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NEXCO中日本の「コミュニケーション・プラザ 富士」を見学してきた

新東名高速が誇る最新の道路技術を誰でも見学可能

コミュニケーション・プラザ 富士では、新東名高速道路の建設手順や新技術・新工法などについて女性スタッフが分かりやすく解説してくれる
開館時間:10時~17時(年末年始を除く)

入館料無料

新東名開通から間もなく1年

 NEXCO中日本(中日本高速道路)が管理・運営する新東名高速道路が開通してから、間もなく1年になる。

 現在開通している新東名の区間は御殿場JCT(ジャンクション)~三ケ日JCT間の約162kmだが、2014年度に浜松いなさJCT~豊田東JCT、2016年度に海老名南JCT~厚木南IC(インターチェンジ)、2018年度に厚木南IC~伊勢原北IC、2020年度に伊勢原北IC~御殿場JCT間の開通を予定しており、最終的に全区間(海老名南JCT~豊田東JCT)で全長254㎞の高速道路になる。

現在開通している新東名の区間は御殿場JCT~三ケ日JCT間となるが、最終的に全区間で全長254㎞の高速道路になる

 すでに新東名を走行したという方も多いかと思うが、新東名の特長は「走りやすい」ということだ。それは数値にも表れており、平行して海側を走る東名高速のカーブの最小半径が300m、坂道の最大勾配が5%なのに対し、新東名は最小半径3000m、最大勾配2%となっており、新東名の方がカーブと坂道が緩やかになっている。また、御殿場JCT~三ヶ日JCT間の距離を比較すると新東名の方が約10kmも短く、トータルで走行時間の短縮が図りやすい構造になっている。

 そんな新東名の基本計画(御殿場JCT~三ヶ日JCT間)が策定されたのは1989年。構想から20年以上の歳月を経て開通となった。工事に着工したのは、長泉沼津~三ヶ日JCT(148.7km、同)が1995年、御殿場JCT~長泉沼津間(13.2km、連絡路含む)が2000年。その工事では安全と品質を確保しつつ、コストを圧縮するための新技術や新工法が積極的に採用されたと言う。

東名高速に比べ新東名はカーブと坂道が緩やかなのが特長
新東名からは雄大な富士山を望むことができる
御殿場JCT~三ヶ日JCT間にはSA(サービスエリア)の新ブランド「NEOPASA(ネオパーサ)」が4個所ある。充実したフードコートやコインシャワーなどのサービスもあり、新東名を走行した多くの方が利用したのではなかろうか

新東名高速が誇る最新の道路技術を見学できる!

コミュニケーション・プラザ富士は新東名 新富士ICに隣接。東名高速道路 富士ICからも約10分で着く

 そうした新東名で採用した技術などを紹介している施設が、新東名 新富士ICに隣接する「コミュニケーション・プラザ富士」だ。

 このコミュニケーション・プラザ富士では、新東名がどのように造られたか、当時の映像を交えて紹介するプレゼンテーション映像(約13分)を視聴できるほか、実際の橋梁工事で使った鉄筋やケーブル、トンネル工事で採用したTBM(トンネルボーリングマシン)工法(正式にはTBM導坑先進拡幅掘削工法)の仕組みを紹介する模型などを展示している。

コミュニケーション・プラザ富士のエントランス
プレゼンルームは3階にある。3階でエレベーターを降りるとまず床に埋め込まれた巨大マップが目に付く。巨大マップでは新東名を中心とした道路ネットワークを見ることができる
椅子に座ってプレゼンテーション映像(約13分)を視聴できる
天気がよければ窓から富士山を望むことができる
天気のよい日にコミュニケーション・プラザ富士から見える富士山

 TBMの模型は伊佐布トンネルの建設で使われた「竜爪号」(採掘径5.1m、TBM本体長11.3m、全体設備長60.5m)の1/25スケールモデル。新東名では18本のトンネル建設でTBMが使われたそうだが、場所によって地質が弱いところもあり、それでいて採掘断面積が大きいことからこのTBMを使用。一般的なシールドマシンと比べ、径の小さいTBMで小さな坑道を作り、その上で爆薬の発破などでトンネルの幅を広げるという工法を採用した。

 TBMを使った導坑掘削のメリットは「導坑掘削による地質状況の確認が可能となること」「拡幅掘削前に水抜きや事前補強を行うことで切羽(掘削が行われる現場)の安定が図れること」「導坑の芯抜き効果や切羽安定効果による掘削効率が向上すること」「導坑を活用した計測や工事中換気の効率化が図れること」などがあると言い、大断面トンネルを安全で効率的に拡幅掘削できる工法なのだそう。

 コミュニケーション・プラザ富士ではTBMの先端に使われた実物の「TBMカッタービット」を見ることができるほか、新東名のように規模の大きい橋梁では構造物に働く力が大きくなるため、太い径の鉄筋をコンクリートに入れることでより大きな引っ張る力に耐えられるようにしているそうで、実際の新東名で使われる鉄筋(D51)を展示している。

 また、猿田川橋(全長610m)と巴川橋(全長479m)は「PC複合トラス構造」と呼ばれる、上部工をコンクリート床版と鋼トラス材を組み合わせた複合構造とし、従来のコンクリート橋に比べて軽量にできたと言う。この両橋で使われる外ケーブルの実物も展示してある。

伊佐布トンネルの建設で使われたTBM「竜爪号」の模型。TBMはシールドマシンのようにセグメントを組み立てる機能はない
TBMの先端に使われたTBMカッタービットの実物
猿田川橋と巴川橋に用いられる外ケーブル。亜鉛めっきを施した外周を高密度ポリエチレンで覆い、2重被覆にすることで高い耐久性を備えた
外ケーブルで使うPC鋼線
新東名は道路表面の雨水が舗装内部を通って側溝に流れる、水はけのよい高機能舗装を使う。コミュニケーション・プラザ富士では実際に水を掛けて排水性を見ることができる
新東名で使われる鉄筋(D51)。新東名のように規模の大きい橋梁では構造物に働く力が大きくなるため、太い径の鉄筋をコンクリートに入れることでより大きな引っ張る力に耐えられるようにしている
鉄の橋を架ける際、鉄の板同士をつなぐために使われる高力ボルト。1本のボルトにアジアゾウ(体重5t)約5頭分を持ち上げられる力があると言う
新東名の建設手順を調査、土工、橋梁、トンネル、舗装(標識)という代表的なシーンをジオラマで再現する

 こうした新東名で採用される新技術などの説明を受けることができるほか、コミュニケーション・プラザ富士の2階、3階にはテラスがあり、テラスから雄大な富士山を望めるほか、3階のテラスには4月~5月に開花するバラ科のハナカイドウや富士山の周辺に多く見られるフジザクラ、花色が多彩なクマツヅラ科のバーベナ、キク科のガザニアなどが植えられ、色彩豊かなさまざまな花を楽しむこともできる。

 これから本格的に春を迎え、ドライブに出かける人も多いだろう。新東名を使われる方はコミュニケーション・プラザ富士に立ち寄り、これから走る道路の知識を得てから走行してみてはいかがだろうか。プレゼンテーション映像に関しては、10時/11時/13時/14時/15時/16時からの計6回の上映予定となっているが、事前に連絡すれば到着時刻にあわせて調整してくれるとのこと。団体での受付にも対応している。

 なお、コミュニケーション・プラザ富士は新東名 新富士IC内にあるが、施設に行くには新富士ICを降りる必要がある。詳しくはコミュニケーション・プラザ富士のWebサイト(http://www.c-nexco.co.jp/corporate/prkan/fuji.html)をご確認いただきたい。

3階のテラス
コミュニケーション・プラザ富士では太陽光発電システムを導入し、電力の一部を同システムでまかなっている
2階にもテラスがある
3階のテラスでは4月~5月に開花するバラ科のハナカイドウや、富士山の周辺に多く見られるフジザクラ、花色が多彩なクマツヅラ科のバーベナ、キク科のガザニアなどを楽しむことができる

コミュニケーション・プラザ富士

住所:静岡県富士市厚原1738‐4(新東名高速道路 新富士IC内)
TEL:0545-71-0025(直通)
受付時間:9時~17時(年末年始を除く)
入館料:無料

(編集部:小林 隆)