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Intel、IDFの基調講演においてBMWとの自動運転車プロジェクトを説明

2021年にレベル3/4/5の自動運転実現を目指す

2016年8月16日~18日(現地時間)開催

BMWが半導体メーカーIntelのイベントに登場

 半導体メーカーのIntelは、同社の半導体やソフトウェアソリューションを使用した製品を開発する開発者やエンジニア向けのイベントとなるIntel Developer Forumを、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコにあるモスコーンセンター 西ホールにおいて8月16日~8月18日(現地時間、日本時間8月17日~8月19日)の3日間にわたり開催している。IDFの略称で呼ばれる同イベントは、Intelが同社の製品戦略や、技術的な詳細などを語るイベントになっている。

 初日となった8月16日には、Intel CEO ブライアン・クルザニッチ氏の基調講演が行なわれ、VR/AR(別記事参照)、Intelの次世代PC向けプロセッサ(別記事参照)、IoT(Internet of Things)向け(別記事参照)のソリューションなどの説明が行なわれた(詳しくは別記事で示した僚誌PC Watchのレポートをご覧いただきたい)。

 そうした基調講演の中で、クルザニッチ氏はBMW 自動運転担当上席副社長 エルマー・フリッケンシュテイン氏をステージに呼び、Intel、BMW、そしてイスラエルの自動運転関連パーツベンダのMobileyeの3社で共同開発している自動運転車を、2021年にはレベル3、レベル4、レベル5の各段階で実現していく予定であることを明らかにした。

エンドツーエンドで自動運転ソリューションが提供できるのがIntelの強み

Intel CEO ブライアン・クルザニッチ氏

 クルザニッチ氏は自身の基調講演の中で、同社が推進する自動運転のソリューションについて説明した。クルザニッチ氏は「Intelは車載コンピューティング、そしてクルマとインフラを接続するコネクティビティとしての5G、さらにはデータセンターと、最初から終わりまで一気通貫でソリューションを提供することができる」と述べ、車載だけ、5G通信だけ、データセンターだけと1つの要素しか提供できない競合他社に対して、すべての要素を提供することができるのがIntelの強みだとした。

 自動運転をITシステムの観点から見ると、大きく以下の3つの要素にわけることができる。

車載コンピュータ(物体や空間認識)、それに応じたACC(自動アクセル制御)やACSF(自動ハンドル制御)
5Gなどの安定した通信を利用した車両とクラウドサーバー間の通信
ディープラーニングなどを利用した学習機能や高精度3D地図更新などを行なうクラウドサーバー

 車載コンピュータは、その名のとおり車両に搭載されるコンピュータのことで、実際に道を走っている時には、カメラやレーダー、ライダーなどのセンサーからの情報により他の車両、歩行者や物体の位置情報を把握し、それらの情報を基にアクセル、ブレーキ、ハンドルなどを操作しながら運転する。Intelは同社が提供するIAプロセッサの車載版を自動車メーカーに対して提供しており、これらの機能を実現している。

エンドツーエンドで自動運転のソリューションを提供できるのがIntelの強み

 5Gは、自動運転が実現する2020年代前半に本格的に普及するとみられており、現在の4Gに換えてセルラー通信の標準規格になると考えられている。Intelはこの5Gの開発で他社に先行しており、2月に行なわれた通信向けのイベントMWC(Mobile World Congress)では、その開発キットの提供を明らかにするなど、5Gの開発では主力プレイヤーの1社だ。

 そして、3つがクラウドサーバーと呼ばれるサーバー群の存在だ。自動運転車ではクラウドサーバーにあるシステム常時通信しながら自動運転を行なう。Intelは、Xeonプロセッサというサーバー向け製品で、圧倒的なシェアを持っており、特に普及価格帯のサーバーが強みを持っている。

 このように、Intelは自動運転システムをE2E(End to End)と始めから終わりまでソリューションを提供できるのが強みなのだ。

BMW、Intel、Mobileyeの3社が共同開発、2021年までにレベル3/4/5の自動運転を実現へ

BMW 自動運転担当上席副社長 エルマー・フリッケンシュテイン氏(手前)

 クルザニッチ氏の講演の中盤に登壇したBMWのフリッケンシュテイン氏は、BMWがIntel、そして部品メーカーであるMobileysが共同で開発している自動運転車の実現の取り組みを説明した。

 Mobileysはイスラエルの部品メーカーで、自動運転に必要な技術を開発し、自動車メーカーなどに提供している。昨年、BMW、Intel、Mobileyeの3社共同でレベル4以上の自動運転の実現を目指すと発表し、現在開発が進められている。

 このため、IDFの基調講演では、BMW、Intel、Mobileyeのブランドが入った特別カラーのBMW i3で、かつ自動運転でゆっくりとステージに移動するという演出でフリッケンシュテイン氏は登壇した。

 フリッケンシュテイン氏は「BMWは2006年に自動運転を実現するテストを行ない、2016年のCESでは衝突回避のデモを行なった。さらに、新しいBMW 7シリーズでは車庫入れを自動で行なうリモートコントロールパーキングを実現するなど徐々に進化している」と説明し、BMW 7シリーズで車庫入れを自動で行なう様子のビデオなどを公開した。

自動運転の機能を組み込んだBMW i3で、自動運転によりステージに登壇
BMW 7シリーズの自動車庫入れ機能をビデオで紹介

 その上で自動運転には、現在の自動運転車が実現しているレベル2、そして今後数年で実現していくレベル3などの段階があり、BMWとしてはフルの自動運転となるレベル4、さらにはドライバーが乗っていなくても自動車が自律的に動く、いわゆるロボットカーの実現を目指していくと語った。

 その上でそれを実現するには、自動車側にも強力な処理能力をもった半導体と、5Gネットワーク、そして強力なクラウドサーバーなどが必要になるとし、「BMW、Intel、Mobileyeの3社の取り組みにより、自動車業界に新しいスタンダードを提供する最初のステップだ。この取り組みにより、2021年にレベル3/4/5で自動運転を実現していきたい」と述べ、レベル3、レベル4、レベル5の自動運転を実現した自動運転車を3社で協力して開発し、それを2021年までに実現したいと説明した。

自動運転にはレベル1~レベル5まで複数の段階が用意されている
BMW、Intel、Mobileyeの3社で協力してレベル3/4/5の自動運転を2021年までに実現する