ブリヂストン、再生タイヤ製造施設「バンダグ・リトレッド千葉ファクトリー」開設
全国11拠点目、バンダグ・リトレッド施設としては国内最大

バンダグ・リトレッド千葉ファクトリー

2010年7月9日開設



 ブリヂストンは7月9日、千葉県市原市に「バンダグ・リトレッド千葉ファクトリー」を開設した。千葉ファクトリーはバンダグのリトレッドシステムを導入した工場で、摩耗したタイヤの表面を張り替える(リトレッド)することで、再生利用可能なタイヤを製造する施設。

千葉ファクトリー外観。首都圏をマーケットとする工場として千葉県市原市に建設された

 摩耗したタイヤの再生方法には大きく分けて、いったんトレッド面をフラットにした台タイヤに、あらかじめトレッド面が成型された加硫済みのゴムを貼り付けるプレキュア方式(コールド)と、台タイヤにフラットなゴムを貼り付け金型で加硫してパターンを成型するリ・モールド式(ホット)の2つがある。

 プレキュア方式は台タイヤを傷めにくく、多品種少量生産に向いており、リ・モールド方式は金型を使って製造することから大量生産に向いている。ブリヂストンは両方式とも手がけており、前者はバンダグ・リトレッドファクトリーで、後者はブリヂストンBRMの加須工場や防府工場で製造を行っている。千葉ファクトリーは、プレキュア方式による製造を行い、同社のリトレッド施設としては国内11拠点目、プレキュア方式を採用するバンダグファクトリーとしては、国内最大の88本/日の製造能力を持つ。

 このバンダグ・リトレッド千葉ファクトリーの工場内覧会と開所式が、同工場内で行われた。

ブリヂストン 執行役員兼ブリヂストンBMS代表取締役社長の梶原浩二氏

首都圏をマーケットに
 ブリヂストン 執行役員兼ブリヂストンBMS代表取締役社長の梶原浩二氏は、「リトレッドビジネスは(バスやトラックなどを運行する)輸送事業者に対する、ソリューションビジネスであり、いわゆる提案型のビジネス」と言う。ブリヂストンでは、新品タイヤの購入・メンテナンス・リトレッド・メンテナンスを「エコバリューパック」というパッケージで販売しており、タイヤのトータルライフビジネスを輸送事業者に対して提供している。

 2010年度の目標を3万台としていたが、6月には2万4000台を突破。予想以上に評判がよく年度内の目標達成は確実に可能であると言う。バンダグ・リトレッドファクトリーは、ブリヂストンが買収したバンダグのリトレッド製法をベースに製造を行っているが、世界90カ国、900個所に展開していたバンダグの高い製造技術と、ブリヂストンの持つ品質保証体制を融合させているのが特徴だと語った。

 最初のリトレッド工場は、「バンダグ・リトレッド愛知ファクトリー」で、2008年12月に開設(関連記事参照)。当初の予定どおり、2103年までに20拠点を開設していくと言う。


ブリヂストンBMS タイヤソリューションチェーン運営部長 辻啓史氏

 リトレッド製法やビジネスに関する詳細な説明はブリヂストンBMS タイヤソリューションチェーン運営部長 辻啓史氏から行われた。

 辻氏によると、今輸送事業者などの企業経営に求められているものは、「環境経営」「経費削減」「安全マネジメント体制の確立」であると言い、新品タイヤの購入・メンテナンス・リトレッドをパッケージしたエコバリューパックは、企業経営をサポートするものだと位置づける。

 新品タイヤが摩耗した際に、リトレッドタイヤを使うことで、資源の有効活用やコスト削減につながり、窒素充填や残溝管理、空気圧管理などのメンテナンスを利用することで、燃費改善やタイヤライフが延び、ひいては安全運行にもつながると言う。

輸送業界を取り巻く環境。「環境経営」「経費削減」「安全マネジメント体制の確立」が求められているブリヂストンの提供するエコバリューパックは、その問題解決を図るプレキュア方式によるリトレッド方法
リトレッドをすると、新品タイヤに比べ石油資源を68%節約でき、CO2排出量の低減にもつながるプレキュア方式とリ・モールド方式の違い。プレキュア方式は投資額を低くでき、多品種少量生産に向くエコバリューパックでは、新品タイヤもブリヂストンのものを使う。これは、再生時の品質管理ができるため

 実際にある企業においては、エコバリューパック導入後、メンテナンス費用は増えたものの、タイヤ代削減、燃費改善などにより年間で約26%の経費削減を見込むまでとなっており、その効果は高いとした。

 また、この千葉ファクトリーは首都圏をマーケットに持つため、これまでの工場では1釜の加硫施設でスタートしていたものを、2釜の加硫施設でスタート。工場内は余裕のある設計になっており、「現在2釜で88本/日の製造量だが、4釜まで加硫施設を増設でき、1日2交代制に移行すればさらなる増産が可能なよう設計してある」と述べた。

エコバリューパックにはタイヤメンテナンスが含まれるある企業のコスト削減例。メンテナンス費は増えるものの、トータルでは年間26%コスト削減を見込めるエコバリューパックの販売状況。年間目標の3万台は超える見込み
バンダグ・リトレッドファクトリーのプレキュア方式は、小規模な工場で製造が行えるため、ユーザーに近い場所での製造が可能リトレッド製造施設一覧。西日本に多い形となっており、2013年までに20拠点を展開予定バンダグ・リトレッド千葉ファクトリー概要。当初は88本/日の製造能力でスタート
バンダグの製造ノウハウと、ブリヂストンの品質管理ノウハウを融合させている千葉ファクトリーでは、環境面にも配慮されており、CASBEE(建築物総合環境性能評価システム)認証で、A評価を獲得

各設備を余裕ある配置とした千葉ファクトリー
 リトレッドビジネスに関する説明が行われた後、千葉ファクトリー内が公開された。Car Watchでは以前、愛知ファクトリーを紹介しており、設備は同じバンダグのプレキュア方式を使うこともあって同様のものとなっている。ただ、製造能力の拡張を見込んでおり、各製造設備は余裕を持って配置されていた。以下に写真で、タイヤの変化を紹介するとともに、その製造工程を掲載する。

トレッド面が摩耗したタイヤ。これを台タイヤと言い、このトレッド面を張り替えていく
トレッド面を張り替える前に、いったんパターンをバフ掛けして削り取る
バフ掛けした面に、クッションゴムを貼り付ける。トレッドを貼り付ける前の準備はこれで終了
トレッドを張り終え、リトレッドされた再生タイヤ。パターンはユーザーの要望によって選択できる
バンダグリトレッドファクトリーでは、台タイヤの検査工程から始まる。外部損傷検査のNDT検査では、高電圧を発生する装置を使い、タイヤの漏電状況を確認。タイヤにパンク穴など外傷があれば、すぐに分かるようになっている高電圧発生装置。このスダレ状のものをタイヤの内部に入れ、電圧を発生させ検査する
外傷がなければ、内部損傷検査のシアロ検査に。シアロ検査機で、タイヤの内部損傷をモニターで確認する
タイヤ各部を9分割して同時に確認できる指を指している部分に損傷があった。タイヤの内部が一様ではなくなっている
バフ掛け工程。タイヤの表面をバフで削り取っていく。およそ5分程度で平たくなるバフ面。結構荒目の刃が使われているバフ掛け中
バフ掛け終了。バフ掛け後は、表面を機械でチェックしていくバフ掛けの終わったタイヤに、凹みがあった
凹凸などは、このスカイブ工程で手作業での補修を行うクッションゴム貼り付け工程。スカイブ工程を終えた台タイヤに、クッションゴムを貼り付けていくクッションゴム貼り付け中。タイヤ表面のツヤが異なっているのが分かるだろうか
クッションゴムを張り終えた台タイヤ加硫済みのトレッドゴムを貼り付けていく。トレッドゴムの長さはコンピューターで制御され、必要な長さになったらカットされる
最後は手作業で巻き付ける。トレッドゴム同士の接続面にシールテープを貼り、スティッチャーを打ち付けて仮止めする
銀色に見えるのがスティッチャートレッドゴムを叩き、タイヤになじませる
貼り付けた後は、トレッドゴムを台タイヤに溶着させるため、加硫工程に入るのだが、その前の下準備がこのエンベローブ工程。タイヤをエンベローブでカバーし、内部を真空にすることで密着させる
これがエンベローブエンベローブに覆われたタイヤ内部を真空にするため、内側にリング状の部品を取り付ける
ポンプで内部の空気を吸い出している。タイヤのトレッドパターンがエンベローブ越しに見えてくるエンベローブで覆われたタイヤを加硫するために釜に入れる。1つの釜で22本のタイヤを加硫でき、加硫時間は4時間ほど。この釜の数が実質的な製造量を決めている。千葉ファクトリーは2釜で88本/日の生産量なので、各釜で1日2回加硫が行われていることになる
加硫工程が終わればリトレッドタイヤとして完成完成したタイヤは目視で確認が行われる。この段階でスティッチャーを外す目視検査を終えたら、実際に空気を入れて耐圧検査を行う。この検査に合格すれば出荷可能な製品として、ユーザーの元に届けられる

 工場内覧会終了後、地元市原市の佐久間隆義市長らを招いての開所式が行われた。佐久間市長は、市原市に工場を設置したことに対するお礼を述べ、さらなる企業誘致を実現することで、市原市の価値を上げていきたいと語った。

挨拶を行う佐久間隆義市原市長開所式のテープカット千葉ファクトリーの製造第1号タイヤを囲んでの記念写真

(編集部:谷川 潔)
2010年 7月 9日