NEXCO中日本、開通前の「新東名高速」を公開
新富士IC~駿河湾沼津SA間をバスで走行

2012年2月26日公開



 NEXCO中日本(中日本高速道路)は2月26日、4月に開通を控えた新東名高速道路の一部を、報道関係者に公開した。

 新東名は4月14日に御殿場JCT(ジャンクション)~三ケ日JCTが開通するが、公開されたのは新富士IC(インターチェンジ)~駿河湾沼津SA(サービスエリア)の区間。当日は新東名開通前の最後の公開イベント「ラストチャンス ウォークツアー in 新東名」が開催されており、これに合わせての施設公開となった。

新東名は御殿場JCT~三ケ日JCT間の約162kmが4月14日に開通する

 

新富士ICのレーン。高速道路側から見たレーン。左4レーンが出口、右3レーンが入口

すべての料金所を機械化して遠隔管理
 まず見学したのは、新富士ICだ。ここは出口4レーン、入口3レーンが設置され、新東名では最大の規模のICだ。保全・サービスセンターも設けられている。

 開通する区間の料金所は、2個所のSAに設けられるスマートICを含めると13あるが、これらのすべての料金所には、従来の料金所のような有人のレーンがなく、すべて機械化されている。ETC利用車はもとより、現金利用者も機械で料金を徴収する。

 無人料金所でトラブルがあった場合は、新富士ICと浜松浜北ICはの保全・サービスセンターにある操作室から遠隔対応する。ここからは、料金徴収機はもとより、レーンを閉鎖するバーの開閉まで遠隔操作できるようになっている。

 このため、新東名のレーンに設けられた料金徴収機には新たにモニターが装備され、操作室のオペレーターと利用者が通話できるようになっている。モニターがあるおかげで、聴覚障害のある利用者とは文字でコミュニケーションできるようになった。

新富士ICの全体像新富士保全・サービスセンター保全・サービスセンター3階には駿河湾と富士山を望む「コミュニティー・プラザ富士」がある。40人程度を収容できるコミュニティールームで、新東名の技術などを説明するイベントを開催する場所として使われる
1階には料金所操作、保全管理などの事務室を集約。どの部屋からでもすぐにアクセスできる1階中央には危機管理室を設けた。2階には会議室などがある
レーンの料金徴収機。運転席の位置に合わせて上下に2つの徴収口を設けたモニターと音声、ランプで次の操作を誘導する遠隔操 作室とはモニターで顔を見ながら通話できる
モニターには文字を表示できるので、聴覚障害のある利用者ともコミュニケーションできるレーンの出入り口のバーも遠隔操作できる

 さらに、ETCカードの車載器への入れ忘れ、あるいは車載器とレーンのアンテナの通信がうまくいかなかったことにより、バーが開かなくてレーンで停まってしまうケースへの対策も施されている。

 現在はこうした場合、係員がレーンに行って対応するが、新東名ではその必要を省いた。通常はETCのアンテナはレーンの入口側にしかないが、新東名では出口側にも設け、レーン上でカードを車載器に入れたり入れなおしたりしても、人手をわずらわせることなく、再度通信して料金を徴収できるようにしているからだ。

 また、無人料金所の徴収機にお釣りや通行券を補充したり、人手が必要なトラブルがあった場合は、新富士、浜松浜北に加えて藤枝岡部ICから人員を派遣する。どこからも最長で30分程度で到着できるが、そのような事態はあまり起きないだろうとNEXCO中日本は見ている。

レーンの入口と出口にETCアンテナがある(右はアンテナのクローズアップ)路面が緑のエリアに入れば、写真左上に見える出口のETCアンテナで再清算できる

 

新富士ICから下り線を上りへ逆走した

景観を楽しめる新東名
 続いて、新富士ICから駿河湾沼津SAまでバスで移動しながら、新東名の道路を見学した。当日のこの区間は、上り線がラストチャンス ウォークツアーの参加者が歩くコースになっており、下り線が関係車両の通行用になっていた。このため、新富士ICより東京寄りにある駿河湾沼津SAまでは、下り線をバスで逆走した。

 既報どおり、新東名は片側3車線(計6車線)で設計・建造されているが、片側2車線(計4車線)で運用されることになっている。このため、高速道路用の正式な舗装がされているのは内側2車線(計4車線)と路肩のみで、その外側は異なる種類の舗装になっている。路肩と使われない外側の間には、車両が侵入できないように、ガードレールやポール、10cm程度の舗装の盛り上げなどが施されている。

下り線で東京方向を見たところ。写真向かって左が追い越し車線、中が走行車線、右が路肩、右端が使われない領域。路肩と使われない領域の間にはオレンジ色のポールやガードレールが立っている奥が使われない領域。舗装の違いが分かる使われる路面(左側)と使われない路面のクローズアップ

 新東名で初めて採用される技術は、この区間でもいくつか見ることができる。例えば約1kmピッチで設けられた簡易情報板。電光式の速度規制標識の横に設置された情報板は、前方の事故車や落下物の情報を表示する。

 新東名は東名高速道路(NEXCO中日本では「現東名」と呼ぶ)より山側に設けられ、勾配やカーブを現東名よりも緩くすることで、運転しやすくしている。このため高架で高い位置を通ることが多く、見晴らしのよいところが多い。

 当日通過した区間は、山側に富士山、海側に駿河湾を眺めることができ、条件がよければ雄大な景色を楽しみながらドライブできるのだが、これを後押ししているのが、従来の灰色の防音壁に代わる、透明な防音壁だ。これにより新東名から周辺への騒音を防ぎつつ、新東名の利用者は景観を楽しめるようになっている。

簡易情報板透明な防音壁東京方向に向かっていると右側に駿河湾と伊豆半島が見える。画面中央の赤い高架は並行して走る東名高速。その向こうには新幹線の高架も見える
すでにこんな看板も設置されている83.6kmポスト付近が「ラストチャンス ウォークツアー in 新東名」の12kmコースのスタート地点。ちなみに新東名の起点は海老名南JCT

 トンネル内の「プロビーム照明」も、新東名で初めて採用される技術だ。従来はトンネル内の照明は真上から真下を垂直に照らしていたが、プロビーム照明はやや進行方向側を照らす。これにより、前走車が見やすくなり、落下物なども発見しやすくなる。

 この区間では沼津トンネルを逆走したため、プロビーム照明がこちらの顔を照らす形になり、図らずもこの照明の仕組みを理解することができた。

沼津トンネルの中。プロビーム照明により、進行方向が照らされている
沼津トンネルを逆走したところ。プロビーム照明のため、灯りがこちらを向いている

 

沼津トンネルへの進入

 

沼津トンネルを逆走したところ。プロビーム照明が眩しい

 

駿河湾沼津SAから新富士ICへ下り線を引き返す。この状態でやっと順走に。右に富士、左に駿河湾という風光明媚なルートだが、この日はあいにくの天気で富士山は見えなかった

 

下り線を順走し、新富士ICへ

 

駿河湾沼津SA(上り)

新東名唯一のオーシャンビューSA
 バスは駿河湾沼津SAに到着した。このSAは、開通区間のSA/PAの中でもっとも東京寄りにある。既報のとおり、新東名のSA/PAにはそれぞれに異なるコンセプトが用意され、各々の個性を演出し、すべての施設が画一的になることを避けている。

 「NEOPASA駿河湾沼津」を名乗る同SAのコンセプトは、駿河湾まで約4km、新東名唯一のオーシャンビューという立地を活かした「リゾートマインド」。施設の外観を、上り線は地中海の港町を、下り線は眼下に広がる海を、それぞれイメージしたものとしてコンセプトを体現した。

 また同SA上り線の施設は、新東名で唯一の2階建てとなり、屋上には駿河湾を望む展望台が設けられる。

 今回は上り線の施設内を見学することができた。1階には麺類や海鮮丼を供するフードコートと、パン屋と土産物屋、2階には海を見ながら食事ができるレストランとカフェが入る。いずれもまだ工事中だが、外観だけでなく内装もヨーロッパの街並みをイメージしたものになるそうだ。

南欧をイメージした建物の外観建物に貼られていた仕上がりイメージには、南欧の街並みの写真が1階のフードコートも欧州の街路をイメージした内装になる
2階のレストラン。海側に大きなグラスエリアを設け、海を見ながら食事ができる2階にレストランと共に設けられる「リサとガスパールカフェ」のイメージ。リサガスがお出迎え
屋上の展望台展望台からの眺め

駐車場やトイレを改善
 コンセプトによる住み分けが目立つ新東名のSAだが、SAとしての使い勝手や環境への配慮も当然されている。

 駿河湾沼津SAは、トンネル掘削により出た土を盛って、広大な敷地を確保している。駐車できる台数は小型車98台、大型貨物車63台、大型バス8台、トレーラー4台、2輪車13台と、現東名の冨士川SAと同規模だが、面積は倍。ここに一般道からEXPASAを訪れる人のための「ぷらっとパーク」駐車場66台やドクターヘリ、防災ヘリのためのヘリポートなどが設けられる。

 乗用車用の駐車マスはすべて歩道に接していて、車道を極力歩かずにすむように設計されているほか、トイレを3個所に設け、どの駐車マスからも2分程度歩けばトイレに着くようにしている。トイレはユニバーサルデザインに配慮されているのはもちろん、女性用トイレにはパウダーコーナーを、大型車ドライバー向けには洗髪洗面台を、また子供連れで入れるファミリートイレなども用意する。

乗用車の駐車マスはすべて歩道に接している男子トイレ。センサーで排泄量を検知して流す水の量を調節する仕組みを備える上部の灯りは太陽光を集光したもの。これだけでずいぶん明るくなる
女子トイレ女子トイレには更衣室やパウダーコーナーがある
ファミリートイレ施設屋上の太陽電池パネル

 SAは災害時には防災拠点としても使われるため、24時間分の燃料を常備した自家発電装置や断水時に利用する井戸も備える。この井戸水は、冷房にも利用され、環境対策にも一役買っている。

 その環境対策では、太陽光発電やLED照明はもちろんのこと、太陽光を集光して屋内照明に使う仕組みなども備える。

 また新東名のSAで初めて採用される技術として、逆走防止システムと、エリア限定ワンセグ放送がある。前者は本線への出口でなく入口を逆走する車両を検知すると、その車両に表示と音声で警告し、さらにその入口に入ってくるクルマには逆走車がいることを伝える。後者は、SA内でだけ視聴できるワンセグ放送で、ワンセグを受信できる端末があれば、交通情報を画像で見ることができるというものだ。

(編集部:田中真一郎)
2012年 2月 27日