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ルネサス、「CES 2017」で展示した自動運転デモ車を日本で初めてデモ走行

消費電力25W、多数決システムやシステム監視マイコンで安全性に配慮

2017年4月6日 実施

都内ホテル駐車場において、自動運転のデモ走行を行なった

 ルネサス エレクトロニクスは4月6日、都内ホテル駐車場において「CES 2017」で展示した自動運転デモ車を日本で初めて公開するとともに、自律自動運転によるデモ走行を実施した。

 この自動運転車はリンカーンをベースに、ルネサスの第3世代R-Car スタータキット Premier(R-Car H3)を2基、車両コントロールマイコンのRH850/P1H-Cを1つ搭載しているなど高度自動運転用の「HADソリューションキット」を2セット搭載。ルネサスが独自に改造を行ない、自動運転可能なようにソフトウェアを構築したもので、車種にとくに意味はない。

ルネサスが実施した自動運転デモ

 システムについては、ルネサス 第一ソリューション事業本部 セーフティ・ソリューション事業部 シニアエキスパート 吉田直樹氏が解説。このシステムは完全自動運転となるレベル4自動運転を限定的に実現するもので、カメラ、ヴェロダイン製LiDAR、ミリ波レーダー、V2X(デモでは信号とのコミュニケーション)などを装備。複数のセンサーを使って自律自動運転走行するセンサーフュージョン車となっている。

ルネサス エレクトロニクス株式会社 第一ソリューション事業本部 セーフティ・ソリューション事業部 シニアエキスパート 吉田直樹氏

 ちなみに、限定されたレベル4というのは、現在は前方方向にしかセンサーが配置されておらず、側方や後方をきちんと見ていないため。もちろん、センサー追加、HADソリューションキット追加で対応することが可能なもので、ルネサスのブロックダイヤグラムでは、8基のR-Car H3で2018年を目標に開発していくものとなっていた。

 この頭脳となるのが、ルネサスのSoCであるR-Car H3で、デモ車ではHADソリューションキットを2基搭載しているため、都合R-Car H3を4基搭載。1基のR-Car H3はカメラからの映像処理に割り当て、そのほかの3基のR-Car H3でLiDAR、ミリ波レーダー、V2Xの信号を処理。この3基のR-Car H3では、多数決システムも採用しており、1基のR-Car H3が万が一異常な値を出す状態に陥っても、2基のR-Car H3で正しい問題解決を行なう。

 また、車両コントロールマイコンのRH850/P1H-Cによりシステムを監視。RH850でイーサネットからのサイバー攻撃などに対応していく。

リンカーンをベース車に使用
自動運転の心臓部はトランクルームに搭載されている
HADソリューションキットを2基搭載
ちょっと見では、カメラ入力に映像線が来ていないが、USB経由で入れているとのこと
HADソリューションキット単体
こちらはV2Xのユニットのようだ
奥には安定化電源やパッチベイなど
ルーフには各種機器が搭載されている
ヴェロダイン製のLiDAR
ミリ波レーダーはこの位置に。そのほか、前バンパー左右に入っているという
リアバンパーにはソフトウェアメーカーなどの名前が。これらの会社のソリューションが採用されている

 現在は、クラウドベースのサービスを積極的に用いるクルマは存在しないが、将来はクラウドベースでシステムのアップデートを行なうなどのクルマが普及するとみられており、そういったニーズに対して安全なソリューションを提供していく。

 そして、ルネサスのシステムでポイントとなるのは低消費電力。ルネサスはさまざまな車載用半導体を提供しており、その知見を活かした形で、これらのシステムを25Wの消費電力で構築。単純計算で、HADソリューションキット1つは12.5Wで動作していることになる。

自動運転デモカーのロードマップ
今回のデモカーについて
デモシナリオ
HADソリューションについて
HADソリューションのユースケース
セキュリティ構成
自動運転中の室内
認識結果。LiDARの出力結果をベースに作られているように見える

 自律自動運転のシナリオは、前方車を認識しつつ走行、V2Xで信号の色を認識しての走行に加え、車内での操作で擬似的にハードウェアトラブルを発生させ、あらかじめ設定したセーフエリアに駐車するというもの。その走行については、車内から撮影した映像を参照していただきたい。

ルネサス、リンカーンの自動運転デモ車を日本初公開 (車内映像)

 今後、クルマの自動運転機能は、現在のクルーズコントロール機能や運転支援機能などと同様に必須の機能となっていくだろう。その際に、自動運転ソリュショーンのビジネス規模は拡大が見込まれている。ルネサスでは、半導体デバイスはもちろん、HADソリューションキットやデバイスドライバ、ミドルウェアの辺りまでの提供を視野に入れ、自動車メーカーと話し合うことで、制御などの部分、いわゆる“走りの味”の実現も行なっていきたいとした。