NEXCO中日本、新東名高速金谷トンネルで次世代照明実験 LEDランプ、プロビーム照明など新照明技術を実証実験 |
NEXCO中日本(中日本高速道路)が建設中の新東名高速道路。全通予定は2020年度と、まだ先だが静岡県区間の工事は順調に進んでおり、2012年度には一部区間が開通する予定だ。
この新東名の特徴として、従来の東名高速よりも急カーブや急勾配が少なく、東名高速の最小曲率がR300(半径300m)に対して、新東名高速はR1500、東名高速の最大勾配が5%(100m進んで5mの高低差)に対して、新東名高速はおおむね2%となっている。また、新東名高速は東名高速より山側に位置するためトンネルが数多く作られている。
この新東名高速の目的は、日本の大動脈である東名高速の抜本的なサービス改善であり、当初予定していた交通量を超えてしまっている東名高速の渋滞緩和や、万が一の災害時のバイパス的役割を担う。とくに夜間にはトラックなどの交通が多いとのことで、新東名ができることで、大型車の事故が減り、1年に4000回も起きていると言う渋滞の減少も期待されている。一部運送会社の試算によると、新東名高速ができることで渋滞が減り、大型車においては約10%の燃費改善が図れるとのことだ。
2月13日に報道陣向けに公開されたのは、新東名高速の金谷トンネル(仮称)で行われているトンネル照明実験。前述したように新東名高速ではトンネル区間が増えており、そのトンネルの照明をどのように行うかの実証実験が行われている。
照明実験の説明を行うNEXCO中日本 建設事業本部・建設チーム 大屋和幸氏 |
実験が行われている金谷トンネルは全長4.7kmのトンネルで、3種類のトンネル照明器具が設置されていた。1つは従来から用いられている蛍光灯照明、1つは一部のトンネルで使われ始めているセラミックメタルハライドランプ、そして新たな照明器具となるLEDランプだ。この中では、LEDランプがもっとも寿命が長く、蛍光灯の1万2000時間に対して、約4万~6万時間だと言う。
新東名高速の御殿場JCT(ジャンクション)~三カ日JCT間の全トンネル(89km、上下線で70本)にセラミックメタルハライドランプを用いた場合、建設費を含め40年間で約50億円のコスト削減になるとのこと。年間では約220万kWhの消費電力削減になり、CO2削減量も年間約930tと試算されている。
一般的な高周波点灯型高効率蛍光灯。4本の蛍光管が用いられている | ||
セラミックメタルハライドランプ。右に光源があり、左はブレーカーなど各種コントロール機器 | ||
LEDランプ。4列18個のLEDが配置されている。鉛直方向へ配光する照明列のほか、約60度傾けて配光を行う照明列が用意されている |
トンネル内では、各種照明器具による見え方の違いのほか、照明の配光方向の違いによる見え方の違いも検証していた。通常のトンネル内照明は、照明器具をトンネル壁面に取り付け鉛直方向に路面を照らす対称照明が行われているが、金谷トンネルではプロビーム照明も行われている。このプロビーム照明は、車の進行方向を照らすもので、これにより車の後部の視認性が上がるというメリットがある。
また、新東名では開通時は暫定的に2車線区間での運用が予定されており、その際にトンネル片側だけから照明を行う片側配列照明も実験。これにより、安全性を損なうことなく消費電力を下げることができるかどうかの確認も行っていた。
大屋氏によると、金谷トンネルでこれらの実験を行うことで、LEDランプやプロビーム照明、片側配列照明の確認を行い、新東名内のトンネルで採用していきたいと言う。金谷トンネル自体は蛍光灯照明とセラミックメタルハライドランプによる照明を設置済みとのことで、LEDランプの採用はないとのことだ。
NEXCO中日本では、このトンネル内照明の実験のほか、工事中の新東名高速を活用することで、高速道路の新技術の実験を行っていく予定で、DSRC車載器を使った新たな情報収集や提供設備の実験も予定されている。
【お詫びと訂正】記事初出時、約50億円のコスト削減効果をLEDランプによるものとしておりましたが、正しくはセラミックメタルハライドランプによるものとなります。お詫びして訂正させていただきます。
(編集部:谷川 潔)
2010年 2月 15日