ブリヂストン、エコとラクを融合させた新低燃費タイヤ「ECOPIA PZ-X」発表試乗会【後編】
ECOPIA PZ-Xを装着したマークXを、日下部保雄氏が試乗


 低燃費性能に“ラク”性能を加えたと言う、ブリヂストンの新低燃費タイヤ「ECOPIA(エコピア) PZ-X」シリーズ。セダン・クーペ専用の「ECOPIA PZ-X」、軽・コンパクトカー専用の「ECOPIA PZ-XC」、ミニバン専用の「ECOPIA PRV」をラインアップし、全95サイズ中33サイズで低燃費性能の最高グレード「AAA」を達成している。

 「ECOPIA PZ-X」シリーズ発表試乗会における技術説明は前編に掲載しており、後編となる本編では、モータージャーナリスト日下部保雄氏による試乗記をお届けする。試乗コースは東京・お台場近辺の限られた場所と時間であったが、ECOPIA PZ-Xの持つ性能の一端をお伝えできれば幸いだ。


 ブリヂストンの主力商品であるECOPIAブランドの新商品「ECOPIA PZ-X」「ECOPIA PZ-XC」「ECOPIA PRV」が発表になり、同時に試乗会が開催された。

 各製品は、低燃費タイヤのラベリング制度に適合している。転がり抵抗が最も優れる「AAA(トリプルA)」が主力サイズとなっており、ウエット性能はすべて「c」ランクとなる。車種別専用設計を採用し、セダン・クーペ用はECOPIA PZ-X、軽・コンパクトカー用がECOPIA PZ-XC、ミニバン用がECOPIA PRVとなり、それぞれのクルマの性格に合わせたタイヤのマッチングによって、構造やパターンなどを変えている、なかなか凝った設計だ。

 Playz(プレイズ)の左右非対称形状によるラクな運転性能と、ECOPIAの低燃費性能をコンセプトにした新シリーズで、これによって一部を除いたサイズのPlayzシリーズと、ECOPIA EP100は置き換わる予定だ。

 今回試乗できたのは、セダン・クーペ用のECOPIA PZ-Xで、試乗車はマークX。タイヤサイズは215/60 R16(ラベリング制度:AAA/c)で、一般的なサイズとなる。試乗コースは東京・お台場周辺の市街地と、ちょっとした高速道路で、テストコースのように限界性能やウエット性能をトライすることはできなかったが、タイヤの持つフィーリングチェックはできたと思う。

セダン・クーペ専用の「ECOPIA PZ-X」
軽・コンパクトカー専用の「ECOPIA PZ-XC」
ミニバン専用の「ECOPIA PRV」

 ECOPIA PZ-Xシリーズはタイヤ形状が特徴的で、左右非対称となっている。アウト側のタイヤサイドがラウンドしている代わりにイン側はスクエアだ。マークXに装着した時に膨らんで見えるのが面白い。パターンは3本のストレートグルーブが特徴的で、トレッドパターンもPlayz譲りのシャープなもの。細かなパターンが多い最近のエコタイヤの中では特徴的だ。

 走り始めてすぐに感じたのは手ごたえ感で、低速での操舵力は重めだ。ただ重いと言っても過剰な重さではなく、マークXのパワーステアリングとの相性もよいようだ。パーキングレベルでは、さらに重く感じるもののセダンでしっかりとした手ごたえを望むユーザーには丁度よいだろう。

数多く並んでいた試乗車いざ、試乗へ出発お台場近辺を試乗した

 PZ-Xの特徴の1つにPlayzから継承された“ラク”というコンセプトがあるが、直進性などに優れた特徴を持っていた。このコンセプトはもともと横風などの外乱に強いタイヤ形状を持ち、ECOPIA PZ-Xシリーズもわだちなどでの外乱による直進性の乱れは少なく、確かにリラックスして運転でき、ハンドルの取られなどは少ない。

 直進時の手ごたえは速度を上げても変わらず、保舵感にほとんど変化がない。なかなか好ましい性格だ。通常遭遇するようなコーナーでもこの手ごたえ感は大きな変化はなく、ライントレース性は高く、コーナーも気持ちよくクリアできる。手ごたえ感はあるが、操舵力をはじめ、ハンドリングに重すぎる感触がなく、しっかりしたドライブフィールを持っている。

 高速時にもこのフィーリングは変わらない。大きな横力をかけて、さらに切り増したような場合には、多少のタイヤのヨレが感じられるが、ハイグリップのスポーツタイヤではないので、十分に妥協できる範囲に入っている。また腰砕け感も突然起こるわけではなく、徐々にグリップを失う感じで、極めて自然なフィーリングでタイヤが粘ってくれる。

 ハンドルを切ったときに自分で直進状態に戻ろうとする力、セルフアライニングトルクは多少弱い感じがあるが、これがドライビングをじゃまするものではない。

アウト側のサイドウォールは、ややラウンドした形状となるECOPIA PZ-X試乗タイヤサイズは215/60 R16。サイズ表示のフォントも変更された

 乗り心地は基本的に良好で、段差での衝撃はタイヤケーシングが吸収しているようで、大きなショックを感じることはない。軽いブレーキングなどで荷重をかけた場合のショックは当然大きくなるが、このような条件を与えるとタイヤゲージ(トレッドゴムの厚み)が薄いためか、ショックの差は大き目だ。このような場面でも“ガツン”とした、いやなショックが少ないのは好ましく、この面でも粘り腰だ。

 ただロードノイズは少し大きめで、路面によってはゴー音がこもることもある。エコタイヤのタイヤゲージは転がり抵抗を小さくするために薄くしており、ロードノイズが大きくなる傾向にあるが、ECOPIA PZ-Xにもその傾向が見られる。

 しかしながらマークXでのテストドライブ中に、音が突発的に大きくなることはなく、コモり音も限られているので、よくコントロールされていると言えるだろう。またパターンノイズは大ブロックの割にはピッチバリエーションの効果が大きく、こちらもよく抑えられていた。

 転がり抵抗の小さいAAAで、これだけの手ごたえ感を持っているのには感心させられた。エコタイヤの先入観がそうさせるような、軽い操舵力、グリップ感の頼りなさなどは、まったくない。近年登場するエコタイヤのほとんどは、ちょっと前までは考えられなかったようなグリップとウエット性能を持っているが、今回試乗したECOPIA PZ-Xはその中でもトップレベルにあるだろう。

 スポーツタイヤではないので、ハードなドライビングには向かないが、燃費のよさとフットワークの両立には本当に感心させられた。普段のドライビングシーンでは、まったく不足はないだろう。


(日下部保雄)
2012年 1月 13日