「2020年までは内燃機関が主流」、ボッシュ年次会見より

ボッシュのe-バイクシステムを搭載した電動アシスト自転車で会見に登場したカンプマン取締役

2012年6月11日開催



 ボッシュは6月11日、都内で報道関係者向けに年次会見を開催、同社のビジネスの状況と、同社が持つ技術について説明した。

 技術説明は「e-モビリティ」「ディーゼル技術動向」「事故のない運転への取り組み」「診断技術」の4つが行われたが、ここではe-モビリティと事故のない運転についてリポートする。

カンプマン取締役

電動パワートレーンはモジュラー化でコストダウン

 e-モビリティについては、独ロバート・ボッシュから来日した、ガソリンシステム事業部 電動化システム管轄のステファン・カンプマン取締役が解説した。

 これによると同社は、自動車のパワートレーンは2020年まで内燃機関が主流と予測。2020年の全世界の自動車1億1500万台のうち、プラグインハイブリッド(PHV)、電気自動車(EV)は560万台、ハイブリッド(HV)は650万台にとどまるとの見通しを示した。

 だが、これ以降は電動化が急速に進み、2050年には内燃機関のみ搭載した車両の比率が大幅に下がって「真の電動化の時代が来る」とした。これに向け同社は、電動パワートレーンのモジュラー化によるコストダウンや、充電インフラの開発といった取り組みを行なっている。

2020年までは内燃機関が主流充電インフラの実証実験をシンガポールで行なっている

 現在、同社が持つ電動パワートレーンは「パラレル・フル・ハイブリッド」と「アクスル・スプリット・ハイブリッド」の2種。前者はフォルクスワーゲン「ティグアン」やポルシェ「カイエン」「パナメーラ」のハイブリッドモデルに、後者はプジョー「3008 Hybrid4」に採用されている。

 パラレル・フル・ハイブリッドはエンジンとトランスミッションの間にモーターがあり、エンジンとモーターの間にはクラッチ、モーターとトランスミッションの間にはトルクコンバーターが設けられている。160km/hまではアクセルペダルを戻すとエンジンが停止し、コースティングモードに入る。

 アクスル・スプリット・ハイブリッドは内燃機関のFF車のリアアクスルにモーターを付け、前輪を内燃機関(プジョー3008の場合はディーゼルエンジン)、後輪をモーターで駆動する。これにより、4WDとして使用することもできる。

 カンプマン取締役はハイブリッドパワートレーンについて「内燃機関とモーターをいかになめらかに結びつけるか、ボッシュにはそれができる」と述べた。同社は2013年までに13メーカーから15の電動パワートレーンのプロジェクトを受注している。

パラレル・フル・ハイブリッド
アクスル・スプリット・ハイブリッド
ボッシュのe-バイクシステムを装着したKTMの自転車。手元のインターフェイスでアシスト量などを変更できる。モーター、バッテリー、インターフェイスの接続には車載ネットワーク規格「CAN」を採用している。システムの重量は約5kgで価格は500ユーロ程度
ボッシュのe-バイクシステムは30以上のブランドが採用

 

宇野高明氏

歩行者保護や交差点進入支援技術を開発中
 「事故のない運転へのボッシュの取り組み」は、ボッシュ シャシーシステム・コントロール事業部の宇野高明氏が解説。

 日本での交通事故死者数は減少傾向にあるものの、2011年の時点でまだ4600人以上が事故死しており、政府は2016年までに死者数を3000人いかにする目標を掲げている。また世界規模では死者数が増加傾向にあり、その90%は発展途上国で発生していると言う。

 この状況において同社は「パッシブセーフティ」「アクティブセーフティ」「ネットワーキング」「自動運転」と安全機能を進化させるロードマップを描いている。アクティブセーフティに関しては、ABS、トラクションコントロール、ESC(横滑り防止装置)をすでに投入。2012年の時点で、ABSは2億台、ESCは7500万台が生産されている。

 同社はこれに、ミリ波レーダーやカメラによる視覚サポートを加えた先進安全システムを次のステップとして提案。衝突被害軽減ブレーキ、車線維持支援、車間距離維持などのシステムが実用化されている。

 事故のタイプ別で見ると、日本ではトップが歩行者事故で3割以上を占め、交差点進入車両事故、路側障害物事故が続く。これらに有効な歩行者保護や交差点進入支援技術しnは現在開発中としている。

日本の交通事故死者世界の交通事故死者は増加傾向タイプ別の交通事故死者数
ボッシュのロードマップ視覚サポートを加えたアクティブセーフティーを提案歩行者保護などを開発中
オートバイ用ABSは日本で開発レーダーユニットカメラユニット

 

ヘミング社長

世界ネットワークを活用
 同社のビジネスについては、4月1日に就任したばかりのヘルベルト・ヘミング社長が説明した。

 これによると全世界の2011年の売上は前年比9%増の515億ユーロで、売上の59%を占める自動車機器部門は8.2%増の304億ユーロ。地域別の比率は欧州が59%、アジア・太平洋が23%、北米が14%、南米が4%となっており、全地域で前年比増となった。

 一方、日本での売上は震災とタイ洪水の影響で2.1%源の321億円。自動車機器が3.6%源となったが、依然として売上の88%を占める。2012年1~4月は約13%増となっており、災害の影響から回復。円高や原材料価格の高騰という不安要因はあるが、2012年は5~10%の成長を期待する。

 こうした円高などを背景に、日本でのパートナーは海外生産を急速に拡大しているが、ボッシュは同社の世界ネットワークを活用し、日本メーカーの海外進出をサポートするとしている。

全世界での売上全世界に拠点を持つ
日本での売上日本メーカーの海外生産をサポートする

(編集部:田中真一郎)
2012年 6月 12日