ホンダ、新型コンパクトワゴン「フィット シャトル」発表会
「ガソリン車・ハイブリッド車とも燃費はフィットと同等」と開発責任者

本田技研工業 代表取締役社長 伊東孝紳氏

2011年6月16日開催



 本田技研工業は6月16日、1.5リッターのガソリン車、1.3リッター+IMAのハイブリッド車をラインアップするワゴンボディーの新型コンパクトカー「フィット シャトル」を発売した。本記事では、同日本社で開催された発表会の模様をお届けする。仕様などの詳細は関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20110328_435214.html)を参照していただきたい。

フィット シャトル ハイブリッド

伊藤社長は、震災の影響による発売の遅れについてお詫びするとともに、ユーザーから届いた励ましのメッセージについてお礼を述べた

「ハイブリッド車をより多くのお客様に届ける」と伊藤社長
 フィット シャトルは、3月の発売が予定されていたが、東日本大震災の発生により発売を延期。およそ3カ月遅れでの発売となり、伊東孝紳社長の挨拶は、震災関連の話から始まった。

 伊藤社長は冒頭、東日本大震災の被災者へのお見舞い、発売延期により多くのユーザーに迷惑をかけていることについてのお詫びを述べた後、ホンダの現状について語り始めた。「部品供給の目処も立ち、4輪車の生産は国内については6月下旬から、海外については8月から9月にかけておおむね正常化する見通し」と言い、「1台でも多くの商品を、1日でも早くお届けすることが大切」と語る。

 フィット シャトルは、「ハイブリッド車をより多くのお客様に届け、その普及にはずみをつける製品」とし、ハイブリッド車としては低価格であることも特徴だと語った。


取締役 日本営業本部長 峯川尚氏

 具体的な販売戦略については、取締役 日本営業本部長 峯川尚氏より語られた。すでにフィット シャトルは、7000台以上のバックオーダーを抱えており、発売日を迎えたことで購入者への引き渡しが順次始まる。生産工場を震災の影響で狭山工場から鈴鹿工場へ変更し、5月上旬からフル生産に入ったことで、2カ月以内の納期となっている。

 フィット シャトルの価格は、1.5リッターのガソリン車が161万円から、1.3リッター+IMAのハイブリッド車が181万円からという価格を実現したことで、日本市場で進行するミニバンクラスからスモール・コンパクトクラスへと移行するダウンサイジング化の流れに対応するモデルになると言う。また、通信費無料のテレマティクスサービス「リンクアップフリー」を、このフィット シャトルを皮切りに、今後発売するすべてホンダ車に導入していくことも改めて発表した。

すでに7000台以上の予約が入っている納期は2カ月以内ラインアップは、1.5リッターのガソリン車と1.3リッター+IMAのハイブリッド車
価格はそれぞれ、161万円、181万円から日本市場は、この10年でダウンサイジング化が進んでいると分析しているフィット、フィット ハイブリッドは、今年前半のベストセラーカーになっている
通信費無料のリンクアップフリーは、このフィット シャトルから導入工場での生産風景も紹介された。フル生産を行っていると言う初代インサイトから始まったホンダ ハイブリッド車の歴史。フィット シャトルでは、同社として初めて福祉車両のハイブリッド車が用意された

開発責任者 人見康平氏

「フィット シャトルはフィットブランドの進化」
 開発責任者の人見康平氏は、「フィット シャトルはコンパクトカーの革新」だと言う。「使う人の気持ちに応えたクルマづくりをしているか?」と問いかけながら開発したクルマと言う。コンパクトカーを購入するユーザーの思いには、「扱いやすいクルマ」「使えるクルマ」「燃費、環境に優れたクルマ」「こだわりのもてるクルマ」があるとし、フィット シャトルはそれらを満たした「上手に贅沢ができるクルマ」になっていると言う。

 それを支えるのが、ホンダの掲げる「人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小に」というマン・マキシマム・メカ・ミニマム思想で、技術的にはフィット同様のセンタータンクレイアウトとなる。通常のクルマではリアシートの下にある燃料タンクをフロントシートの下に移動。それにより生じた余裕を、リアのラゲッジルーム容量拡大に利用。ガソリン車の荷室容量は床上/床下あわせて590L(FF車、4WD車は546L)、ハイブリッド車でも517Lを確保している。また、リアシートの座面を跳ね上げることができ、跳ね上げ時(トールモード)では1290mmの室内高を実現した。

フィット シャトルは「コンパクトカーの革新」開発の際に問いかけたこと「上手に贅沢ができるクルマ」と言う
マン・マキシマム・メカ・ミニマム思想に基づいて作られているセンタータンクレイアウトにより広い荷室空間を実現リアシートの座面を跳ね上げると1290mmの室内高となる
フィット シャトル ハイブリッド
前席後席ステアリングホイール
ハイブリッド車のメーターパネル。IMAのロゴが入るセンターコンソールセレクトレバー。ハイブリッド車のトランスミッションはCVTのみ
ラゲッジルーム。リアシートは6:4分割可倒式
ハイブリッド車のラゲッジルームは、バッテリー搭載のためリア寄りのみに床下空間を確保1.5リッターガソリン車のラゲッジルーム。床下空間は広く、自転車を立てたまま積むことができる
リアシートは写真のように座面を跳ね上げらることができ、1290mmの室内高を実現リアシートの構造。センタータンクレイアウトのため足下は広い

 スモールクラスで重視される燃費についても、ワゴンボディー化により重量が約60kg重くなったにもかかわらず、10・15モード燃費はガソリン車で20.0km/L、ハイブリッド車で30.0km/Lと、フィットと同じ値を実現(JC08モードは、ガソリン車で19.0km/Lから18.6km/Lへ、ハイブリッド車で26.0km/Lから25.0km/Lへと重量の影響が見られる)。ほぼ同等にできた理由として、エンジンのフリクションロスの低減、フロントまわりのデザイン変更など空気抵抗の低減があり、ハイブリッド車ではハイブリッドシステムの制御を見直している。

 また、スモールクラスでありながらミドルクラスの上質さや快適さを採り入れたと言い、インテリア各部のメッキ加飾やピアノブラック調仕上げ、グランスムース素材を用いたシート、各部に加えた防振・防音のための遮音材や吸音材などを紹介した。安全性に関してもVSA(車両挙動安定化制御システム)を2WDでは標準装備。全車に頸部衝撃緩和シート(運転席・助手席)の装備などを行っている。

1.5リッターガソリン車の燃費ガソリン車のエンジンルームガソリン車に投入された燃費低減技術
1.3リッター+IMAのハイブリッド車の燃費ハイブリッド車のエンジンルームハイブリッド車に投入された燃費低減技術
1.3リッターガソリンエンジン+IMAシステム
燃焼室まわりドットパターンコーティングが改善され、フリクションが低下したピストン(右)カムシャフトまわり
ラゲッジルーム下に搭載されるIPU(Intelligent Power Unit:ニッケル水素バッテリーとコントロールユニットが収まる)IPUはバッテリーなどの発熱のため冷却を行っている。フィット シャトルでは右に見える吸気管の形状などを変更フリクションロス低減のために、クランクシャフトオイルシールも変更
フィットシリーズのコアテクノロジー。運転席・助手席下に配置される燃料タンク燃費向上のために、赤いV字状のリターンスプリングを追加。これにより、ブレーキパットの引きずり抵抗を低減するワゴンボディー化に伴い、タイヤサイズの変更やリアサスペンションのジオメトリー変更が行われている。ダンパーやスプリングもチューニングレベルの変更を行った

 現在国内のベストセラーカーとなっているフィットは、ワゴンボディーのフィット シャトルが加わることで、ガソリン車、ハイブリッド車、そして福祉車両仕様のハイブリッド車と、幅広いラインアップが完成したことになる。

ホンダとして初めて福祉車両にハイブリッド車を用意助手席回転式シートを備えるアクセルやブレーキを手で行うシステムは、車外展示が行われていた

(編集部:谷川 潔)
2011年 6月 16日