【特別企画】スタッドレスを履いて、無料高速の東北へ行ってみた(前編)
全日全車種無料の被災地支援を使って、塩竈、石巻、仙台へ


 12月1日0時から始まった東北地方の高速道路無料化。2012年3月31日24時まで実施される、被災地の復旧・復興を支援するための政府施策だ。この無料化施策は、「被災地支援」「観光振興」「避難者支援」の3つからなる。

東北地方の高速道路無料化図

 被災地支援は主に太平洋側の東北の高速道路が全日全車種無料になり、観光振興は、ETC搭載の普通車以下であれば、日本海側を含めた高速道路や有料道路が土日祝日に無料となる。避難者支援は、さらに広い範囲が無料となるが、これは実際に被害を受けて避難をしている人に向けた施策となり、各種の書類が必要になるものだ。

 多くの人にとって恩恵があるのは、やはり全日全車種無料の被災地支援と、ETC付き普通車以下無料の観光振興だろう。東北に住んでいる人はもちろん、高速道路を無料化することでそれ以外の地域に住んでいる人を東北に呼び込み、観光などをしてもらうことで、地元経済の復興に協力してもらおうというものだ。

 そこで、この被災地支援・観光振興の無料化を利用して、1泊2日の東北旅行をしてみることにした。目的地は、無料化を最大限に活かせる青森としたかったところだが、東京から出発した場合、高速道路を走るだけで終わってしまいそうなので、1日目は宮城県の塩竈、石巻、仙台を訪ね、2日目は山形県の蔵王などを訪ねてみることに。この辺りが、1泊2日という日程を考えると現実的なところだろう。


まずは、北へ向かう準備から
 この無料化施策は、冬の時期に行われるため、クルマの冬装備は欠かせないところ。冬装備を整えておくことで、安全な旅行ができるし、雪に対する不安感が減ることで、快適な旅を実現できる。そのために、必ず装備しておきたいのがスタッドレスタイヤ。冬の東北では、雪道があるのが当たり前であり、雪が降っていなくても凍結路面があったりする。天候の急変への対応を考えると、夏タイヤ+チェーンという装備では、面倒なことこの上ない。

 そこで今回は、ダンロップのスタッドレスタイヤ「DSX-2」を4WDのレガシィに装着して北へ向かうことにした。スタッドレスタイヤは季節商品のため、タイヤメーカーはシーズン前に見込み生産を行う。そのため、関東地方で大規模に雪が降ると適合サイズがなくなるという事態が発生する。実際、昨年はそのような事態が発生したため、今年は商戦の出足が早いとのこと。高速道路の無料化を利用して北へ向かおうと思っている人は、とりあえずスタッドレスタイヤだけは、早めに確保しておくことをお勧めする。

今回スタッドレスタイヤを装着したのは、「タイヤセレクト環七杉並店」。ここでダンロップの「DSX-2」を装着してもらったまずは、夏タイヤをホイールから取り外しDSX-2を装着してバランス取り
およそ30分ほどで、4輪ともスタッドレスタイヤに交換できた店長によると、「200kmくらい走ってもらうと、性能が十分引き出せます」とのこと。仙台は200km以上北にあるので、問題はないだろう(もちろん過信は禁物)

ダンロップ DSX-2
http://tyre.dunlop.co.jp/tyre/lineup/studless/

 次に用意しておきたいのがチェーン。え?と思うかもしれないが、スタッドレスタイヤを装着していてもチェーンの携行は必要。4WD+スタッドレスタイヤであればほとんど使うことはないものの、急坂の凍結路面など、スパイク状のピンがあるチェーンを持っていれば安心だ。万が一の事態にも対応できるという心の余裕が、安全運転につながる。そこで非金属チェーンのベストセラー、カーメイトの「バイアスロン」をチョイス。

 バイアスロンであれば、スパイク状のピンが装着されており、取り付けも簡単なため、初めてチェーンを購入するユーザーにもお勧めだ。また、スタッドレス装着車であれば、長距離走行にチェーンを使用する機会は少ないため、乗り心地は激しくわるくなるものの、金属チェーンを選ぶというのもありだろう。

カーメイトのバイアスロン。非金属チェーンの代表的な製品。プラケースも付属するので携行にも便利ケースの中には、バイアスロンのほか、取り付け説明書、腕カバー付き手袋などが納められている

カーメイト バイアスロン
http://www.carmate.co.jp/biathlon/

 そして、忘れてならないのは、冬期の視界確保。冬の東北は気温が低いため、通常のウインドーウオッシャー液だと、噴射した瞬間に液が氷り、フロントウインドーが真っ白になる。また、ワイパーのゴムも気温低下による硬化で、ビビリ音が発生し、拭き取り性能も激しく落ちる。

 ただでさえ緊張しがちな冬のドライブをできるだけ楽にするためにも、氷点下でも凍り付かないウインドーウオッシャー液と、冬用のワイパーは必須と言ってもよいだろう。ウインドーウオッシャー液には、マイナス30度まで凍り付かないソフト99の「寒ガラコ」を、冬用ワイパーには、PIAAの「シリコートスノー」を選んでみた。

 とくにシリコートスノーの場合、ワイパーを動かすだけで撥水コーティングが行われ、ブレードゴムのみの交換も可能となっているなど長期間使用に配慮されている。さらに撥水コーティングガラスとの相性もよい。ガラスが撥水コーティングされていれば、雪が降り積もっても容易に払い落とせるので、雪国に不慣れな人はこれまた必須のアイテムだ。

 なんだか、準備が大変になってしまったが、足まわりのグリップの確保と、視界の確保は、安全運転に直結するだけに、納得のいく装備にしておきたい。あとは、出かける前にNEXCO東日本(東日本高速道路)の「マンモシ博士の冬の高速道路講座」(http://manmoshi.driveplaza.com/)を見ておけば、勉強にもなるし、気分も盛り上がるので一石二鳥だ。

 いざ、出発!!

視界確保のために必要なのが、冬用ワイパー。PIAAのシリコートスノーを装着上が標準装着のワイパー、下がシリコートスノーだ。シリコートスノーはトーナメント部がカバーされており、雪が詰まらないようになっている標準装着のワイパーを取り外す
ワイパーアーム先端部にあるノッチを押し、ワイパーをずらしていく引っかけないように外せばOK。ワイパーアームの先端はカギ状になっている
外したときと逆の手順で取り付けるシリコートスノーの先端は写真のようになっており、ブレードゴムのみを交換可能
取り付け完了。このレガシィは、ワイパーデアイサーを装備しており、冬装備としては文句なしソフト99の寒ガラコや、解氷スプレーなどもあれば、いざというときに困ることもないだろう

PIAA シリコートスノー
http://www.piaa.co.jp/products/car/wiper/silicon_snow/

ソフト99 寒ガラコ
http://www.soft99.co.jp/products/detail/8/099

1日目は宮城県へ
 観光振興の無料化施策では、ETC付き普通車であれば、土日祝日が無料になる。この土日祝日とは、高速道路に入った日、もしくは出た日が土日祝日にかかっていれば適用される。また、金曜日に入って、月曜日に出ても問題ない。今回は、早朝の塩竈着を目指して、12月9日金曜の深夜に出発することにした。

 金曜深夜に首都高速道路に乗り、東北自動車道の浦和本線料金所を金曜日中に通過。一路、北へと向かった。深夜の高速道路を走っていて、まず気がつくのは、以前より大型車などのトラックが多いこと。また、一部個所では、高速道路復旧のための工事をしており、1車線規制なども行われていた。

 途中時間調整をしながら、東の空が若干明るくなるころJCT(ジャンクション)の機能も持つ仙台南IC(インターチェンジ)で仙台南部道路に入る。休日上限1,000円のときは、仙台南部道路は含まれておらず、別途料金がかかる道路だった。今回の無料化施策では、仙台南部道路、仙台北部道路、仙台東部道路、仙台松島道路など、地方道路公社の道路も無料化されているのがポイントだ。宮城を巡るには、これらの道路の活用がポイントだろう。

首都高速から、東北自動車道を目指した
浦和本線料金所。ここから北へ向けての旅が始まる北関東自動車道で関越自動車道へも行けるため、関越道のチェーン規制の表示が出ていた
PASAR羽生で一休みPASAR羽生にあったマルチインフォメーションディスプレイ。東北方面の交通情報が知りたかったのだが、首都圏の表示のみだった東北無料化のお知らせのほか、東北道の工事のお知らせも流れていた
深夜の東北道を北へ向かってひた走るトラックや観光バスを多く見かけた途中には、このように復旧工事をしている個所も。路面の荒れている場所もあった

 朝食の目的地を塩釜水産物仲卸市場としていたため、仙台港北ICで高速を降り、国道45号(仙塩街道)を北に向かった。気になる高速料金は、通常料金8,050円、休日特別割引(22時~6時)4,050円の浦和本線料金所~仙台港北IC間が、今回は2,150円(休日特別割引[22時~6時])になる。白河IC以北は無料となっているものの、それより南は有料のため、浦和本線料金所~白河ICまでの2,150円がかかったことになる。

 途中、雪はちらついたものの、積もるほどではなく、ドライの路面をDSX-2で走りきった。凍結路面に強い国産スタッドレスタイヤの場合、高速走行がもう一つという時代がかつてはあったが、現在の国産スタッドレスタイヤは高速走行を楽々こなす。スポーツタイヤなどと比べると、ステアリング中立付近での甘さは若干感じるものの、普通に走っていれば気がつかない程度だ。

 また、震災による路面の凹凸が各所に残る東北道であったため、ソフトな乗り心地を持つスタッドレスタイヤを好ましく感じた。スタッドレスタイヤは、雪面でのグリップを確保するためにサイプが入るなど、夏タイヤと比べて特殊なトレッドパターンを持っている。この特殊パターンだと、騒音がそれなりに発生するかなと思ったが、車内はいたって静か。深夜走行のため、荒れた東北道の路面の違いによる騒音の発生をうるさく感じたくらいで、振動・騒音ともに小さく、運転の疲れが過度にたまることもなかった。

山形自動車道との分岐である村田JCTを、仙台方面に直進仙台南JCTで仙台南部道路に入る仙台港北ICに到着。浦和本線料金所からの料金は2,150円

グルメツアーの始まりは「塩釜水産物仲卸市場」から
 国道45号を北に走ると、多賀城市を抜け塩竈市に入る。まっすぐ走って突き当たったところがマリンゲート塩釜。日の出の時刻も近くなったため、ここで海でも眺めてみることにした。筆者は東京在住だが、子供の頃から飛行機が好きで(もちろん、クルマも好きですが)、クルマの免許を取ってからは、松島基地の航空祭に行くため、この国道45号をよく利用していた。そのため、石巻市や東松島市、塩竈市は何度か訪れたことがあり、マリンゲート塩釜もかつて訪れたことがある。

 一見、震災前と変わらないマリンゲート塩釜だが、駐車場には防潮堤整備のための足場が組まれ、千羽鶴が照明灯に結びつけられているなど、震災の影響を見て取れる。12月からは金土日祝日に限り夜間営業も再開されたので、着実に復興しているのだろう。朝食の目的地とした「塩釜水産物仲卸市場」は、このマリンゲート塩釜の対岸のエリアにある。

国道45号を走り、マリンゲート塩釜に到着朝日を眺める
マリンゲート塩釜駐車場にあった防潮堤整備高さの足場。現在の防潮堤は、津波に乗り越えられてしまった防潮堤脇で見かけた千羽鶴

 塩釜水産物仲卸市場は、売り場面積4,950m2を誇り、生マグロ水揚げ量日本一の塩釜港に上がった鮮魚などを主に業者向けに販売している仲卸市場。観光客向けの販売も行っている店もあり、そうした店では一般客が購入することも可能だ。

 また、この塩釜水産物仲卸市場内には、「新浜食堂」があり、各種海鮮丼のほか、「ごはん汁セット」(300円)というメニューが用意されている。ごはん汁セットは、どんぶりに入った白飯とみそ汁のみとなっており、具は市場で調達するという仕組み。市場内には、魚をさばいてくれたり、貝類をむいてくれたりするお店もあり、自分の好みの海鮮丼を作り上げることができる。ただし、あまり小さな単位では売っていないこともあり、数人で食材をシェアするのがよいだろう。

 今回は、筆者、S君、K君の3人で訪れ、ほたて、生かき、まぐろ、えび、うにを市場を回りつつ購入した。新鮮な食材を、あたたかな白飯に乗せて食べるため、味については文句なし。とくに、まぐろは数多くのお店が扱っており、部位しだいではあるものの、安価に購入できる。市場のため、価格に関してもある程度は交渉しだい。市場の人とのやりとりを通じて、食材購入を楽しんでみよう。

 新浜食堂内の座席数は少ないものの、市場内に別途テーブルが用意されており、そこで食べることが可能だ。市場の営業時間は平日が3時~13時、土曜日が3時~14時、日祝日が6時~14時まで。営業日などは、塩釜水産物仲卸市場のWebサイトを参照してほしい。

塩釜水産物仲卸市場に到着。駐車場も1,000台分以上あり、年末の繁忙期でも大丈夫だと言うタイヤ交換から400km以上走った時点でのDSX-2。長距離の高速走行でも、特に不満はなかった
市場内にある新浜食堂。店頭には、この食堂を訪れた人たちの写真が貼り付けられていたごはん汁セットの説明。市場の中で具材を買ってくるべし
市場内の各店舗。気に入った食材を購入すればよい
今回購入した食材。3人分としては、若干多かったごはん汁セット盛りつけ例。食材が新鮮なため、味は抜群
新浜食堂から少し離れた位置にあるテーブル。食堂内が混んでいるときは、こちらで食べることが可能市場の外にある「勝手に焼き炉コーナー」。300円で利用でき、自分で焼き物を作ることができる。8時から利用可能

塩釜水産物仲卸市場
http://www.nakaoroshi.or.jp/

新浜食堂(食べログ)
http://r.tabelog.com/miyagi/A0404/A040404/4006230/

 塩釜水産物仲卸市場で、朝食をすませ、一路松島へ。この時点で時刻は9時前。松島では先ほど生かきを食べたばかりのS君が「やっぱり松島といったら“かき”でしょう。かき食いたい」と言い出したものの、朝早いためそれほど店舗が開いていない。そのため、国道45号を東北本線松島駅付近で西へ外れ、県道27号(東松島パークライン)沿いにある「杉原功商店」を訪ねることにした。

 杉原功商店は、松島磯崎地区にあり、水槽を使用した海産物の直売のほか通信販売も行っている。また、浜焼きコーナーもあり、購入した海産物をその場で焼いてもらって食べることもできる。S君はかきを、筆者とK君はさざえを焼いてもらい、サービスとして提供されたみそ汁と一緒に食した。

松島付近を走行中松島や、ああ松島や、松島や
松島磯崎地区にある杉原功商店多数の新鮮な海産物が売られている浜焼きコーナー
焼きかきと、焼きさざえを購入したみそ汁はサービス

杉原功商店
http://sugi-hara.com/

 焼き海産物を食べたところで、昼食の目的地である石巻へと向かう。杉原功商店のある松島磯崎地区は津波の被害はなかったものの、ここから西に位置する東松島市や、石巻市では甚大な被害があった。仙台と石巻を結ぶJR仙石線も、松島磯崎地区近くの高城町駅から航空自衛隊松島基地近くの矢本駅までは、12月上旬時点で不通となっており、陸前小野駅~矢本駅は2011年度内に復旧予定となっているものの、高城町駅~陸前小野駅間の復旧のめどは立っていない。

 東松島パークライン沿いには、高城町駅~陸前小野駅間に位置する東名駅、野蒜駅などがあり、一見するだけで松島地区との被害の差を実感してしまう。東名駅では線路がなく、野蒜駅も駅構内がひどく破壊されている。現在、松島海岸駅~矢本駅間はバスによる代行輸送が行われているが、「仙石線を早急に復旧させよう」とのノボリが印象的だった。

震災による津波被害の激しさを物語る東名駅東名駅から仙台方向を望む。架線や線路がなくなっており、架線柱のみが延々と続いていた野蒜駅。駅舎1階の窓ガラスなどが割れている
駅構内。線路などは残るが、施設は破壊されている
野蒜駅の向かいにあった街灯。東名~野蒜間の被害の大きさは、道路を走っていても分かるほどだ「仙石線を早急に復旧させよう」のノボリ

 東松島パークラインをさらに西に進むと鳴瀬川に突き当たり、鳴瀬川沿いに北上。鳴瀬川を渡る鳴瀬大橋で再び国道45号(石巻街道)に合流する。この石巻街道を直進すると目的地の石巻駅付近に着くのだが、日本製紙石巻工場の現状や、石巻漁港の現状を見ておきたかったので、松島基地前で県道247号方向に右折する。

 毎年8月後半に行われる松島基地航空祭では、基地近辺の道路に大渋滞が発生。基本的に「渋滞するよりは、遠回りになってもよいから空いてる道を」派なので、この近辺の道路は何度か走った経験がある。美しい水田地帯だったのだが、稲の刈り取りが行われた気配はなく、工事車両が水田に置かれていた。

 石巻漁港を訪れた後、国道398号(女川街道)を石巻駅方面に戻り、「ホット横町石巻」でちょっと早めの昼食を取ることに。松島基地方面から国道45号(石巻街道)西へ真っ直ぐ向かっても、途中で国道398号となるため容易にたどり着ける。

 このホット横町石巻は、たこ焼きチェーン「築地銀だこ」の創業者である佐瀬守男氏が復興のための賛同者、賛同企業を募って作り上げた商業施設。築地銀だこを運営するホットランドの本社もホット横町石巻の隣に移転し、本腰を入れて被災地の復興を支援している。

 入居する店舗は「築地銀だこ」のほか、お好み焼き・焼きそば屋「くげちゃん」、たい焼き屋「銀のあん」、唐揚げ屋「ホットヤ」など、いわゆる“粉もの”のお店を中心に10店舗。カラオケ屋なども用意されており、精力的にイベントを実施するなど、「ここにくれば、仲間がいる、夢がある、小さな幸せを感じ、明日への希望が持てる」場所にしたいと、設立趣旨にうたわれている。

 ということを少しでも知ってしまったら、「これはもう行くしかない!!」と思い、1日目の目的地に選んだしだい。このホット横町石巻では、たこ焼き、お好み焼き、たい焼きを買い、3人で食べた。

ホット横町石巻。たこ焼き、お好み焼きなど、粉もののお店が多く入る商業施設通路の両脇に店が並ぶ銀だこ
銀のあんくげちゃん購入した、たこ焼き、お好み焼き、たい焼き

ホット横町石巻
http://ishinomaki.hotyokocho.com/

1日目の帰路で、再び塩竈へ
 今回は1泊2日の旅としており、宿泊は仙台市内のホテル。石巻からは三陸自動車道を使えば約1時間ほどで到着するのだが、塩竈で海鮮丼は食べたものの、同地の名物である寿司を食べてない。塩竈市は、北海道小樽市と並び、狭い地域に多数の寿司店があるエリアとして知られている。

 その塩竈市に戻るため、石巻港ICから三陸自動車道へ。利府塩釜ICで下りると料金は当然のように0円表示。一般道と比べると情緒に欠けるものの、移動時間を短縮できるのは、やはり便利だ。

 寿司屋の選択だが、今回は石巻への往路で訪れたマリンゲート塩釜にほど近く、国道45号沿いに店を構える「亀喜寿司」に立ち寄った。食したのは季節のネタが10貫セットになった「季節盛り合わせ」だ。また、塩竈では地元で製塩した「塩竈の藻塩」もあり、亀喜寿司では別途その塩を頼むことができる。お店の人によると「塩で食べるのもおいしいです」とのことだったので、もちろん注文した。

 ちなみに、塩竈という地名は、塩を煮詰めるかまどを指し、この地で製塩業が盛んだったことからついたもの。市内にはかまどが祭られた「御釜神社」もあり、訪ねてみるのもよいだろう。

三陸道で塩竈へ。利府塩釜ICでの料金表示は0円
亀喜寿司に到着。国道45号沿いにあるので分かりやすいだろう季節盛り合わせのにぎり。見た目にも美しい盛りつけがなされている

亀喜寿司
http://www.kamekisushi.jp/



キリンビール仙台工場。被害の大きかった工場だが、すでに生産を再開しており、工場見学も可能

 寿司を食べておなか一杯になったところで、次は新鮮な飲み物を目的として国道45号を南下して仙台塩釜港地区へ。ここには、三井アウトレットパーク仙台港など大規模商業施設があるが、目的地は「キリンビール仙台工場」。キリンビール仙台工場も震災で大きな痛手を被ったが、すでに復旧して生産を再開しており、工場見学も可能となっている。

 工場見学では、ビールの生産工程を見ることができるほか、最後に1人3杯まで試飲ができる。と言っても、この時点で運転を担当していた筆者が飲めるわけもなく、S君らがおいしそうにビールを飲んでいるのを眺めるだけだった。ドライバーや未成年者用に、キリンレモンや午後の紅茶などのソフトドリンクも用意されており、キリンレモンを3杯、ありがたくいただいた。

キリンビール 仙台工場
http://www.kirin.co.jp/about/brewery/factory/sendai/

 宿泊は仙台駅近くのホテルを予約しており、仙台塩釜港地区から向かうには国道45号を西進すればよい。ただ、それではおもしろくないので、仙台港北ICから仙台北部道路を使い、仙台宮城IC経由で仙台駅に向かうことにした。仙台地区は2010年3月に仙台北部道路 利府しらかし台IC~富谷JCTが開通したことで、仙台駅を中心とする高速環状ネットワーク「ぐるっ都・仙台」が完成している。このぐるっ都を体験してみたかったというわけだ。

 仙台港北IC~仙台宮城IC間の料金も、当然のように0円。しかしながらこの選択は大失敗。仙台の中心部にある定禅寺通り沿い(東二番丁通~市民会館前)で大規模ライトアップイベント「2011SENDAI光のページェント」が開催されており、ここへ向かう大渋滞に巻き込まれてしまった。筆者らはこのイベントを避けるように移動したが、このイベントを目的に多くの人が訪れていた。SENDAI光のページェントは、12月31日まで17時30分~22時(31日のみ23時消灯)の間、毎日ライトアップが行われている。

ぐるっ都・仙台の図。仙台の中心部を取り囲むように高速道路が配置されているぐるっ都・仙台を体感するため仙台北部道路を使って、東北道 仙台宮城ICへ。料金は0円

2011SENDAI光のページェント
http://www.sendaihikape.jp/

 無事ホテルに着き、チェックイン。一休みしたら、夕食のお店探しをする。仙台に来たら、「牛タン焼き食べるでしょ!!」ということで、牛タンのお店の選定にかかる。仙台には、仙台牛タン発祥店「太助」をはじめとし、最近は関東地方への積極的なチェーン展開を行っている「利休」や「味の牛たん 喜助」など数多くの店舗がある。

 店舗を探すのが面倒な場合は、仙台駅3階にある「牛タン通り」に並ぶ店から選ぶのが便利だが、ここではどの店も行列ができている。今回は、仙台駅にほど近い、「伊達の牛タン」本店に行ってみることにした。伊達の牛タンは仙台駅内にもあるが、あちらは大行列。徒歩で3分ほどの本店は店舗も広く、いかにもレストランといった趣がある。

 伊達の牛タンの名物メニューは「極厚芯たん定食」なのだが、これは数量限定のため、21時に訪れた時点で売り切れ。そのため、「牛タン定食」の「しお・みそミックス」を注文した。伊達の牛タンでは、麦入りご飯が無料でおかわりでき、筆者は3杯注文。おなか一杯になった我々は、お店を後にし、ちょうど月食の始まった仙台の夜は更けていくのであった。

伊達の牛タンの牛タン定食 しお・みそミックス。麦入りご飯はおかわり無料
夕食を終え、空を見上げたら月食が始まっていた。23時頃には皆既月食に

伊達の牛タン
http://www.dategyu.jp/

 今回走ったルートは下図のとおりだ。塩竈付近で交錯しているが、一旦石巻まで向かい、仙台港近くにあるキリンビール仙台工場に立ち寄り。その後「ぐるっ都・仙台」の北半分を利用して、西側から仙台駅へと向かったしだい。後編は、2日目に訪れた、雪道の登場する山形エリアをお届けする。


(編集部:谷川 潔)
2011年 12月 21日