「首都高は健康だが働き過ぎの中年」
首都高大規模更新の検討委員会始まる

橋本会長兼社長(左)と涌井委員長

2012年3月5日開催



 首都高速道路は3月5日、「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」の第1回を開催した。

 同委員会は、2012年12月で初の開通から50周年を迎え、総延長300km以上の重要なインフラとなっている首都高の、構造物(橋脚やトンネル)の大規模補修を検討する有識者会議。東京都市大学環境情報学部の涌井史郎教授を委員長とし、都市基盤計画関係、橋梁コンクリートトンネル等の構造物関係、経済関係等の7人の委員で構成される。

 同社の橋本圭一郎会長兼社長は首都高速の現状を「開通から40年以上経った構造物が全体の約3割、30年以上が約5割。1日あたり約100万台のクルマにご利用いただいているうえ、大型車の交通量が一般道や他の高速道路に比べ格段に多く、世界で最も過酷な使用状況にある道路と言っても過言ではない。さらに橋梁やトンネルなどの構造物の比率が95%で、これも他の道路と比べ非常に高く、維持管理にも手間がかかる」と説明し、構造物の損傷の増加、維持補修費用の増高が懸念されるとした。

 同社は、損傷個所の部分補修よりも、例えば橋梁の架け替えなどの大規模な補修をしたほうが、長期的に見れば費用が安くなるケースもあると見ている。そのような大規模更新すべき場所の選定や、優先順位付けをするのがこの委員会の役目だ。

開通から40年以上が経過した区間が3割近くある重大損傷の例
構造上、維持管理がしにくい個所もある。供用後49年経った羽田線の東品川桟橋部(右)は、運河上にあるため塩害で劣化し、桟橋構造のため維持管理しにくい

 涌井委員長は首都高の現状を「健康状態はいいが、働き過ぎであちこちに支障が出ている中年」と表現し、「これを薬で治せるのか、抜本的な治療をしなければならないのか、というのが現在の議論」と委員会の役割を説明した。

 涌井委員長は、「首都高は世界で一番定性的定量的な観察をしており、世界にもこれだけのデータの蓄積がある会社はない」と言う。これが首都高を「健康」と言う所以だが、一方で「そういう健康管理していても、過積載車両などのものすごい負担がかかり、物流などで経済効果を持っている」というのが「働き過ぎ」の意味だ。

 涌井委員長によれば第1回の今日の内容は、「委員間で首都高の現状に対する認識を共有し、首都高が持つ永続的な機能を維持するためにどのような着眼点で大規模更新を考えるか」について。「首都高の資料には“高齢化”とあるが、この表現が適正なのかが非常に重要な問題。構造物はそう簡単には高齢化しない。予想を超える過酷な使用によって劣化が激しくなっている状況を、高齢化と表現していいのかという議論があった。技術的な観点で言えば、加齢をしたから劣化しているのではなく、過酷な使用状況による劣化というのがかなり大きいという議論が盛んに交わされた」と言う。これは「ちょうど東京タワーが建った頃に首都高ができたが、その頃の東京の都市の姿と今日の姿は全く違う。したがってそのときに設計した水準と今日の使用状況のギャップというのは、かなりのものがある」ことも理由だと言う。

 また橋本会長兼社長は「委員会でお配りさせていただいた資料は全て公開させていただいている。首都高の持っている資料の中で、今までみなさんの目に触れなかったようなものも出していく」と述べ、「私どもの持っているものを皆さんと共有し、この大きな問題をぜひ皆さんと一緒に考えさせていただきたいというスタンスから、このようにしている」とした。

 委員会の第2回は4月に開催され、その後は1カ月おきに開催。現場視察と検討を重ね、8月の第4回で中間報告、12月の第6回で提言をまとめる予定だ。

(編集部:田中真一郎)
2012年 3月 6日