NEXCO中日本、新東名高速金谷トンネルで次世代照明実験
LEDランプ、プロビーム照明など新照明技術を実証実験

トンネル照明実験が行われている新東名高速金谷トンネル

2010年2月13日公開



 NEXCO中日本(中日本高速道路)が建設中の新東名高速道路。全通予定は2020年度と、まだ先だが静岡県区間の工事は順調に進んでおり、2012年度には一部区間が開通する予定だ。

 この新東名の特徴として、従来の東名高速よりも急カーブや急勾配が少なく、東名高速の最小曲率がR300(半径300m)に対して、新東名高速はR1500、東名高速の最大勾配が5%(100m進んで5mの高低差)に対して、新東名高速はおおむね2%となっている。また、新東名高速は東名高速より山側に位置するためトンネルが数多く作られている。

 この新東名高速の目的は、日本の大動脈である東名高速の抜本的なサービス改善であり、当初予定していた交通量を超えてしまっている東名高速の渋滞緩和や、万が一の災害時のバイパス的役割を担う。とくに夜間にはトラックなどの交通が多いとのことで、新東名ができることで、大型車の事故が減り、1年に4000回も起きていると言う渋滞の減少も期待されている。一部運送会社の試算によると、新東名高速ができることで渋滞が減り、大型車においては約10%の燃費改善が図れるとのことだ。

新東名高速、新名神高速の概要。新名神の一部はすでに開通してる新東名高速の概要。静岡県区間が先に開通する予定新東名高速の進捗状況
新東名高速の路線特徴。急カーブや急勾配が減り、より走りやすい高速道路となる新東名の整備効果。夜間の大型車による事故の減少が期待される
現在の東名高速の交通量。黄色いエリアが計算上の交通容量で、赤い部分は2008年の平均。平均でも交通容量を超えており、ゴールデンウィーク中の交通量(緑の部分)は2倍を超える個所もある新東名高速の整備効果。NEXCO中日本は静岡県と協定を結んでおり、災害時はすでに工事を終えた区間を、開通前でも利用できるようにする。昨年の東名高速崩落時には、実際に一部の区間が提供された新東名高速の開通で二重化され、災害時の輸送の確保も図られる

 2月13日に報道陣向けに公開されたのは、新東名高速の金谷トンネル(仮称)で行われているトンネル照明実験。前述したように新東名高速ではトンネル区間が増えており、そのトンネルの照明をどのように行うかの実証実験が行われている。

照明実験の説明を行うNEXCO中日本 建設事業本部・建設チーム 大屋和幸氏

 実験が行われている金谷トンネルは全長4.7kmのトンネルで、3種類のトンネル照明器具が設置されていた。1つは従来から用いられている蛍光灯照明、1つは一部のトンネルで使われ始めているセラミックメタルハライドランプ、そして新たな照明器具となるLEDランプだ。この中では、LEDランプがもっとも寿命が長く、蛍光灯の1万2000時間に対して、約4万~6万時間だと言う。

 新東名高速の御殿場JCT(ジャンクション)~三カ日JCT間の全トンネル(89km、上下線で70本)にセラミックメタルハライドランプを用いた場合、建設費を含め40年間で約50億円のコスト削減になるとのこと。年間では約220万kWhの消費電力削減になり、CO2削減量も年間約930tと試算されている。


一般的な高周波点灯型高効率蛍光灯。4本の蛍光管が用いられている
セラミックメタルハライドランプ。右に光源があり、左はブレーカーなど各種コントロール機器
LEDランプ。4列18個のLEDが配置されている。鉛直方向へ配光する照明列のほか、約60度傾けて配光を行う照明列が用意されている

 トンネル内では、各種照明器具による見え方の違いのほか、照明の配光方向の違いによる見え方の違いも検証していた。通常のトンネル内照明は、照明器具をトンネル壁面に取り付け鉛直方向に路面を照らす対称照明が行われているが、金谷トンネルではプロビーム照明も行われている。このプロビーム照明は、車の進行方向を照らすもので、これにより車の後部の視認性が上がるというメリットがある。

 また、新東名では開通時は暫定的に2車線区間での運用が予定されており、その際にトンネル片側だけから照明を行う片側配列照明も実験。これにより、安全性を損なうことなく消費電力を下げることができるかどうかの確認も行っていた。

 大屋氏によると、金谷トンネルでこれらの実験を行うことで、LEDランプやプロビーム照明、片側配列照明の確認を行い、新東名内のトンネルで採用していきたいと言う。金谷トンネル自体は蛍光灯照明とセラミックメタルハライドランプによる照明を設置済みとのことで、LEDランプの採用はないとのことだ。

プロビーム照明の実証実験区間。手前の車はプロビーム照明、奥の車は対称照明。車の後部や、看板などに明るさの違いが表れている左側の蛍光灯で対称照明を行い、セラミックメタルハライドランプでプロビーム照明光を作り出しているプロビーム照明の概念図。車の進行方向を照らすことで、後続車にとって先方を認識しやすい光を作り出す
LEDランプによる照明区間。LEDランプは鉛直方向の照明列と、60度傾けた照明列が組み合わされており、プロビーム照明となっている実験区間のため、右のLEDランプのほか、蛍光灯照明、セラミックメタルハライドランプと3種の照明器具が並ぶLEDランプ。一番左と中央右が60度傾いた照明列。右が進行方向となっており、進行方向への照明が行われている
2車線実験区間。左側からの照明が行われ、照度や輝度分布が計測される点灯していないため分かりにくいが、照明器具の取り付け位置による差を検証する区間。左側に3つの異なる高さで照明器具が取り付けられている金谷トンネル内に設けられている避難路。車が逆方向のトンネルへと抜けられるようになっており、万が一の際にもう1本のトンネルを使って避難できる
金谷トンネル入口には、太陽光発電パネルによる発電実験も行われていた。新東名は東西方向に走るため、太陽光パネルを設置しやすいと言う。発電容量は約100kWで、パネル枚数は480枚

 NEXCO中日本では、このトンネル内照明の実験のほか、工事中の新東名高速を活用することで、高速道路の新技術の実験を行っていく予定で、DSRC車載器を使った新たな情報収集や提供設備の実験も予定されている。

【お詫びと訂正】記事初出時、約50億円のコスト削減効果をLEDランプによるものとしておりましたが、正しくはセラミックメタルハライドランプによるものとなります。お詫びして訂正させていただきます。

(編集部:谷川 潔)
2010年 2月 15日