ヤマハ、電動アシスト自転車「PAS」2010年モデル説明会 緩斜面でのアシスト力を強化。PASのプロトタイプも展示 |
ヤマハ発動機は2月17日、東京都新宿区の国立競技場において電動アシスト自転車「PAS(パス)」の2010年モデルの説明会を開催した。
電動アシスト自転車は、電動モーターが人のこぐ力をアシストする自転車としてヤマハが1993年に世界で初めて商品化したもの。当初アシスト比率(電動モーターによるアシスト力と人のこぐ力の比率)は15km/h以下において1:1となっていたが、2008年12月1日に法改正が行われ、10km/h以下においてこぐ力の2倍までアシスト可能な1:2となり、さらに、ここ数年の環境志向などによって市場が拡大している。
PASの2010年モデルはいずれもリチウムイオンバッテリーを用いており、4.0AhのリチウムSバッテリーを搭載した「PAS リチウム S」「PAS CITY-S リチウム」「PAS CITYーF リチウム」と、6.0AhのリチウムMバッテリーを搭載した「PAS リチウム M」「PAS CITY-M リチウム」が1月8日に発表され、8.1AhのリチウムLバッテリーを搭載した「PAS リチウム L」「PAS リチウム L スーパー」「PAS CITY-S リチウム L スーパー」が2月17日に発表されている。
説明会では、これらPASの2010年モデルの開発背景や製品の狙いと、従来から発売されていた幼児2人同乗用自転車「PAS Rafini(パス ラフィーニ)」「PAS リトルモア」のバリエーション拡大などについて解説が行われた。
ヤマハ発動機 SP事業推進統括部 事業推進統括部長 小林正典氏 |
説明会の冒頭で、ヤマハ SP事業推進統括部 事業推進統括部長の小林正典氏は、「アシスト比率の変更や、2009年7月に各都道府県の道路交通法施行細則見直しによって幼児2人同乗用自転車を導入でき、国内の電動アシスト自転車市場は、2008年と比べ116%、36万5000台にまで拡大した。ヤマハもそういったニーズに応えるべくバリエーションを増やし、前年比118%となる8万台の出荷を記録した」「近い将来50万台上に成長する国内市場で30%のシェア確保を目指したい。また、国内にとどまらず急成長している欧州市場においても注力していく」と言い、2010年モデルの大量投入の背景に、好調に推移する電動アシスト自転車市場があると語る。
ヤマハ発動機 PAS事業推進部 企画・営業 主査 石井謙司氏 |
2010年モデルについては、PAS事業推進部 企画・営業 主査 石井謙司氏からの商品説明が行われた。石井氏は、「電動アシスト自転車市場は、2000年と比べると2008年は2倍超となっており、さらにその伸びは加速している」と言い、とくに幼児2人同乗用自転車が認められたことによって、子供乗せモデルが1年で2倍になったと語る。
2009年モデルにおいては、PASの坂道での走りやすさや、内装3段のギアごとに異なるアシスト制御機構「S.P.E.C.3(Shift Position Electric Control×内装3段変速)」などが高い評価を得ていた半面、平坦路や緩斜面でのアシスト力強化をというユーザーからの要望があり、2010年モデルでは、その辺りの制御を改善したものになっていると言う。
また、自転車としての商品力を高めるため、カラーバリエーションの拡大、フロントグリップの握りやすさの改善、ブレーキレバー/ワイヤー/シューの変更による制動力向上を図っている。とくに電動アシスト自転車の一番の商品力となるアシスト力においては、8.1AhのリチウムLバッテリーモデルで最大アシスト力を強化。発進や平坦路、坂道の全走行域においてパワフルにしたと語った。
市場の伸びが著しい幼児2人同乗用自転車の「PAS Rafini(パス ラフィーニ)」「PAS リトルモア」について、カラーバリエーションの拡大のほか、1年間の傷害保険を付帯し、より安心して使えるものにしている。
2010年モデルでは、自転車としての商品力の向上を行った | 8.1AhのリチウムLバッテリーを搭載するモデルでは、アシスト力の最大値を上げている | |
幼児2人同乗用自転車では、カラーバリエーションを増やし、傷害保険も付帯する | ||
ラインアップを拡大し、買い物用途だけでなく通勤・通学用途に向けた電動アシスト自転車のバリエーションを増やす | 通勤・通学モデルの変更点 |
ヤマハでは、この電動アシスト自転車市場をさらに拡大させるため法人向けのリースを開始しており、その取り組みについてはPAS事業推進部 企画・営業 主査の松村憲一氏が詳細な説明を行った。
ヤマハ発動機 PAS事業推進部 企画・営業 主査 松村憲一氏 |
松村氏によると同社は、「パスクル」という官公庁 法人企業向けのリースシステムを用意しており、ここでは観光地などでのPASレンタサイクル事業を支援している。レンタサイクルスポットはヤマハが運営する「Becle(ビークル)」Webサイトで紹介し、より多くのユーザーにレンタルでPASを利用できる場所を知ってもらい、利用者増につなげていくと言う。
レンタサイクルスポットとしては、神奈川県の「レンタサイクル鎌倉湘南」や、京都府の「京の楽チャリ」などがあり、今後も山梨県の河口湖、長崎県の平戸市で展開。地域の事業主と協業を図っていく。また、官公庁に関しては神奈川県茅ヶ崎市の例が挙げられ、PASのレンタサイクルによる観光支援、幼児2人同乗モデルの幼稚園への貸し出しによる市民支援、企業団体への通勤モデル貸し出しによるEco通勤支援を提案している。
これらレンタサイクルのメンテナンスサポートは、オートバイで培ったサービスサポート体制を利用し、盗難保険・自転車総合保険を付帯した状態で最新のPASの貸し出しが行えると語った。
パスクルと名付けられたリースシステム。官公庁や企業向けのサービス | リース車種はPASの全機種から選択できる | 自転車総合保険や盗難保険も付帯する |
Becleで、PASのレンタル可能な場所を紹介している | レンタサイクルスポットは、順次拡大している | 茅ヶ崎市に提案中のリース概念図。観光や市民生活の支援に使ってもらうとしている |
PAS CITY-S リチウム L スーパー。PASシリーズ中最上級のアシストレベルを誇り、ちょっとした坂なら平坦路と同等以下の力でこぐだけで上っていく。24型と26型があり、13万2800円 |
説明会の後、国立競技場の2階エリアや1階エリアへのスロープを用いて試乗会が行われた。2010年モデルのほか、1993年に発売された初期型PASも用意され、実際のアシスト力を確かめることができた。試乗したのは最大のバッテリー容量とアシスト力を誇るPAS CITY-S リチウム L スーパー。
ヤマハのスタッフによると、法規制の関係で10km/h以下が一番アシスト力を感じる部分であり、2速走行時にその力強さが分かりやすいとのこと。早速こぎ始めてみると、スタート時からアシストの力強さを感じる。比較のために試乗した初期型PASと比べると、静かな上、力強さは段違いで、電動アシスト自転車の進歩を感じる部分。これは、上り坂でも、ギアを変えても同じで、坂道をぐんぐん上っていく。上り坂や重たい荷物を積んだ際には、とくにその恩恵を感じられることだろう。ただ、出だしのアシスト力は、コントローラーでアシスト力を調整しても強めに感じるほど。普段電動アシストのない普通の自転車に乗っているため、慣れの問題もあるのだろうが、もう少し弱い設定でもよかったのでは?と感じた部分だ。
なお、説明会場では、電動アシスト自転車の試作版やPASのプロトタイプも展示されていたので、以下に写真で掲載しておく。
(編集部:谷川 潔)
2010年 2月 18日