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さいたま市とホンダ&ヤマハ、EVバイクの普及拡大と交通空白地域の解消に向けた実証実験発表会

EVバイクのレンタルサービスを開始。利用料金は4990円/月で30人を募集

2017年7月21日 開催

さいたま市役所で開催された、さいたま市、本田技研工業、ヤマハ発動機によるEVバイクをレンタルする実証実験の記者発表会

 さいたま市、本田技研工業、ヤマハ発動機は、さいたま市の電気自動車普及施策「E-KIZUNA Project(イーキズナプロジェクト)」の一環として、EVバイク(電動2輪車)の普及拡大と交通空白地域の解消に向けた実証実験を開始する。

 これにあたり、7月21日にさいたま市役所を会場に、さいたま市の清水勇人市長、本田技研工業 執行役員二輪事業本部長 安部典明氏、ヤマハ発動機 取締役常務執行役員 MC事業部本部長の渡部克明氏が出席する記者発表会が行なわれた。

発表会はさいたま市役所の会議室で行なわれた。出席者は左からヤマハ発動機株式会社 取締役常務執行役員 MC事業部本部長の渡部克明氏、さいたま市の清水勇人市長、本田技研工業株式会社 執行役員二輪事業本部長 安部典明氏

 2009年からさいたま市が実施している電気自動車普及施策のE-KIZUNA Projectとは、EV(電気自動車)を安心して快適に使える低炭素社会の実現を目指して、EV普及拡大の課題解決に取り組むもの。これには市民、自治体、事業者がそれぞれ協力し合うことで「絆」を結び、多元的に連携していくことを目標にしている。

 そのために、EV向けの充電セーフティネットの構築、需要創出とインセンティブの付与、そして地域密着型の啓蒙活動を行なうことなどが基本方針として掲げられている。

 今回の実証実験の内容だが、これはホンダとヤマハの電動化技術とさいたま市の既存のインフラを活用するもので、具体的にはさいたま新都心駅の東口自転車等駐車場で、一般ユーザーにヤマハの原付一種EVバイク「E-Vino(イービーノ)」のレンタルとバッテリー交換サービスを行なう。レンタルに用意されるイービーノは30台。開始時期は9月で、利用者の募集は同日からさいたま市のホームページ内で開始されている。

実証実験に30台が用意されるヤマハの原付一種EVバイク「E-Vino(イービーノ)」。サイズは1675×660×1005mm(全長×全幅×全高)で、車両重量は68kg(バッテリー装着時)
シートには実証実験の専用仕様となるデニム調の表皮が使われる
フロントフェンダーには3者のロゴを設定。ヤマハのバイクにホンダのロゴが公式に入る珍しい光景
KIZUNAの文字とさいたま市の10区のイメージカラーを取り入れたグラフィックデザインをボディに設定。E-KIZUNA Projectのマークはフロント、左右カバー、シート後方に入る
ハンドルのセンターカバーにアイコンマークが入るが、これは実験車それぞれで絵柄が変わるよう30パターンが用意されている。当選時にデザインを選ぶことはできない
ステップ部にはE-Vinoのロゴ
EVバイクなので、後輪の右側にマフラーがなくスッキリしている。イービーノの最高出力は1.2kW(1.6PS)/3760rpm、最大トルクは7.8Nm(0.8kgm)/330rpm。バッテリーはリチウムイオン電池で充電時間は約3時間

 詳しい募集要項だが、実施期間は2017年9月~2018年3月の予定。モニターの最低レンタル契約期間は4カ月で、期間は2017年9月~12月となっており、そこから3カ月の延長も可能。募集人員は30人で、応募要件は以下のとおり。

応募要件

1:さいたま市に在住する成人
2:原付一種以上の運転免許を保有し、法令を遵守した良識ある運転ができる人
3:通勤/通学などで指定駐輪場の定期利用が可能な人
4:インターネット利用環境を持っている人(レンタル契約やアンケート回答、協議会からの連絡の際に使用)
5:本人名義のクレジットカードで決済できる人
6:EVバイクを自宅、自己管理できる敷地で保管できる人。また、すでに車両を持っている場合、追加で保管場所を確保できる人
7:主催者からのアンケート等に協力できる人

 利用料金は4990円/月で、車両レンタル+指定駐輪場でのバッテリー交換+自賠責保険、任意保険が含まれる。モニター期間4カ月のうち、契約開始後の3カ月は利用料金は無料となる。ただし、モニター期間中は指定駐輪場の利用料金が自己負担となる。

 また、オプションサービスとして自宅でも充電することを希望する場合、充電器と予備バッテリーをレンタル可能。料金は充電器が300円/月、予備バッテリー+充電器のセットが800円/月となっている。

 応募方法は申請書を添付のうえ、メールでさいたま市環境局 環境共生部 環境未来都市推進課に送付する。募集期間は7月21日~8月17日(17時必着)。選定、結果通知は8月22日を目安に応募者全員にメールで通知される。

さいたま市の清水勇人市長

 発表会では、まず最初にさいたま市の清水市長がコメントした。清水市長は「さいたま市は低炭素社会を目指し、電気自動車普及拡大の課題解決するための取り組みである『E-KIZUNA Project』というものを2009年から進めてまいりました。これまでに公共施設などへの充電設備の設置、また、EVを購入する際の補助制度、小学校でのEV普及のための教室など行なってまいりました。そのほかにもEV普及のため数多くの活動を行なってきました。その結果、EVの普及率は全国比の1.3倍ということで、全国を上まわる状況になっています。今後も市民、事業者の方との絆をより深めて、点から線へ、そしてより多元的な連携に広げて行きたいと考えています」とこれまでの活動を紹介。

 さらに清水市長は「このような取り組みのなか、本田技研工業様とは2011年5月にE-KIZUNA Project協定を結ばせていただき、実際の都市環境下における電気自動車やハイブリッドカー、また電動2輪車の実用性の検証を行なってもらいました。そして7月5日にはヤマハ発動機様ともEVバイクの普及などに向けE-KIZUNA Project協定を結ばせていただきました。これによって3者合同によるEVバイクの普及拡大に向けた実証実験の環境が整ったところでございます。車両の電動化の流れは4輪車に限ることではないと考えてるので、今回、2輪業界において世界を代表する2社からの共同実証実験の話は大変光栄であります。今回の実証実験をつうじて“低炭素型パーソナルモビリティ”に、いつでも誰でも安心して乗れるような社会を構築をしていきたいと考えております」と語られた。

本田技研工業株式会社 執行役員二輪事業本部長 安部典明氏

 次に、この実証実験におけるメーカーとしての取り組みについて、ホンダの安部氏とヤマハの渡部氏から解説された。

 まず、ホンダの安部氏から「みなさまご承知のとおり、CO2削減は4輪車のみならず、2輪車業界としても取り組むべき重要課題であり、ホンダ、ヤマハそれぞれでEVバイクの普及に向けた取り組みを進めています。両社はとくにコミューターを中心に、従来からEVバイクの商品を開発して市場に投入してまいりました。しかしながら、普及に向けては商品だけでなく、充電インフラなどの観点でまだまだ解決していかなければならないさまざまな課題があります。また、充電の手間と時間を省くなど、利便性を高めるために新しい使い方の提案が必要と考えております」。

「そこでホンダ、ヤマハの両社で、EVバイクの普及を促進するための新たな取り組みの検討を開始しました。この取り組みの一環として、E-KIZUNA Projectに取り組むさいたま市様に実証実験のことを相談。賛同をいただいたことで今回の発表の至った次第であります。EVバイクが普及した低炭素社会の実現を目指すうえで、自治体のみなさまと一緒に取り組むことは、自治体の持つインフラの活用や市民のみなさまの生の声を通じて実際の使い勝手を検証できるなど、私たちメーカーにとっても高い効果が期待できる重要な意味を持ちます」と語った。

ヤマハ発動機株式会社 取締役常務執行役員 MC事業部本部長の渡部克明氏

 続いてヤマハの渡部氏から、実証実験の概要が説明された。渡部氏は「実証実験においては、さいたま市での一般ユーザーを対象にしたEVバイクのレンタルとバッテリー交換サービスを行ないます。これはホンダ、ヤマハの電動化技術と、さいたま市の駐輪場などの既存インフラを活用し、一般ユーザーにEVバイクを利用していただくことで、CO2削減と駅などから遠く、利用できる交通機関が近くにないという“交通手段の空白地域”における交通利便性向上などの検証を行ないたいと思っています。具体的にはさいたま市のさいたま新都心駅 東口自転車等駐車場をベースとして、ここを通勤や通学などで利用するユーザーを対象に、EVバイクのレンタルを開始します」。

「なお、このレンタルにはヤマハが販売している原付一種クラスのイービーノ30台を使用いたします。開始時期までに実施駐輪場に充電用設備を設置するとともに、バッテリー交換サービスを実施。電欠時は充電するのでなく、充電済みのバッテリーと交換することでEVバイク利用者の充電の手間を省き、利便性を高める効果が期待されます。こうした運用を元に得たデータや、利用者からのフィードバックを通じてEVバイク運用の効果をそれぞれの立場から分析、検証し、将来のEVバイクの普及に役立てて行きたいと考えています」とコメントしている。