ドラ割「南房総2days」でアクアライン緊急避難通路を見学する
海ほたるから地下の避難通路に入ってみた



東京湾アクアラインの海ほたるPA。東京湾内に設置された巨大な建造物

 神奈川県川崎市にある浮島IC(インターチェンジ)と千葉県木更津市にある木更津金田ICを結ぶ東京湾アクアラインは、全長15.1kmの自動車専用有料道路。東京湾に建設された海ほたるPA(パーキングエリア)を境に、川崎側は9.6kmのアクアトンネル、木更津側は4.4kmのアクアブリッジで構成されている(そのほか、海ほたるPA部が0.6km、木更津側の陸上部が0.5km)。

 以前防災訓練を紹介した関越トンネルもそうだが、長大なトンネルには避難通路が用意されている。9.6kmのアクアトンネルにももちろん避難通路があり、その避難通路を使って川崎側や海ほたるPAに避難できるようになっているほか、トンネルの途中にある風の塔と名付けられた換気塔からも避難できる構造だ。

 東京湾アクアラインを運営するNEXCO東日本(東日本高速道路)は、同社が発売するドラ割「南房総2days」購入者向けにアクアライン緊急避難通路見学会を実施中で、その見学会を模様をお届けする。

海ほたるPAに掲示されていた、南房総2daysのポスター。南房総がフリーエリアに設定されている

鉄道の周遊券のようなドラ割
 そもそも「ドラ割って何?」という人もいるだろうが、ドラ割は鉄道の周遊券のようなもので、NEXCO東日本がETC利用者向けに提供している割引サービス。指定されたエリアのICから高速道路や有料道路に乗れば、フリーエリア(周遊エリア)のICであれば何度乗り降りしても料金が変わらないというもの。

 南房総2daysの場合、浮島IC、JCT(ジャンクション)から乗って千葉県内の指定されたフリーエリアのICを自由に乗り降りできる。価格は普通車は4800円(軽自動車や二輪車は3800円)で、フリーエリアで何度か乗り降りすればお得になるが、単に特定IC間を往復する場合など、時間帯によってはETC時間帯割引のほうが得になることもある。

 すでに1月から発売され、利用可能な日は3月30日までの金土日月と3月19日の内、連続する2日間もしくはその当日。うまく利用すればとてもお得に使える割引なのだが、インターネットからの事前申込みが必要なこともあって、まだそれほど知られていないサービスだ。ちなみにNEXCO中日本は速旅(はやたび)の名称で同様なサービスをしているが、同様なサービスでも会社が違うと名称が異なる状況のため、それもサービスの知名度の低さにつながっているのだろう。

 また、このドラ割にはフリーエリア内での優待チケットやちょっとしたおまけが用意されていることも多く、南房総2daysでも房総エリアの観光施設や道の駅での割引などが設定されている。さらに南房総2daysでは、利用者に限りアクアライン緊急避難通路の見学が可能で、2月21日、22日、28日、3月20日、21日、22日に1日3回、各回先着40名まで受け付けている。

 取材を行ったのは、その初回となる2月21日の9時30分の回で、一般参加者は家族連れなど20名ほどであった。

2階建て構造のアクアトンネル
 見学会を引率するのは、NEXCO東日本関東支社東京湾アクアライン管理事務所の黒澤準氏と、同じく関東支社の菅家広夫氏。参加者は海ほたるPA 4階にあるインフォメーション脇で受け付けをすませ、黒澤氏の引率により海ほたるPA 1階にある「うみめがね(技術資料館)」脇から避難通路に入っていく。以下その模様を写真で紹介していく。

見学会を引率するNEXCO東日本関東支社東京湾アクアライン管理事務所総務担当課長の黒澤準氏(写真左)と、NEXCO東日本関東支社管理事業部料金管理チームサブリーダーの菅家広夫氏見学会参加者に配られたアクアラインのパンフレット。特別なものではなく、普段アクアラインのインフォメーションでもらうことができるパンフレットにはこのように房総半島の地図が描かれている。川崎方面から木更津方面へと向かう人向け
エスカレーターで4階から1階へと向かって下りていく1階に下り、千葉方面に歩いていくとうみめがねが見えてくるうみめがねの横から避難通路に入っていく
避難通路の柵を解錠する黒澤氏。ここから先が普段入ることのできない特別なエリア避難通路を歩いていき、階段で道路と同じ高さまで下りる道路脇にあるトンネルへの入口。左に少し見えるのが川崎方面から木更津方面へと向かう下り線のアクアトンネル出口
トンネルの柵も解錠し、どんどん奥へと進んでいくトンネルの壁に貼ってあった現在地の説明図
トンネルを奥へと進むと海ほたるPAの基部が見えてくる海ほたるPA基部脇から避難通路へ入っていく
避難通路の要所要所にはこのような防護扉が設置されている。指で示している小さな扉から中に入っていった防護扉を裏から見たところ送風機の吹き出し口。避難通路内に風を送り込み避難通路の気圧を外気圧より0.2気圧ほど高めている。これにより災害時の煙などが避難通路内に流れ込まないようにしているとのこと
避難通路をさらに進むとT字路が見えてきた先ほどのT字路を右に曲がったところ。メインの避難通路となる。アクアトンネルの下層をトンネルと平行に走り、上り線、下り線それぞれに用意されている。見学が行われたのは木更津から川崎に向かう上り線の避難通路避難通路内で防災設備の解説が行われた。このような防災設備が300mごとに片側33カ所、計66カ所設置されている。黒澤氏の後ろに見えるのはアクアトンネルの車道部に救助に入るための上り口
東京湾アクアラインの説明図アクアトンネルの構造。上下2層構造になっており、上層が自動車道路、下層が避難通路や各種施設類避難経路案内図。人工島と書いてあるのが換気設備の風の塔になる
説明が行われた場所に掲示されていた9.5KP(キロポスト)表示。神奈川側から9.5kmの地点になる道路管制センターと連絡するための非常電話も置かれている非常電話の説明を行う黒澤氏。受話器を取ると災害発生となり、パトロールがすぐに駆けつけるとのこと。高速道路脇やSA(サービスエリア)にあるものも同様の仕組み
非常電話下部には状況を知らせることができるボタンも付いている車道から下層の避難通路にすべり下りる避難用スロープの説明図防災設備川崎側の避難用スロープ
防災設備木更津側の車道部への救助のための上り口。右側のものととは少し形状が異なる木更津側の避難用スロープを上っていくと小窓があり、アクアトンネル内部が見えるようになっている。この小窓は見学者向けに9.5KPの防災設備のみに用意されているとのこと小窓をのぞき込むとアクアトンネルの道路面が見えた。目の前を車が結構な速度で通過していく。この小窓見学で防災設備の説明は終了
こちらはアクアトンネルの自動車用道路。このトンネルを側部からのぞき込んでいたことになる防災設備の見学を終えると、来た道とは異なる階段を上っていく。階段の途中には海面位置の表示も階段を上った先には、ちょっとしたホールがあり、そこにはアクアトンネル建設で使われたシールドマシンの模型が展示してあった
シールドマシンの先端。先端部に付いたビットという突起で地面をかいて穴を開けていく。シールドマシンの詳細については首都高の関連記事を参考にしてほしいシールドマシン先端側部。少し掘るとセグメントというパネルでトンネル周囲を形作っていく。1周に使われるセグメントは11セグメントで、アクアトンネル建設では、このシールドマシンを8機使用したと言うシールドマシンの説明図。シールドマシンに愛称が付いており、「輝き」というようだ
シールドマシンの模型を見学し、アンケートに答えて避難通路の見学は終了。アクアライン3階にある出口から外へと出た出口付近で海ほたるPAの説明と質疑応答を行う黒澤氏。黒澤氏の後方に見えるのが、アクアトンネル建設に使われたシールドマシンの一部でモニュメントとして展示されている出口付近からは遠方に風の塔を望むこともできた

絶景の海ほたるPA
 黒澤氏によると見学会の意図は「防災施設が整っていることを理解してもらいたいというのももちろんですが、海ほたるPAに立ち寄る人は、旅行に行く途中の人がほとんどで、旅行途中の1つの楽しみとして見ていただければと思っています」と言い、防災施設の見学会は2008年12月28日以来とのこと。海ほたるPAは360度眺めがよく、その景色を楽しんでほしいと語った。

 菅家氏は海ほたるPA 4階のアクアプラザ内にある無料休憩所「うきうき・ラウンジ」からの眺めがお気に入りとのことで、海ほたるPAに立ち寄った際はそこでの休憩をお勧めしますとのこと。

 アクアライン緊急避難通路見学会の残り開催日は、2月28日のほか3月20日~22日を残すのみとなる。この時期多くの花が咲く南房総に出かけるときには、南房総2daysに申し込み、アクアトンネル下部にある避難通路を見学してみるのもドライブのイベントとしておもしろいのではないだろうか。

海ほたるPAのデッキから木更津側を望むデッキの4隅には、記念撮影用のオブジェが用意されている。この日多くの人が一緒に記念撮影していたのが、このイルカのオブジェうきうき・ラウンジからの眺め。ラウンジ内にはスターバックス コーヒーのほか、ジェラートやワッフルのお店が併設されている
 

(編集部:編集部:谷川 潔)
2009年 2月 23日