ケイ・コッツォリーノ選手に聞く、フォーミュラ・ニッポンにかける思い
フォーミュラ・ニッポン第2戦が今週末にツインリンクもてぎで開催

Team Le Mansのドライバーとしてフォーミュラ・ニッポンを戦うケイ・コッツォリーノ選手

2010年5月22日、23日開催



ケイ・コッツォリーノ選手

 フォーミュラ・ニッポン第2戦が、今週末(5月22日、23日)にツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町)で開催される。フォーミュラ・ニッポンは、日本のフォーミュラカーレースとしては最高格式のレースで、4月に開幕戦が鈴鹿で行われ、ナカジマレーシングの小暮卓史選手の優勝でシリーズがスタートした。続く第2戦として予定されているのがツインリンクもてぎでのレースだ。

 そのフォーミュラ・ニッポンに今年から新人ドライバーとして参戦しているのがTeam Le Mansのケイ・コッツォリーノ選手。イタリア人の父親と日本人の母親を持つハーフのコッツォリーノ選手は、名前や容貌こそイタリア人だが、ネイティブといってよい日本語を話し、ご飯と納豆が大好きという大和魂?を兼ね備えたドライバーだ。

 今回はコッツォリーノ選手の父親が経営するイタリアンレストラン「リストランテ カルミネ」において、コッツォリーノ選手の力の源であるイタリア料理のランチをともに食べながら、フォーミュラ・ニッポンへ望む心意気などを語ってもらった。


リストランテ カルミネ。東京都新宿区細工町1-19 西川ビルの1階にあるレストラン。取材時はランチタイムとあって、多くのビジネスマンも昼食を取っていた

日本生まれ、日本育ちのイタリア人は、レーシングキャリアも日本育ち
 ケイ・コッツォリーノ選手という名前だけを聞くと、来日して走っているヨーロッパの選手というイメージを抱くと思う。フォーミュラ・ニッポンでもアンドレ・ロッテラー選手やフランソワ・デュバル選手はこれに該当する。2人とも、ヨーロッパのF3選手権での活躍が認められて、そのステップアップ先としてフォーミュラ・ニッポンを選んだというパターンだ。

 これに対して、コッツォリーノ選手は異なるステップを踏んでいる。というのも、コッツォリーノ選手は、日本生まれ、日本育ちであるからだ。コッツォリーノ選手の父親のカルミノさんは、イタリア生まれで、今から30年前ほどに来日。その後、日本の女性(コッツォリーノ選手の母親)と結婚し、イタリアレストランを開業して今に至っている。つまり、コッツォリーノ選手は、イタリアと日本のハーフとなる。

 レースキャリアのスタートは9歳の頃にカートに乗ったことから始まる。カルミノさん、コッツォリーノ選手、コッツォリーノ選手の弟の3人でカート場へ行き、徐々に本格的になっていったのだと言う。「毎週日曜日になると、家族でカート場に通っていました。それまで家族みんなでやる趣味とかはなかったので、それは楽しかった」(カルミノさん)と、趣味から本気のカートに変わっていったのだと言う。ちなみに、カルミノさんがコッツォリーノ選手に最初に買い与えたレーシングカートは赤色で、フェラーリのロゴが貼られていたそうだ(さすがイタリア人?)。

 その後、コッツォリーノ選手は、ステップアップしていった。2007年にはフォーミュラトヨタにチャレンジし見事シリーズチャンピオンを獲得。翌2008年には全日本F3にステップアップし、2年目となる昨年は名門戸田レーシングから参戦し、ツインリンクもてぎで1勝を挙げてランキング4位となった。現実問題として、現在の全日本F3では、トムスとそれ以外のチームには大きな力の差がある状況となっており、トムスの3台に次ぐ4位というポジションは、評価されてよい結果と言えるだろう。

 その結果、コッツォリーノ選手は今年の開幕前に行われたTeam Le Mansのフォーミュラ・ニッポンのシーズン前テストに呼ばれ走ることになった。このときコッツォリーノ選手だけでなく、前年までトヨタの若手ドライバー支援プログラムであるTDPのヘンキ・ワルドシュミット選手も呼ばれており、2人がTeam Le Mansのドライバーとしてオーディションを受けるという形になっていた。コッツォリーノ選手はオーディションの結果、見事Team Le Mansのシートを得ることになったのだ。

 コッツォリーノ選手は「昨年の秋の時点ではフォーミュラ・ニッポンのシートを得られるかどうかはまったく見えていなかった。しかし、昨年秋に現在チームのスポンサーをしていただいている会社の社長さんに会う機会があって、それからテストのチャンスをいただけることになった」と言う。

 現在フォーミュラ・ニッポンのシートを得るのは非常に難しい。各チームとも経済的に苦しいこともあり、開幕前には2007年、2008年とダブルタイトルを獲得した松田次生選手がシートを失うなど、実力を証明済みの選手であっても厳しい状況となっている。実際、父親のカルミノさんも「ケイはメーカーの支援も受けていないし、私も経済的に余裕がある訳ではない。それでもここまで来られたのは、私達のことを支援してくれる人たちがいたから」と語ってくれた。

コッツォリーノ選手と父親のカルミネ・コッツォリーノ氏。子供のころの話を懐かしそうに語ってくれた

テストができないため、できるだけのことをして第2戦に備える
 そうして苦労してつかんだフォーミュラ・ニッポンのシートだが、鈴鹿で行われた第1戦では、コッツォリーノ選手にとっては残念な結果に終わってしまった。というのも、1周目のS字コーナーで他車と接触してリタイアという結果になったからだ。「1周目ということもありタイヤの温度が十分ではないので、S字で思ったよりスライドして他車とぶつかってしまった。本当ならレースは最もよい練習なので、慎重に行くべきだったと反省しています」(コッツォリーノ選手)と振り返ってくれた。

 だが、もう同じ失敗は繰り返さないと、コッツォリーノ選手は誓う。「Team Le Mansは過去に結果を残してきた名門だし、石浦選手という強力なチームメイトもいて、チームの総合力は非常に高い。フォーミュラ・ニッポンのレギュレーションの関係でテストではたくさん走れないので、データを参照しながらイメージトレーニングしたり、ゲームコンソールを利用したりして、たくさんサーキットを走るようにしている。特にツインリンクもてぎは昨年のF3で優勝しているサーキット」(コッツォリーノ選手)と、自身でも得意としているというツイリンクもてぎで、開幕戦の雪辱を狙っている。なお、プレイしているゲームは「グランツーリスモ」とのこと。

 ツインリンクもてぎ戦での目標だが「何よりもまず完走。そしてその延長線上にあるポイント獲得。現時点では自分とサーキット、サーキットと車には何の問題もない。課題があるとすれば、自分と車のマッチング。スイフトのシャシーに乗っている時間はほかのドライバーに比べて多くないので、チームメイトのデータなども参照しながらチームと車を作っていかないといけない」(コッツォリーノ選手)と説明してくれた。

取材後は、レストランの前で記念写真。コッツォリーノ親子の脇をもてぎエンジェルがサポート取材時にレストランに掲示されていた、ランチメニューもてぎエンジェルも、ランチをともにした

当日は様々なイベントがサーキットで行われる、こちらも要チェック
 フォーミュラ・ニッポン 第2戦 ツインリンクもてぎは、5月22日に予選、23日に決勝が行われる。前売り観戦券(2日間通し)は大人5000円、子供(中学生以下から3歳)が500円となっており、当日観戦券は大人が予選日3000円、決勝日6000円、子供は2日間通しで500円となる。このほか、駐車券が前売1000円(四輪)、500円(二輪)、当日駐車券が土日それぞれ2000円(四輪)などとなっている。

 さまざまなイベントも用意されており、ドライバーが参加するトークショー、フォーミュラ・ニッポンマシンの解体ショー、ツインリンクもてぎのレーシングクィーンであるツインリンクもてぎエンジェルによるステージ、各チームのレーシングクィーンによるステージなどが予定されている。詳しくはツインリンクもてぎのWebサイトを参照していただきたい。

 テレビ観戦の場合にはCS放送やCATVなどで視聴できるJ-SPORTS 1により、5月23日の14時よりライブ中継が行われる。サーキットに直接いくことができない読者はぜひともテレビ放送などでその激戦の模様と、コッツォリーノ選手の活躍をチェックしていただきたい。

(笠原一輝)
2010年 5月 20日