BMW、5ドアセダン「5シリーズ グランツーリスモ」国内発売
クーペのスタイルとSUVの実用性を兼ね備えたスポーツセダン

ビー・エム・ダブリューのクルーガー社長と535i グランツーリスモ

2010年1月末発売
878万円、1114万円



 ビー・エム・ダブリューは、5ドアセダン「5シリーズ グランツーリスモ」を、2010年1月末に発売する。価格は「535i グランツーリスモ」が878万円、「550i グランツーリスモ」が1114万円。

 3月のジュネーブ・モーターショーでコンセプトモデルが、9月のフランクフルト・モーターショーで市販型が公開されたBMWのブランニューモデル。

 コンセプトは「ラグジュアリーサルーンの快適性とスタイリング、スポーツセダンのドライバビリティ、SUVの使い勝手のすべてを兼ね備えたクルマ」。大容量で使い勝手のよい荷室と、4~5人が快適に移動できる実用性を備える一方で、ファストバック・クーペのようなフォルムとラグジュアリーセダンの装備を持つ。

 「車高が低くスタイリッシュなラグジュアリー・サルーンがほしいが、X5なみの荷室容量と使い勝手も必要」というニッチを狙う。ファストバックの5ドアボディーを持つ大型セダンはルノー、シトロエンといったフランス車が有名だが、BMWでは初めて。

 

クーペのようなルーフラインがファストバックのリアウインドーにつながる

BMWの定石を押さえたスタイリング
 車名はアッパーミドルサルーン「5シリーズ」のバリエーションだが、5000×1900×1565mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース3070mmの大柄な車体が物語るように、プラットフォームはフラッグシップの7シリーズがベース。ちなみに5シリーズセダンと7シリーズセダンの車体サイズとホイールベースは次のとおり。

 全長×全幅×全高[mm]ホイールベース[mm]
5シリーズ セダン4855×1845×14702890
7シリーズ セダン5070×1900×14903070
5シリーズ グランツーリスモ5000×1900×15653070

 外観は、丸型4ヘッドライトに挟まれたキドニーグリル、ロングノーズ+キャビン・バックワードのフォルム、切り詰められた前後オーバーハング、ヘッドライトからドアハンドルを経てテールランプを結ぶキャラクターライン、延長線が前車軸中心に至るAピラー、ホフマイスター・キンク(最後部のピラー下端のキックアップ)といったBMWスタイリングの要素をすべて維持しつつ、ファストバックに繋がるクーペのようなルーフラインを持たせ、リアデッキとテールエンドはスポイラー風に処理される。LEDを使ったテールランプユニットは7シリーズに似た形状の大型のものとなっており、水平を強調するクロームのガーニッシュがリアゲートのオープニングラインに付く。

 テールゲートには、2ピース構造の「ツイン・テールゲート」を採用。通常の5ドア・サルーンのように、リア・ウインドーごと大きくゲートを開けるほかに、リア・ウインドーより下の部分だけを小さく開けることもできる。小さく開口するときは、パッセンジャー・ルームとラゲッジ・スペースは仕切られたままで、外気がパッセンジャー・ルームに及ぶことがない。また大きく開けるときは電動で開閉し、リモコン操作も可能。

 このほか、BMWの4ドアモデルとして初めて、サイド・ウインドーがフレームレスになった。

ゲート全体または下半分だけが開くツイン・テールゲート
下半分だけ開けるときは中央、全体を開けるときは右端のスイッチを押す全体を開閉するときは電動スタイリングのためにフレームレスウインドーを採用
左右ドアミラー下のカメラとリアカメラの画像を合成して車両の後部を真上から見た画像を表示する「トップビュー」を備える

7シリーズなみのパッセンジャー・ルームに最大1700Lのカーゴルーム
 インテリアはダコタ・レザーとアッシュ・ウッド・トリムが標準。オプションでナッパ・レザーなどを選べる。

 前席はメーターナセルと10.2インチワイドのインフォテインメントディスプレイを持つ最上段、ライトコントロールとスターターボタン、エアコンの吹き出し口などを備えたウッドトリムの中段、センタートンネルやドアに繋がるレザーの下段の3層で構成される。メーターパネルはエンジンOFFで表示がブラックアウトし、メーターリムのクロームだけが残る7シリーズと同様のもの。センターコンソールはBMWの伝統に則ってややドライバー側を向く。センタートンネル上のシフトレバーの脇には、iDriveコントローラーを備える。

 運転席は着座位置が574mmと高めに設定された「セミ・コマンドポジション」。乗り降りのしやすさと、視認性のよさを狙ったと言う。

着座位置は高め前席は電動
ブラックパネルのメーターインフォテインメントディスプレイは10.2インチワイドパーキングブレーキは電動
iDriveは周囲にダイレクトスイッチを備えた新しいタイプセンターアームレストの物入れグローブボックス

 後席は車体サイズを活かして7シリーズなみの広さを実現。標準で3人がけだが、オプションで2人がけのコンフォート・シートを選べる。シートは最大100mmの前後スライドが可能で、前端にセットするとラゲッジルームの容量が590L、後端で440Lとなる。シートバックは45:10:45の分割可倒式で、すべて折りたたむとラゲッジスペース容量は1700Lに拡大される。

 またシートバックはリクライニングが可能で、標準3人がけシートで33度、2人がけコンフォート・シートで40度の調整が可能。コンフォート・シートは電動で前後スライド、リクライニングを調整できる。

後席は前後スライド、リクライニングが可能
シートバックを倒すと、その後ろにセパレーションボードがある。このボードも倒してトランクスルーが可能。セパレーションボードはラゲッジルームからも倒せるが、シートは車室からしか倒せない
トランクルームの左右のレバーがセパレーションボードを倒すためのものランフラットタイヤなのでスペアタイヤはない

新開発直列6気筒はバルブトロニック+ターボ
 日本に導入されるのは「550i グランツーリスモ」と「535i グランツーリスモ」の2モデル。いずれも直噴ガソリンエンジンだが、550iは4.4リッター V型8気筒 DOHC パラレルツインターボ、535iは3リッター 直列6気筒 DOHC ツインスクロールターボとなる。

 組み合わされるトランスミッションはどちらも新開発の8速AT。ブレーキング時や慣性走行時にオルタネーターでバッテリーを充電する「ブレーキ・エネルギー回生システム」も備える。

 550iは最大出力(以下出力、トルクはすべて欧州基準)300kW(407PS)/5500rpm、600Nm(61.2kgm)/1750-4500rpm。車両重量は2150kgで、燃費は10・15モード、JC08モードともに7.4km/L。

 535iの直列6気筒エンジンは新開発。バルブリフト量を無段階で変えることで、スロットルバルブの代わりとする「バルブトロニック」に、初めてターボチャージャーを組み合わせた。最大出力は225kW(306PS)/5800rpm、最大トルクは400Nm(40.8kgm)/1200-5000rpm。車両重量は2020kgで、10・15モード燃費は9.4km/L、JC08モード燃費は9.3km/Lとなっている。

 サスペンションは前がダブル・ウィッシュボーンにコイル・スプリング、リアがインテグラル・アームにセルフ・レベリング機構付きのエア・スプリングの組み合わせ。7シリーズ同様に後輪操舵システム「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」(IAS)を搭載する。IASは、60km/hまでは後輪が前輪と逆位相に最大3度まで、80km/h以上では同位相にやはり最大3度まで切り、低速域での取り回しと、高速域での操安性を両立する。これにより最小回転半径は5.5mにとどめられている。

535iの直列6気筒 ツインスクロールターボエンジン535iのタイヤサイズは245/50 R18。550iは前が245/45 R19、後ろが275/40 R19
サイズは7シリーズより70mm短く、75mm高いインテグレイテッド・アクティブ・ステアリング

 

クルーガー社長

新しい道を開く商品
 同社は11月26日、東京 八重洲のショールーム「BMW Group Studio」で発表会を開催。ローランド・クルーガー社長は5シリーズ グランツーリスモを「BMWのラインアップの中だけでなく、自動車産業全体でまったく新しい道を開く商品」「新しいセグメントでの新しい要素をたくさん盛り込んである」と、従来のセグメンテーションにない新しい製品であることを強調。BMWはスポーツセダンというセグメントを確立してから、ツーリング(ワゴン)、カブリオレ、SUVといった車種を派生させてきたように、5シリーズ グランツーリスモも新しいモデルとしてフィットするとした。

 さらに、余裕のあるパッセンジャールームとラゲッジスペースが目立つ5シリーズグランツーリスモだが、「他のモデルと同様、BMWらしいドライビングダイナミクスを体験できる」と、BMWらしい走りも備えていることを付け加えた。

 クルーガー社長は同社の状況を「世界的な経済危機を乗り切り、日本でのビジネスも堅調」と説明。J.D.パワー・アジア・パシフィックの2009年日本自動車満足度調査ではセールス満足度、サービス満足度ともに輸入車ではトップであることあげた。

 日本市場でのBMWは、エコカー減税対応車を代表とする環境対策では目立たないが、欧州ではCO2排出量の削減率が、欧州自動車工業会平均の16%を上回る27%をマークしていること、ダウ・ジョーンズのサステイナビリティ・インデックスでは5年連続で自動車産業部門でトップになっていることをアピールした。

 なお5シリーズ グランツーリスモ(535i グランツーリスモ)は、BMW Group Studioに12月28日まで展示される。

5シリーズGTもBMWのラインアップにフィットする日本市場の満足度調査では輸入車トップ欧州の他メーカーを上回るCO2削減率

(編集部:田中真一郎)
2009年 11月 26日