長期レビュー

カメラマン高橋学のはたらくスバル「レヴォーグ」

第10回:レヴォーグ、プチアウトバック化作戦

念願の車高アップをやっと果たしました

 Car Watchの読者の皆さまこんにちは。前回お伝えしたように、我が「はたらくレヴォーグ」は2015年末にスプリング交換による車高アップを果たし、相も変わらず毎日快調に働いております。今回はそのスプリングについてのお話です。

 今一度おさらいしておきますと、スバル(富士重工業)のラインアップの中で一番最低地上高が低いのが「レヴォーグ」の1.6リッターモデルです。その最低地上高は130mm(1.6GT-Sのみ135mm)。ちなみに瓜ふたつの兄弟車「WRX S4」は全グレード135mm、「WRX STI」はもっと低いのかと思いきや、STI/STI Type Sともに140mm。もちろんマフラー等、底部の形状によるところも大きく、このカタログ値をもって下まわりを打つとか打たないとか、そういう優劣はつけにくいのですが、現実問題として今まで自分が乗っていたどのクルマより打ちやすい印象はありました。ちなみに「インプレッサ」はスポーツ/G4ともに145mm、「レガシィ B4」は150mm。

 レヴォーグ 1.6GTと同じ130mmのモデルは「インプレッサ スポーツ ハイブリッド」「BRZ」(RA Racing、STIによるコンプリートカー tsを除く)という“走り”を謳うわずかなモデルと、意外なところで「トレジア」の4WD車しかありません。スポーティな走りを信条とするレヴォーグの地上高は、その謳い文句を考えれば実は納得のいく数値だったりするし、発売前に開発主査の口からアウディのSシリーズの名前が挙がっていたほど走行性能に重点を置いたモデルであることを知っていた筆者にとっては驚くべきことではないのですが、実際に使ってみると気を遣う場面が想定以上にあったのも正直なところです。

 全幅、全高ともにどんなタワーパーキングでも利用可能で、営業車っぽくない雰囲気を持ちながらもさまざまな路面で走る「実用本位のステーションワゴン」という理由からレヴォーグを選んだ筆者にとっては、この最低地上高の低さは早い時期から何とかしたい懸案事項の1つでありました。

こちらは全日本ラリー(群馬)のメディア駐車場。SS(スペシャルステージ)区間の撮影も担当するカメラマンは、フォレスターやレガシィ グランドワゴンなど、やはり地上高に余裕のあるモデルを選ぶ傾向にあるようです
ラリーのステージに限らず、一旦雨が降ってしまうとこのようになる場所はいくらでもあるのですが、最低地上高が130mmですとかなり気を使います
写真奥は仕事でご一緒することもある自動車ライターさんのホンダ「アヴァンシア」(4WD)。最低地上高が160mmながら、全高は1545mmと高さに関しては羨ましい数値
納車後半年くらいのときに撮影した下まわり。バンパーではなく、まずこの辺りが当たります
同じく納車半年後。樹脂部分も結構擦ってます
こちらはかつての東京モーターショーで展示されていたFB16ターボエンジンのカットモデル。下まわりを打って届く場所ではないと思いますが、同エンジンを搭載する実車を覗いて見ると金属製アンダーガードとのクリアランスはそれほど大きくない印象があります
車高を20mmダウンしたトヨタ「86」と20mm車高をアップしたレヴォーグ。ノーマルの最低地上高はどちらも130mmですが、レヴォーグの方がフロントバンパー先端から後方に向けグッと下がっているのが分かります。経験上、ヒットするのは大体この辺り

 さて前置きが長くなりましたが、そんな筆者の希望を叶えてくれるメーカーとやっと出会えました。前回もお伝えしましたが、スバルユーザーの強い味方「プローバ」です。ニュルブルクリンク24時間レースへの参戦経験などでさまざまな勝つためのノウハウを積み重ねてきた走りの技術者集団が、なんと筆者のようなユルい希望を叶えてくれるパーツを出してくれるのは“超”の付く朗報でした。そんな情報が事前に入り、最終試作品を装着する機会に恵まれたのは筆者の仕事ゆえの幸運であるとともに、「車高上げたい! 車高上げたい!」とうるさいくらいに周囲に撒き散らしていた成果かもしれません。

取り付けはプローバ、テストは吉田寿博選手という贅沢な布陣

 取り付けはもちろんプローバの横浜ガレージで行ないました。作業はまず交換前の車高を計ることから始まります。レース畑の方々が筆者の営業車の作業をテキパキとこなす姿にちょっぴり違和感を感じながらも、ちょっと嬉しかったりもします。

 作業終了後は筆者がガレージ周辺の一般道をグルッと1周して違和感がないことを確認し、今度はかつてのスーパー耐久シリーズチャンピオン、そしてニュルブルクリンク24時間レースでは長年スバルのドライバーとして活躍してきたプローバの吉田寿博選手にステアリングを預け最終確認をしました。今回装着したスプリングは、基本的に2.0リッターモデルで開発を進めてきたそうで、1.6リッターモデルでの最終チェックを兼ねての試走という意味合いもあったようです。硬さについては社内でいろいろな意見があったようですが、ノーマルとほぼ同じような仕様に落ち着いたとのことです。

 試走が終わり再び車高を計測。普段どおり、カメラ機材など荷物を積みっぱなしのまま計測して4輪ともに20mmアップでした。ちなみにダンパーや装備重量によってアップ量が変わり、正式な製品仕様は+15mm〜+20mmとのことなので、ある意味最大の効果が得られたことになります。販売価格は4万3200円で、発売は2月末〜3月上旬を予定しているとのことです。

撮影したのは最終試作品だそうで、製品の塗装色などはまだ不明です
プロフェッショナルの仕事はとにかくスムーズ
装着後はレーシングドライバーの吉田寿博選手にも乗っていただき、最終確認作業を行ないました

効果絶大

 望み続けた念願のパーツだけに、期待は今まで取り付けたどのパーツより大きいものでしたが、ズバリ効果絶大。期待以上です。まず乗り込んだ時の視界が明らかに違います。取り付けてからもう3カ月経ちますので、今ではすっかりその視界が当たり前のものとなってしまいましたが、交換直後はよい意味で驚いたものです。筆者はそういう違いにはどちらかというと鈍感な方だと思うのですが、ハッキリと分かりました。

 段差、ツギハギのアスファルトなど路面が荒れているところでの突き上げは明らかにマイルドになっています。後席の印象も同様です。冬場に交換したということで、標準タイヤ(夏タイヤ)でタイトコーナーの続く道などを走る機会のないままスタッドレスタイヤに変えてしまったので細かいことは分からないのですが、ノーマルスプリングと比べロール量はやや大きくなっていて、旋回性能で少々分がわるいように感じます。しかしながら、それを考慮しても“はたらくレヴォーグ”にとってプラスの効果は絶大です。今まで下まわりが当たって嫌な思いをした段差を走らせてみたり、下まわりを輪留めにこすってしまったことのある駐車場にあえて停めてみたりしましたがすべてOK。余計な気を使わなくて済むのは本当にありがたいものです。

 ちなみに今回は「プチアウトバック化作戦」などと仰々しいタイトルをつけてみましたが、130mmの最低地上高を20mm上げただけなので実はノーマルのレガシィ B4並になったのに過ぎません。運動性能のための20mmを実用性に振っただけでこんなに違うのは驚きです。逆に言うと、低く構えたレヴォーグの車高はいかに本気で運動性能を求めたかの証のようなもので、本格的なスポーツシューズを開発したのにわざわざジョギングシューズやウォーキングシューズに履き替えてしまった筆者は、開発者の志に背いてしまったような気まずい想いも少しだけ感じているのが正直なところ。ただし、発売前に筆者がスバルに向けた「4代目レガシィツーリングワゴン(BP型)2.0iのような実用的でベーシックな4WDステーションワゴンを愛用していた人は、この先どのクルマに乗ればいいのですか?」との問いに対する1つの答えが見つかったような気もしています。

 スタッドレスタイヤ装着後は、細かく波を打った路面やツギハギだらけの路面で少々ドタバタ感が出て、それがなかなか収束しない傾向を実は感じてます。2.0GTやビルシュタイン装着車は分かりませんが、1.6GT EyeSightの初期型はもともとその手の路面で少々バタつくような感じがありましたので、それが増幅したような印象です。筆者のような鈍感な素人の印象でしかありませんが、お世辞にもフラットな乗り心地とは言い難いと思います。ゆえに冬場に関しての乗り心地は夏タイヤ装着時と比べ少々点数は低めという印象ですが、総合的に考えれば満足度はほぼ満点に近いものだと思います。

バックで駐車する機会が多いので問題になることはそれほど多くありませんが、以前前進で駐車した際にガリッとやってしまった忌々しい某ホームセンターの輪止めもこの通り。現実的にはドライバーが乗車した状態で進入するのでもう少しギリギリかもしれませんが、何とかクリアしました
忌々しい場所でのかつての写真。ガリッとやってしまいました
立体駐車は最低地上高120mmでもOKのところが多いのですが、小心者の筆者にとっては今まで精神衛生上よくありませんでした
レヴォーグの全高はルーフアンテナを含めて1485mm。20mmアップしても1505mm、現行のレガシイ B4とほぼ同じです

 筆者がこだわり続けるタワーパーキングですが、最近は全長×全幅×全高、最低地上高ともにアルファードやエルグランドのようなミニバンが収納可能なタイプも増えてきました。しかしながらまだまだ全高1550mm、全幅1800mm以内という古いタイプのパーキングも少なくありません。

 国産ステーションワゴンのライバル達が軒並み全幅1800mmを超える立派なボディになった今、ほどよい車幅を持ち、車高を20mmアップさせてもまだまだ縦方向に余裕のあるレヴォーグのサイズは本当に貴重です。食事などで駐車する度にトランクのすべての機材を降ろすのは現実的ではないことを考えると、タワーパーキングの方がセキュリティ面でのメリットが大きいと思います。こんなに重宝するタワーパーキング利用時における足枷は極力排除した方がよいというのが筆者の考えです。タワーパーキングにおいて130mmの最低地上高が障害になることはありませんが、それ程余裕があるわけでもないので出入庫時の安心感という点においても今回のスプリング導入はマルです。

最も期待した雪道での走行ですが、無理やり山間部まで足を延ばさないと雪がない状態だったので、クルマの通行がほとんどない道路にあえて入ってみました。今までは他のクルマが通った後でも擦っていたであろう雪道でも、150mmの最低地上高ならあまり擦らなくなりそうです
1月に早速テストを兼ねて北上してきましたが、毎年4〜5mは積もるという山間部でもこのありさま。余談ですが地元の方に尋ねたところ、除雪を請け負う業者さんの仕事も激減だそうです
前回も紹介させていただいたサイドビュー。左がノーマル、右が車高アップのスプリング装着後。見た目のバランスも装着後の方がいいのでは?との意見も筆者のまわりではチラホラ
1月の日本海は実に穏やかで雪もなく、2シーズン目を迎えたスタッドレスタイヤの印象も得られず……。あぁ無念。雪を求めてまたどこかへ出かけようと思っています

車高アップとEyeSight

 このスプリングの導入にあたり、EyeSightの動作、これが一番の精神的な足枷でした。もし車両の開発現場で正確な実験をすれば、カメラ位置が20mm上がる影響はないとは言えないのでしょうが、この2カ月間乗ってみた中では実用上まったく影響なしと感じています。あくまで筆者の個人的な印象ですが。

 車高は経年変化やタイヤの空気圧変化でも変わるでしょうし、タイヤを替えることでも多少の誤差はあるでしょう。今回は4輪ともに実測値で20mm、つまりボディは水平に上がったわけです。もともと実用十分な能力を備えていると感じていたEyeSight ver.2よりも、さらに40%も視野距離を伸ばしたver.3にとっては、天地方向への角度変化の方がその影響ははるかに大きいはずです。荷物満載でクルマがわずかにリア下がりになったりする角度変化の方が20mmの水平移動よりはるかに大きいハズ、そのくらい許容範囲のハズという、ド素人考えに基づいて導入に踏み切りました。というか実は全然心配してません。

燃費

 車高は燃費にも大きく影響するらしく、例えばトヨタ「アクア」のJC08モード燃費は37.0km/Lですが、全高で35mm、地上最低高で20mmアップした「X-URBAN」というグレードだと、車両重量が10kgしか変わらないのに燃費は33.8km/Lとカタログ値では大きく低下します。もちろん高さ以外の要素もあるでしょうが、その関連性は気になるところです。

 余談ですが、先代モデルでは一部の積雪地ユーザーからその地上高の低さが指摘され、アフターパーツとして車高アップスプリングまで発売されていた「プリウス」は先ごろ発売されたばかりの新型で前モデルから10mmも車高がダウンし、レヴォーグと同じ130mmとなりました。そちらの積雪地での実用性も気になります。もしかして実用性よりも燃費をとった結果なのかな、なんて下衆な筆者はいらぬ詮索をしてしまいます(積雪地での需要が高そうな4WDモデルは135mmとわずかに高い)。

 なんてトヨタの話は置いておきまして、スプリングを交換した我がレヴォーグの燃費ですが、現状ではまだまだ走行距離も少なくデータと言えるほどのものはありません。参考までに紹介させていただくと、スタッドレスタイヤ装着状態で高速道路と信号の少ない道を1500km(東京→新潟→金沢→白川郷→名古屋市内→東京)ほど走った限りでは13.37km/L。都内とその近郊を仕事で1000km弱走り(こちらもスタッドレスタイヤのみ)11.69km/L。今のところ目立った燃費悪下は感じていません。

レヴォーグ、プチアウトバック化作戦大成功

 というわけでレヴォーグ、プチアウトバック化作戦大成功です。すでに書いたように乗り心地の点で少々思うところはありますし、もちろんショックアブソーバーとスプリングのトータルで考えた方がすべてにおいてよいのでしょうが、営業車にかけるコストとしてはいかがなものかなんて考えると、今回の作戦は筆者にとっては理想的とも言える結果です。本当はスバル自身がアウトドア仕様としてのプレミアム感も演出したモデルではなく、安価で少しスポーツ性を犠牲にしてでも実用性に特化したモデルを用意してくれていれば楽だったと思う一方で、スバルが考えるレヴォーグらしさをメーカー自身が薄めちゃうよりも、個々のユーザーが自己判断で行なった方がいいような気もします。

 さて、大きく一歩前進した我がレヴォーグ。各地での積雪状況も変わってきているみたいなので、雪国ならではの美味しいものでも食べにドライブにでも行きたい気分です。

とにかく仕事では色々なところへ出かけます。路面を選ばないクロカン4WD、快適性や運動性能を追求した大型スポーツワゴン、居住性や積載性に長けるミニバンではなく、すべてをそつなくこなす実用性を持ち、狭い路地から高速道路までどんな天気でも快適に移動できるオールラウンドステーションワゴン、それが「はたらくレヴォーグ」の目指すところです。さて今年もいっぱいはたらくゾ!

高橋 学

1966年 北海道生まれ。下積み時代は毎日毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下で軽自動車からレーシングカーまでさまざまな自動車の撮影三昧。下町の裏路地からサーキット、はたまたジャングルまでいろいろなシーンで活躍する自動車の魅力的な姿を沢山の皆様にお届けできればうれしいです。 日本レース写真家協会(JRPA)会員