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「CX-5」から搭載開始! Googleマップ&ナビが利用可能な新しいマツダコネクトについて聞く。「従来車のお客さまへも対応すべく検討中」

Apple CarPlay&Android Auto対応

Apple CarPlay&Android Auto対応となった新しいマツダコネクト。写真はCX-5に続いて搭載された「CX-8」のもの

 マツダ車の純正ナビシステムとして搭載されている「マツダコネクト」。2013年の「アクセラ」から搭載されたもので、マツダ車の新HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)「Heads-Up Cockpit(ヘッズアップ コクピット)」として位置付けられ登場した。

 その内容はとても新鮮なもので、センターコンソールに設けられたコントロールダイヤルと、インパネに設けられた専用7型ディスプレイで構成され、グローバル対応のナビゲーションはじめ、インターネットラジオ、SMS表示、インテリジェント・ドライブ・マスター(i-DM)表示などができるようになっていた。これらは、マツダコネクトの本体のOS上に構築されたアプリケーションで実現。そのアプリケーションについても、HTML5で作られているものも公開した経緯があるなど、インターネットと親和性の高い環境を築こうとしていたものだ。

 ただ、実際にマツダコネクト搭載車が登場してみると、ユーザーの第1の希望はカーナビがしっかりしていることにあり、グローバル対応のナビゲーションの日本市場に合わない部分が話題となった。マツダはその後ユーザーの声に応え、ナビゲーションソフトを日本市場に合わせた「マツダコネクトナビPLUS」へと変更。現在は、着実にナビゲーションソフトをアップデートし続けている。

 2018年10月の「CX-5」商品改良モデルから搭載された新しいマツダコネクトは、Apple CarPlay&Android Auto対応へと進化。日本でも利用者の多い、Googleマップ&ナビがAndroid端末で利用可能になったほか、iOS 12以上であればiPhone系端末でもGoogleマップ&ナビが利用できるようになった。また、Yahoo!カーナビについても、ヤフー広報によれば「検討中」としており、いずれ何らかのカタチで利用できるようになるかもしれない。

 マツダコネクトのナビゲーション&エンタテイメントの選択環境が大きく増えるApple CarPlay&Android Auto対応。これはどのように実現しているのか、マツダ 統合制御システム開発本部 情報制御モデル開発部 松本成司氏に聞いてみた。

CarPlayでiOSのマップを利用しているところ

マツダコネクトのApple CarPlay&Android Auto対応について

──CarPlay&Android Auto対応で難しかった点は?

松本氏:マツダコネクトの既存機能とCarPlayなどで追加される機能の重複や干渉をなくし、トータルで最適な使用感を実現するために、機能切り替えの方法や機能制限の仕様をマツダ独自に設計しました。また、既存システムに対してソフトウェアのアップデートのみでApple社の要求を満たすため、マツダコネクトの制御コンピュータのメモリやCPUパワーなどのリソースの最適化を行ないました。

──このタイミングでCarPlay&Android Auto対応を行なったのはなぜか?

松本氏:マツダコネクトのアップデートに際しては、機能追加と品質向上の多くの候補アイテムの中から、市場のニーズと開発の進捗を見て導入時期を決めています。CarPlayに関しては、上記の開発課題の解決状況と国内市場でのニーズの高まりを総合的に判断して導入タイミングを決定しました。

──CarPlay&Android Auto対応はソフトウェアの変更だけで行なっているのか? ハードウェアの変更は?

松本氏:ソフトウェアのアップデートとUSBポート部品の交換が必要となります。

──CarPlay&Android Auto対応は、マツダコネクトの持つOpenCarの機能を使っているのか? それともその下のレベルでスイッチングされているのか?

松本氏:マツダコネクトのOS上に直接実装しています。

──マツダコネクトにはMazda Appという構想があったが、この対応によりその構想はなくなったのか?

松本氏:今回のCarPlay&Android Autoの追加は市場ニーズに応えるものであり、マツダコネクト全体のコネクティビティ戦略に変更はありません。

──CarPlay&Android Autoなどでの接続のために、USB端子は電源ラインなど強化されているのか?

松本氏:2A充電に対応しました。また、CarPlay接続に必要なUSB On-The-Go規格に対応しています。

──CarPlay&Android Autoにナビアプリがあるが、マツダコネクト側のナビはこれからも進化していくのか?

松本氏:そのとおりです。

──従来からのマツダ車(マツダコネクト)ユーザーが気にしているのは、自分のクルマがCarPlay&Android Auto対応にできるかどうかだと思う。従来車を購入しているユーザーに対してのアップグレードプログラムは用意しないのか?

松本氏:従来車のお客さまへも対応すべく検討中です。但し、ソフトだけではなく車両側のハード変更も伴いますので、その検証を行なっているところです。対応が可能となった場合は、内容が決まり次第、適切なタイミングでお知らせいたします。


 松本氏の発言から分かるのがCarPlay&Android Auto対応が、単純なソフトウェアアップデートだけでなく、ハードウェアの改変も伴っていることだ。USB機器はホスト→クライアントという方向で接続&コントロールされる規格で、当初はPCから接続する端末として想定されていた。

 マツダコネクトも、その中心機能はCMU(コネクティビティマスタユニット)というSoCにARMプロセッサを採用。そのCMUがホストとなって、USB接続したスマートフォンをクライアントとしてコントロールしていた。松本氏の言う「USB On-The-Go規格に対応」というのは、USBデバイス同士でホスト→クライアントとなるのを実現するもので、USB On-The-Go規格に対応することでスマートフォン側をホストとし、マツダコネクトのリソースがクライアントとして動作するようになる。その結果、マツダコネクトの画面にCarPlayやAndroid Autoの画面が表示できるようになる。

 マツダコネクトの弱点として挙げられていたのが、市販カーナビなどに変更することが難しくカーナビの選択肢がなかったこと。前述したようにCarPlay&Android Auto対応となることで、iPhoneなどのiOS端末であればアップルのマップ、GoogleのGoogleマップ&ナビが使え、国産のナビならばナビタイムのカーナビタイムが使える。iOS 12からはCarPlayがサードパーティ製アプリに開放されており、さらなるナビアプリ、つまりYahoo!カーナビの登場などにも期待できるわけだ。

 松本氏は従来ナビ、つまりマツダコネクトナビPLUSの進化も続けるとしており、ユーザーは好きなナビゲーションを選ぶ選択肢を手に入れたことになる。新しくCX-5などを購入するユーザーにとっては、大歓迎といってもよい変更点だろう。

 今回の変更点は、走りの機能に直接関係しないこともあって従来ユーザーへのアップデートの可能性もあるはず、と思い最後の質問を用意したのだが、「従来車のお客さまへも対応すべく検討中です」とのこと。アップデート価格が気になるところだが、その発表を楽しみに待ちたい。

【追記 2018年10月28日】

 その後、マツダにハードウェアの変更点を確認。マツダコネクトの中心機能であるCMUにつながるUSBポートはUSBハブ経由で接続されており、このUSBハブをUSB On-The-Go規格に対応した新しいものへ変更することで、CarPlayに対応するUSBポートを用意する。このUSBハブがハードウェアの変更点になり、そのほかCMUのソフトウェアをアップデートすることで、新しいマツダコネクトになる。

 USBハブの交換が、松本氏の言う「車両側のハード変更」とのことだ。