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【スーパーフォーミュラ最終戦】F1昇格が決まってるバンドーン選手を1000分の5秒差で抑えた石浦選手がポールポジション
日曜日の決勝レースは、石浦選手がレース1、レース2ともポールスタート
2016年10月29日 17:57
- 2016年10月29日~30日 開催
「全日本スーパーフォーミュラ選手権 最終戦 第15回 JAF 鈴鹿グランプリ」が10月29日~30日の2日間、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットにおいて開催されている。10月30日には予選を実施。予選1回目(Q1)で決勝日となる明日のレース1のグリッドが決定し、上位14台が進む予選2回目(Q2)、上位8台が進む予選3回目(Q3)の結果でレース2のグリッドが決定する、レース1、レース2がある最終戦ならではの予選方式で行なわれた。
Q1の結果で決まるレース1のグリッド、Q3の結果で決定するレース2、ともに石浦宏明選手(1号車 P.MU/CERUMO・INGING SF14)がポールポジションを獲得した。これに対して、このレースの前戦まででポイントリーダーになっていた関口雄飛選手(20号車 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)は、Q1、Q2ともに13位に終わり、両方のレースを13位からスタートすることになった。予選前まで期待されていたルーキーシーズンでのチャンピオン獲得に黄色信号が灯ってしまった形となる。
Q1最速タイムは石浦宏明選手、ポイントリーダーの関口選手は13位に沈む
予定より5分遅れで20分の予選1回目(Q1)が始まった。土曜日の鈴鹿サーキットは快晴で、各車ドライタイヤを装着してコースに入っていった。スーパーフォーミュラのタイヤレギュレーションでは、前回のレースから持ち越しの中古タイヤ2セット、新品タイヤ4セットというルール。このため、Q1で2セット、予選2回目(Q2)で1セット、予選3回目(Q3)で1セットという使い方が常道になる。特に今回はQ1の順位が日曜日の決勝日のレース1スタート順位となるため、20分のQ1で新品タイヤを2回利用してタイムアタックする形となる。
このQ1でトップタイムをマークしたのは、トヨタ製エンジンを搭載する石浦宏明選手(1号車 P.MU/CERUMO・INGING SF14)。石浦選手は、午前中に行なわれた練習走行でも、1回目のタイムアタックの段階でもトップタイムをマークしており、見るからに好調さを維持している。Q1で2位になったのは、チームメイトの国本雄資選手(2号車 P.MU/CERUMO・INGING SF14)となる。3位は野尻智紀選手(40号車 DOCOMO DANDELION M40Y SF14)で、ホンダ勢の最上位となった。
その中で意外な結果となったのは、2台のチーム・インパル勢。ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手(19号車 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が12位、ポイントリーダーの関口雄飛選手(20号車 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が13位と沈むことになり、ポイントリーダーの関口選手は明日のレース1を13位からスタートする。8位までがポイントを得ることができる決勝レースに向けて厳しいグリッドになってしまった。
レース1のポールポジションを獲得した石浦選手は1ポイント加えて20点。これによりポイントリーダーの関口選手との差は8ポイントに縮まった。
Q1予選結果
順位 | 号車 | ドライバー | マシン | エンジン | タイム |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 石浦宏明 | P.MU/CERUMO・INGING SF14 | TOYOTA | 1'37.453 |
2 | 2 | 国本雄資 | P.MU/CERUMO・INGING SF14 | TOYOTA | 1'37.801 |
3 | 40 | 野尻智紀 | DOCOMO DANDELION M40Y SF14 | Honda | 1'37.833 |
4 | 36 | アンドレ・ロッテラー | VANTELIN KOWA TOM'S SF14 | TOYOTA | 1'37.884 |
5 | 65 | ベルトラン・バゲット | GREEN TEC/NAKAJIMA SF14 | Honda | 1'37.941 |
6 | 37 | 中嶋一貴 | VANTELIN KOWA TOM'S SF14 | TOYOTA | 1'38.048 |
7 | 41 | ストフェル・バンドーン | DOCOMO DANDELION M41Y SF14 | Honda | 1'38.153 |
8 | 34 | 小暮卓史 | DRAGO CORSE SF14 | Honda | 1'38.239 |
9 | 16 | 山本尚貴 | TEAM 無限 SF14 | Honda | 1'38.288 |
10 | 8 | 小林可夢偉 | SUNOCO TEAM LEMANS SF14 | TOYOTA | 1'38.484 |
11 | 64 | 中嶋大祐 | GREEN TEC/NAKAJIMA SF14 | Honda | 1'38.491 |
12 | 19 | ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ | ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14 | TOYOTA | 1'38.525 |
13 | 20 | 関口雄飛 | ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14 | TOYOTA | 1'38.592 |
14 | 10 | 塚越広大 | REAL SF14 | Honda | 1'38.761 |
15 | 18 | 中山雄一 | KCMG Elyse SF14 | TOYOTA | 1'38.788 |
16 | 7 | ナレイン・カーティケヤン | SUNOCO TEAM LEMANS SF14 | TOYOTA | 1'38.916 |
17 | 4 | ウィリアム・ブラー | フジ・コーポレーション KONDO SF14 | TOYOTA | 1'39.006 |
18 | 3 | ジェームス・ロシター | フジ・コーポレーション KONDO SF14 | TOYOTA | 1'39.076 |
19 | 11 | 伊沢拓也 | REAL SF14 | Honda | 1'39.469 |
関口雄飛選手はQ2でも13位に沈み、明日は両レースともに13位からスタート
14台から8台に絞られるQ2は7分間で行なわれた。Q1で10位となった小林可夢偉選手(8号車 SUNOCO TEAM LEMANS SF14)がQ1の最後でコースアウトしてクルマを止めてしまったため、Q2は残りの13台で戦われることになった。Q1よりも短い7分間での戦いとなるため、グリーンライトが点灯すると、各車一斉にコースインしていった。コース上では、各車とも有利な位置でタイムアタックがしたいと、ウォームアップラップに追い越しが発生したりと、駆け引きをしながら予選を進めていった。
そのQ2でトップタイムをマークしたのは国本雄資選手、2位は石浦宏明選手とセルモ・インギング勢が、Q1に次いで1-2をマークした。3位はQ1は7位に終わったストフェル・バンドーン選手(41号車 DOCOMO DANDELION M40Y SF14)、4位は野尻智紀選手となり、ダンデライアンの2台が並んだ。その後ろもナカジマレーシングの2台、トムスの2台と、Q3に進める上位8台はチームごとに2台ずつ並ぶ結果となった。
Q2での大番狂わせは、チーム・インパルの2台。オリベイラ選手が10位、関口選手が13位と下位に沈む結果となり、どちらもQ3に進むことができなかった。ポイントリーダーの関口選手は、この結果により、明日のレース1、レース2ともに13位グリッドからスタートすることになり、両方ともポイント獲得が精一杯となりそう。いきなりタイトル獲得に黄色信号が灯ってしまったということができるだろう。
Q2予選結果
順位 | 号車 | ドライバー | マシン | エンジン | タイム |
---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 国本雄資 | P.MU/CERUMO・INGING SF14 | TOYOTA | 1'37.364 |
2 | 1 | 石浦宏明 | P.MU/CERUMO・INGING SF14 | TOYOTA | 1'37.589 |
3 | 41 | ストフェル・バンドーン | DOCOMO DANDELION M41Y SF14 | Honda | 1'37.673 |
4 | 40 | 野尻智紀 | DOCOMO DANDELION M40Y SF14 | Honda | 1'37.877 |
5 | 65 | ベルトラン・バゲット | GREEN TEC/NAKAJIMA SF14 | Honda | 1'37.895 |
6 | 64 | 中嶋大祐 | GREEN TEC/NAKAJIMA SF14 | Honda | 1'37.938 |
7 | 37 | 中嶋一貴 | VANTELIN KOWA TOM'S SF14 | TOYOTA | 1'38.020 |
8 | 36 | アンドレ・ロッテラー | VANTELIN KOWA TOM'S SF14 | TOYOTA | 1'38.023 |
9 | 10 | 塚越広大 | REAL SF14 | Honda | 1'38.175 |
10 | 19 | ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ | ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14 | TOYOTA | 1'38.208 |
11 | 16 | 山本尚貴 | TEAM 無限 SF14 | Honda | 1'38.212 |
12 | 34 | 小暮卓史 | DRAGO CORSE SF14 | Honda | 1'38.546 |
13 | 20 | 関口雄飛 | ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14 | TOYOTA | 1'38.795 |
14 | 8 | 小林可夢偉 | SUNOCO TEAM LEMANS SF14 | TOYOTA | 出走せず |
F1昇格が決まっているバンドーン選手が、ポールの石浦選手に1000分の5秒差で2位に
8台に絞られたQ3は、7分で戦われる。Q3で最初に主導権を握ったのは、やはりセルモ・インギングの2台だった。最初に出て行った国本選手がトップタイムをマークしたが、それを石浦選手は軽々と上回って見せ、1分37秒026という素晴らしいタイムをマークしてトップに立つ。
その石浦選手に対して、セクター1、セクター2で最速タイムを叩き出して追い上げたのがダンデライアンのバンドーン選手。ところが、セクター3では石浦選手のタイムからコンマ数秒遅れ、それまでの貯金を一気に吐きだしてしまう。バンドーン選手はセクター4で再び最速タイムをマークして差をもう一度縮めたが、フィニッシュラインの段階で、石浦選手に1000分の5秒届かず……そのわずかな差で石浦選手がトップタイムとなり、レース2のポールポジションも獲得した。
バンドーン選手が2位で、石浦選手のチームメイトとなる国本選手が3位、バンドーン選手のチームメイトとなる野尻選手が4位という結果になり、1列目、2列目をセルモ・インギングとダンデライアンがそれぞれ分け合うことになった。
この結果、石浦選手はポールポジションに与えられる1ポイントを2回獲得したことになり、ポイントは21点になった。これでランキングトップの関口選手の28点とのポイント差を7点に縮めた。ランキング2位は国本選手の23.5、3位がアンドレ・ロッテラー選手(36号車 VANTELIN KOWA TOM’S SF14)で22点、4位が石浦選手の22点、5位が中嶋一貴選手(37号車 VANTELIN KOWA TOM’S SF14)で20点、6位がバンドーン選手の19点となった。
通常の2レース制の場合は、それぞれのレースでポイントが半分になるが、最終戦はボーナスで優勝にそれぞれのレースの優勝者に3点が加算されることになっている。その意味では、レース1にせよ、レース2にせよ、優勝したドライバーにチャンピオン獲得の大きなチャンスがある。
明日の決勝レースでレース1、レース2ともに石浦選手が優勝すれば、石浦選手の連覇の可能性が高まる。それに対して、レース1ないしはレース2のどちらかで国本選手が勝てば国本選手が初のチャンピオンを獲る可能性が高い。これに対してポイントリーダーの関口選手は、28点と2位の国本選手の4.5点差をつけているが、優勝1回で8点が取れること、どちらのレースも13位スタートでポイントが遠いことを考えるとかなり厳しい状況に追い込まれたと言っていいだろう。関口選手がチャンピオンを獲得するには、13番手という不利なポジションからでも優勝ないしはそれに近い結果を、両方のレースで出さなければ難しいだろう。
Q3予選結果
順位 | 号車 | ドライバー | マシン | エンジン | タイム |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 石浦宏明 | P.MU/CERUMO・INGING SF14 | TOYOTA | 1'37.026 |
2 | 41 | ストフェル・バンドーン | DOCOMO DANDELION M41Y SF14 | Honda | 1'37.031 |
3 | 2 | 国本雄資 | P.MU/CERUMO・INGING SF14 | TOYOTA | 1'37.224 |
4 | 40 | 野尻智紀 | DOCOMO DANDELION M40Y SF14 | Honda | 1'37.438 |
5 | 36 | アンドレ・ロッテラー | VANTELIN KOWA TOM’S SF14 | TOYOTA | 1'37.537 |
6 | 37 | 中嶋一貴 | VANTELIN KOWA TOM’S SF14 | TOYOTA | 1'37.626 |
7 | 65 | ベルトラン・バゲット | GREEN TEC/NAKAJIMA SF14 | Honda | 1'37.898 |
8 | 64 | 中嶋大祐 | GREEN TEC/NAKAJIMA SF14 | Honda | 1'37.961 |
予選後記者会見
──それぞれ今日を振り返ってほしい。
石浦選手:今回は予選で2点獲ることを目標にしてきたので、獲れてほっとしている。こんなに順調にいくとは思っていなかった。選手権も厳しいと思っていたので、正直ビックリしている。スポーツランドSUGOでの前戦は、僕がスーパーフォーミュラに復帰してから初めてというぐらいわるいレースになってしまった。1回落ち込んだので、チーム一丸となってわるいところを見直して、国本選手とも来る途中にどこがわるいのか相談しながらサーキットに来た。明日のレースをやってみないのとなんとも言えないが、とりあえずはほっとしている。
国本選手:フリー走行から調子がよくて今回は行けると思っていた。ただフリー走行の最後に別のタイヤを履いたときに思ったようなバランスが出ていなくて、石浦さんのセッティングを見ながら合わせ込んで、Q1、Q2、Q3と気持ちよくアタックできた。でもそれ以上石浦さんの調子がよいので、そこはなんでだろうと思っている。今晩は石浦さんにいっぱいお酒を飲ませて準備したい(笑)。
野尻選手:走り始めから調子はよくて、逆にバランスが取れすぎていたかなと思っている。触るに触れないし、正解はこれだというセットアップにたどりつかなかったけど、最終的にはいいセットアップで走れた。予選も力を出し切れたかなという部分がある。
今のスーパーフォーミュラはほんのちょっと変えてだけで、すごく変わってしまう。そんな中でいいセットアップにできたことはいいこと。ただ、どう考えても石浦さんに届かないなという部分があるので、そこは明日課題がある。明日はレース1、レース2で前の方からスタートするが、タイトルはまったく考えていないので、エンジニアとはレース1で全部オーバテイク使ってやろうと言っている。ロケットのように行くつもりなので、前の人にはぶつかったらすいませんという感じです(笑)。
バンドーン選手:予選はよかった。レース2はいい順位が獲れたけど、レース1が7位というのがちょっと残念。このコースはオーバーテイクが難しいから。Q1からセットアップを少し変えたら、Q2とQ3はよくなった。僕たちは非常に速い車を持っているし、快適。石浦さんと1000分の5秒差まで近づけてよかった。レース2は長いレースになり、戦略が重要なので、明日までよく考えて頑張っていきたい。
──4選手に、予選での新品タイヤの使い方を教えてほしい。
石浦選手:僕たちはスポーツランドSUGOでQ3まで残れなかったので、比較的いいタイヤがあって、Q1で2つ、Q2で1つ、Q3で1つという使い方をした。
国本選手:同じ
野尻選手:同じ
バンドーン選手:同じ
──石浦選手に、国本選手が石浦選手との差が分からないと言っていたが、その差は何か?
石浦選手:これまで鈴鹿ではポールを獲っていないので、スーパーフォーミュラのオンボードカメラのDVD(筆者注:スーパーフォーミュラ 公式オンボード映像DVD「DRIVER’S EYESVol.2」)を購入して、ほかの選手がどのように走っているのかを見て研究した。ドライバーが見るとラインやシフトなど結構細かなところが違うので、それを家族が何をそんなに見ているんだと不思議な顔をするぐらい繰り返し見て研究してきた。
──例えばどの選手がが参考になったのか?
石浦選手:誰と誰とかでなくみんな参考になった。フリー走行とか、予選とかどんなバランスで入っているのとかををチェックした。例えば、鈴鹿の国本選手のクルマは僕のクルマと同じでやれているなという感じだが、それをポールを獲った山本選手の走りと比較してみると、国本選手がここが足りないだろうと感じているだろうなと思うところが、山本選手はできていたりなどが分かって参考になった。
──関口選手が13位だったことについてどう思うか?
石浦選手:たぶんダンデライアンの2人もそうだと思うが、セットアップをちょっと変えただけで、あるいはその直前にどんなカテゴリーのサポートレースがあったのかという違いで旧に悩み始めたりするのが今のスーパーフォーミュラ。関口選手がどうだったのかは見ていないので分からない。
──その話し(関口選手が13位)を聞いたときの感想は?
石浦選手:驚いた。セッションが終わった後にはゼッケン20がどこにいるかは当然気になったし。関口選手が大量にポイントを取ると、僕たちはノーチャンスになるので。ただ、セッション中はほかの人がどうなのかなんて気にしている余裕がないほど、集中して臨んでいた。
──タイトルへの意気込みを石浦選手、国本選手、バンドーン選手に。
石浦選手:去年はポイントリーダーで迎えて雨のレースになったりなど大変な最終戦を過ごしたので、それに比べればプレッシャーは全然ない。今回は追う側で来ているので、かなり余裕がある。自分の力を出し切ればこうして会見場に来れると思っているので、去年より全然気持ちは楽。
国本選手:明日のレースでは強い気持ちでチャンピオンを絶対獲りたい。
バンドーン選手:まだチャンスがある中で戦えるのはいいこと。レース1で7位からスタートするのは厳しいけど、チャンスがある限り戦っていきたい。レースペースはいいので、レースで頑張りたい。
──バンドーン選手に、来年はF1にステップアップするけど、今年スーパーフォーミュラを戦っての感想は?
バンドーン選手:僕にとってはよいシーズンだったと思う。様々な経験を積めたし、結果は上がったり下がったりだけど、まだチャンピオンのチャンスはある訳だし。今年の経験が来年以降のF1参戦で生きると思っている。
──バンドーン選手はQ3において、セクター1、セクター2、セクター4では石浦選手を上回っていたが、セクター3でだけ負けて5/1000秒差になってしまっていた。セクター3で何があったのか?
バンドーン選手:Q1からずっとそのセクター3だけがよくなかった、ほかのセクターはわるくなかったのに。それがなんであるかはまだ分からない。