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【スーパーフォーミュラ最終戦】F1に昇格するストフェル・バンドーン選手記者会見

「来年、日本に、ここ鈴鹿にマクラーレン・ホンダのドライバーとして戻ってこれるのは最高だよね」

2016年10月30日 決勝開催

 10月29日~30日の2日間にわたり、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットにおいて「全日本スーパーフォーミュラ選手権 最終戦 第15回 JAF 鈴鹿グランプリ」が行なわれた。レース1は国本雄資選手(2号車 P.MU/CERUMO・INGING SF14)が優勝し、レース2はストフェル・バンドーン選手(41号車 DOCOMO DANDELION M41Y SF14)が優勝した。

 その結果、国本選手がシリーズチャンピオンを獲得した。

 2017年のF1世界選手権に、マクラーレン・ホンダからレギュラードライバーとして参戦することが決まっているバンドーン選手にとっては、2016年の最終戦レース2がスーパーフォーミュラ最後のレース。そのことを記念して短い時間だったが、バンドーン選手のスーパーフォーミュラでの最後の記者会見が開催された。その模様をお伝えしていきたい。

2017年はマクラーレン・ホンダのレギュラードライバーになるストフェル・バンドーン選手

F1への本格昇格を控え、新しい経験として選んだスーパーフォーミュラ参戦

 レース2で優勝したストフェル・バンドーン選手、第5戦の岡山国際サーキットのレース1でも優勝しており、ルーキーながら年間2勝を記録し、シリーズランキングでは最終的に4位になるという大活躍を見せた。バンドーン選手は、それぐらいの結果を出してもおかしくない逸材であることを否定するレース業界関係者は誰もいない。

 バンドーン選手は若くしてマクラーレンの若手育成プログラムに選出され、昨年はF1直下のカテゴリーであるGP2でにおいて圧倒的な成績でシリーズチャンピオンを獲得。F1昇格も間違いなしとされたが、マクラーレン・ホンダはフェルナンド・アロンソ選手とジェンソン・バトン選手という2人のF1ワールドチャンピオンによりシートが占められており、バンドーン選手が座るシートがなかったのだ。

 2017年こそF1昇格が確定的と言われているなか、バンドーン選手が選んだのが日本のスーパーフォーミュラに参戦するという道だ。それと同時にスーパーフォーミュラと重ならない限りはF1にも帯同してマクラーレン・ホンダのリザーブドライバーの役目を務めた。

 実際、今年のF1 第2戦 バーレーンGPでは、開幕戦で負傷したアロンソ選手の代役として、急遽F1にデビューすることになり、予選順位で2009年のF1ワールドチャンピオンであるバトン選手を上回った。、さらに決勝でもバトン選手がリタイアしたのに対して、バンドーン選手は10位で1ポイントをゲットし、2016年のマクラーレン・ホンダの初ポイントをデビューレースでいきなり記録したのだ。

 そんな実力を持っているバンドーン選手がスーパーフォーミュラ参戦を選んだのは、マクラーレン・ホンダのシートに空きがなく2016年をリザーブドライバーとして過ごすとしても、なんらかのシリーズに参戦して実戦勘を失いたくないためだったという。世界的なフォーミュラカーレースを見た場合、F1を除いてGP2以上のシリーズというと、実は選択肢は3つしかない。

 1つは米国でのインディカー・シリーズ、もう1つがFormula E、そして最後がスーパーフォーミュラとなる。このうち、インディカー・シリーズはロードコースのレースもあるが、オーバルコースのレースもあり、ロードコースのレースよりやや危険という側面が否めない。F1に昇格する前に怪我でもしてしまっては意味がないし、レース数が多くF1のリザーブドライバーとしての役割に障害がでそうだと考えると、なかなかインディカーのレースは選択肢しずらしい。

 Formula Eは電気モーターを動力にしたフォーミュラカーのレースで、ハイレベルではあるが、電磁自動車という特性がやや特殊なレースという感が否めないし、マクラーレンのパートナーであるホンダも参戦していない。

 そう考えると、ホンダが参戦しており、イベント数も7イベントと比較的少ないスーパーフォーミュラを選ぶのは論理的な解だと言える。バンドーン選手自身日本に来たのはチーム(マクラーレン)とホンダが話し合って決めたことだと説明しており、マクラーレンにとってもエンジンパートナーとなるホンダの元で“修行”させるというプランは魅力的に映ったのだろう。

 結果から言えば、バンドーン選手のスーパーフォーミュラ挑戦は大成功だったと言ってよいだろう。第5戦 岡山のレース1と、最終戦 鈴鹿のレース2で優勝。第3戦 富士スピードウェイのレースでは、徐々に乾いていくという難しい予選でポールポジションを獲得した。

 ランキングは4位と、同じルーキーである関口雄飛選手の3位には負けたものの、日本コースをそれまで1度も走ったことがないというハンデがあったことを考えれば大健闘と言ってよいのではないだろうか。

継続参戦するチャンスがあれば2年目にはチャンピオンを獲れると思う

──今年1年スーパーフォーミュラを戦って、どのように評価していますか?

バンドーン選手:これまで僕が体験してきたこととは異なることを経験できた1年だった。このシリーズには非常に速くて、才能があるドライバーがいて、とてもすごいシリーズだよ。僕にとっては初めてづくしの年だった。初めてのクルマ、初めてのタイヤ、初めてのチーム、レースそのものだってで、学ぶことだらけだったよ。

──このスーパーフォーミュラでいろいろなドライバーと戦いましたが、彼がF1に来たら困るなーというドライバーはいましたか?

バンドーン選手:このシリーズに出ているドライバーはすべてプロフェッショナルだ。シーズンを通して、素人みたいなクラッシュをするドライバーは誰もいなかった。このシリーズはどんなドライバーにとっても難しいレースだと思う。もちろん、今年一緒に戦ったアンドレ・ロッテラー選手や、ベルトラン・バゲット選手、ジェームス・ロシター選手、そのほかの選手だってチャンスがあればまた同じフィールドで戦いたいと思えるドライバーだし、F1に来ないでくれなんてそんな失礼なことは言えない。

──仮に来年もダンデライアンで同じ体制で戦うとすればチャンピオンを獲る自信がありますか?

バンドーン選手:そう思う。今年はすべてが新しかった。日本文化も、クルマも、サーキットも。もしもう1年戦うことができれば、もっとよいポジションを狙うことが可能になる。ただ、来年はF1に行ってしまうのでそれは叶うことはないのだが……。

──日本のファンに対してはどのような印象を持ちましたか?

バンドーン選手:日本のファンは本当に最高だ、僕を一生懸命応援してくれたし。来年、日本に、ここ鈴鹿にマクラーレン・ホンダのドライバーとして戻ってこれるのは最高だよね。本当日本のファンはユニークだよね、素敵な帽子を作って被ってきてくれたり、面白い旗を作って僕たちを楽しませてくれたりする。熱心にサインも求めてくれるし。本当次にF1でここに戻ってくるのが楽しみだ。

──今シーズンを振り返って一番印象に残っているのは?

バンドーン選手:どれだろう……今日は最後のレースで勝てたし今日が一番かな。でも、第3戦富士でのポールポジションも特別だった。Q1からQ3に向けて徐々にトラックコンディションが変わっていくという難しい状況の中でポールポジションを獲得できたのはいい思い出だね。

──GP3やGP2などのヨーロッパのシリーズに参加しているドライバーにスーパーフォーミュラをお勧めするか?

バンドーン選手:それはケースバイケースなので、答えるのが難しい質問だ。F1に到達するのにここに来るのが必須かと言えばそうではない。でも僕の場合のようにここに来るチャンスがあって参戦すれば、それがF1に向けてのよいトレーニングになったことは間違いない。このスーパーフォーミュラの車両は、F1以外では最も速いフォーミュラカーなので、チャンスがあれば試してみるのはわるいことではない。

──F1ドライバーになったらプライベートジェットを買いますか?

バンドーン選手:(笑)、そんな予定はまだない。まずはF1でよい結果を出すことが大事だ。