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死亡事故低減に向けたロードマップを示した「2016 NCAP & Car Safety Forum in Tokyo」

2016年8月2日~3日 開催

第3回「2016 NCAP & Car Safety Forum in Tokyo」のパネルディスカッション

 Sustainable Communications, Inc.は8月2日~3日の2日間、第3回「2016 NCAP & Car Safety Forum in Tokyo」を東京都内で開催。Euro NCAPなど主要な自動車アセスメントのキーマンたちが、それぞれのロードマップを示すプレゼンテーションなどを実施した。

Euro NCAPのアンドレ・ジーク氏
Euro NCAPのパトリック・ゼイニガー氏

 開催初日8月2日のプレゼンテーションでは、欧州の自動車アセスメントEuro NCAPのアンドレ・ジーク氏、Euro NCAPのパトリック・ゼイニガー氏らが登壇。Euro NCAPのジーク氏、ゼイニガー氏からは、今後Euro NCAPにおいて、各自動車メーカーが採用を拡大している、自動ブレーキをはじめとする安全運転支援システムを評価するアセスメントが本格的に開始されることが示されるとともに、具体的な試験方法や評価方法に関して説明された。

安全運転支援システムの普及に向けた2020年までのロードマップを示した
歩行者やサイクリストを検知する自動ブレーキの安全性能を評価する試験方法などについてのプレゼンテーション
Global NCAPのジェシカ・トゥロン氏

 各自動車メーカーが先進安全装備の採用を進める一方で、急速にクルマの台数が増加している自動車新興国の現状については、Global NCAPのジェシカ・トゥロン氏から解説。インドで販売されているルノー「Kwid」、マルチ・スズキ「セレリオ」「EECO」、マヒンドラ「Scorpio」とヒュンダイ「イオン」の衝突試験結果について、5つのモデル全てがゼロスター評価であったことを明らかにして、自動車メーカーの社会的責任として、他の地域で安全基準をクリアできないクルマの販売を見直すよう要望が示された。

インドで販売されているモデルのテスト結果などが示された
パネルディスカッションでモデレーターを務めた元本田技術研究所の杉本富史氏

 各プレゼンターによるプレゼンテーションの後に開かれたパネルディスカッションでは、元本田技術研究所の杉本富史氏をモデレーターに、Euro NCAPのジーク氏、ゼイニガー氏に加えて、米国IIHSのエイドリアン・ランド氏、ASEAN NCAPのカイリル・アンワル氏、Global NCAPのジェシカ・トゥロン氏、JNCAPを担当するNASVAからは大森隆弘氏が参加して、それぞれの目標について考えを述べた。

Euro NCAPのアンドレ・ジーク氏
IIHSのエイドリアン・ランド氏
ASEAN NCAPのカイリル・アンワル氏
Euro NCAPのパトリック・ゼイニガー氏
Global NCAPのジェシカ・トゥロン氏
JNCAPを運営するNASVAの大森隆弘氏

 Euro NCAPのジーク氏は「我々は12のメンバーからなる組織で、また参加する7カ国それぞれで関心事があり、(そういった)他の組織と(考えが)違うかもしれないが、Euro NCAPはより安全なクルマを提供したい、また道路交通を改善したいと考えている。死者数減少というところに焦点を置かなければならないし、負傷者の数を減らすことにも焦点を合わせなければならない。規制というのは長い時間を必要とするが、消費者からの要求指向をすぐに反映できるのがEuro NCAPである」との行動指針を示した。

 さらに、ジーク氏は「我々が行なっているスモールオーバーラップのテストも、シートベルトをしながら死亡事故となっているリアルワールドの事故を再現しているもので、これからもそれらを推進していく。最終的なアプローチとしては、自動車メーカーに構造の変更をお願いするといったサイクルをしている」と話した。

 IIHSのランド氏は「我々は、保険業界が設立したアセスメントである以上、負傷者からの保険請求を減らすことを目的にしている。もちろん、重症事故を減らしたいと思っているし、死亡事故についても乗員の命を守り自動車も守ることで、我々はコストを下げていきたい。保険のコストを下げることが第一ではないが、物損、障害の事故のケースを減らしていきたい」との考えを示した。

 ASEAN NCAPのアンワル氏は「我々がASEAN NCAPを設立した2011年より5年前は、いろいろなノンスタンダードカーがありました。また、エアバッグは必要ないという話やシートベルトもしないで走るといった状況のなかで、我々はASEAN NCAPを設立させることになった。現在、我々の背後にある目的は事故の死者数を減らすことであるが、ターゲットとしてはクルマではなく、オートバイの死者数を下げることが大きな目標。Global NCAPの援助を受けながら、オートバイの死者数を減少させるとともに、2輪と4輪の衝突事故を減らしていきたい」との考えを示した。

 JNCAPを運営するNASVAの大森氏は「2020年までに交通事故死者数を2500人以下にするという政府目標がありますが、国交省においても車両の安全性能を向上させることで交通事故死者数を減らすことを目標設定しています。日本における事故状況を分析してテストを計画しており、事故形態を抽出してそれに見合った安全技術を優先的に普及させていく」との考えを話した。

 Global NCAPのトゥロン氏は「我々はNCAPのなかで、ラテンアメリカやASEAN地域、インドで財務的なサポートをしていく。そういった地域では非常に事故が多く、自動車の生産もそういった国で行なわれているので、自動車も安全なものを作っていけば事故も減らしていくことができる。そういった地域での活動が中心になる」との考えを示した。