NEXCO中日本、新東名で提供するサービスを検討する懇談会
新東名では標識やSA/PAを改善

2010年6月2日開催



 NEXCO中日本(中日本高速道路)は6月2日、都内で「第6回新東名夢ロード懇談会」を開催した。

 同懇談会は、2012年度の一部開通、2020年度の全線完成を目指す新東名高速道路で提供される、各種サービスとその方向性を、有識者が検討する場として設けられたもの。2007年に第1回が開かれ、6回目を迎える。政策研究大学院大学の森地茂教授を座長とし、トヨタ自動車の渡邊浩之技監ら9人の委員で構成されている(ただし今回は渡邉技監でなく、代理人が出席した)

 新東名は21世紀に開通する幹線高速道路にふさわしいサービスを提供すべく、「新東名リーディングプロジェクト」と銘打ち、ITS(高度道路交通システム)や最新の建築技術などさまざまな技術の導入を図っている。これらの技術は、静岡県内の新東名完成区間を利用して、実証実験が行われている。

座長の森地茂教授完成している新東名の区間を利用した、実証実験のテストコース

 これらの導入にあたって、どのようなサービスをどのように提供するかを有識者に諮問するのが、この懇談会の役割だ。

 今回の懇談会では、新東名リーディングプロジェクトの状況と、実証実験の中間報告に加え、SA/PAの休憩施設について諮問された。

CCTVカメラで得た画像を処理して交通状況を把握する実験。交通量の計測精度は実用レベルにあるが、突発的な出来事の把握にまだ問題を抱えている

情報提供手段や環境負荷改善を実験
 中間報告で明らかにされた実証実験のテーマは、「情報の収集と提供」「トンネルの照明」「使いやすく環境負荷の少ないSA(サービスエリア)/PA(パーキングエリア)」「新たな標識の開発」「床版防水」の5つ。

 「情報の収集と提供」は、NEXCO中日本が新東名の交通状況を把握し、それをいかにドライバーに伝えるか、という技術。

 情報収集は、CCTVカメラでの目視と、その画像を処理して、交通量や車種、速度を計測する。CCTVカメラは約1km先までの状況を確認できること、画像処理によって90%以上の精度で交通状況を把握できることが実証されている。しかし、停車、低速、逆走、速度超過、路肩走行、落下物といった突発的な出来事を把握できる範囲は、現段階では約200mにとどまっており、車両の挙動は検出しやすいが、落下物が検出しにくいという問題がある。

 一方、情報提供は、DSRC(専用狭域通信、次世代ETC)のスポット通信と、DSCR非搭載車のための情報板やハイウェイラジオで行う。DSRCは情報提供だけでなく、搭載車のプローブデータを収集することで、通行にかかる時間の予測精度を改善でき、これはおおむね良好な結果を得ている。

 情報板については、御殿場JCT(ジャンクション)で東名と新東名が分岐する際に、どちらを選ぶかを判断するための情報板のデザインなどが実験された。また渋滞の発生しやすい場所には簡易情報板を設けてより細かい情報を提供するほか、ハイウェイラジオは停波帯を間に設けることで1kmピッチで異なる情報を提供する。

DSRCによる情報提供。落下物などの情報を車内に提供できるDSRCはプローブデータの収集にも使える
ハイウェイラジオの提供区間を細かくするため、境目に停波帯を設ける東名と新東名のどちらを選ぶかを判断するための情報板。自分が走っている道が直進するデザインが支持された

 トンネル照明は、24時間照明されるため、コストと環境負荷の低減が課題。特に新東名は御殿場~三ヶ日間162kmに、35本43kmものトンネルを持っているため、これらの対策が大きな効果が得られるとしている。

 コストに関しては、蛍光灯より寿命の長いセラミックメタルハライドランプや、LEDランプを使用。また、直下でなくクルマの進行方向を照明する「プロビーム照明」により、先行車の視認性を向上させる。

 トンネル入口はドライバーの目を慣らすために照明が明るくなっているが、この部分には太陽光発電を用いることで、環境負荷の低減を図る。

 これらはいずれも良好な実験結果を得ていると言う。

トンネル照明にはセラミックメタルハライドランプとLEDランプを用いて長寿命化を図る。また、やや前方を照らすプロビーム照明により、先行車の視認性を上げる開通時は暫定2車線で運用されるが、その際はトンネル照明が片側のみとなる。入口の明るい部分には太陽光発電を使用する

 SA/PAでは、高齢ドライバーや障がい者のためのトイレのユニバーサルデザインの採用、外国人向けの案内、環境負荷の低減が課題。トイレのユニバーサルデザインについては既報のため、関連記事を参照されたい。

 環境負荷については、雨水利用や節水型便器の採用、燃料電池や、刈草を燃料とするペレットボイラー、太陽光発電の利用で対応する。またEV用急速充電器や、アイドリングストップ用給電設備も整備する。これらは実証実験が続いているが、とくにペレットボイラーは煤煙や臭気の対策が課題となっている。

SA/PAの環境負荷を下げるエネルギー源。ペレットボイラーは路側の緑化部分の刈草などを燃料とするボイラー新しい標識。標識の大きさは変えず、フォントを変更して大きくすることで視認性を改善した

個々のSA/PAに特色を
 休憩施設、つまりSA/PAにどのような商業施設を入れ、どんな施設を設けるかについては、「多彩なニーズへの対応」「それぞれのSA/PAに個性を持たせる」「地域との連携」が課題。

 多彩なニーズへの対応は、特に女性を意識した上質なトイレ、長距離ドライバーのためのシャワーやランドリー施設、バリアフリーなどで対応。

 SA/PAの個性については、それぞれに開発コンセプトを設定。たとえば森町PAは「東海道の賑わい市」、掛川PAは「職業・商業ドライバーの御用達」、沼津SAは「リゾートマインド」といったテーマが設けられる。

 地域連携では、すでにいくつかの設置例がある「ぷらっとパーク」コンセプトにより、高速道路外からの利用者を誘致。周辺地域のユーザーへの利便を図るほか、高速道路ユーザー向けには地場産品を提供するテナントを配置する。

新東名の休憩施設配置SA/PA内は車種やユーザーの形態に配慮して、店舗や駐車場の配置を決める
SA、PAごとに特色を持たせるSA/PA周辺からの来場者のための駐車場を用意して高速道路ユーザー以外の利用も促進。さらに地域との連携を図る

 懇談会ではこれらの説明に対し、全体的にはさまざまな取組が評価され、継続を希望する意見が出た。また、休憩施設については、地域とのつながり、連携を強化する取組や工夫を求める意見が出た。NEXCO中日本はこれらの意見を踏まえ、実験と整備を続け、2012年度の一部開通に備える。

(編集部:田中真一郎)
2010年 6月 2日