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【2017 NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース】スーパーフォーミュラ開幕戦、中嶋一貴選手がポールポジションから独走して優勝

JSB1000はホンダの高橋巧選手が優勝

優勝した中嶋一貴選手(37号車 VANTELIN KOWA TOM'S SF14/TOYOTA RI4A)

 スーパーフォーミュラの開幕戦およびMFJ全日本ロードレース選手権シリーズ JSB1000 第2戦が同時に行なわれる「2017 NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース」が、4月22日~23日の2日間にわたって鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催された。

 4月23日には、スーパーフォーミュラおよびJSB1000の決勝レースが行なわれ、スーパーフォーミュラは中嶋一貴選手(37号車 VANTELIN KOWA TOM'S SF14/TOYOTA RI4A)が優勝を飾った。MFJ全日本ロードレース選手権シリーズ JSB1000は高橋巧選手(634号車 MuSASHI RT HARC-PRO Honda CBR1000RR SP2)が優勝した。

レース前の予想通り、中位以下は1本交換のためにレース序盤にピットイン

スタートの模様。中嶋一貴選手がトップを維持、2位に山本尚貴選手が上がる

 スーパーフォーミュラの決勝レースは、予定されていた13時45分よりもやや早く、13時43分にスタートが切られることになった。レースのスタートは各車とも順調にスタートを切り、ポールポジションからスタートした中嶋一貴選手はトップのまま1コーナーに飛び込んでいくことに成功した。

 それとは対照的に、予選2位の国本雄資選手(1号車 P.MU/CERUMO・INGING SF14/TOYOTA RI4A)はやや出遅れ、3位からスタートした山本尚貴選手(16号車 TEAM MUGEN SF14/Honda HR-417E)が1コーナーまでに国本選手をオーバーテイクして2位に上がった。4位は予選4位の石浦宏明(2号車 P.MU/CERUMO・INGING SF14/TOYOTA RI4A)。

 5位には予選7位からスタートしたアンドレ・ロッテラー選手(36号車 VANTELIN KOWA TOM'S SF14/TOYOTA RI4A)が上がり、予選5位からスタートした塚越広大選手(10号車 REAL SF14/Honda HR-417E)もスタートで順位を落とすことになった。

 今回のレースは、レース前から各チームのピットストップ作戦が分かれてくることが予想されていた。というのも、今年のルールではピットインが義務づけられるだけでなく、少なくとも1本(4本1セットではなく、1本以上)のタイヤを交換することが義務づけられていた。つまり、通常であればタイヤ4本を交換するところだが、1本だけを交換することも可能。スーパーフォーミュラでは4本同時にタイヤ交換ができる人数のクルーが認められていないため、交換するタイヤの本数を減らせばピット作業にかかる時間を大幅に短縮することができるのだ。このため、特に中位以下のチームによっては序盤にピットインし、タイヤ交換と給油を済ませてしまうチームが出てくるのでは、というのがレース前の予想だった。

 実際、上位勢では3位を走っていた国本選手、4位を走っていた石浦選手、5位を走っていたロッテラー選手、それ以下の選手も多くが序盤でピットに入る展開。しかも、ほとんどのドライバーがタイヤ1本のみを交換する作戦を取り、最小限のピット時間でピットアウトする形になった。かつ交換する場所もドライバーによっては右フロントだったり、左リアだったりとチームやドライバーによって選択が分かれることになった。

 ひととおり序盤のピットストップが終わってみると、ピットインをしていないのはトップの中嶋一輝選手、2位の山本尚貴選手、3位の塚越広大選手、4位の伊沢拓也選手(41号車 DOCOMO DANDELION M40S SF14/Honda HR-417E)、5位の小林可夢偉選手(18号車 KCMG Elyse SF14/TOYOTA RI4A)、6位の大嶋和也選手(8号車 SUNOCO TEAM LEMANS SF14/TOYOTA RI4A)、7位の野尻智紀選手(40号車 DOCOMO DANDELION M40S SF14/Honda HR-417E)の7台のみで、8位の国本選手以下はピットインを終えるという展開でしばらく膠着することになった。

セーフティカーの入ったタイミングが勝負の分かれ目に

 そうした膠着状態だったレースが動いたのは、レース後半の22周目。スプーンカーブで他車がピットインしたため、3位まで上がっていた大嶋和也選手がスプーンカーブで単独スピンして、コースの中央に停止してしまう。これにより、トップの中嶋選手、山本選手がストレートを通過した直後にセーフティカーが出されることになり、ピットインをしていなかった2台に影響が出そうになる。

 しかし、実際にセーフティカーがコースに出てきたのは2台が通過してだいぶ経ってからで、結局トップの2台はコース全体のイエローフラッグが出たことで、他のクルマもスピードを落とさざるを得なくなったことなどが影響して、悠々とピットストップを行なう。結局、中嶋選手も山本選手も順位を落とすことなくトップ、2位のまま隊列に復帰することができた。

 逆についてなかったのは、このセーフティカーの直前まで3位を走っていて、セーフティカーが出る直前にタイヤ交換を行なっていた塚越広大選手。塚越選手は、4本ともタイヤ交換を行なったことで順位を大きく下げることになり、6位ロッテラー選手の後ろ、7位に順位を落としてしまった。塚越選手もあと2周ピットインしなければ、トップ2台と同様に余裕を持ったピットストップができていた可能性が高く、もったいない展開になってしまった。

 ここからは、そうしたタイヤ4本を交換した塚越選手がいずれもタイヤ1本しか交換していない前を行く車両を抜けるかどうかに焦点が集まったが、前のロッテラー選手に迫るものの、結局追い抜くことができなかった。新品タイヤの高いグリップ力をもってしても抜けないとあれば、今年のルールではタイヤ1本交換がセオリーということになっていきそうだ。

 その後、レースは特に順位変動もなく、ポールポジションからスタートした中嶋選手が優勝。2位は山本選手、3位は国本選手、4位は石浦選手、5位はロッテラー選手、6位は塚越選手という順位でゴールした。

優勝した中嶋一貴選手(37号車 VANTELIN KOWA TOM'S SF14/TOYOTA RI4A)
2位になった山本尚貴選手(16号車 TEAM MUGEN SF14/Honda HR-417E)
3位になった国本雄資選手(1号車 P.MU/CERUMO・INGING SF14/TOYOTA RI4A)
スーパーフォーミュラ第1戦 決勝レース結果
順位カーナンバードライバーマシンエンジン周回数タイム
137中嶋一貴VANTELIN KOWA TOM'S SF14TOYOTA RI4A351:03'18.440
216山本尚貴TEAM MUGEN SF14Honda HR-417E351:03'23.526
31国本雄資P.MU/CERUMO・INGING SF14TOYOTA RI4A351:03'27.263
42石浦宏明P.MU/CERUMO・INGING SF14TOYOTA RI4A351:03'27.848
536アンドレ・ロッテラーVANTELIN KOWA TOM'S SF14TOYOTA RI4A351:03'29.240
610塚越広大REAL SF14Honda HR-417E351:03'29.706
764中嶋大祐TCS NAKAJIMA RACING SF14Honda HR-417E351:03'35.347
841伊沢拓也DOCOMO DANDELION M40S SF14Honda HR-417E351:03'36.747
918小林可夢偉KCMG Elyse SF14TOYOTA RI4A351:03'37.390
1015ピエール・ガスリーTEAM MUGEN SF14Honda HR-417E351:03'40.001
117フェリックス・ローゼンクヴィストSUNOCO TEAM LEMANS SF14TOYOTA RI4A351:03'40.555
1219関口雄飛ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14TOYOTA RI4A351:03'42.131
1365ナレイン・カーティケヤンTCS NAKAJIMA RACING SF14Honda HR-417E351:03'42.644
144山下健太FUJI×raffinee KONDO SF14TOYOTA RI4A351:03'43.333
1550小暮卓史B-Max Racing team SF14Honda HR-417E351:03'46.838
1640野尻智紀DOCOMO DANDELION M40S SF14Honda HR-417E351:03'54.729
173ニック・キャシディFUJI×raffinee KONDO SF14TOYOTA RI4A341:03'48.843
1820ヤン・マーデンボローITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14TOYOTA RI4A3156'48.676
R8大嶋和也SUNOCO TEAM LEMANS SF14TOYOTA RI4A2135'56.948

圧勝といってよい勝ち方をした中嶋選手

表彰台に上った国本雄資選手(左)、中嶋一貴選手(中央)、山本尚貴選手(右)

 スーパーフォーミュラの決勝レース終了後には、表彰台に立った3ドライバーと、優勝チームの監督による記者会見が行なわれた。

──それぞれに今日のレースを振り返ってほしい。

中嶋一貴選手:ホッとした。去年も勝てるチャンスがあったのに自分のミスで逃していたので。今回はクルマが本当に調子よくて、贅沢な悩みだけどもそれが逆に重圧になっていた。トヨタエンジンのおかげでスタートでは前を維持することができ、タイヤを交換するタイミングもドンピシャで、内容としては100点だった。

舘信秀監督(VANTELIN KOWA TOM'Sチーム監督):去年1勝もできなかったのでモヤモヤしていたが、それが今日の優勝で吹き飛んだ。

中嶋一貴選手
館信秀監督

山本尚貴選手:スタートがすべてで、そこにかけていた。抜くことができた国本選手はもちろんのこと、中嶋選手よりもよい動き出しだったが、1コーナーまでに抜くことができなかった。その後レースを通して中嶋選手について行くことができず、勝てないのは悔しかったが、次のレースに向けて改善すべき点はつかめた気がするので、今は早く岡山に行って走りたい。冬の間のテストでは細かなトラブルがあったが、それはチームが解決してくれた。鈴鹿は毎年調子がよいので、シーズンを通して力が発揮できるようにしていきたい。

国本雄資選手:全体的にうまくいかないレースだった。朝からクルマに不具合があってそれを調整してきたが、まだうまくいっていない部分があった。ピットインのタイミングも難しくて、前の2台に徐々に離されるレースになってしまった。

──今回各選手ともに交換するタイヤは1本でしたが、国本選手は右フロント、中嶋選手は右リア、山本選手は左フロントだったが、それぞれ変えるタイヤをそこにしたのはどうしてだったかと、終盤に入ってからのクルマのバランスがどう変わったのか教えてほしい。

中嶋一貴選手:リアを変える場合、フロントだけを変える場合と比較して時間がかかることは分かっていた。左の前か右の後ろのどちらかだと思っていた。タイヤを換えてからのバランスはよくて、リアがつらかったのが解消された。

山本尚貴選手

山本尚貴選手:自分たちもバランスに合わせて変える場所を決めた。後ろの方がリスクが多くて時間がかかることは分かっていたが、追い越さないといけない立場だったので、前に出る手段として前を交換することにした。交換した後はやはり速くなった。

国本雄資選手:リアよりもフロントの方がピットの時間が短くなると分かっていて、実際短くて済んだ。右フロントを選んだのは、その方がマシかなと思ったので。

──館さんは、先日古稀の誕生日を迎えたと聞いている。その古稀の後、こうした中嶋選手が勝ってくれたことについてどう思うか?

舘信秀監督(VANTELIN KOWA TOM'Sチーム監督):古稀というのは正直別に嬉しくない。年齢のことは忘れてください(笑)。今日の優勝は嬉しかったし、この間のSUPER GTの岡山戦でも37番が勝ったし非常に嬉しい。去年はスーパーフォーミュラもSUPER GTも勝てなかったので……。

中嶋一貴選手:古稀のお祝いの時にはテストとかあって参加できなかったので、ここでおめでとうを言いたい。また、この間お金がかかることをしてしまった(筆者注:SUPER GTの練習走行でマシンを破損してしまったことを意味していると思われる)ので、今日の賞金で補填してほしい(笑)。

──新タイヤになっての感想はどうか? 特に中段以降の選手は昨年よりもレース中のタイムが下がっているように見えたが……。また、山本選手にはガスリー選手と仲よくやってるんですか?(この質問をしたのは今回ピットリポーターを務めていた松田次生選手)

中嶋一貴選手:タイヤは温度が高かかったのでその影響があったと思う。去年の鈴鹿はレースペースがとんでもなかったので、またクルマのセッティングにもよると思う。

山本尚貴選手:去年よりも気温が高かったのは影響しているし、前の方で走るとクリーンエアがあたるし、集団で走ると落ちる要素がある。そう考えると今年はどこで走るかも重要になるのかもしれない。

 ガスリー選手に関して、仲がよいかどうか……松田さんよりは性格がいいと思うので、仲よくできていると思いますよ、松田さんならうまくいかないんじゃないのかな(笑)。冗談です、いつお世話になるか分からないのでよろしくお願いします(会場が日産に移籍する気があるのかざわつくが、もちろん山本選手流のブラックジョーク)。

 ガスリー選手はとてもよく勉強している。オフシーズンも調子がよく、とても注目が集まっていたので正直心中穏やかではなかったが、鈴鹿で結果を出して見返そうと思っていたので、それができたと思っている。お互いにデータを参考にできる相手だし、相乗効果を出していきたいと思っている。

国本雄資選手

国本雄資選手:タイヤのタレを少しずつ感じていて、ガソリンが増えると厳しかった。

──トムスが調子がよくなったのはなぜか?

中嶋一貴選手:秘密です(笑)。鈴鹿でセットアップを変えた部分が影響している。鈴鹿に関しては2段階レベルが上がっており、エンジニアのおかげだと思っている。今後はサーキットが違うので、それぞれに合わせ込む必要があるけど、去年も実は鈴鹿以外はあまりわるくなかった。

──中嶋選手は終盤にオーバーテイクボタンを使っていたが?

中嶋一貴選手:使わなくてもよかったのだが、欲を出して(筆者注:ファステストラップを狙って)使ってみた。実はその使い方は、朝のウォームアップで雄飛(関口雄飛選手)がそういう使い方をしたらうまくいったと自慢してきたので、それをやってみた(笑)。

──中嶋選手に今週ずっとトップだったが、その中でもあえてこれが勝因と言えば何か?

中嶋一貴選手:スタートだと思う。実はほぼストールしかけたのだが、エンジンパワーに助けられた。(ここで山本選手がホンダがパワーないみたいじゃないかと突っ込みを入れると)そっちも十分速かったじゃない。今回はクルマも完璧で、自分もミスなくできてこんな週末もあるんだなと、新しい経験ができた。

──セーフティカーが出てくるまで間があるように見えたが、ドライバーの視点から見て何が起きているように見えていたのか?

中嶋一貴選手:ホームストレートに帰ってきた時に、エンジニアから無線で“あーダメだ”と言われてかなり焦ったが、実際にセーフティカーが出てきたのは問題のないタイミングで、ピットに入るまで大きなロスなく入れたので、ツイてるなとは思った。現場はちょっと危なくて、実際にその現場に行ってみないとコースのどこに止まっているのか分からなかったので、安全運転でいった。

山本尚貴選手:セーフティカーが出たらピットに入ろうと思っていた。でももうストレートは通過してしまっていたので、スプーンの2つめを除いてプッシュした。スプーンでは十分すぎるほど減速してどっちにいても大丈夫なように走ったが、外に行っても内側にいっても危ない位置に止まっていた。

──山本選手に。次に向けて何かを見つけたと言っていたがそれは何か? 嫌ならいいですが……。

山本尚貴選手:嫌ならいいですと言われると嫌です(笑)。ちょっと秘密にしてください、今すぐエンジニアと打ち合わせしたいぐらい何をしたらいいかが見つかったので。今年はクルマのセットアップやアプローチを変えたので、早く岡山に行きたい。

──中嶋選手はWECでも勝ち、ここでも勝ちとかなり乗れているように見えるが、何かが変わったのか?

中嶋一貴選手:自分の中では何も変わっていない。実力は急に上がったり下がったりするモノではないですし。クルマや環境、そしてそういう状況の中で自分が失敗していないということ。去年みたいな失敗が少なくなったと思うので、それをさらに減らしていきたい。また、クルマに乗る時間が長いというのは、ドライバーとしてはとてもありがたいことだと感じている。

7月の鈴鹿8耐につながるJSB1000クラスはホンダの高橋選手が優勝

JSB1000で優勝した高橋巧選手(634号車 MuSASHI RT HARC-PRO Honda CBR1000RR SP2)

 今回のレースは2&4レースとして開催され、スーパーフォーミュラと同時に2輪のMFJ全日本ロードレース選手権シリーズ JSB1000クラスのレースが行なわれた。このクラスに参加している車両は、そのまま7月27日~30日に開催が予定されている「“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース」に参加することができるため、鈴鹿8耐の前哨戦という意味合いももっている。

 今回のレースでは、絶対本命と見られていた中須賀克之選手(1号車 YAMAHA FACTORY RACING TEAM YAMAHA YZF-R1)が序盤のセーフティカー導入中に転倒し、ピットインして再度走り出すものの、結局レース途中でリタイアするという波乱もあり、レースは高橋巧選手(634号車 MuSASHI RT HARC-PRO Honda CBR1000RR SP2)が優勝した。