ETC車載器の再セットアップに挑戦する ホンダ「ビート」にETC車載器を自分で取り付けてみた |
ETC車載器を取り付け、再セットアップを行ったホンダのビート。すでに生産は終了しているがミッドシップエンジンの軽自動車として今でも人気の高い車 |
昨今は、景気問題を含め自動車関連のニュースが多く、地方高速料金の土日祝日上限1000円案を含む2次補正関連法案が可決したことから、ここのところETC関連の報道が相次いでいるように感じる。とくにETC車載器に関しては、高速道路交流推進財団がETC車載器新規導入助成を3月12日より開始したことで、その販売に弾みが付き、品切れとなる用品店やディーラーが続出していると言う。
そんな中Car Watch編集部から「以前記事で利用したETC車載器が余ってしまったので、再セットアップ記事をやってみませんか」という相談が来た。なんでも社内で希望者を募集したそうだが、すでに取り付けている、もしくは自分で取り付けるのは面倒ということで希望者がいなかったそうだ。
実はETC車載器の取り付けはそれほど面倒なものではない。ちょっとした工具と車の電気配線の知識さえあれば自分で取り付けることも可能だ。そこで本記事では、本田技研工業の「ビート」に、中古のETC車載器を取り付け、ETCを利用する際に必要となるETC車載器の再セットアップ作業をご紹介する。
■ETC車載器の取り付け
ETCの利用を開始するには、ETC車載器のほかETCカードが必要になる。ETCカードの申込みなどはCar Watchの記事「失敗しないETC車載器導入の手引き」に詳しく掲載されているので、ここでは早速ETC車載器の取付作業に入ることにする。
取り付ける車載器はデンソーの「DIU-9200」。本体とアンテナが分離した3ピース(本体、アンテナ、ETCカード)タイプで、色はファイバーブラックのもの。多くの場合ETC車載器と車とで接続が必要になるのは、「バッテリー」電源、「アクセサリー」電源、そして「グラウンド」の3つのライン。バッテリー電源はイグニッションキーの位置に関係なく給電される電源で常時電源とも言う。表記は+Bで+12V。このバッテリー電源を必要としない機種もある。アクセサリー電源は、キーの位置をACCまたはONにしたときに給電される電源で+12V。グラウンドはGNDと表記されることも多いが、いわゆるアースライン。車はボディーなどがアースラインになっており、-(マイナス)側となる。
ビートに取り付けるデンソーのETC車載器DIU-9200 | ||
本体背面には、ETCアンテナの接続端子(右)と電源との接続コネクター(左)が用意されている。配線図を見てもらえれば分かるが、5ピンの内、1、2番ピンは接続不要。3番ピンをGND(グラウンド)、4番ピンをACC(アクセサリー電源)、5番ピンを+B(バッテリー電源)に接続すればよい。この写真では一番左が1番ピン |
3本のラインと接続すればETC車載器は動作するので、あとは車の電気配線図などを参考にして配線を確認すればよいのだが、一般にはそのようなものは売られていない。そこで活用したいのが、たいていの車に付いていると思われるカーオーディオだ。カーオーディオでは、これらの電源ラインを使用しており、そこから分岐させればよい。
また、カー用品店では、車種ごとに「オーディオハーネスキット」なるものが売られており、これをセンターコンソールの裏側に隠れているオーディオコネクターに接続すれば、カーオーディオで利用される各種電源ラインを取り出すことができる。ほとんどの場合、ハーネスキットから出ている赤い線がアクセサリー電源で、黄色い線がバッテリー電源になっており、その線から分岐させればよいだろう。ただし、確実にすべての製品がそうなっているわけではないので、製品付属のマニュアルなどを参照してほしい。また、今回取り付ける、DIU-9200には製品にマニュアルも各種付属していたが、デンソーの製品Webページには、取扱説明書や取付要領書がPDFで公開されており、中古購入時にも困ることはないだろう。
今回ETC車載器を取り付けるビートには、中古車として購入したときから市販品のカーオーディオが付いていた。まずそれを取り外し、アクセサリー電源とバックアップ電源ラインを探すことにした。前述のとおり、赤い線と黄色い線が見つけることができ、ほぼ間違いないと思ったものの、念のため検電ドライバーを使って電流を確認することにする。イグニッションキーを回し、キーの位置による電流の流れを確認してみたが、赤い線はアクセサリー電源であり、黄色い線はバッテリー電源であった。
あとは、これらの線からETC車載器に電源を分岐し接続すればOKだ。分岐には「分岐接続コネクター」を使う。分岐接続コネクターは、「配線コネクター」や「エレクトロタップ(エレタップ)」とも呼ばれており、手軽に配線の分岐ができる商品。分岐接続コネクターで電源ラインを引き出し、引き出した電源ケーブルの先端にギボシ端子を圧着してETC車載器に接続した。また、作業の前にバッテリーのマイナス側を外すことを忘れずに行っておくこと。
ギボシ端子は写真を見てもらえば分かるが、ケーブルの接続を簡単にするためのもの。平型や丸形などいろいろな形があるが、今回は丸形のものを使用。ケーブルの先端にギボシ端子を圧着するには電工ペンチという専用の圧着工具を使ってカシメる。
ここまでの作業ができれば、ETC車載器とアクセサリー電源、バッテリー電源をギボシ端子で容易につなげられる。あとは、グラウンドの接続が必要になるが、これは車のボディーと電気的につなげればよいので、ボディーからネジの出ている部分や塗料によって絶縁されていない部分とつなげればよい。3本のケーブルをそれぞれ接続し、アンテナを正しい位置に装着して車載器に接続したら、バッテリーをつないでテスト動作させてみる。無事動作すればOKだが、動作しない場合、電源ラインの確認などを最初から行ってみてほしい。
■ETC車載器の再セットアップ
ETC車載器が無事動作したら、ETC車載器の再セットアップ作業が必要になる。再セットアップと言っても、特別な作業ではなく、ETC車載器に内に記録されている車両情報を書き換えるもの。ETC車載器内には、たとえば普通車や軽自動車など、高速道路料金算出のための情報が記録されており、この情報を正しいものにしておかないと不正通行になってしまう。このセットアップは取扱業者に頼む必要があり、取り扱える業者の一覧もORSE(道路システム高度化推進機構)のWebサイトで公開されている。とくにオンラインセットアップ可能な業者の場合、申し込んだその場でセットアップをしてくれる。
セットアップに必要なのは、車に取り付け済みのETC車載器、ETC車載器番号および型式登録番号(車載器本体や保証書などに記載)、車検証だ。それらの情報をセットアップ業者から提示される「ETC車載器セットアップ申込書・証明書」に書き込んでいけばよい。
今回セットアップをお願いしたのは「Honda Cars 埼玉 南越谷店」。埼玉県越谷市にあり県内でも1、2を争う大型ディーラー。ここにビートを持ち込み、セットアップ作業をお願いした。必要事項を申込書に書けば、ディーラーのスタッフが作業を行ってくれる。作業していただいたサービスフロントチーフの大類恒久氏によると、ETC車載器の取り付け要望はここのところ増えているらしく、やはり高速道路料金の上限1000円が影響しているとのこと。ディーラー内のオンライン端末で必要事項がETCセットアップカードに書き込まれ、その書き込まれたカードをETC車載器に読み込ませて作業は終了だ。あとは実際にETCカードをETC車載器にセットし試走してみた。
最初こそETCレーンのバーが上がるかどきどきものであったが(最初にETCゲートを通過する際は、万が一を考えて通行券も発券可能な兼用ゲートをお勧めする)、問題なく認識され料金も軽自動車として表示されている。外環道、首都高、中央高速と何カ所かETCレーンを通過してみたが、すべて問題なく利用することができた。
ちょっとした車の配線の知識は必要だが、自分で作業を行うことで車への理解や愛着が深まったりするものだ。ETC車載器の取り付けについては、ここまで紹介してきたように実質的に3本の電源ラインを接続するだけと、作業そのものに難しいところはない。車いじりの第1歩として、ETC車載器の取り付けにぜひチャレンジしてみていただきたい。
(酒井 利)
2009年 3月 24日