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10式戦車が初参加した「平成24年度 富士総合火力演習」
日本の島嶼部に侵攻した敵部隊を排除する設定で状況開始

演習に初参加し、実弾射撃を行う10式戦車

2012年8月25日予行開催
2012年8月26日本番開催



 陸上自衛隊は8月26日、「平成24年度 富士総合火力演習」を実施した。Car Watchではそれに先駆け、25日に実施された予行演習の模様を取材することができたので、その様子をリポートする。予行と言ってもほぼ本番と同様のスケジュールで演習は進行する。

 陸上自衛隊が毎年8月下旬に開催する総合火力演習(略称:総火演)は、陸上自衛隊の日頃の訓練成果を一般国民に知らしめるために開催されているもの。戦車などが実弾を使用する一般公開イベントとしては、陸上自衛隊で唯一のものとなる。

 観覧するためには毎年6月ごろから実施される一般公募に応募し、当選する必要があるが、人気の高いイベントであるためその倍率は非常に高い。今年ははがきの応募で15.6倍、インターネットによる応募では14.4倍の競争率となった。なお、応募の際には「青少年券」と「一般券」の2種類があり、来場者に29歳以下の人間が含まれる場合には青少年券で応募したほうが当選確率は高いそうだ。

 今回の演習は陸上自衛隊として初めて尖閣諸島など離島での有事を想定したシナリオを展開。日本の島嶼部に上陸し、陣地を構築中の敵部隊に対して攻撃を実施するという想定の元で演習が行なわれた。

 また、主要装備としては初めて新型戦車「10式(ヒトマルシキ)戦車」が演習に参加。軽量化された車体による高い機動性と高度な射撃統制システムの能力を一般に初めて披露した。

予行では渡辺周防衛副大臣が参列した 観客席。予行のため自衛官になりたての学生達も多数が見学した 会場となった東富士演習場

 演習は10時00分〜11時10分までが前段演習、11時25分〜12時00分までが後段演習として実施された。

 前段演習では主に陸上自衛隊の主要装備を紹介しながら、その実弾射撃の様子を次々と公開していくという流れで展開する。その中でもやはり今回の注目は初めて演習に参加することになった10式戦車だ。10式戦車は従来の主力戦車である90式戦車よりも大幅に軽量化されながら、火力、機動力、防護力については向上しているとされている最新鋭の主力戦車。ネットワーク機能を搭載したことも大きな特徴で、ネットワークを利用して戦車同士の連携はもちろん、普通科部隊などとも敵味方状況をリアルタイムで共有可能になると言う。10式の10とは2010年に正式採用されたことを示し、90式は1990年に採用されたことを示している。

 演習に登場した10式戦車は「スラローム射撃」と呼ばれる機動を披露。90式戦車をはじめとした現用戦車の多くは主砲にスタビライザーを内蔵し、走行しながら射撃を行なえること自体は珍しいものではないが、10式戦車はその精度をさらに高め、右に左に旋回しながら激しく揺れる車体をものともせず、安定した射撃が行なえることをアピールした。

今回初めて演習に参加した10式戦車
左右に車体を傾けながら射撃する「スラローム射撃」を披露 後進時にも前進時と同じ時速70kmで走行可能
90式戦車。10式戦車の登場で1世代古い戦車になったが、まだまだ現役
射撃をする90式戦車。スラローム射撃はできないが、走行間の射撃はもちろん可能
74式戦車。油圧により姿勢制御か可能という独特の機能を持つ 車体を傾けて稜線射撃時に有利であることをアピール。油圧で高さ変更を行った転輪の位置に注目 射撃をする74式戦車
87式自走高射機関砲
89式装甲戦闘車。右端の写真は79式対舟艇対戦車誘導弾を発射しているところ
中距離多目的誘導弾。赤外線画像とセミアクティブレーザーによる追尾が可能
遠距離火力として公開された特科部隊の「99式自走155mmりゅう弾砲」 こちらは203mm自走りゅう弾砲
りゅう弾砲の弾着の様子。左は空中炸裂型の弾頭をほぼ同じ高度で一斉に炸裂させた。会場から発射される弾頭だけでなく、会場外から発射されている弾頭もあるが飛翔距離が違うにも関わらずタイミングをピタリと合わせてくるのはさすが こちらはその応用として「富士山」を描いた。お見事
UH-1Jによる地雷散布 CH-47Jからリペリングする隊員 撤収時にはより素早く離脱するため、その場ではヘリまで引き上げずロープに体を固定したまま移動する
軽装甲機動車上から発射される「01式軽対戦車誘導弾」
96式装輪装甲車。普通科隊員(歩兵)を12名乗せることができる
観測ヘリコプター「OH-1」。偵察用のため武装は一切搭載していない 前段演習の最後は落下傘による降下で締めくくられた

後段演習のシナリオ解説。今回は離島を占領しつつある敵軍に対する攻撃を想定していた

離島を占領しつつある敵軍に対する攻撃を想定した後段演習
 後段演習では、有事を想定したシナリオに沿って部隊を運用する様子を公開。今回は日本の島嶼部に侵攻した敵部隊を排除するという設定で演習が展開された。離島が舞台ということで、初めて海上自衛隊の対潜哨戒機「P-3C」も演習に参加。航空自衛隊の支援戦闘機「F-2」と共に対艦ミサイルで洋上から敵艦を攻撃するという想定の元に会場上空を飛行していった。

 航空機による攻撃段階が終わるといよいよ陸上自衛隊による島嶼奪還作戦が開始。まずは偵察ヘリを中心とした航空偵察を実施して敵の情報を収集。その情報を元に戦闘ヘリに護衛された輸送ヘリ部隊が到着。輸送ヘリによって歩兵や偵察用のオートバイ部隊、軽車両の輸送などが次々と迅速に展開した。その後、主力となる地上部隊が到着し、車両部隊による偵察を開始。その情報を元に野戦砲による敵陣地への砲撃や地雷原の処理を行なって敵陣地への攻撃ルートを確保すると、戦車部隊を投入。その突撃によって演習は終了した。

後段演習が始まると最初に飛来した海上自衛隊の対潜哨戒機「P-3C」。有事の際には対艦ミサイルを装備して艦船攻撃にも対応可能 九州の築城基地から飛来した支援戦闘機「F-2」。こちらは対艦攻撃が本職
OH-1が飛来し、敵陣偵察を開始
「UH-1J」が偵察用のオートバイ部隊を搭載して飛来
輸送ヘリの支援として戦闘ヘリ「AH-64D」が到着
隊員をリペリングさせる「UH-60J」 軽高機動車を空輸する「CH-47J」
地上にも偵察部隊が到着。これは87式偵察警戒車 援護射撃を開始
偵察部隊の退却を援護するため後方の特科部隊が煙幕段を発射した 偵察部隊と入れ替わりに74式戦車が登場
主力部隊の進撃路を確保するため地雷原の処理を行なう「92式地雷原処理車」 空中で小爆弾を連ならせたワイヤーが伸び 着弾後に起爆することで直線上の地雷を誘爆させる
機甲部隊の先鋒として10式戦車が登場 射撃をする10式戦車
会場右手で隊列を整える10式戦車 89式歩兵戦闘車も戦列に加わる 再び前線中央に向かって10式戦車が前進を開始
ここで90式戦車部隊も投入
ラストは地上部隊とヘリ部隊が一斉に会場になだれ込む 最後を派手に飾る一斉発射された発煙弾

 演習が終わると午後は装備品の展示も行なわれた。10式戦車以外の車両はロープなどが引かれておらず間近に見て手で触ることもできた。予行演習当日は晴れで気温も30度を超える真夏日であったが、見学者達は普段は見ることができない車両を興味津々の様子で見て回っていた。

展示の様子 2010年から調達が開始されたばかりの「NBC偵察車」。従来は別の車両であった「化学防護車」(NC)と「生物偵察車」(B)の役割を一両でまかなえる

 なお、10式戦車のスラローム走行射撃や、演習全体のダイジェスト映像を別途フルHDなどで掲載している。関連記事を参照していただきたい。

(清宮信志)
2012年 8月 27日