ブリヂストン、エコとラクを融合させた新低燃費タイヤ「ECOPIA PZ-X」発表試乗会【前編】
新エコピアコンパウンドと、非対称エコ・ラク形状を採用し、車種別設計

新低燃費タイヤ「ECOPIA PZ-X」「ECOPIA PZ-XC」「ECOPIA PRV」。タイヤカフェを模した展示が行われていた

2012年1月11日発表
各オープンライス



 ブリヂストンは1月11日、低燃費タイヤ「ECOPIA(エコピア)」ブランドの新商品として、セダン・クーペ専用の「ECOPIA PZ-X」、軽・コンパクトカー専用の「ECOPIA PZ-XC」、ミニバン専用の「ECOPIA PRV」を発表した。発売は2月1日から順次となっており、ECOPIA PZ-Xが43サイズ、ECOPIA PZ-XCが26サイズ、ECOPIA PRVが26サイズ用意される。価格はいずれもオープンプライス。詳細なサイズラインアップ、発売時期については、関連記事を参照のこと。

 同社は、このECOPIA PZ-Xなど3製品の発表会を東京・お台場のホテルで開催。実際にECOPIA PZ-Xを装着した試乗車を用意し、簡単な試乗会も開かれた。前編では発表会の模様を、後編ではモータージャーナリストである日下部保雄氏によるミニ試乗記をお届けする。なお、この3製品は、別々の名称がつけられているが、投入されているテクノロジーは共通のものであり、3製品をまとめて紹介する場合は、ECOPIA PZ-Xシリーズと表記する。

代表取締役 専務執行役員 西海和久氏

ECOPIA EP100と、Playzの後継となるECOPIA PZ-Xシリーズ
 ECOPIAは、同社の代表的な低燃費タイヤの名称であり、現在はフラッグシップ製品である「REGNO(レグノ)」にもECOPIAのロゴが入るなど、製品名称を超えて、低燃費タイヤブランドと位置づけられている。

 今回発表された、ECOPIA PZ-Xシリーズは、ECOPIAの中心製品となるもので、ECOPIAのなかでも上位製品に位置づけられていたEP100と、サマーラジアルタイヤの上位製品である「Playz(プレイズ)」を統合。ECOPIAに用いられていた低燃費技術と、Playzに用いられていた非対称形状などの“ラク”技術を進化・融合させ投入しているほか、車種別専用設計を採用。全95サイズ中33サイズで、低燃費性能の最高グレード「AAA」を達成しているなど、同社の中心商品に位置づけられるものだ。

 発表会は、同社代表取締役 専務執行役員 西海和久氏の挨拶から始まった。なお、同社はECOPIA PZ-Xシリーズ発表会の直後に記者会見を実施。3月以降は、西海氏が同社代表取締役C00(最高執行責任者)となること発表した。

 西海氏は、原材料削減、リトレッドタイヤなどタイヤの再利用、ランフラットタイヤによるスペアタイヤの廃棄物削減、CO2排出量削減という同社の4つの取り組みを紹介。転がり抵抗の小さい低燃費タイヤは、CO2排出量削減に寄与するところが大きいと言う。また、2010年の低燃費タイヤラベリング制度導入以降、消費者の意識も変わってきており、低燃費タイヤ(低転がり抵抗)は当たり前の性能であり、その上でお客様のニーズにあわせた価値を提供することが大切だとし、ECOPIA PZ-Xシリーズでは、セダン・クーペ用、軽・コンパクトカー用、ミニバン用と専用設計のタイヤを用意したほか、エコだけでなくPlayzの持つ“ラク”性能をあわせ持っている。

 このECOPIA PZ-Xシリーズの技術説明開始前には、同社 執行役員 タイヤ製品開発担当 山口裕氏、1月1日に発足した同社の販売会社であるブリヂストンタイヤジャパン 消費財タイヤマーケティング本部長 鈴木将人氏、中井美穂さんによる環境に関するトークショーを実施。ECOPIA PZ-Xシリーズが環境と強く関連する製品であることを印象づけた。

技術説明開始前に、環境に関するトークショーを実施ブリヂストン 執行役員 タイヤ製品開発担当 山口裕氏
中井美穂さんブリヂストンタイヤジャパン 消費財タイヤマーケティング本部長 鈴木将人氏
ECOPIAの歴史販売の取り組みECOPIAブランドのラインアップ

 ECOPIA PZ-Xシリーズのお披露目は、ブリヂストンタイヤジャパン代表取締役社長 清水実氏と中井美穂さんが担当。その際に、ECOPIA PZ-Xシリーズのキャッチフレーズが、“すっごい低燃費!”“すっごい運転ラク!”を表す「W(ダブル)ですごい、低燃費。」であることが表示された。

ブリヂストンタイヤジャパン代表取締役社長 清水実氏W(ダブル)ですごい、低燃費。
清水社長と、中井さんがアンベール


ブリヂストン タイヤ開発 第2本部長 牛窪寿夫氏

「Wですごい、低燃費。」を実現する技術
 ECOPIA PZ-Xシリーズに投入された技術については、ブリヂストン タイヤ開発 第2本部長 牛窪寿夫氏が解説。ECOPIA PZ-Xシリーズの開発コンセプトは、環境タイヤECOPIAに、“ラク”タイヤPlayzの技術を融合することにあり、そのポイントは“エコ・ラク設計”であると言う。

 “エコ・ラク設計”のポイントは、新開発の新エコピアコンパウンドと、同じく新開発の非対称エコ形状になる。新エコピアコンパウンドは、シリカに末端変性ポリマーを混入し、シリカを分散させて発熱を抑えたエコピアコンパウンドを進化させたもので、シリカを従来より微粒化。さらに分散性向上剤を用いることで、シリカの分散性を向上。シリカ同士による発熱が低減され、転がり抵抗低減と摩耗の低減を両立させていると言う。

コンセプト車種別に専用設計エコ・ラク設計
従来のシリカ配合シリカ同士が接触して発熱していた。これが転がり抵抗の原因となる
エコピアコンパウンドでは、末端変性ポリマーを混入し、シリカを分散
新エコピアコンパウンドは、シリカを従来より微粒化分散性向上剤も用いている

 これにより、Playz PZ-Xの転がり抵抗係数を100とした場合、ECOPIA PZ-Xでは63になり、低燃費タイヤのECOPIA EP100の70と比べても、より小さなものとなっている。また、EP100、EP100Sと比べても、転がり抵抗「AAA」のサイズが増加。AAAは2サイズから33サイズに、AAは15サイズから60サイズに増え、その結果、Aは6サイズからわずか2サイズ(ECOPIA PZ-XC 165/50 R16 75V、165/50 R15 73)になった。

転がり抵抗を大幅に改善転がり抵抗「AAA」のサイズが増加した

 一方、“ラク”性能は初代Playz PZ-1から投入された、タイヤの非対称形状によって実現するもの。Playzでは、イン側のサイドウォールをやや立ち気味に、アウト側のサイドウォールをややラウンド気味にすることで、段差やうねりなどのある路面でも直進安定性を向上させ、ステアリング修正を低減。その結果、“ラク”な運転環境を実現していた。

 一方、従来型のECOPIAでは、タイヤの転がるときに発生する歪みを抑制するエコ形状を採用。タイヤの両サイドウォールがやや膨れた形に見えるなどの特徴を持っていた。

 ECOPIA PZ-Xシリーズでは、Playzの非対称形状に、エコ形状を加えたものとなっており、旧世代となるECOPIA EP100と比較して、車両の横ぶれを低減。修正操舵も少なくてすむと言う。

Playzに投入されていた、非対称形状ECOPIAのエコ形状
非対称形状と、エコ形状を融合安定性が向上し、“ラク”性能を備えた

 ミニバン専用のECOPIA PRV、軽・コンパクトカー専用のECOPIA PZ-XCは、ECOPIA PZ-Xと中央部以外のトレッドパターンが異なっている。ミニバン専用のECOPIA PRVでは、イン側のブロックをECOPIA PZ-Xに比べて強化。イン側の荷重が大きめのミニバンにおけるふらつきを、さらに抑制するという。

 一方、軽・コンパクトカー専用のECOPIA PZ-XCは、PZ-Xと比べ、主にアウト側のブロックを強化。ショルダー部のラグ溝を千鳥配列とすることで、ジグザグで一体となったブロック形状を実現。ステアリングを大きく切るといった使われ方をする軽・コンパクトカーで、偏摩耗を抑制していると言う。

3製品のトレッドパターンの違いタイヤ表記も、見やすいユニバーサルデザインが採用されたECOPIA EP100との比較チャート。赤はECOPIA PZ-X、赤の破線はECOPIA PZ-XC
ECOPIA PZ-XのトレッドパターンECOPIA PZ-XCのトレッドパターンECOPIA PRVのトレッドパターン

 これらの技術の導入で、ECOPIA PZ-Xシリーズは、性能でECOPIA EP100を凌駕。転がり抵抗のほか、ドライでの操安性や外乱での安定性に優れており、軽・コンパクトカー専用のECOPIA PZ-XCでは、摩耗ライフにも優れていると語った。

新CEOは、津谷正明に
 なお、同社は、ECOPIA PZ-Xシリーズの技術説明後、記者会見を開催。3月に開催予定の定時株主総会およびその直後に開催される取締役会を経て、代表取締役社長 荒川詔四氏が取締役会長に、代表取締役専務執行役員 津谷正明氏が代表取締役CEOに、代表取締役専務執行役員 西海和久氏が代表取締役COOとなる人事を発表した。

 3月以降は、経営を津谷正明氏が、業務執行を西海氏が担当し、よりスピード感のある企業統治を実施。同社の最終目標である、タイヤ会社・ゴム会社として「名実共に世界一の地位の確立」を目指していく。

ECOPIA PZ-Xシリーズの技術説明後、記者会見を開催。人事体制の変更について語る荒川詔四代表取締役社長3月以降に、代表取締役CEOとなる津谷正明氏同じく3月以降に、代表取締役COOとなる西海和久氏

 後編は、日下部保雄氏によるミニ試乗記をお届けする。

(編集部:谷川 潔)
2012年 1月 12日