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NEXCO西日本、“宝塚渋滞”解消に向け建設の進む新名神高速 高槻JCT~神戸JCT間を公開
2016年度開通予定。新工法を採用する「バタフライウェブ箱桁橋」の内部も公開
(2014/11/24 11:37)
- 2014年11月13日開催
NEXCO西日本(西日本高速道路)は11月13日、2016年度開通に向けて建設工事を進めている新名神高速道路の高槻JCT(ジャンクション)~神戸JCT間の建設現場見学会を実施した。
新名神は、西日本地域の経済活動を大きく占める兵庫県、大阪府、京都府などを通過し、中国地方と東海地方を結ぶ名神高速道路と併走しながら相互補完する新しい自動車道路。「大都市間のネットワーク強化」「地震・大雨といった災害発生時の備え」「名神高速道路の老朽化に対する対応」という3点を大きな目的とした計画であり、NEXCO西日本ではこの新名神建設事業を「高速道路事業の集大成」と位置づけて取り組んでいる。
また、新名神の西側に位置する高槻JCT~神戸JCT間は中国自動車道、山陽自動車道と神戸JCTで接続。西側を走る中国道とのネットワークを形成し、7月20日に全線開通した舞鶴若狭自動車道との相乗効果で渋滞発生個所として知られている中国道 宝塚付近~吹田JCT間の交通円滑化を実現することも期待されている。
新名神 高槻JCT~神戸JCT間の報道向け見学会はこれで5回目。今回はNEXCO西日本 大阪西事務所の担当区域にある工事現場から3個所が見学場所となった。記者は2013年5月の見学会でも取材を行っており、見学場所となった3個所のうち、2個所は前回も足を運んだエリア。1年半における工事の進捗状況を確認した。
下音羽川橋
前回は「下音羽地区」という見学エリアの名称だったが、以前の橋脚を立てているような状況から、すでに上り線については橋の連結が完了し、下り線も12月末には連結を予定。眼下に流れる一級河川の下音羽川から下音羽川橋という名称が与えられている。
この下音羽川橋で採用されているのは、波型鋼板ウェブ箱桁橋という工法。コンクリート製の上下の床版などを波型に形成して強度を高めた鋼板で繋いでボックスを構成しており、四方にコンクリートを使う一般的な箱桁と比べて重量を約3割軽量化できるのが特徴。鋼板の上下でコンクリートと接続する部分は雨水などの影響で錆びやすいので、アルミニウムとマグネシウムの合金を吹き付け加工して防蝕性を高めている。
芥川橋・神峰山トンネル
続いては、8月に下り側が新名神の大阪府域にあるトンネルで初めて貫通を迎えた神峰山トンネルと、この神峰山トンネルから府道 枚方亀岡線の上を通過して神戸JCT側に伸びていく芥川橋の工事区間。とくに芥川橋は初めて建設中の橋の上部に上り、箱桁の内部も見学できた。神峰山トンネルの貫通式はCar Watchでも記事として紹介している。
●「神峰山トンネル(下り)」貫通。2016年度の開通を目指す新名神高速で大阪府域初のトンネル貫通式
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140820_662861.html
先に行われた神峰山トンネルの見学では、このトンネルのアウトラインや工事で難易度が高かった部分などについて担当者が解説。トンネルを掘る位置が高いことから地表部分まであまり距離がなく、また、山頂付近にある寺社に対して影響しないよう細心の注意を払ったという。さらに高槻JCT側から途中まではもろい地層だったことでトンネルが崩れないように気を遣ったのに対し、神戸JCT側に近づくと非常に強固な地層に切り替わり、ダイナマイトを使って掘削したことなどが紹介された。
現在はトンネル掘削後に土が落ちないよう固める土留め用のコンクリートの上に、道路用のトンネルとしての本番といえる覆工コンクリートを設置するため、トンネルの形状に合わせて鉄筋を組み上げた状態。ここに移動式セントルを使ってコンクリートを打設する作業がこれからスタートする予定となっている。
神峰山トンネルから工事現場内を移動して、引き続き芥川橋の架設現場を見学。延長161mの上り線の橋は2013年12月に連結済みとなっており、見学は2015年5月の連結を目標に工事が進められている延長348mの下り線の橋で行われた。
工事用の仮設エレベーターで地上30mほどの位置にある橋の上床版に上がり、この場で工事概要や進捗状況などが説明された。コンクリート箱桁橋である芥川橋では、上床版と下床版を接続してボックスを構成するコンクリートウェブに、蝶型形状のプレキャスト薄型パネルを用いる新工法「バタフライウェブ箱桁」を採用している。
工場で事前に製作されるこのバタフライウェブは、コンクリートを打設するときに上下から引っ張られた状態のPC鋼材を斜めに配置。コンクリートの乾燥後に張力をなくすとPC鋼材が反作用で圧縮力を発生させ、パネルの強度を高めることができる。また、コンクリート自体も鋼繊維を混入させた高強度繊維補強コンクリートが使用されており、これによって通常のコンクリートウェブと比較して主桁の重量を約10%軽量化できる。軽量・高強度な工法を採用することで橋脚の数が減らせるほか、1回の作業で延伸できるブロック長も2倍近くまで伸ばせるので施工性が高められるという。
解説を受けたあと、階段を使って箱桁内部を見学。柱頭部から下床版に続くワイヤーでの補強やブロックの接続施工の状態、バタフライウェブを直接触って鋼繊維で補強されているコンクリートの手触りなどが確認できた。
高槻第一JCT
最後の見学場所は名神高速道路と交差する高槻JCT。前回の取材時は名神高速側の高槻第二JCTだったが、今回は新名神側の高槻第一JCTを見学した。高槻第二JCTの現場では周囲の山を削って土砂を運び出していたが、採石場の跡地に計画されている高槻第一JCTでは逆に盛土を実施。新名神で最大の盛土量を予定している宝塚SA(サービスエリア)の約400万m3に続く約340万m3の土砂が盛土される予定で、9月までに約90万3が運び込まれているという。
運搬には普通の公道は走れない大きさである36tダンプトラックが7台利用されており、今後はさらに施工速度を向上させるため、40tダンプトラックの投入も予定されている。ここで使われる土砂は、基本的に高槻第二JCTなどの新名神建設で運び出す土砂でまかなわれる。
今回の見学会で印象的だったのは、2種類の橋で出てきた「軽量化」という言葉。支柱の本数が減り、工事の迅速化でコスト削減できるのが大きな目的だと説明された。高速道路における渋滞は約70%が速度低下を誘発するサグ部(凹部)で発生すると言われており、新しく建設される道路では、なるべく直進的に、平坦になるよう計画されるようになってきた。しかし、平地の少ない日本では必然的にトンネル、橋梁区間が増えることになり、建設コストの高騰に繋がる。この問題に対処するために現場で行われている取り組みの一端を体感できた。