グッドデザイン大賞決定、インサイト、プリウスともに大賞ならず

日本産業デザイン振興会 理事長の飯塚和憲氏のあいさつによりグッドデザイン賞大賞選出・表彰式が開幕した

2009年11月6日開催



 日本産業デザイン振興会は11月6日、2009年度グッドデザイン賞大賞選出・表彰式を開催した。大賞候補には、およそ3000点の応募の中から、家電製品や建築物、お台場に立った等身大ガンダムなどを含む全15候補が選ばれ、自動車関連ではホンダ「インサイト」、トヨタ「プリウス」が候補となった。

 大賞は、72名の審査員と1034の今年度グッドデザイン賞受賞関係者の投票によって行われる。ただし自分が携わったりかかわったデザインに対して投票することはできない。投票は、まず予選投票として上位5候補を選出。次いで決戦投票で大賞が決定される。決戦投票で1位と2位の投票数の差が100票未満の場合は、1位と2位の決戦投票が行われる。昨年はやはり自動車関連でトヨタ「iQ」とホンダ「FCXクラリティ」が大賞候補に選ばれ、最後はこの2台の決戦投票で「iQ」が大賞に選ばれている。

ベスト15に選ばれた大賞候補15点
審査委員の5名。一番左が委員長の内藤廣氏グッドデザイン大賞選出の規則投票、開票ともにその場で行われる

 投票前には、各候補者からプレゼンテーションが行われ、インサイトのプレゼンテーションは、本田技術研究所主任研究員の名倉隆氏が行った。名倉氏は、FCXクラリティが環境にはやさしいものの、多くの人には手の届かない存在だったことに触れ、インサイトでは環境性能はもちろん、楽しさ、使いやすさ、そして求めやすい価格にこだわったと述べた。そのためサイズをコンパクトにし、インターフェイスは情報のプライオリティに応じて配置。操作系はステアリングを中心に左右に広げるようにレイアウトし、直感的に操作できるようにしたと言う。さらにECOアシストによって、乗り手が楽しくエコドライブをできるようにしたと述べた。なお、余談として、ECOアシストの表示で使われている葉っぱのマークは、横に向けるとECOという文字になるようにデザインされているのだと言う。

本田技術研究所主任研究員の名倉隆氏インサイトの4つのコンセプト小型軽量のハイブリッドシステムでコンパクトなボディーと軽快な走りを実現
デザインはFCXクラリティや初代インサイトを踏襲アスリートのような洗練された贅肉のないデザインにしたと言う
プライオリティの高い速度計などを視線移動の少ない位置に配置操作系も見やすい位置に立体的に配置し直感操作を可能とした誰でも楽しくエコドライブができるエコアシストも搭載
色でエコドライブ度を示すコーチング機能ゲーム感覚でエコドライブを指南するティーチング機能葉っぱのアイコンは、向きを変えると「ECO」をモチーフにしていることが分かる

 プリウスのプレゼンテーションを行ったのは、トヨタ自動車 主幹の三輪日出雄氏だ。三輪氏は、ユーザーの中には、新型プリウスで東京から鹿児島まで無給油で走った人もいると述べ、この技術革新に応えるべく、プリウスのデザインでは2つのことにこだわったと言う。1つは、先代から踏襲したトライアングルシルエットで、世界中の道で、見た人がひと目でエコカーだと分かるアイコン性を持たせること。そしてもう1つが空力性能の確保で、自ら風洞に入りエンジニアとともに設計したと言う。タイヤまわりの整流効果を得るための平面造形を、プリウスではあえてデザインの特徴とするなど随所にエアマネージメントを徹底し、空力性能と意匠を両立した世界トップレベルのCd値を実現したと述べた。

プリウスのデザインを行ったトヨタ自動車 主幹の三輪日出雄氏無給油で1338km走ったユーザーがいることを紹介。本誌でも記事にした燃費男こと宮野滋氏のチャレンジのことか?先代より引き継ぐトライアングルシルエットでわかりやすいアイコン性を持たせた
風洞実験の様子空力性能を高める造形をデザインに織り込んだCd値は世界最高の0.25

 予選投票では、インサイトが32票、プリウスが50票とクルマ対決ではプリウスに軍配が上がったものの、いずれも決戦投票には残ることができず、等しくグッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)の受賞となった。

 決戦投票の結果、大賞には岩見沢複合駅舎が選ばれた。この駅舎のプレゼンを行ったワークビジョンズの西村浩氏は、どのようなデザインをしたかではなく、デザインによってどのような現象が現れたかをプレゼンしたと言い、審査委員長の内藤廣氏は、新しい駅舎のデザインが町おこしに繋がったという部分が、票を集めたのではないかと述べた。

 グッドデザイン大賞は内閣総理大臣賞にあたり、大賞の授与は経済産業大臣政務官 近藤洋介氏によって行われたが、鳩山由紀夫氏も北海道選挙区の出であるため、同じ北海道の岩見沢複合駅舎が選ばれたことを喜ぶだろうと述べた。

予選投票の結果。インサイト、プリウスともに決戦投票には残れず決戦投票では、岩見沢複合駅舎が2位以下に100票以上の差を付け大賞を決めた経済産業大臣政務官 近藤洋介氏(右)より賞状を授与するワークビジョンズの西村浩氏(左)

 自動車関連ではそのほかに、スズキ「ワゴンR」が、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞に、デンソーとタイププロジェクトが作った自動車用フォント「ドライバーズフォント」と、トヨタのパーソナルモビリティ「i-REAL」が、グッドデザイン・フロンティアデザイン賞に選ばれている。

長く愛されているデザインに贈られるロングライフデザイン賞はワゴンRが受賞今年より新設されたまだ商品化されていないデザインに贈られるフロンティアデザイン賞。ドライバーズフォントとi-REALが選ばれた

 なお、来年は「CR-Z」のエントリーが予想されるホンダだが、本田技術研究所の名倉氏は、投票後にトヨタの三輪氏とも話したと言い、2010年には「FT-86」はまだ発売されてなさそうなので、来年の一騎打ちはないだろうとした。

(瀬戸 学)
2009年 11月 6日