NEXCO中日本、開通前の新東名で「高速道路安全訓練会」 2012年初夏に開通予定 |
NEXCO中日本(中日本高速道路)のグループ会社、中日本ハイウェイ・パトロール東京株式会社は11月10日、2012年初夏に開通予定の新東名高速道路、新富士IC付近で事故を想定した交通安全訓練会「2011年高速道路安全訓練会」を開催した。
新富士IC付近(下り)名古屋方面。2102年初夏に開通予定のため、ガードレールはなく柱のみ | 上り東京方面。訓練では左側の実線とカラーコーンの間が路肩扱いだが、その外側にさらに1車線ぶんのスペースがある | あいにくの曇り空だったが、天気がよければ富士山を間近に見られるポイントと言う |
通常こうした訓練は年に1回、大型駐車場や自動車教習施設などの広い敷地を持つ施設を使って行われるが、2012年初夏の開通に向け、新東名を使った最後の訓練として実施されたもの。訓練の内容は、新東名の上り線を使って、車線の規制や通行止め、ドライバーへの事情聴取、けが人の救護、自走できない車両のレッカー移動などが、一般通行車に見立てた車両が通行する中で行われた。訓練の様子はスタッフによって評価され、事故処理の手順の改善点などを探ると言う。
訓練には、交通管理基地全10基地(小田原、横浜、袋井、八王子、大月、諏訪、甲府、静岡、御殿場、富士)と、通信を担当する通信管理基地2基地(川崎、八王子)の計12基地が参加。1台の単独事故から、最大3台を含む事故までを想定した4つの課題で訓練が行われた。なお、事故発生地点はいずれも、120km地点を想定し、ダミーの距離標(キロポスト)が置かれていた。
事故処理には、後続車への合図のために矢印板と発煙筒が使用されるが、まだ開通前の新東名高速道路を使用しており、発煙筒を使用すると道路が傷むため、訓練では発煙筒の代わりにLEDを使ったライトが使用された。
設置された120kmを示す距離標 | 開通前の道路を痛めないよう、発煙筒の代わりに使用されていたLEDライト |
課題1の事故状況。単独で事故を起こしたあと、走行車線をふさいだまま停車 |
■課題1:車両1台の単独事故。外国人ドライバーを想定
課題1は、斜行した普通乗用車が路肩ガードレールに衝突し、走行車線をふさぐ形で停止したという状況を想定。この課題では、4月からパトロールカー全車に導入されたオムロン製のボイスペンと、NEXCO中日本が独自に開発したというボイスペン対応ブックレットを使い、日本語を話せない中国人ドライバーとコミュニケーションしながら事故処理が行われた。中国人ドライバーは左腕を損傷しているという設定で、救急車に見立てたワンボックスカーによる搬送も行われた。
一般の翻訳ソフトなどでは交通事故を想定した会話例がないため、事故の状況などを想定し、必要な会話が可能なように独自に開発を行ったと言う。ブックレットには各言語ごとにあらかじめ事故を想定した質問事項や想定される回答が記録されており、ドライバーが日本語を話せない場合でも、ブックレットをボイスペンでタッチするだけで、質問や答えが音声で再生される。
これによりパトロール隊員が事故の状況を把握し、どういった対処方法を採るかなどをドライバーに伝えられる。現在このブックレットは、英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語、ポルトガル語、および日本語で書かれており、外国人だけでなく難聴者の日本人ドライバーにも対応できる。
車両の損害状況などを確認 | 状況を本部に無線連絡。ドライバーは腕を負傷しているため救急車を要請、事故車は自走不能のため、レッカー車も要請する |
救急車(白いワンボックスカー)が到着。負傷したドライバーを搬送 | 次いでレッカー車(軽トラック)も到着。事故車両を撤去して課題1は訓練終了 |
課題2の事故状況。小型貨物車と普通自動車が衝突し、オイル漏れが発生 |
■課題2:車両2台の事故、オイル漏れが発生し通行止め
課題2は、小型貨物車が追い越し車線への進路変更時に、右後方確認の安全確認を怠り、追い越し車線を進行してきた普通乗用車に衝突。小型貨物車は路肩と走行車線にまたがったまま、普通乗用車は中央分離帯に衝突して追い越し車線でともに停止、事故によりオイル漏れが発生したと状況を想定。
事故への対応としては、事故車両が、路肩、走行車線と追い越し車線のすべてに及ぶため、一時的に通行止めとし、走行可能な小型貨物車を追い越し車線側に移動したのち、走行車線の規制を解除した。
課題3の状況。課題2と同様に2台の事故だが、路肩は走行できる状況なので通行止めにする必要はない |
■課題3:車両2台の事故処理、一般車は路肩走行
課題3は、普通乗用車が追い越し車線への右後方確認の安全確認を怠り、追い越し車線を進行してきた普通乗用車に衝突。課題2と似ているが、このケースでは、2台の車両は走行車線と追い越し車線をふさいだものの、路肩の走行は可能なため、通行止めにはせず、一般車両は路肩を走らせるというもの。走行車線をふさいだ普通乗用車は自走可能なため、ドライバーに追い越し車線に移動してもらい、走行車線の規制を解除した。
事故が発生。車両は走行車線と追い越し車線の上で停止しているが、路肩は空いている | パトロールカーがスピーカーで事故を告知しながら到着。すぐに誘導を開始する | まずは発煙筒で走行車線と追い越し車線の車両を路肩に誘導 |
次に矢印板を道路端に順に設置する | すべての矢印板を路面に設置してから、矢印板も発煙筒と同様に路肩に向かって並べていく | 矢印板とカラーコーンを設置し終わったら本部に無線連絡 |
車両の損害状況などを確認 | 自走できる車両を、自走できない車両の側に待避し、走行車線を空ける | 停車中のパトロールカー。万が一追突されたときの事故車両の方向に行ってしまわないように、ハンドルは路肩方向に向けておくという |
カラーコーンを移動して走行車線をあけていく | 同様に矢印板も移動していく。矢印板の移動は事故現場に近い側から行う |
車線規制の状況が変わったら本部に連絡 | レッカー車が到着、普通自動車を撤去して終了 |
課題4では車両火災から、後続車両が事故を起こしてしまうケースが想定された |
■課題4:車両1台の火災に起因するさらに2台の事故が発生し、積み荷が散乱
課題4では、普通貨物車が出火して路肩に停車。これを避けるため走行車線を走ってきた普通乗用車が減速したところ、後続の小型貨物車が追突。追突された普通乗用車は走行車線と追い越し車線をまたいで停止、追突した車両も路肩と走行車線にまたがったまま停止した。追突の衝撃で、追突した車両に積まれていた一斗缶が路上に散乱、一斗缶の中身である食用オイルが追い越し車線地面に漏洩したというもの。
このケースでは、車両3台に及ぶ事故と積み荷の散乱のため、現場には2台のパトロールカーが派遣され、協力して対処した。積み荷が広く散乱したため、走行車線、追い越し車線ともに一旦通行止めとし、事故処理および散乱した積み荷の回収、漏洩したオイルの清掃が行ない、自走可能な追い越し車線の車両を退去させ、通行止めを解除した。
車両火災により、第3者が通報。パトロール隊が現地に急行する | 小型貨物車と普通乗用車が、火災車両を避けようとして接触、積み荷の食用オイルが路面に散乱した状態。オイルは路面にも漏洩(タオルでオイル漏れを表現)している |
最初のパトロールカーが到着。カラーコーンを設置して全車線を通行止めに | 通行止めが完了したら、火災車両の近くへ移動 |
パトロールカーから消化器とタイヤ止めを取り出して、車両の消火にあたる |
消防車(ワンボックスカー)が到着。すでに消化器により消火が終わっていたのですぐに現場から離脱 | 応援のパトロールカーが到着。駆け足で現場に近づく |
4名の隊員で事情聴取と事故車の被害状況を確認 |
路面に漏洩したオイルを処理 | 自走が可能な普通自動車は撤去し、散乱した荷物を片付ける。これで追い越し車線が走行可能に |
矢印板を設置して、走行車線の車両を追い越し車線に誘導 | 通行止めを解除し、パトロールカーで先導しつつ通行を再開 | レッカー車が到着し、自走できない車両を撤去して、訓練は終了した |
(平 雅彦)
2011年 11月 14日