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オーテック、購入者17組28人を招いた創立30周年記念車「マーチ ボレロ A30」出荷式

「オーテックの“もの作りスピリット”を感じていただこうと作り上げたクルマ」と片桐社長

2016年9月16日 開催

 日産自動車の関連会社であるオーテックジャパンは9月16日、同社が創立から30周年を迎えることを記念して開発した30台限定のカスタムカー「マーチ ボレロ A30(エー サーティ)」生産第1号車の出荷式を神奈川県茅ヶ崎市にあるオーテックジャパン 本社 第2工場検査エリアで実施した。

 出荷式には、オーテックからの招きに応じて参加した17組28人のマーチ ボレロ A30購入者が出席。平日の金曜日にも関わらず、関東の1都6県に加え、山形県、福島県、三重県、大阪府、岡山県、高知県など遠方からも車両の納車を心待ちにする購入者が足を運んだ。

「マーチ ボレロ A30」生産第1号車

「倍率20倍以上の申し込みがあり、身の引き締まる思い」と片桐社長

株式会社オーテックジャパン 代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)片桐隆夫氏

 出荷式では最初にオーテックジャパン 代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)の片桐隆夫氏が登壇。

 片桐氏は集まったマーチ ボレロ A30購入者に対する感謝の言葉を口にしたあと、「会場にありますA30は1号車で、これからまさに出荷されようというクルマであります。30台限定販売というクルマですが、とにかくオーテックの“もの作りスピリット”を感じていただこうと作り上げてまいりました。このマーチ ボレロ A30は30台の限定生産・限定販売と発表させていただいていますが、それに対してなんと20倍以上のお申し込みをいただきました。我々としても大変嬉しく思っていると同時に、オーテックのクルマに対する期待値が非常に高いと感じて、身の引き締まる思いであります」とコメントし、記念限定車に込めた思いと市場からの反響について説明した。

 また、「私どもはこういったオーテック製のカスタマイズカーを『ファクトリーカスタム』と呼んでおります。それがどういった意味かというと、改造車であっても日産車と同じ品質、同じ耐久性、そしてなんと言っても、部品の供給なども含めた日産車と同じアフターサービスを末永く保証していこうということです。この30台限定のA30でも同じ考え方です。その一例としては、A30には数多くの専用部品が使われていますが、例えばこのホイールは、鍛造フル切削工法というかなり高度な製法の専用アルミホイールとなっています。また、エンジン内部にあるクランクシャフトに関しても専用品を使っていて、このように専用部品を多数使うと同時に、多くの箇所では量産車の部品をうまく流用して使っています」。

「うまくバランスを取っているということなのですが、これがなぜかと言えば、これはコストダウンということではなく、末永くお付き合いいただけるよう、部品の供給性といった点に注力しています。日産のベース車と同じように長くお使いいただいても部品を入手できるということが非常に大事だと考えているからです」と語り、メーカー量産車と同レベルのクオリティを実現するため、日々研究に努めている開発陣の努力について紹介した。

 このほかに片桐氏は、この茅ヶ崎にあるオーテックの工場でハンドメイドされた30台のマーチ ボレロ A30が、完成後に栃木県にある日産のテストコースに全車を運び、走行チェックを行なってから購入者のところに出荷する段取りとしていることも明らかにした。

株式会社オーテックジャパン 常務執行役員(CVP)梶本佳邦氏

 片桐氏に続き、オーテックジャパン 常務執行役員(CVP)で生産部門を統括する梶本佳邦氏がスピーチを行なった。梶本氏はマーチ ボレロ A30を「オーテックがこの30年で積み上げてきた技術と技能、もの作りの情熱が惜しみなく注ぎ込まれたクルマ」であると解説し、プロジェクトに携わった部門別の開発担当者から寄せられた車両のアピールポイントについて紹介した。

 このなかでは、マーチ ボレロ A30の開発コンセプトが「見てにっこり、走ってにやりの“笑顔製造器”」であり、外観デザインはベースとなるマーチ ボレロのイメージを残しつつ、ワイドボディによって圧倒的な存在感を発揮。また、エンジンはベースエンジンの開発を手がけた匠が手組みによって組み立てており、すべてのパーツが見直されてベースとなる「HR16DE」とはまったく別のエンジンとして仕上げられているという。ボディでも4WD車用のリアフロアを移植して補強部材を配置。サスペンションやホイール、タイヤなどをトータルチューニングして、高性能なハンドリング性能としなやかな乗り心地を両立していると説明された。

 また、マーチ ボレロ A30は随所で職人による手作りの生産方法が用いられており、品質チェックも入念に行なわれることで1台が完成するまで通常の量産車と比較して長い時間が必要であると説明。製造現場では全力で生産を進めているが、納車まではもうしばらく待ってほしいと語られた。現状では、30台すべての生産が終わるのは2017年に入ってからになると想定されている。

 片桐氏と梶本氏によるスピーチのほか、出荷式では購入者を代表して最も遠方となる高知県から訪れた参加者に記念キーの贈呈式が行なわれ、続いてマーチ ボレロ A30の生産第1号車を参加者全員で囲んで記念撮影を実施。最後に生産部のスタッフがマーチ ボレロ A30に乗り込んでエンジンを始動。拍手に見送られながら工場をあとにして終了となった。

出荷式には17組28人のマーチ ボレロ A30購入者のほか、オーテックジャパン役員、マーチ ボレロ A30開発スタッフなどが参加して行なわれた
片桐氏(右)から高知県から訪れたというマーチ ボレロ A30購入者に日産のインテリジェントキーを模した記念キーが贈呈された
エンジンをスタートさせたマーチ ボレロ A30が会場をあとにして出荷式は終了となった

 当日は出荷式の取材で集まった報道陣向けに、オーテックのカスタムカーやライフケアビークル(LV)などを生み出している本社施設の工場見学も実施された。

架装ライン
最初の見学場所は電動シートなどを車体に組み付ける架装ライン。分かりやすいよう、実際に街を走っている完成車の状態からさかのぼっていくように見学コースが設定された
エルグランドに助手席スライドアップシートを取り付けている作業工程
キューブの助手席スライドアップシート装着では、フロア下の吸遮音材などをカットして取り出して入れ替えているところを見学できた。装着するシートなどユーザーの希望に合わせて多彩なアレンジに対応できるのもオーテックの強みとなっている
電動工具でボルトを締め込んだあと、しっかりトルクレンチで増し締め
内製ユニット・リフター組み立て
電動シートの組み立て工程
電動シートのフレームにクッションと表皮を組み付けているシーン
電動シートのベース部分を組み立てる行程
ラゲッジスペースに設定するリフターの組み立てスペース
リフターは車いすやストレッチャーごと人間を車内に運び入れる装置だけに、サイズや構造が大がかりになっている
板金・溶接行程
板金・溶接行程を行なうスペース
オーテックでは部品の内製化にこだわっており、シートフレームなども鉄板を加工する段階から作り上げている
縫製加工
シート表皮などの縫製工程
ファブリックなどの素材から型紙に合わせてシート表皮を切り出していた
エンジン棟
パワートレーン開発などを行なっているエンジン棟では、入室してすぐの場所に歴代レースエンジンが展示されていた
対応出力別に4カ所用意されているダイナモ室。見学した1000PS対応のダイナモ室にはスカイライン用というV型6気筒エンジンが設置されていた
マーチ ボレロ A30の搭載前に組み立て直したHR16DEのバルブタイミングの調整シーン。0.5度刻みで調整しているとのこと
マーチ ボレロ A30のエンジンに使われている専用パーツ
温度差を使って埋め込んだタングステン製のカウンターウェイトは、プレス機で1tの荷重を掛けても抜けることはなかったとのこと
デザイン棟
オーテック車のデザイン開発を行なっているデザイン棟
特徴的なオーバーフェンダー開発では、まず職人が片側(この場合は助手席側)のフェンダーを作り上げ、それを3Dスキャナーでデジタル計測。写真では展示の都合上で左右逆に3Dスキャナーが置かれている
計測データを反転し、この反転後の3Dデータを切削器に入力して、逆側に盛ったクレイから切削器が同じデザインのフェンダーを削り出す。完成品としてOKが出たデータは、そのままパーツ生産にも利用されているという

 また、当日はマーチ ボレロ A30のほか、オーテックのさまざまな車両が展示されていた。

マーチ ボレロ A30
セレナ セカンドスライドアップシート
エクストレイル モードプレミア オーテック30周年特別仕様車
NV350 キャラバン チェアキャブ D仕様
モチュール オーテック GT-R(2013年レース参戦車)
R91CP(1992年レース参戦車)
オーテック ザガート ステルビオ