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Intel、シリコンバレーに自動運転の開発拠点「Autonomous Driving Lab」開設

BMW 7シリーズベースの自動運転プロトタイプ車も展示

2017年5月3日(現地時間) 開催

Intelがシリコンバレーに開設した自動運転車開発拠点「Autonomous Driving Lab」

 半導体メーカーのIntelは5月3日(現地時間)に記者説明会を開催し、同社の自動運転の開発拠点「自動運転ラボ(Autonomous Driving Lab)」を、同社の本社がある米国 カリフォルニア州サンタクララ市に隣接するサンノゼ市に開設したことを明らかにした。

 Intelは2016年11月に自動運転事業本部(Automated Driving Group、ADG)を設立し、新しい事業本部長としてダグ・デービス上席副社長を任命し、本腰を入れて自動運転向けの半導体ビジネスに取り組んでいる。今回発表されたのは、その自動運転事業本部の開発拠点となる自動運転ラボ(Autonomous Driving Lab)で、同社が開発する自動運転技術の実証実験を行なう拠点となる。

 その開設記念イベントの自動運転ワークショップ(Autonomous Driving Workshop)では、報道関係者などを対象にした自動運転車の体験会(関連記事:「Intel、米国カリフォルニア州サンノゼで自動運転車のテスト走行を公開」参照)や、Intelの自動運転技術を解説する担当者による口頭説明、各種の展示などが行なわれた。

2016年11月に設立された自動運転事業本部の開発拠点

 イベントでは、Intelが2016年11月に設立したADG(Automated Driving Group)のトップとなる事業本部長を務める、Intel 上席副社長 兼 自動運転事業本部 本部長 ダグ・デービス氏およびIntel 副社長 兼 自動運転事業本部 自動ソリューション事業部 事業部長 キャシー・ウインター氏の2人が冒頭と最後に挨拶を行なった。

Intel 上席副社長 兼 自動運転事業本部 本部長 ダグ・デービス氏
Intel 副社長 兼 自動運転事業本部 自動ソリューション事業部 事業部長 キャシー・ウインター氏

 Intelの自動運転事業本部は、従来はIoT事業本部(IoT Group、IOTG)の中にあった自動運転向けの事業部が独立して作られたビジネスユニットで、従来IOTGを率いていたダグ・デービス氏が事業本部長として任命されるなど、Intel CEOのブライアン・クルザニッチ氏肝いりの事業本部として設立された経緯がある。

 そもそもダグ・デービス氏は、2016年末時点で引退することを2016年4月に発表していたのだが、それを覆して残留を決めたという経緯がある。

 そして、そのデービス氏の元でADGを率いるのがIntel 副社長 兼 自動運転事業本部 自動ソリューション事業部 事業部長 キャシー・ウインター氏。2016年にIntelにスカウトされたウインター氏は、2011年からDelphi AutomotiveのADAS関連の事業部を率いており、自動車事業での経験を買われてデービス氏とともにADGを率いることになった。

「Autonomous Driving Lab」の看板

 今回Intelが開設することを明らかにしたAutonomous Driving Labは、Intelの本社(RNB、ロバート・ノイス・ビルディング)があるサンタクララ市に隣接するサンノゼ市にあるIntelのキャンパスに設置されている。ここでは、地元市政府からの承認などを受けて公道でもテストできるようになっており、今回は報道関係者などを対象にその試乗なども行われていた。

 また、イベントではデービス氏、ウインター氏、そしてパティ・ロブ氏の3人が開設を記念したテープカットを行ない、自動運転ラボ(Autonomous Driving Lab)の開設を祝った。

左からウインター氏、デービス氏、パティ・ロブ氏。テープカットを行なった

Intelが提供するE2Eの自動運転向け半導体ソリューション

 イベントでは、Intelが開発している各種の自動運転向け技術を展示した。Intelの自動運転のソリューションはE2E(End to End)がウリになっており、自動運転に必要とされるディープラーニングを利用したHPCやデータセンターなどのクラウド向けの半導体、5Gなどの通信向けの半導体、さらには自動車に搭載されるエッジ向けの半導体などの各種の半導体を一体的に提供できることが他社に比べたときのアドバンテージとIntelはアピールしている。今回の自動運転ワークショップでも、そうしたIntelのE2Eのソリューションをアピールする展示が行なわれた。

 例えば、Intelが自動運転向けの開発キットとして提供しているIntel GO Automotive Software Development Kit(SDK)では、Intelの半導体を利用した自動運転車の開発がワンストップでできる機能が提供されており、Atom/Core/Xeonや、Altera FPGAなどのIntelの半導体を利用したソフトウェア開発ができるようになっている。また、自動運転車では、5Gなどの低遅延でかつ広帯域幅なセルラー通信が必要になるが、Intelではそうした5Gの通信機能を開発する開発キットをOEMメーカーに提供しており、MWCなどの通信関連のイベントでも展示されたが、今回の自動運転ワークショップでも展示された。

Intel GO Automotive SDKのデモ
Intel GO Automotive SDKのデモ、5Gの開発キットも一体的に提供される
Intel FPGAとXeonを利用して、OpenCLベースでディープラーニングの学習を低消費電力で行なうデモ。GPUが250Wかかる演算を、わずか40Wで実現する

 このほか、ティアワンの部品メーカーとなるDelphiや地図ベンダーのHEREなどの展示も行なわれていた。Intelの自動運転車はDelphiとの共同開発になっており、Intelの半導体をベースにしてDelphiが実装した車両になっている。

 HEREは、フィンランドのNokiaから2015年にドイツの自動車メーカーによるコンソーシアム(BMW、メルセデス、VWなどから構成されている)に売却された地図専業メーカー。自動運転に必要な高精度マップのソリューションを提供しており、今回IntelとDelphiが共同開発した自動運転車にも、HEREの高精度マップが利用されている。

DelphiのAtomプロセッサを利用して、車載情報システム(IVI)とメーターを1つチップで実現するデモ。OSはハイパーバイザーで仮想化されている
Intelの子会社WindRiverが提供するIVIやメーターなどのソフトウェア開発キット
HEREの高精度マップ
自動運転で必要になる、自動車のHMI(Human Machine Interface)。乗客が自動車とフレンドリーにやりとりするには優れたHMIが必要になる

 自動車に実装された状態では、BMW、Intel、そして3月にIntelが買収したMobileyeの3社で共同開発しているBMWの7シリーズをベースにした自動運転車のプロトタイプも展示された。この車両は、1月のCESで3社(BMW、Intel、Mobileye)が共同で行なった記者会見で公開された自動運転車両で、2017年末までに実走実験を行なうことを目指した車両になる。

BMW 7シリーズベースの自動運転車のプロトタイプ

 このほか、Delphiが開発した車両も展示されており、上部にレーダーや四方にMobileyeのカメラモジュール、LiDARなどが取り付けられている様子などが確認できた。

Delphiが開発した自動運転車のプロトタイプ。フォードのフュージョンをベースに改造した車両