トヨタ、震災で利益減も、2010年度業績は増収増益に 「日本でのモノづくりは努力の限界」とコメント |
トヨタ自動車は5月11日、2010年度(2010年4月~2011年3月)連結決算を発表した。
連結売上高は前年比0.2%増の18兆9936億円、営業利益は217.4%増の4682億円、税引前純利益は前年同期比93.3%増の5632億円、当期純利益94.9%増の4081億円の増収増益になった。
豊田章男社長は、「東日本大震災によって営業利益で1100億円の影響があった。だが、営業面の努力、VA(Value Analysis)活動による徹底した原価低減活動によって、増益を達成することができた。損益分岐台数が1ドル85円、660万台に体質強化できた。経営基盤が着実に強化されていることを示す決算内容」と総括した。
地域別では、日本が前年比2.1%減の10兆9862億円、営業損失は1372億円減の3624億円の赤字。「国内向けには、東日本大震災および円高の影響が響いた」と言う。
北米が前年比4.3%増の5兆4291億円、営業利益は2541億円増の3395億円。欧州が前年比7.7%増の1兆9814億円、営業利益は461億円増の131億円。また、アジアは前年比27.1%増の3兆3746億円、営業利益は1094億円増の3130億円、その他地域(中南米、オセアニア、アジア)は前年比8.1%増の1兆8091億円、営業利益は446億円増の1601億円となった。
連結決算要約 | 連結当期純利益増減要因 | 2011年3月期 営業利益増減要因。東日本大震災による利益源の影響が1100億円 |
「アジアは、タイやインドネシアでのIMV(Inovative International Multi-Purpose Vehicle:SUV、ピックアップトラックなど多目的車の総称)の販売が好調で、通期の営業利益としては過去最高。販売台数でも過去最高になった」と言う。
セグメント別では、自動車事業が前年比0.8%増の17兆3373億円、営業利益は1723億円増の860億円となった。
所在地別営業利益 | 金融セグメント営業利益 | 持分法投資損益 |
単独決算要約(日本基準) | 株主還元 |
車両生産台数は、国内が372万1000台(前年実績395万6000台)。そのうちダイハツ工業が61万9000台(同67万3000台)、日野自動車が9万9000台(同7万7000台)。
海外が344万8000台(同285万3000台)となり、そのうちダイハツが17万台(同11万7000台)、日野が9000台となった。全世界の合計車両生産台数は716万9000台(同680万9000台)。
また、車両販売台数は、国内が191万3000台(216万3000台)。そのうちダイハツが52万8000台(同56万9000台)、日野が2万9000台(同2万8000台)。
日本におけるシェアは、軽自動車を除く市場では47.3%、軽自動車を含む市場では43.7%になった。
海外の車両販売台数は539万5000台(同507万4000台)となり、そのうちダイハツが17万台(同14万台)、日野が7万9000台(同5万6000台)となった。全世界の合計車両生産台数は730万8000台(同723万70000台)となった。
車両小売販売台数は842万3000台(同813万9000台)となった。
また、単独決算では、売上高は前年比4.1%減の8兆2428億円、営業損益は4809億円の赤字、税引前純損失は470億円の赤字、当期純利益101.5%増の527億円となった。
連結販売台数 |
単独決算によるトヨタ・レクサスの国内生産台数は、300万4000台(同320万6000台)、海外生産台数は433万8000台(同407万1000台)、国内小売販売台数は140万7000台(同153万5000台)、輸出台数は169万8000台(同164万4000台)となった。輸出のうち、北米は60万台(同69万台)、中近東が27万2000台(同26万3000台)、欧州が32万9000台(同25万4000台)などとなっている。
「単独営業損失は前年比約1500億円の悪化となっているが、為替の影響が3300億円、震災の影響が600億円で合計3900億円の減益要因がある。これを加味すれば、1500億円の減益に留まったといえ、約2400億円の採算改善が進んだともいえる。今年度についても、改善を進めることで期末までには、1ドル85円の試算でも、黒字化の目途をつけたい」(小澤哲取締役副社長)とした。
小澤哲取締役副社長 |
為替が大きく影響していることについて豊田社長は、「トヨタは日本で生まれ、日本で育ったグローバル企業である。日本でのモノづくりにこだわっていきたい」としたものの、小澤副社長は、「円高が収益に与えるユーロ安、ウォン安のなかでは円高の状況ではドイツ車、韓国車との競争力には大きな差がついている。日本でのモノづくりにこだわるには、すでに一企業の努力の範囲を超えている。関係部署、および社長に対して、国内にのみこだわることについて検討することを進言せざるを得ない心境にある」とコメント。豊田社長もこれを受けて、「私の思いだけでは、日本でのモノづくりが続けられない状況にあることは理解している。今は日本での雇用を守ることに力を注いでいる。世界と戦える状況を作ることが大切である」と語った。
連結業績における金融事業セグメントの売上高は、前年比4.3%減の1兆1922億円、営業利益は1113億円増の3582億円。その他事業の売上高は、前年比2.6%増の9722億円、営業利益は441億円増の352億円となった。
「金融セグメントでは、米国における貸し倒し、残価コストの減少や融資残高の増加などにより過去最高益を達成した」と言う。
なお、2011年度の業績見通しについては、「生産、販売計画の精査に時間を要することから話せる状況にないため、今回は公表を見送る。6月中旬までには公表したい」(豊田社長)とした。
一方、豊田社長は、東日本大震災への影響についても言及した。
「3月11日の東日本大震災の影響により、国内のすべての車両工場の生産を止めることになったが、4月18日から、セントラル自動車宮城工場、関東自動車岩手工場を含む、全工場での車両生産を再開した。本日時点でも5割程度の生産だが、生産正常化に向けた取り組みは、4月22日に発表した内容よりも前倒しで進捗している。国内生産は7月頃から、海外は8月頃からと公表したが、国内・海外ともに6月頃から生産できる見込みとなった。当面の生産については、車種、地域によりばらつきがあるが、通常の7割程度の生産を見込んでいる。さらなる生産の上積みが図れるように努力する。すべてが正常に戻るのは11月以降になるだろう。また国内のほとんどの工場では2直生産に戻す。お待ちしていただいているお客様に、1日でも早く、1台でも多く届けたい」とした。
また、「22日の段階では、クリティカル部品は500部品から150品目に減少したとしていたが、さらに30品目に絞られてきている」とし、「最優先で取り組まなくてはならないのは震災からの復興と、生産の正常化。ガソリン不足が厳しい状況のなかでお客様に喜んでいただけたのは、航続距離が長く、必要に応じて発電、電力供給が可能なハイブリッドカーであった。今後、お客様からの要望が多い車種にも、緊急時に電源車両として使用できる機能の追加を検討する。今回の経験を通じてビジョンの方向性を再確認するとともに、その目指す姿の実現に全力を尽くす決意を新たにした」とした。
(大河原克行)
2011年 5月 11日