善司

テクニカルジャーナリスト。元電機メーカー系ソフトウェアエンジニア。最近ではグラフィックスプロセッサやゲームグラフィックス、映像機器などに関連した記事を執筆。スポーツクーペ好きで運転免許取得後、ドアが3枚以上の車を所有したことがない。以前の愛車は10年間乗った最終6型RX-7(GF-FD3S)。AV Watchでは「西川善司の大画面☆マニア」を連載中、CarWatchの連載では西川善司の「NISSAN GT-R」ライフがある。ブログはこちら(http://www.z-z-z.jp/BLOG/)。