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岡本幸一郎の新型テスラ「モデルS P90D」で浅間ヒルクライムに参戦してみた
「LUDICROUS(ルーディクラス)」モードは異次元の感覚!
2016年6月10日 00:00
- 2016年5月28日~29日 開催
2016年も5月の最終週末となる5月28日~29日に開催された「浅間ヒルクライム」。公道を封鎖して3回目となる同イベントには、数十年前から最新のモデルまで、ナンバーなし車両も含めて非常にさまざまな車両が走行する。かねてからその情報を知るにつけ、走らなくても見ているだけでも楽しめそうだなと思っていたそんな折、筆者も新しくなったばかりの「モデルS P90D」で出走するはこびとなった。
まずは朝9時すぎより、ナンバー有りの車両は市内パレートへ。筆者もモデルSを駆って小諸駅前まで走行する。子どもからお年寄りまで沿道の人たちが手を振ってくれるので、手を振り返す。このイベントがいかに地元から歓迎されているのかがうかがえる。軽井沢では比較的テスラオーナーが多いそうだが、やはりまだ珍しいからか、ドライブしていて頻繁に目で追われることに気づいた。
市内パレードを終えるとしばしスタート地点手前で待機。しばらくした後、いよいよヒルクライム走行の順番がまわってくる。速さを競うのではなく、59km/hにできるだけ近い平均車速で走行した人が表彰されるというルールなのだが、筆者は「ぜひカッコいい走りを!」と伝えられていた手前、ちょっと速めのペースで走ることに。約7kmのコースは、標高差は700m以上もあり、さすがにそうなると旧いキャブ車などは、調子のわるくなってしまった出走車両もあったようだが、モデルSはまったくものともせず急坂を駆け上がっていく。
走行モードはもちろん新しく設定されてまもない「LUDICROUS(ルーディクラス:ばかげたの意味)」。レスポンスが最高設定になり、踏んだ瞬間からドンと強烈なトルクが立ち上がる。
AWD化の恩恵で、より高い次元の操縦安定性を身に着けているのもP90Dならでは。あまりに走りが安定していて一体感もあるので、忘れてしまいそうなのだが、ブレーキを踏んだ瞬間に“そういえば車両重量はそれなりに重いんだった”ということを思い出すといった感じである。そして、無数のコーナーを順調に駆け上がり無事にゴールすることができた。
ヒルクライム走行を終えて、メイン会場のテスラのブースで従来型のモデルSとともに展示。ブースに訪れた来場者は、みな非常に興味深そうにモデルSを見たり、スタッフを質問攻めにしたりしていた。テスラの存在は知っていたが実車を見るのは初めてという人も多かったようで、大勢のスタッフは、車両の説明をするため常にひっきりなしで対応にあたっている様子だった。ここでもモデルSの注目度の高さをあらためて実感。設定されてまもない「オートパーキング」の実演も行なわれ、注目を集めていた。
そして翌日の日曜日の午後、イベントが終了し、まだ公道を封鎖しているエリアで、もう少し深くモデルS P90Dに触れる機会に恵まれた。
あらためてスタイリングを見ると、やはり新しさを感じる。従来モデルは、既存の内燃機関を持つクルマとの違いを感じさせないよう、あえて不必要な、グリルに見える黒い部分が設けられていたが、それがなくなった。形状的にもより新しさを感じさせるものとされた。この変更により、空力性能も向上しているという。また、前後左右のボトム部がブラックからボディ同色とされたことで、ずいぶん印象が違って見える。
今回、直接的に走りに関係しそうな変更はアナウンスされていないが、もともと素晴らしかったところ、心なしか全体的に洗練度が深まったように感じられた。よもや前述の空力の向上だけで、これほど変わるとは思えないほどの変化なのだが、ほかにもどこかしら手が加えられているのかもしれない。さらには、テスラでは毎週、データ通信によりアップデートされているそうだが、約20カ所におよぶ変更も少なからず効いていることだろう。加減速はさらにスムーズになり、ステアリングフィールは剛性感が向上してリニアリティが増したほか、足まわりもしなやかになり、従来やや見受けられたリアのバタつきも低減されて、よりフラットライドが深化したように感じられた。
せっかくこうした機会なので、一般公道ではなかなか試すことのできない、要注目の「ローンチモード」を直線区画でチャレンジしてみたところ、それはもう予想をはるかに上回るインパクトだった。
Dレンジをセレクトし、前述の「LUDICLUS」モードに設定し、さらにバッテリー出力が最大となるように設定すると、ローンチモードが有効との旨が表示される。そして左足でブレーキを踏みながら、右足でアクセルをめいっぱい踏み込んで、左足をリリースすると…、な、な、なんだ、この加速は!?!? これまで味わったことのない異次元の感覚!
あまりに強烈な加速Gに首が後ろにもっていかれそうになりながらも、普通はこうして全開でゼロスタートすると、多少はタイヤが滑ったり、クルマの後ろが沈んでフロントが浮き上がったりと、いろいろなことが起こるものだが、P90Dは音もなく、そして姿勢を乱すこともなく、とてつもない勢いで猛然と加速する!
これはまさしく、超強力なモーターを前後に搭載し、巧みに制御しているP90Dならでは。ちなみに担当メカニック氏によると、この状況でもしトラクションコントロールをオフにしたら、ずーっとホイールスピンしっぱなしになるそうだ。いやはやテスラ恐るべし。その実力をまたしてもまざまざと見せつけられた思いである。
これまでもテスラに触れるたび、その完成度の高さには舌を巻いてきたが、今回もやはりそれは変わることはなかった。そう遠くないうちに「モデルX」も日本に上陸するだろうし、驚くほどの事前予約台数が報じられたのも記憶に新しい「モデル3」のことも、徐々に明らかにされていくことだろう。テスラの快進撃はまだまだ続きそうだ。