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トヨタ、「もっといいクルマづくり」に向けた「5大陸走破プロジェクト」の第4弾を欧州でスタート

ハイブリッド車を中心に約3カ月で欧州大陸の走破を目指す

2017年8月23日 発表

2015年に実施した北米走破(アラスカ)

 トヨタ自動車は8月23日、2014年から行なっている「5大陸走破プロジェクト」の第4弾「2017欧州走破」を8月下旬から開始すると発表した。

 TOYOTA GAZOO Racingの活動の一環となる5大陸走破プロジェクトは、日本と現地の従業員が自分たちでステアリングを握り、各地のユーザーが日常的に走行している道を運転。「もっといいクルマづくり」を実現する人材育成を目的に行なわれている。

 2014年の豪州、2015年の北米、2016年の南米に続く今回は、自動車文化発祥の地であり、ユーザーのクルマに対する評価が厳しい欧州を舞台に実施。“もっといいクルマづくり”に役立つヒントを探り、テストコースでは得られない走行データの収集や分析を強化していいクルマづくりにつながる仕組みづくりを目指すという。

2014年に実施した豪州走破(西オーストラリア州)
2016年に実施した南米走破(ブラジル)
2016年に実施した南米走破(チリ)

 欧州走破は8月下旬にポルトガル「カエターノ」をスタートしてベルギー「Toyota Motor Europe NV/SA」を目指す「夏走破」、11月下旬にデンマーク・コペンハーゲンをスタートしてフィンランド・トミマキネンレーシングを目指す「冬走破」に分けて実施。走破車両は欧州で生産している「ヤリス ハイブリッド」「C-HR ハイブリッド」といったハイブリッド車を中心に構成して、トヨタと欧州事業体の従業員約130名によって混成チームを結成して臨む。走破車両にはデータロガーが装着され、車両やルートのデータを収集していく。

 なお、ニュースリリースにはトヨタ自動車 取締役社長である豊田章男のコメントも掲載されているので、下記に紹介する。


「もっといいクルマをつくろうよ」私が、社内の皆に呼びかけ続けている言葉です。
社長に就任して以来、口に出し続けている言葉ですが、その想いに至ったのは、私に運転を教えてくださった当社のマスタードライバーであった故成瀬弘から「道がクルマをつくる」という言葉の意味を幾度も教わり、それを実践しようとしてきたからだと思います。

“道がクルマをつくる”……、それを実践し“もっといいクルマをつくる”ためにエンジニアではない私に何が出来るだろう?と考えた時、その答えは「自らハンドルを握り、様々なクルマ、様々な道と会話をすること」以外にないと至りました。

そうして、エンジニアとも同じ感覚、同じ言語で話し、開発の最後の最後の瞬間まで議論し尽くすことが、「もっといいクルマ」に近づけていける私なりの方法であると思っています。

その考えのもと従業員と一緒に続けてきた活動が、ニュルブルクリンク24時間レースへの挑戦でした。
レースでは、ドライバー、メカニック、エンジニアが一台のクルマを囲み、クルマを走らせてドライバーが感じた違和感を、次は、いかに気持ちよく、安心して、そして強く、速く、走らせられるか……。最後の最後まで知恵を絞り合います。

それは開発段階だけでなく、レース中にトラブルが起きた時も同じです。
限られた時間の中で解決策を見出し、限られた道具だけで直し、再び、ドライバーに命懸けのレースに戻ってもらう……
こうしたことの繰り返しの中で、鍛えられ成長を遂げていくメンバーを何人も見てきました。

“道がクルマをつくる”を言い換えれば、“道がヒトを鍛え、ヒトがクルマをつくる”ということだと思います。
しかし、このような体験ができる従業員は数が限られます。
同じことは出来なくとも、少しでも多くの従業員に、“道がクルマをつくる”を体験してもらいたいとの想いで始めたのが「5大陸走破プロジェクト」です。

ドライバーが走りやすいレースカーは、実際の戦いの道の上でこそ、本当に強いクルマになっていきました。お客様にお届けするクルマも同じです。
テストコースだけでは“もっといいクルマ”はつくれません。

現地現物で、お客様の使われる道を自ら走り、現地の文化や気候の中でクルマと向き合いながらクルマを感じるセンサーを磨く……、そして、テストコースの上にきても、実際に現地の道をお客様が走っている感覚を頭にイメージしながら走り、感じる……
そうすることで“もっといいクルマ”に繋げていけると考えています。

豪州、北米、南米の大陸を走り終え帰ってきたメンバーからも、そうした声を聞くことができ、“もっといいクルマをつくるためのガッツ”などを感じ、クルマ屋としての魂を一層輝かせて帰ってきてくれたように思います。

また、日本での日常から離れ、異なる文化の人々と生活を共にし、時には厳しい自然環境の中で仲間とクルマを走らせ続けるという過酷な日々を過ごした彼らは、1人の人間としても更なる成長を遂げてくれました。そんな彼らを本当に頼もしく思います。

本年は、欧州大陸に130人のメンバーが挑みます。
欧州はクルマ発祥の地であり、先輩ともいえる数々のカーメーカーがクルマづくりの力を培ってきた土地です。その道に向かうメンバーには、様々な学びを得て戻ってきてくれることを期待しています。

過去3年間の取り組みで、様々な道を走ってきたメンバー、そして私も含め、このメンバー達と、トヨタのもっといいクルマづくりを更に進めてまいりたいと思います。

トヨタ自動車株式会社 取締役社長 豊田章男